RWBY feet.狩人&ハンターremix!!   作:遥かなるフォーリナー

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変形する武器ってステキ! 使用性とか保守性とか色々終わってそうだけど……。

※本作はゲーム基準の動作とは違う動作を行う場合があります。


狩人、あるいはハンター

 招かれざる客。それはその世界に本来居なかった筈の存在だった。

 

 しかし彼らは招かれた。不可思議な運命の導きで。

 

 それは蟲の知らせか、或いは血の啓示か。

 

 どちらにせよ、招かれざる客にとってこの世界はそう悪いものでもない。

 

 なぜならば彼らは、勇気あるハンター(血に酔った狩人)なのだから。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

「……まずは状況を整理させろ」

「あっれ〜? こんな狩場あったっけ? 密林、じゃないよねえ。木の植生見るからに違うし」

「……黙っていろ、気が散る」

「えぇ、こんな状況だからこそ思いつくこと口に出さなきゃ。昔はハンターも寡黙が美徳だったけど、やっぱり口数多い方がこう、色々情報が出てきやすいじゃん? ほらほら、黙ってるとほっぺつねっちゃう──」

「──轡の代わりにこれを咬むか?」

「ひ、銃チラつかせないでよ! 妙に脅し小慣れてるのも怖いんだけど! ギルドナイトみたいな目してたよ今!」

 

 ──やいや、やいや、会議は踊る、されど進まずとは誰の言葉か。

 

 霧がかった森の中、2人の男女は噛み合わない会話を続けていた。

 

 1人は鉄と見まごう程のどろりとした重圧を放つ黒のコート(狩人の装束)と三角を作る様にツバを折られた同色の帽子(狩人の帽子)を着込んだ男。しかし重圧を醸すのは単なる黒革ではない、黒革に溶け込んだ鉄の香りはそう主張していた。

 

 更に、両手には古めかしい短銃(狩人の短銃)銀色の杖(仕込み杖)がそれぞれ握られており、今まさに短銃を女に突きつけ、脅しをかけている。

 

「狩人はその戦いを以て語る。それ以上の言葉は無粋だろう」

「お、良いねそのセリフ。鉄蟲糸技の決めゼリフにしよっかな? 気炎万丈以外の決めゼリフも欲しかったんだよね」

「貴様は無粋が足を付けて歩いている様なものだな」

「いやあ、羽も付いてるかも」

「……あきれた減らず口だな」

「えっ……」

 

 すると、男の言葉に女が酷く動揺した。何かのシッポを踏んでしまったかと思う男だが、心当たりが無い。すると女は顔を赤くして。

 

「それって……『ナマイキなその口を塞いでやる』ってキスされる奴じゃ……まって、私まだそんな経験ないの!」

「糞が……」

 

 その暴言は、久しぶりの()()()()光景に心を乱されたからか。男は今から女について考えないようにすると決めた。

 

 しかし、女は一見動揺を露わにしながらもその目は据わっていた。なんなら今すぐにでも動けるよう、"蟲"を飛ばす準備もしていた。事実、人気の無い森の中、男女が2人きりで襲われない保証は無い。

 

 最も、悪夢を見ていた男にそんなものが残っていればの話だが。

 

 もう1人の女は、この様な森の中にはあまりにも似合わないどこかの学園の制服(レルネアシリーズ)を着込んでいた。緑色をしたそれは確かに森の中では迷彩効果を期待出来ない事もないが、それでもやはり場違いだ。少なくとも狩人である黒いコートの男はこの不条理な存在に黒いマスクの中で都度5度目のため息をついている。

 

 だがそれでも黒いコートの男が警戒を続けるのは、その背に背負う巨大な剣と盾(チャージアックス)にある。妖しくも美しい青をギラつかせる刃と盾(トリスタンイゾルデ改)は、明らかに制服の女の身の丈には合っていない。それを余裕綽々と背負う姿は、散々人外の謗りを受けてきた狩人を以てしても冷や汗をかかせるものだった。

 

「でも同じ狩人(かりんちゅ)なんだから仲良くした方が良くなくない?」

 

