「あの・・・!」
「!?」
部室を出てすぐ、誰かに呼び止められる。あれ、確かこの子って・・・・。
「突然すみません・・・!私、ジャスタウェイといいます。」
チームの同期の一人で、噂の超有望株のウマ娘がそこに居た。鹿毛のセミロングに、下に伸ばした菱形のような流星が印象的だ。
「すっとレースの調整で忙しくて、なかなか挨拶出来なくて・・・。」
「え?ああいや、そんなこと気にしなくても・・・。」
「・・・ありがとうございます。同期として仲良くしてもらえると嬉しいです。私のことはジャスタとでも呼んでくださいね。」
「ああうん、・・・よろしくね!ジャスタちゃん!」
何だか几帳面な子だな・・・。走りだけでなく勉強もできそうな雰囲気をありありと感じる。
「ところで、あなたはシップ・・・ゴールドシップさんと仲が良いと聞きました。」
「え?まあ、そうなのかも・・・?」
「彼女と遊ぶときはぜひ私も誘ってくださいね。」
「え?ああうん。それはもちろん。けど、ジャスタちゃんもゴルシちゃんと仲良しじゃないの?」
二人は夏前からチームに所属している。付き合いは長いはずだが・・・。
「それが、いかんせん彼女は掴みどころがないのでなかなか・・・。お互い遠征もあったりして、今のところは軽く話すくらいしかできてないのです。」
「ああ・・・なるほどね。」
確かにトレーニングサボったりするし、居ても奇行に走ってたりで・・・。普段同じチームでも絡める機会ないかもなぁ。それにジャスタちゃんは真面目な子で、ゴルシちゃんのノリとは合わなそうだし・・・。
「でもあなたには興味を示しているようなので、あなたがいればもう少し仲良くなれるかと。」
「あはは・・・。私も振り回されてばっかりだけどね。でもやっぱり私たち同期だし、仲良くしていきたいよね!」
やっぱりこの子、真面目だなぁ。ゴルシちゃんはあんなだから、同期にまともな子がいると頼もしい。
「ええ。それに彼女は素晴らしい芦毛の持ち主ですから。」
「・・・え?芦毛?」
「はい。ジュニア期であそこまで白くなる芦毛のウマ娘は珍しいです。まあ、芦毛は白くなりきらなくても素晴らしいものですが。」
・・・・・・あれ?
「長々と引き止めてしまってごめんなさい。今度一緒に食事でも行きましょうね。」
「ああ、うん。ぜひ・・・!」
「ではもうすぐカレンチャンの配信の時間ですので、私はこれで・・・。」
「うん。また明日・・・。」
足早に去っていく彼女を見送る。やっぱり変な子かも知れない・・・。というかカレンチャンって今年のスプリンターズステークスを制した、あのカレンチャンだよな・・・。確か彼女も芦毛だ。
・・・・・芦毛フェチか。彼女がノリについて行けるかどうか心配したが、そこは重要じゃないのかも知れない。
「性癖は全てを凌駕する」
確か偉大なオールラウンダーが残したものだったか。ふとそんな格言を思い出した。
・・・・・・・・・・・・・・・
「おかえりー!」
「ベルちゃん!もう帰ってきたんだ!」
自室に戻ると、遠征から帰ってきていたベルちゃんが出迎えてくれた。彼女は昨日の日曜日にデビュー戦を走ったばかりだ。京都でのレースだったため、先週から向こうに滞在し寮を留守にしていた。結果は5着と苦いデビューになってしまったため、落ち込んだりしていないか少し心配だったがどうやら大丈夫そうだ。
「お土産沢山買ってきたよ〜。」
「まじ?!八つ橋?八つ橋ですか?!」
「おう。邪魔してるぜ。」
「あれ?!エースさん!?どうしてここに?!」
「ちょっとエース!お土産食べないでよ〜!」
何故か部屋の中ではエースさんが椅子に座り、お土産の八つ橋を食べていた。
「いいだろ、こんなに沢山あるんだし。反省会に付き合ってやった手間賃みたいなもんだ。」
「反省会?」
