とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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第1話  モブウマ娘と同室

 

 

「はぁー、だめかぁー・・・」

 

 自室へ戻るなりベッドへ倒れ込む。今日は夏休み明け最初の選抜レースが行われたのだ。3つのレースに参加したのだが

結果は3着が1回と4着が2回。

 

 ・・・がんばったのになぁ

 

 全力は尽くした。3着に入ったレースは混戦で1着のウマ娘ともほとんど差のない内容だったし、手応えは感じていた。けれども私のもとにスカウトは来なかった。

 

 トレセン学園に入学したウマ娘は原則として初めの一年間、チームに所属することが出来ない。その期間は通常の授業とレースに関する授業を受けるとともに、教官の指導の下で基礎的なトレーニングを積むこととなる。その期間が終わりジュニア級となると選抜レースやチーム加入試験への参加が解禁され、そこでスカウトされるなり合格するなりするとチームに所属することが可能となる。

 トレーナーのついていないウマ娘は中央、地方問わず公式のレースに出走することが禁じられている。ウマ娘達が全力で走るレースは常に危険と隣り合わせであり、ウマ娘の安全とレース前後のケアなどといったことを鑑みて定められた規定だ。そのためジュニア級となったウマ娘たちはトレーナーのいるチームに所属することを目指し、選抜レースやチーム加入試験に参加するようになる。

 

 選抜レースは定期的に開催され、この上半期でもどんどん有望な同期たちがスカウトされていった。夏休み中にデビューする同期もいる中、私は未だにスカウトされず売れ残っている。まだ下半期が始まったばかりとはいえ、こうした現状にじわりと焦りを感じる自分がいた。

 

 ーこんなはずじゃなかったのに

 

 そんな思いが頭をよぎる。幼い頃テレビで見た英雄の走りに憧れ、地元のウマ娘たちの中でも一番走るのが速かった私が中央のトレセン学園へ入学を志すのは自然なことだった。周囲も応援してくれた。また自分自身も学園での生活に胸を躍らせ、レースで活躍する輝く未来を描いていた。しかし、そんな夢や自信は早々にへし折られ、今では全国から集まった天才達に厳しい現実を突きつけられる日々を送っている。

 

 ー結局、私は主人公にはなれない。ただのモブだったってことかな・・・。

 

 

 バンッ!!

 

 

 「ただいま!どうだった!?」

 

 ベッドに体を埋め自嘲的な思考を展開していると突然、ドアを蹴破るような勢いで背の高い鹿毛のウマ娘が入室してきた。

 

 「ベルちゃん・・・おかえり。」

 

 入学して以来の私の同室相手、ベールドインパクトだ。

 

 「それでそれで、どうだったの?!」

 

 有無を言わさぬ勢いで迫ってくる。普段は大人しい少し天然の入ったふわふわした子なんだけどなぁ・・・。

 

 「どうどう。落ち着いて。・・・残念ながら今回もダメだったよ。がんばったんだけどねー。」

 

 「あっごめんね・・・私ったらつい・・・。」

 

 「ううん、それよりちょっと振り返りしたいからベルちゃんの意見も聞かせて?」

 

 「分かった!」

 

 私は覚えてる範囲でなるべく詳細にレースを振り返った。

 

 「・・・どう?内容としては手応えもあったレースもあるんだけど。」

 

 「うん!スタートと仕掛けどころがうまくいってれば勝てたと思う!修正すればきっとスカウトされるよ!」

 

 冷静に分析しつつ明るく励ましてくれるベルちゃん。

 

 「はは・・・そうならいいんだけどね・・・。」

 

 「されるよ!それにまだ下半期始まったばかりだし焦らなくていいよ。私もまだチーム決めてないしね!」

 

 「いやー、チーム選べるくらいスカウトされているのが羨ましいよ・・・。」

 

 「私なんて全然大したことないんだけどね。先生の教え子だからって余計に注目されちゃって・・・。」

 

 ベルちゃんはかの英雄が引退後に開業したスクールの門下生の一人だ。今年その一期生達がデビューし、桜花賞優勝やクラシック級ながら安田記念を制するなど大活躍し二期生であるベルちゃんたちにも注目が集まっている。彼女自身はこうして謙遜しているが、二期生達もその注目に見合った実力を持った世代のエリートウマ娘ばかりだ。

 

 「まあ今日スカウトされなかったのは仕方ない。実力不足なのは知ってたし、凡人は凡人らしくコツコツやっていきますかー。」

 

 「私もまた自主トレ付き合うよ!一緒に頑張ろう!」

 

 ベルちゃんはそんなエリートの一人なので当然私とはだいぶ実力差があるわけだが、そんなことは一切鼻にかけず接してくれている。今日のように私が落ち込みかけた所を励ましてくれたのも一度や二度じゃない。

 

 「ベルちゃん、ありがとね。」

 

 明日からまた頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 世代別の主な登場ウマ娘を載せておきます



12世代 (2010年4月入学)

 主人公、ゴルシ、ジャスタウェイ、フェノーメノ、グランデッツァ、ホッコータルマエ、カレンブラックヒル


門下生 (2期生)
 
 ジェンティルドンナ、ヴィルシーナ、ベールドインパクト、ディープブリランテ、ワールドエース、アダムスピーク、スピルバーグ、 トーセンホマレボシ

 

11世代

 オルフェーヴル

 ウィンバリアシオン・・・ダービー、 菊花賞2着

 ロードカナロア
 
 
門下生 (1期生)
  
 リアルインパクト・クラシック級で安田記念

 マルセリーナ・・・桜花賞

 トーセンラー・・・京都巧者


10世代

 エイシンフラッシュ

 カレンチャン

 ルーラーシップ・・・エアグルーヴの弟子、 香港 G1 クイーンエリザベス2世カップ

 アパパネ・・・トリプルティアラ


09 世代

 ブエナビスタ・・・ティアラ2冠、 G16勝、 生徒会長。 11年冬引退

 ナカヤマフェスタ・・・11年秋引退

 トーセンジョーダン


08 世代 (2012年3月卒)

 スマートファルコン・・・12年3月引退


07 世代 (2011年3月卒)

 ウオッカ・・・2010年3月引退、 元生徒会副会長

 ダイワスカーレット・・・2009年3月引退、 元生徒会長



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