名前はトマス。
俺は普段は学校に通っている。
平日は学校に通い、週末になるとブレイブと一緒に出掛けて欠片を集めたりモンスターを退治したりと言う毎日を送っている。
学校での勉強はとても退屈だ。俺には前世の記憶があり、そのおかげでこの世界の勉強なんて……。
「なあ、相棒。その勉強ってやつ、まだ終わらないのか?
俺様はもう暇で暇で仕方ないんだが」
そううまくいくはずもなかった。そりゃそうだろ!
魔法が使えるのが当たり前の世界で学ぶ勉強が、前世と同じ内容であるはずがない。
そもそも前世より発達した空を飛ぶ船があったり、ブレイブがいた兵器工場が過去にあったりするような世の中だ。
もう世界さえ全く違うと思ったほうが正しい。
「うるさい! もうちょっと待て、後少しだから……」
絶賛宿題中でブレイブの相手をしていないからか、ブレイブが構ってちゃん状態だ。
こいつ週末は欠片だ、モンスターだ、吸収だってうるさいくせに平日で出かけらない時は、家猫みたいに構って構って状態になる。
正直言うともうちょっと静かな鎧が欲しかったところだけど、さすがに文句は言えない。
「相棒~さっきもそう言ってたじゃないか。
魔素を吸収したら相棒の頭もよくなったら良いのに」
「おい、聞こえているぞ!」
こんなくだらないやりとりも何回しただろう。
ブレイブのせいで勉強に身が入らなくなった俺は、ブレイブと生活が始まってからのことを考えていた。
そんな時だ。
「おーい、リオンー」
家の外から声がした。この声は隣人のトマスだ。
昔いじめられていたことを助けてから、家族で俺によくしてくれる俺の数少ない友人だ。
「そんなに慌てて、どうしたんだ?」
「リオン、聞いてよ。
街の掲示板に、騎士の選抜試験の掲示があったんだ!」
騎士の選抜試験、それは俺が望んでいたものだ。
帝国の騎士が殉死,もしくは引退したときに、補充のために帝国内全体から募集される。
現帝国の騎士が試験官となって各地に赴き直接試験をするので、珍しい騎士を直接見る機会にもなって街ではちょっとしたお祭り騒ぎになる。
「やっとか!
待ちわびたぜ」
俺の望みはこの選抜試験に合格し騎士になることだ。
この望みはすでに亡くなったこの世界の両親から受け継いだもの。
両親は真面目な兵士で、その真面目さから街の人たちに好かれていた。
そしていつかこの帝国の騎士になって、帝国を支えたいと常々俺に話していた。
俺は両親のように真面目な性格ではないけれど、その夢だけは叶えたいとそう思っていた。
「リオン、俺も参加するよ。
俺はリオンみたいに強くもないし……実力もないけど、一緒に試験を受けるくらいはできるからさ。
そのほうがリオンも心強いだろ?」
自分で心強いだろなんて言っちゃうトマスだけど、俺は嬉しかった。
きっとトマスは落ちるだろう。何しろトマスはいじめられていた過去があるくらい、はっきり言って弱い。
だけどこいつは間違いなく俺のために一緒に試験を受けると言ってくれている。
孤立しがちな俺のために。
「そっか、じゃあ一緒に行くか!
お前は弱いんだから無理だけはするなよ」
「はっきり言うなんてリオンはひどいなー。
選抜試験は午前が受付、午後から試験らしいから、明日朝早くに二人で向かおうか」
「わかった、じゃあ明日な!」
そう言ってトマスと別れる。
「相棒、とうとう来たな。
まあ俺様の力があれば相棒の合格なんて楽勝だぜ」
間違いなくブレイブの力があれば選抜試験は楽勝だろう。
戦闘の実技だけは……。
その他、勉強はなんとかなりそうだけど、問題があるとすれば礼儀作法とかかな……。
まあその時になったらなんとしてでも偽って騎士になろう。
俺は間違いなく自分は騎士になれることを疑っていなかった。