 しかしそれはこれまたハンターである制服の彼女もそうだった。彼女は黒いコートの男から伝説の黒龍(ミラボレアス)骸を纏う龍(オストガロア)を彷彿とさせる圧倒的な力と飢えの気配を感じていた。今や特別な力すら必要とせず獲物の状態を見抜くハンターの彼女は、目の前の男に古龍にも匹敵する鏖殺の化身の影を見たのだ。

 

 しかし、どちらもその畏れを表に出す事は無い。

 

「……仕方ないが貴様の力を借りるとしよう」

「任せて、こう見えても自然にはちょっとは詳しいから!」

「頼むぞ、無駄に広い森は嫌いなんだ」

「えぇ〜? 本当に〜? 狩人なのに〜?」

「私を正直者にさせる気か?」

「はいっすいません! だから重そうな銃チラつかせないで!」

 

 2人は狩人でありながら、獣と狩人の関係でもある。そこに畏れが混ざれば、それは死を運ぶ悍ましい呪いとなる。それを理解するからこそ、黒いコートの狩人と制服のハンターは黙って手を取るのだった。

 

 そんな2人を遠くから仮面の獣が見つめていた。そして、2人の人物も。

 

 それらと出会うまで、あと僅かの事であった。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 そこから離れた森の中、2人の少女が険悪な雰囲気を垂れ流しながら歩いている。

 

「ワイスってさ! もうちょっと他の人に優しくする事を覚えた方が良いんじゃないの?」

「余計なお世話です。それよりもルビーさん、貴女の方が他者に対する敬意と言うものが欠落しているのではなくて?」

「敬意を払うならまずは自分から、じゃない?」

「ほう……」

 

 またまた別方向に噛み合わない会話を繰り広げるのは、紅いマントと銀の瞳が特徴的な毛先は赤の黒髪の少女と、白のポニーテールを揺らす左目に傷を負った少女である。

 

「それではこの試験でどちらが先に課題目標を手に入れるか競争しましょう」

「面白そう! やるやる!」

「まるで子供ですわね」

「だって子供でしょ? 私たち」

 

 白髪の少女、ワイスはため息をつく。冗談の通じない相手とは久しぶりに会った、と独り言ちるが、そこには久しく忘れていた解放感を感じてもいた。しかしそれに気付く事はなく、ワイスは話を切り上げようとする。

 

「ならば行きましょう」

 

 その瞬間、森一帯に銃撃音がこだました。森の動物が騒めきたち、静寂は緊張へと性質を変える。

 

「銃声……どうやら他のペアもグリムに遭遇した様ですわね」

 

 今はグリムと戦い人々を守るハンツマン(ハントレス)を育成するビーコンアカデミーの新入生試験の真っ只中、銃声や剣戟の音が聞こえても不思議ではない。しかし……

 

「この銃声、何か違う気がする」

「……は?」

 

 武器オタクのルビーには、それの種類が薄らと聴き分けられていた。とてつもない聴覚、否、武器と言うものへの愛が成す奇跡だ。

 

「森に飛んでいく時に着地の為に幾つか銃声がしたけど、でもさっきのは無かったよ」

「……まさか、部外者?」

「もし、ハンツマンじゃなかったら──」

 

 2人の少女は顔を見合わせ、ただでさえ色白の肌を深く青ざめた。しかしすぐに決意が満ちた。

 

「……行こう」

「言うまでもありませんわ」

 

 先程まで息の合わなかった2人は、誰かも知らない助けを待つ人を前に心を1つにする。それは紛れもなく彼女達にあるハントレスの輝かしい素質であった。

 

 2人はそれぞれの最高速でもって音の方向へと駆けてゆく。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 ──グリム。それは世界の闇そものだ。

 

 人々の心の闇。恐怖、嫉妬、絶望、悔恨、病みとも言えるそれらが集まって出来たそれらは、黒色の身体に、白に朱のラインが入った仮面の様な頭骨もどきを剥き出しにしている。負の感情そのものである彼らがペルソナを伴い生まれるのは、ある種、創造主の婉曲な皮肉だろう。

 

 ──ある時は狼、ある時は熊、ある時は鳥。それらは獣であり、長く生きたものは時に人の如く悪辣な知性を見せる。それは歳を取り知恵を付ける生命の当たり前の営みである。彼らもまた、この世界の生命の一つなのではないか。歪さと自然さを兼ね備えた不思議なモンスターだ。

 

