誤字指摘ありがとうございました。
デビュー戦の翌日、学園に戻った私はトレーナー室へ向かっていた。レースの反省と今後について話すため、トレーナーさんから来るように言われていたのだ。休養に入ってトレーニングはないので、制服のままトレーナー室へ向かう。トレーナー室へ行くのは初めてなので少し迷ってしまい、早めに出たが時間ちょうどになってしまった。
「失礼しま〜す・・・。」
ノックをして恐る恐る中へ入る。
「ああよく来たね。座って。」
トレーナーさんは私たちをソファへ座らせると、向かいに座る。それなりに広い室内には大量の本や資料があちこちに積んであった。
「まず謝らなければならない。今回の敗戦は俺の責任だ。すまない。」
トレーナーさんが頭を下げる。
「え?いやそんな・・・。私の実力がなかっただけで・・・。」
突然の謝罪に戸惑う。
「いや、実力云々より適性が合ってなかった。苦しいレースをさせてしまった。」
「・・・??」
「これまでのトレーニングでは瞬発力勝負は苦手であろうことは予想できた。しかし瞬発力勝負になりやすい小倉に出走させたんだ。結果、適性のなさが如実に現れて負けてしまった。俺の責任だ。」
「え?合わないの分かってたのに選んだってことですか・・・?」
いまいちよく分からず、説明を求める。
「ああ。合わないのは予想されていたが、あえて選んだ。ただ天候的に良バ場にはならないと思っていたし、調整も順調に来ていたからチャンスはあると思っていた。」
「はあ・・・。」
「あえて合わなそうなレースを使ったのは、適性を確実に見極めるためだ。実際のレースを走ってみたら違った適性が出てくることもままある。だからあえて今まで見せていない適性が求められるレースを走らせてみたかったんだ。」
「なるほど・・・。」
「通常は何戦も走る中で徐々に分かってくるものだが、今回ので大分はっきりした。今回負けはしたが、こうして近道できたのは大きい。だが、この方法は誰にでもできる訳じゃない。」
「え?」
「負けるリスクが高くなるからな。最悪自信喪失してしまう恐れもある。君なら乗り越えられると思ったから、この方法を試したんだ。」
「・・・!」
「どうだ?次走について考えられるか・・・?」
「・・・はい。今日はそれを伺いに来たんです。決まっているなら聞かせてください・・・!」
「ふふ。もう考えてある。次はダートを走ってみたいと思うんだ。」
「!ダート・・・!」
「ああ。どうやら適性はトレーニングで見せてた通りで間違いなさそうだからな。そこから考えると芝よりダートのが向いているはずだ。まあ年明けてからになると思うが・・・。」
「わかりました!」
「よし!じゃあ今はしっかり休んでまたしっかりトレーニングして行こう。」
「はい!よろしくお願いします!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・とまあそんな感じで、次走はダートに決まり!」
「ん〜なるほど〜。門下生はみんな芝路線だから知り合いはあんまり居ないけど、最近ダート路線も盛り上がってるよね〜。」
「確かに。でもやっぱり重賞7連勝は凄いよ。」
今年ダート路線はかつてない盛り上がりを見せている。その立役者と言えるのが、ウマドルを自称して活動しているスマートファルコンさんだ。去年のJBCクラシックから今年のJBCクラシックまで、1年間地方を回りながら、G1レース4つを含む7連勝の快進撃を続けている。遠征の過程でライブなどイベントも各地で行い、ファンを増やして路線を盛り上げている。
「それよりベルちゃん、何かいい本見つかった?」
「うん!これなんか良さそうだなって!」
今日はお互いオフの日。勝ち上がる実力をつけるため、こうして時間が合う時は再び二人で自主トレを行うことにした。今日は負けたレースの再分析と、浮かんだ課題の解決方法を考える会だ。そのために、あらかじめ学園の図書館で参考になりそうな本を見つけてくることになっていた。
「おー、優駿たちのコーナリング特集かぁ・・・。確かにちょうどいいかも!」
「そう!最終コーナーで塞がれたり、外回されてロスしたりするのが二人ともあったからね・・・。やっぱりデビューする子たちはその辺も上手だから。」
そうだ。トゥインクルシリーズはチームのトレーナーの指導を受けて準備を整えてきたウマ娘たちと走るのだ。走りそのもののレベル以外にも、コース取りや駆け引きにおいても選抜レースとはレベルが全然違う。選抜レースの時のように・・・なんてのは通用しないのだ。
「うわぁ。シンボリルドルフさんにドリームジャーニーさん・・・!メンツやばすぎる・・・!」
「先生も載ってるよ!コーナー巧者揃いだね!」
これは参考になりそうだ・・・!
・・・・・・・・・・・・・
「いやー、難しかったね。理屈は分かったけど実践できるようになるのは大変かも・・・。」
「でも習得できればかなりの武器になるよ!」
「そうだね!・・・あっもう時間だし、使わなそうな本は私返してくるよ!」
「あっごめんね!」
なかなか一朝一夕には行かなかったが、いい勉強になった。気がつくと閉館の時間が迫っていたので、ベルちゃんを先に帰して私は図書館へ向かった。学生証をかざし館内へ入り、返却ボックスへ本を入れていく。館内に目をやると相変わらずの広さに圧倒される。今までに発行されたウマ娘やレースに関する本、そのほぼ全てを所有しているという。中には博物館などに貸し出すほど貴重なものもあるそうだ。
・・・・んん?
ふと奥の方にあるURAの記録と歴史に関するコーナーのあたりに、見覚えのあるウマ娘の姿が見えた。
あれ・・・?ゴルシちゃん・・・?
「図書館で資料集めか?精が出るな。」
「!エアグルーヴさん・・・!」
それに気を取られていると、今し方やってきたであろうエアグルーヴさんに声をかけられる。手には何冊も難しそうな本を抱えている。どうやらエアグルーヴさんも本を返却しに来たようだ。
「デビュー戦は残念だったな。だがその様子を見るに引きずったりはしていないようだな。」
「はい!ずっと落ち込んでても仕方ないですから。次に活かさないと!」
「ふふ。殊勝な心がけだな。敗北を経験しないウマ娘などほとんど居ない、乗り越えて強くなれ。」
「ありがとうございます!・・・あ、返却ですよね。どうぞ!」
自分の分の返却が終わったので、エアグルーヴさんに譲る。再び館内を見渡してみたが、ゴルシちゃんの姿はもうなかった。
「・・・どうした?キョロキョロとして?」
「あ、いえ。さっきゴルシちゃんを見かけたので。何だか図書館に居るなんて意外だったものですから・・・。」
「!・・・・見かけたのはどのあたりだ?」
「URAの記録と歴史のコーナーです。ゴルシちゃん、そんなの興味なさそうだけどなぁ・・・。」
「・・・・そうか。」
「何か悪戯なんかしてないといいんですけど・・・。」
「・・・・・・・。」
「エアグルーヴさん?」
「あ、ああ。あとで確認しておこう。」
「?」
「それより、どんな資料を集めていたんだ?レースに関することか?」
「ええ。実はですね・・・・・・」
その後、借りた本について意見をもらいつつ、寮まで送ってもらった。今度軽く自主トレを見てくれる約束も頂いた。次走は来月、年が明けてからだ。今のうちからできることをやって行こう。