とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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第9話  モブウマ娘、模擬レースを走る

 

 

 「頑張ってね!!」

 

 「ありがとうベルちゃん。行ってくるね。」

 

 今日はついに迎えた選抜レースの日だ。これまでの成果が試されるレース、出走者呼び出しのアナウンスが流れ位置へ向かう。ベルちゃんは忙しい中、見に来てくれた。ブリランテさんたちは来られないものの、それぞれ応援のメッセージを送ってくれた。そんなみんなをがっかりさせないためにも今日は負けられない。

 

 グラウンドに降りて周りを眺めると、見に来ている人たちを一望できる。この時期は有力なウマ娘はあまり残っていないのでスカウトも上半期の頃より少ない。とはいえ贅沢は言っていられない、なんとかそのスカウトたちの印象に残る走りをしなければ・・・!

 

 ー第7レースに出走される・・・さんですね。どうぞ。

 

 出走者確認の列に並ぶ。やはりみんな集中している様子だ。

 

 ーどうぞ。

 

 いよいよゲートへ向かう。今日は芝ではなくダートでのレースだ。右回り1600m。天候は晴、おそらく良バ場だ。出走者は6人。私は3番ゲートだ。ゲートへ収まって後の3人も収まるのを待つ。さあ、こい・・・!

 

 ガタン!

 

 「!!」

 

 ゲートが開く、ちょっと出遅れた!!6人のうち最後方で追走する。先頭を走る子は快調に飛ばしている。コーナーに差し掛かる頃には隊列が縦長になっていた。落ち着け、焦るな。レースはまだここからだ。

 

 前半800を過ぎ、前の子たちが先頭との差を詰めにかかる。私も離され過ぎない程度に追走する。まだだ、チャンスを待て・・・。

 

 最終コーナーで前が疲れて垂れはじめ、バ群が凝縮される。コーナーを回るとき、外に遠心力で膨らんだバ群に僅かに隙間ができる。ここだ!!

 

 直線を向くと、できた隙間から一気に前に襲い掛かる。一人、二人と抜いていく。

 

 「うおおおおおおおお!!!」

 

 残り100m、先に抜け出ていた子に追いすがる。脚は私のが溜まっているはず、差し切れ!

 

 「だああああああああ!!!」

 

 もう少し、届け!届け!!届け!!!届いた!!!!瞬間、ゴールラインを駆け抜ける。

 

 おお〜 

 

 まばらな拍手が聞こえる。ゆっくり減速して息を整える。届いたのか・・・?

 

 掲示板にはまだ結果が出ない。軽いクールダウンを終え、結果が出るまで待つ。1秒1秒が長く感じる。判定はまだか・・・?届いたのか・・・?

 しばし待った後、掲示板に結果が表示される。

 

 

 

 

 

 

 

 

  ➊ 5

     >ハナ

  ➋ 3

     >2 1/2

  ➌ 1

 

 

 

 

 ・・・・・・届かなかった。勝ったウマ娘が喜びのガッツポーズをする。私はそれを横目に、コースを後にする。あと少しだったのに・・・。

 

 「お疲れ〜!惜しかったよぉぉ〜・・・!ぐすっ・・・」

 

 「ありがとう・・・。ベルちゃん。」

 

 レース場から戻った私を、涙を浮かべたベルちゃんが迎えてくる。ああもう、負けた私より泣いてるじゃん。

 

 「でも凄かったよぉ〜。あとちょっと距離が長ければ勝ってたよぉ〜・・・!」

 

 「あはは、でも負けは負けだよ・・・。」

 

 そう、負けなのだ。ハナ差であろうとクビ差であろうと。どれだけ最後まで自分の方が伸びていてもゴールまでに抜き去らなければ負けなのだ。状態はよかった。いい練習も積んできた自信はある。少し出遅れたものの落ち着いてレースは出来た。今できる会心の走りができたと言える。それだけに・・・それだけに悔しい。泣きじゃくるベルちゃんを支え、天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「失礼、少しいいかい?」

 

 「・・・!」

 

 「先日は失礼したね。いや、本当にすまなかったよ。」

 

 ゴルシちゃんのチームのチーフトレーナーさんだ。出走するから見にきてくれとは言ったが、ほんとに見にきてくれていたのか・・・。

 

 「いえ、見にきていただいてありがとうございます。」

 

 トレーナーさんの方に向き直って軽く一礼する。

 

 「いい走りだったよ。前が飛ばしてペースが早まる中で、落ち着いて脚を溜めていた。デビュー前にそれが出来るのは素晴らしい。最後は惜しくも届かなかったけど・・・。」

 

 「・・・ありがとうございます。」

 

 「それで、どう?改めてじゃないけど、君をスカウトさせてもらいたい。うちで走ってみない?」

 

 「!!いいん、ですか・・・!?」

 

 「ああ。素晴らしい走りだったよ。この前の件関係無しに、そう感じたよ。」

 

 「・・・!」

 

 「元々、あのまま君が加入を希望しても走りを見てから判断するつもりだったんだ。正直、走りに魅力を感じれないと責任もってサポート出来ないからね。いくらシップの推薦だとしても。しかし走りで判断して欲しいという心意気、それに加えて今日の走り。まだまだ課題はあるものの、君はスカウトするのに十分な魅力があるよ。ぜひ、うちで走って欲しい。

 

 「っ!!!」

 

 ベルちゃんと顔を見合わせる。

 

 「やった!やったよベルちゃん・・・!ありがとうございます!!!」

 

 「やったね!!ほんとに、ほんとに・・・うぅ!」

 

 二人で喜び合う。私も涙が出てきてしまったので、二人揃って涙でぐちゃぐちゃだ。これまでの頑張りが報われたような気がする。やっと応援してくれたみんなや家族にもいい報告ができる。

 

 「これからよろしくお願いします、トレーナーさん!!」

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

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