 ──おお、泣いているのか、影の獣よ。きっと彼らから見れば、世界などあらゆる苦痛の海の中にあるのだろう。だからこそ、彼らは人間を害するのか。その身に宿した黒と同じものを持つ人間を。その視界がまぶたの裏の様に、安息なる黒に満ちるまで。

 

 ある2人は別々にそう思った。ただこれは彼らがグリムと何度かの戦いを終えた時のことだ。

 

 今から始まるのは、2人とグリムの初めての遭遇だ。

 

 

 

 

 

 ──森を歩く2人の背に、影が飛びかかる。

 

「……後ろを見るのは基礎だ」

 

 同時に動いたのは、黒いコートの狩人だった。彼は西部劇のガンマンが如く、最小限の動きで腰に添えた銃を撃つ。

 

「小型モンスターって感じ? なら問題なし!」

 

 まず一匹の影、筋骨隆々は狼型のグリム(ベオウルフ)が頭部を撃ち抜かれ吹き飛んだ。

 

 だがそれに合わせてもう一つの影が制服姿のハンターの背に迫る。

 

「後ろがお留守だぞ」

「うん、気付いてるっ!」

 

 その背に背負った未展開状態のチャージアックスを手で支えると、背を向けたままにベオウルフの爪による一撃を防ぐ。そして彼女はベオウルフを跳ね除ける為、武器を展開しつつ力強く旋回する。

 

 ──Ghaaa?! 

 

 その遠心力を乗せた盾による打突が攻撃を防がれ無防備なベオウルフの身体を撃ち抜き、青い空へと打ち上げる。そしてすかさず空へ向けて"翔蟲"を放つ。

 

「行って!」

 

 飛翔する翔蟲の尾からは文字通り鋼にも劣らぬ強度の鉄蟲糸が伸びている。そしてそれは彼女の手元に繋がっていた。

 

(まさか……アレで空に?)

 

 子供の考える様な荒唐無稽さだ、人の拳程の大きさの蟲が人を持ち上げるなど、ましてや武器を持った人間を。黒いコートの狩人はそう思っていた。次の瞬間には覆された。

 

「疾っ!」

 

 まるで動力付き滑車に巻き上げられるように彼女の身体は宙へ引き込まれる。

 

 そして、翔蟲を飛び越え剣を突き構えた彼女は落下を始めたベオウルフと交差する。ベオウルフは間もなく両断され、塵と化した。対して彼女は身を翻しながら見事な五点着地を決めた。

 

(あれが異邦の狩人か)

 

 その姿を見ていた狩人は、自身が彼女に感じた脅威を胸の中で静かに肯定する。しかしその背後から弾痕の残る白仮面の獣が──

 

「後ろ! 

「知っている」

 

 名手の矢の様に素早く(あやま)たず、狩人の狙いは定まっていた。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 それは謂わば共振。これ以上にないタイミング……例を挙げるならばそう、攻撃の瞬間などにカウンターとして弾丸を差し込む。すると猫騙しの要領で驚愕した頭と身体が硬直しビクリと震える。更に弾丸を受けた身体や骨も増して震える。最後に銃声が空気を震わす。

 この3つの震えが重なる事で、ありもしない銅鑼の様なよく響く音が虚空からこだまするのだ。

 

「その腕……」

 

 そしてそれは、血に飢えた狩人にとっては福音だ。狩人はその一瞬だけ、狩人である事を止め、獣としての産声を上げる。まずその腕から。

 

「はぁっ!」

 ──Ghaaaah?! 

 

 腹に手を突き入れられ、悶え苦しむベオウルフ。しかしまだ終わりではない。

 

 ──Boom! 