「そう!ちょうどエースがトレーニング終わった所だったから、デビュー戦の分析付き合ってもらってたんだー。」
「レース映像見たか?なかなか酷い内容だぜ。」
「ちょっとー!まあ酷いのは分かってるけど・・・!」
「うん、見たよ。でもそんなに言うほど酷い内容じゃなかったと思うけど・・・。」
「ははっ、デビュー戦とはいえこんなにゲートイン前からぎこちないやつもそう居ないぜ。」
エースさんはテーブルにタブレットを置き、それにレース映像を流しながら話す。
「うぅ〜・・・。でも本当に緊張やばかったんだって!」
レースの内容はと言うと、まずスタートで出遅れ、そのまま後方2番手で追走。最終コーナー手前から追い上げを開始。しかし、大外を回らされてしまい前には届かずの5着というものだった。
「まあ、良い点を挙げるなら焦って引っかかったりしなかったことだな。」
レースの距離は2000m。この時期のデビュー戦としてはかなり長い距離だ。焦ってかかってしまうとスタミナを切らしてしまう可能性が高い。
「脚は溜まってたんだけど、外を回されすぎちゃった・・・・。」
「そりゃあ後ろからコーナーでまくったんじゃ外を回されるさ。でもベルの瞬発力じゃあ直線勝負は不安があるからな。早めに仕掛けるのも間違いじゃねえ。結局、出遅れが痛かったなァ。」
なるほど、確かに。ベルちゃんは一瞬の瞬発力というより、長く良い脚を使うタイプだ。本来なら中団から前めにつけて押し切るレースをしたかったのだろう。
「でもやっぱりトゥインクルシリーズ本番は凄かったよ・・・。うまく言えないんだけど、スタートから違ったよ。私が緊張しすぎてたのもあるかもだけど、模擬レースや選抜レースとは全然・・・。」
「ほお・・・。」
ウマ娘が適度な緊張状態でレースに臨むと本能が呼び起こされ、普段とは一段も二段も異なる能力を発揮する場合があると聞いたことがある。極端な例では、トレーニングの時とは別人のようになることもあるそうだ。ベルちゃんのデビュー戦もそうしたことが起こっていて、彼女はその違いを感じたのかもしれない。どんな違いがあるのだろうか。まだデビューしていない身では想像することさえできない。
「・・・デビューといえば、エースさんも予定はもう決まってるの?」
「ん?ああ、アタシは来月だな。トレーナーが万全の状態でデビューするにはそこまで待つのがベストだろうってよ。」
「そうなんだ・・・。」
私のデビュー戦はいつになるのだろうか、デビュー戦自体は来年の2月まで行われているが、ギリギリになるレースの条件の幅が狭まってくる。さらに遅れてしまうと未勝利戦に混ざってのデビューとなり、自分より経験値のある相手と競わなければならなくなる。
「ドンナは今週土曜にデビューするらしいね。ブリランテに至ってはもう重賞に出走する予定だし、二期生もトゥインクルシリーズに本格参戦だね。」
「ああ、二期生初の重賞勝利なるか?だな。二人とも同じ日だろ?」
「そうなんだよねー。でも場所が京都と東京だから両方は応援に行けないや。」
ん・・・?今週の土曜日?
「あれ?土曜日の重賞って・・・」
「あ?東スポ杯だろ。ジュニア重賞の。」
「ああ!やっぱり!」
東スポ杯!ブリランテさんの次走も東スポ杯だったのか・・・!
「どうしたんだよ、んな驚いて。」
「いや、うちのチームの子も出るからちょっとびっくりして・・・。」
「ほーお、じゃあお前は東スポ杯見に行くわけだな。・・・よし、アタシもそっち見に行くか。どうせ見るならレベル高い方がいい。貴婦人様はほっといても勝つだろうしな。」
「私もそうしようかな!」
ジャスタちゃんとブリランテさんが同じレースに・・・!二人ともものすごく強いウマ娘だ。しかしレースの勝者になれるのは一人だけ・・・。一体どんなレースになるのだろう。
マックとゴルシの水着とか、ジャスタくんマッハで天井してそう。