中央トレセン学園、全国各地から才能を認められたウマ娘たちが集まる場所。URA運営の下に行われるトゥインクルシリーズは国民的人気を誇っている。そしてそのレースに出走する大部分のウマ娘はこの学園の生徒たちだ。もちろん学園の名が示す通りいわゆる義務教育程度の勉強はしている。ただ普通の学校と違い、放課後になるとウマ娘たちは制服からジャージに着替えそれぞれレースで結果を残すためトレーニングに励む。そうしたウマ娘たちはトゥインクルシリーズのレースで覇を競い、華やかな勝負服に身を包んだウマ娘たちのぶつかり合いは人々に感動と興奮をもたらす。・・・もちろん、そうした華やかな舞台に立てるウマ娘はほんの一握りであるが。
今は秋のシーズン真っ只中で大きなレースも控えている時期であり、グラウンドに目をやると気合いの入った様子で駆けるウマ娘たちが見える。一緒にレース走った子の姿も見え、しっかり次走に向け追い込んだ調整を行っているようだ。
・・・頑張ってるなぁ。やっぱりこの時期だしね。
秋のレースからはクラシック級を走り抜けた子たちが上の世代、シニア級に殴り込みをかけてくる時期でもある。当然シニア級の壁はそう易々と超えられるものではない。しかし多くのウマ娘の憧れの舞台であるクラシックのレースを戦い抜き、結果を出してきたウマ娘は年下と侮っていては勝てる相手でないのも事実だ。ましてや限られた者のみ出走を許されたG1レースにおいては世代の差など関係ないくらいの強者が集っているのだから。
今年の秋はどんなレースが待っているのだろう。どんな名勝負が繰り広げられるのだろう。
窓から見えるトラックを横目に、そんなことを考えながら歩いているといつの間にか目的地に到着していた。グラウンド近くに並ぶ部室棟、その隣にある建物の一室。トレーナー室だ。扉で仕切られた向こう側には私の所属するチームのチーフトレーナーさんがいる。私のトレーナーさんだ。チームの皆はほとんど遠征に行っているので、中にいるのはトレーナーさん一人のはずだ。私のお願いを聞いてくれていれば・・・。
その扉の前に立ち深呼吸する。いろいろな思いがめぐり、整理したはずの頭の中も混乱し始める。制服のボタンは外れてないかな、襟も正して、リボンの位置は変じゃないかな。普段は気にしたこともないようなことが気になってくる。落ち着け・・・落ち着け・・・。よし。
少し震える手で扉をノックする。もう覚悟は決めたのだ。
「・・・トレーナーさん、いますか?」