 

 その身体から弾け飛ぶ血潮と共に背中から生えたのは、灰色の毛に覆われた厚い皮の手と長い爪、それは正しく獣の手だ。それは狩人の左手だ。

 

 戦いの中で芽吹く致命の一撃(チャンス)

 

 彼は、否、夢の狩人達はその手で()()のだ、それを。敵の命ごと。

 

 ──そうして事を終えた狩人は、手を元に戻し、もう一人の狩人に振り返る。

 

「これが私のやり方だ。恐ろしいか?」

 

 散々に恐れられたその"狩り"は一般人にとっては不吉であり、嫌悪の対象でもある。"男"は怯え嫌われる事に慣れていた。だが──

 

「──ちょうカッコいい……!」

「……」

「手が変身するって何!? 初めて見た! 自分の身体武器に出来るなんて超便利じゃん!」

 

 男は呆気に取られた。

 

 首を狩られ、夢から醒め、飽く事なく狩りに染まり、またあの工房の戸を叩く。そんな繰り返しの中、見慣れぬ場所に辿り着き、見知らぬ者と出会う。

 彼はまだ夢の先に行く決意などしていない生粋の半端者(かりうど)。ふざけ切った光景に呆れて笑える程の心は残っていた。

 

「ああ……貴様も同類(きょうじん)と言う訳か」

「ん、何か言った?」

「何でもない」

「ふ〜ん。じゃあ、そう言う事にしとく」

 

 行こう。どちらが言ったか武器をしまって歩き出そうとした時。

 

 ──風切り音が、耳朶を打つ。

 

「まずっ!」

 

 "それ"は男へと向かっていた。気付いた女は咄嗟に盾を構え、その動線を遮るように立ち塞がる。できれば翔蟲を利用した全身全霊の防御を行いたかったが、それは状況が許さなかった。

 

(どうして!? 翔蟲の回復が遅い! このまま使ったら後が無くなる!)

 

 女はその浮ついた言葉遣いに対し、冷静であった。翔蟲とは、使用すれば蟲の回復を待たなければならない。そして女の持ち合わせる翔蟲は2匹。残り1匹を今訳もわからず使えばどうなるか、彼女は考えてしまった。

 

 これが男だったのならば、迷いなく使おうとしただろう。彼の過ごした世界は、戦いの一手一手が常に致命傷となる死闘の世界。迷うぐらいならば使ってしまった方が余程良い場面が多すぎた。

 

 結果、女はどうなったか。

 

「ぐぅっ!」

 

 空から舞い降りた大型のグリム、始祖鳥が如きネヴァーモア。否、その巨体はまさにジャイアント・ネヴァーモアと呼ぶべきものだ。

 

 いつもならばその盾と膂力で衝撃を抑え込める筈だった。しかし慣れない足場での戦闘が"不幸"を呼んだ。

 

「っな!? 木の根がっ!」

 

 後退する踵にそれが引っかかり、女の体勢が崩れる。同時に均衡も崩れた、グリムはそのまま背後に立っていた男に向かって女を吹っ飛ばす。男は避けずそれを受ける。

 

 ──Clash! Clash! Clash! 

 

 あわせて吹き飛んだ2人は、木をへし折り……藪を突き抜け……石に打ち付けられる。鈍い音がした。ネヴァーモアは声高に咆哮し、勝利を確信する。

 

 ──完璧な不意打ちだった。

 

 ──まともな防護策も講じさせなかった。

 

 ──奴らは()()()すら張っていなかった。

 

 それが只人の身であったのならば、とっくに2人は死んでいただろう。だが、彼らは狩人だ。

 

 グリム、彼もまた獣であるのなら、狩人と言う存在を軽んじてはならなかったのだ。

 

 木々の合間に立ち込める霧。静かに漂う。漂う霧は、グリムから2人の姿を覆い隠した。そう、グリムにも"不幸"は訪れていた。

 

 幾許かの静謐。

 

 

 

 ──カラスが鳴いた。

 

 

 

「砕けろ!」

 

 その中から飛び出し天翔ける蟲の糸に引かれ現れたのは、身の丈を優に超える大斧を振り翳すハンターだ。その目に先まで浮かべていた柔和さはなく、冷たい理性に満ちた目をしていた。

 

 睨まれた。そう思ったのかグリムは驚き、咄嗟に羽ばたいて後方へと飛ぶ。女の一撃は外れた。

 

 ──Hpaaaa!? 

 

 かに見えた。

 

 女は縦振りの一撃を地面に打ちつけ勢い付け、更に回復を済ませたもう一匹の翔蟲を使い前方へ加速する。まるで、バッタの飛翔の様に高く速く。

 

「見ていて! これが私の狩りよ!」

 

 チャージアックスの由来たるは、正にチャージ、エネルギーの充填にある。攻撃によって蓄積したエネルギーを盾に保存し、剣と盾を合体・変形させた斧形態での解放、それが爆発的な火力を生む。

 

 しかしその一振りの隙は大きい。

 

 ネヴァーモアは空中で無防備な彼女に羽を撃ち込もうとする。

 

「3歩で忘れるのだな?」

 

 ──しかし、獣は忘れていた。狩人は1人ではないと。

 

 カチン。

 

 火薬の咆哮。銀色の軌跡が獣の()()の根本を撃ち抜く。彼女が飛び出した霧の中から男は現れた。

 

「貴様、やれるな」

 

 白煙蒸す銃と銃を内蔵したレイピア(レイテルパラッシュ)を握る男は、空をゆく女に顔を向け檄を飛ばす。

 

 僅かなアイコンタクト。関係性は紙より薄くとも、互いの培った狩人としての経験が紡ぐのは、終いの合図、幕引きだ。

 

「もちろん!」

 

 なす術なく地を這うグリムを見据え、女はより高く、指先に引っ掛けるようにチャージアックスを掲げる。そして、柄ごと握り潰す勢いでトリガーを引く。

 

 準備万端。

 

「高圧!」

 

 内部の高圧エネルギーは大斧の刃となる盾を廻す。それはまるで電動ノコギリが如く殺気に満ちた音色を奏でる。蒼の閃光が弧を描き、輪となった。

 

 速度満点。

 

廻填(かいてん)!」

 

 金属の軋みは叫びとなり──チャージアックスが声高に吼え、青き刀身に雷霆が迸る。

 

 気炎万丈。

 

「っぁ斬り!」

 ──Hpaa?! Ahaaaa! 

 

 天から舞い降りた刃は、ネヴァーモアの白い仮面と激突する。

 

「ぅぁぁぁああ!」

 

 飛び散る火花。削れているのは白い仮面。

 

 ネヴァーモアはその羽でクチバシを踏みつける不遜な女をはたき落とそうとする。

 

「させるものか」

 

 封じたのは、狩人の二丁が放つ弾丸の雨。しかしネヴァーモアは怯まず叫ぶ。

 

 ──Hpeeeeei! 

(うっわ……)

(仲間を呼んだか)

 

 仲間を呼んだか、早々に察した狩人とハンター。しかし2人の想像よりも速く"それ"は来た。

 

 ──Ghaaashe! 

 

 狩人とハンターの死角から飛び出した2体のグリム。それぞれがネヴァーモアに対応している隙を狙ったのだ。

 

 対応は、出来る。しかし、ここでネヴァーモアへの攻撃を緩めれば、ネヴァーモアを仕留めるチャンスは失われる。

 

 みすみす獲物を逃すか、多少の負傷には目を瞑るか。天秤が2人の前に現れようとしたその時。

 

 ──とんだ幸運(グリムの不幸)は舞い込んだ。

 

 ──Gheeea!? 

「氷……」

 

 狩人の背後を狙ったグリムの胸に巨大な氷柱が飛び込み、一瞬の内に塵へと還す。

 

 ──Gaaahha!? 

「誰か分からないけど、救援感謝!」

 

 ハンターに飛びかかるグリムの脳天には大型の弾丸が炸裂し、頭を消し飛ばす。

 

「これで……終わり!」

 

 ハンターは、突き立てるチャージアックスを振り上げ、回転を止める。

 

 そこからの流れは、まるで水の様に澱みなかった。

 

 斧の刃となっている大盾を手元に引きコッキング。盾全体にエネルギーを満たし、変形を解除する。更にそのエネルギーが満ちた盾に剣を突き刺し、エネルギーを移す。

 

 納刀部が下部から伸び切った盾と納められた剣。その姿、盾を鞘に見立てれば、まさに抜刀術の構えだ。

 

 そして、不意に雷霆はやって来る。

 

 伸び切った納刀部が雷と共に盾に収まった瞬間、盾を剣を雷が駆け巡り、盾の中心が拍動する様に輝いた。

 

 この一瞬、ハンターは躊躇いなく雷を開く。

 

 

 

「──高圧属性斬り!」

 

 

 

 放たれた雷神の一撃は、刹那の間にその頭を切り砕いてみせた。

 

 ネヴァーモアには、叫ぶ暇もなく。

 

 

 

 

 

 

 ──そして、森に静寂が訪れた。

 

 2人は塵となって崩れゆくネヴァーモアの屍を見ていた。

 

「……コイツは一体なんだ」

「分っかんない! 倒したら塵になっちゃったし」

 

 いつもの癖(剥ぎ取り)で近付こうとする女に対し、男は肩を掴んでそれを止める。──落とし物はない(光は見えない)、と。

 

 どっちもどっちだ。

 

「仕方ない、取り敢えず森を抜けるしか──」

「──もう我慢出来ない!」

「さっきのは貴様らか」

「ちょっと待って! 女の子! 銃! ダメ! ぜったい!」

「……貴様は良いのか?」

 

 しかしそれも束の間。次なるは突如響く声。それに反射的に振り向いた男を女の声が制す。薮から飛び出したのは、赤い髪の少女、ルビーだった。後には頭を抱えたワイスが立つ。

 

 2人が声の主をじっと見つめると、ルビーは苦笑いしつつ、嫌がるワイスの背中へ戻ろうとし──

 

「待て、逃げるな待て」

「はひっ! ごめんなさい! あの戦い、プロのハンツマンかと思ってつい眺めてました! ごめんなさい!」

「ルビー、私を盾にしながら言わないでくださいます?」

 

 男のドスの効いた声にびくりと肩を震わせた少女は2人に謝り倒すが、妙に耳覚えのある言葉が出てきた事が女は気になった。

 

 2人には特に眺めていた事を咎める気は無かった。ネヴァーモア討伐で最後に手を貸してくれたのは彼女達だと察していた事もあり、敵ではないだろうと踏んでいたからでもある。

 

「プロのハンツマン? 私はプロのハンターだけど……」

「やっぱり!」

 

 女と少女は話の通じている風だったが、男は待てと言う。

 

「そのプロのなんとやらは、貴様の知るものとは違う可能性があるだろう」

「……そうだ、言われてみれば」

「どうやら、あなた方はこの試験の関係者ではなさそうですわね。どちらにせよ、あまり好ましくない状態のようですが」

 

 ワイスも会話に参加するが、事態は未だ不明瞭だ。両者共に、警戒が途切れる事は無い──

 

「えっと、その武器! どんな名前なの!?」

「ん? これ? これはチャージアックス。盾斧(じゅんふ)とも言われてて、基本的には盾と剣として使える。火力が欲しい時には、ほいっ!」

「わぁっ! 合体! 変形! 小回りの効く盾剣状態に一撃の重い斧状態! 合理的なのに凄くロマンに溢れててクールだよ!」

「でしょ? でしょ!」

 

 ──無い、筈だったが。

 

「そうだな……アレは私にはよく分からない生き物だ」

「奇遇ですわね、私もつくづくそう思いますわ。まだ貴方の方が話が通じそうなのが救いかしら」

 

 女と少女は数秒前まで他人だった筈だ。しかし今は目を煌めかせて語り合っている。時でも飛ばされたか、そんな突拍子もない考えが2人の頭の中に湧いて出るが、結局はどうだろうか。2人は語らず胸の内に仕舞い込む。

 

 初対面は控えめに問いかけながらも、話の通じる相手と分かれば押しが強くなるのがこのルビーと言う少女であった。見た目は年上のハンターであっても、武器を愛する者同士であるならば、少女に遠慮の2文字は無いらしい。

 

「あっ! そう言えば自己紹介がまただった。 私はルビー、ルビー・ローズ、よろしくね!」

「ご丁寧にどうも、私はマツリ。性はイカルガ! 新しい物好きの狩人だよ! ほら! 貴方も自己紹介、私も知らないし!」

「……私の名はオリバーだ。ある街で獣狩りをしていた。思えば、久しぶりに名乗った気がするな」

「この流れは私も『聞かせて!』はぁ、でしょうね。私はワイス、よろしくお願いしますわ」

 

 だが、彼らは出会った。赤ずきんと氷のお姫様は、緑衣と黒ずくめの狩人たちに。

 

 それが何を齎すか、どこへ向かう旅の始まりか。それも分からぬまま運命は動き出す。

 

 捲られたページは1ページ、不思議な御伽噺が始まろうとしていた。




思いつきと書き殴りの文章なので後でテコ入れするかも。
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