とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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 誤字指摘ありがとうございました。


第20話  モブウマ娘、きさらぎ賞を見る

 

 

 

 ー大外から楽々と・・・!ワールドエース!ワールドエースが一気に先頭に変わった!これは強い!!ワールドエース、ゴールイン!!ヒストリカル2着!その後離れてベールドインパクト3着、ジャスタウェイ4着!・・・

 

 ワアアアアアアア!!

 

 「強い・・・・!」

 

 この日の京都競馬場はこのレース目当てにやってきたお客さんで賑わっていた。G3きさらぎ賞。今年のクラシックの主役となるウマ娘は誰か、次なるスターの出現を期待してのことだった。ベルちゃんは2番人気、積極的なレースをして完勝した前走のようなレースを期待する人も多かった。ジャスタちゃんは3番人気で、良バ場の今日なら力を発揮しやすいだろうとトレーナーさんも期待を掛けていた。

 

 そんな中進んだレースでは最終コーナーでベルちゃんが仕掛け、先頭に立ち直線に向かって行った。しかし、このレース1番人気のエースさんが一気に中団後方からゴボウ抜き・・・!ヒストリカルさんも追い込んできたが、最後は流す余裕も見せながら完勝・・・!ジャスタちゃんも伸びていたが、わずかにベルちゃんに届かず4着。終わってみれば順当に人気上位4人での決着となった。この4人はみんな重賞クラスの実力があると言われていたが、そんな中でもエースさんの強さが際立っていた。

 

 <すげー・・・!

 

 <これはクラシックあるな・・・!

 

 <ディープブリランテかグランデッツァかと思っていたが、ここまで強いなら主役になれるかもな!

 

 スタンドのお客さんからもエースさんの強さに驚く声が上がっている。新たなクラシックの有力候補の誕生、そう思わせるには十分な勝ちっぷりだった。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 「すみません、全力は尽くしたんですが・・・。」

 

 「仕方ない、今回も相手が強かった。それに前めの位置につけたのは収穫だ。後はそれで脚を溜められるようになれば十分勝てる。」

 

 控室でトレーナーさんが悔しがるジャスタちゃんをケアしている。この前のゴルシちゃんやアスカ先輩といい、ずっと重賞で惜しい結果が続いてる。

 

 「そうだぜ!気にすんな!重賞だかなんだか知らねーが、そんなのこのゴールドシップ様がそのうち獲ってきてやっからよ!!」

 

 「・・・ジャスタはまだ本格化してないんだ、それでこれだけ走れれば十分だ。」

 

 「ありがとうございます。シップ、来週頑張ってくださいね。」

 

 「ゴルシちゃん、頑張ってね!」

 

 「お?」

 

 「この前話しただろ、12日の共同通信杯だよ。」

 

 「そーだっけか?予定空いてたっけかなー?ちょっとゴルゴル内閣の官房長官に調整頼まなきゃいけねーかもな・・・。」

 

 「おいおいちゃんと伝えただろ・・・頼むぞ・・・。」

 

 「ははは・・・。」

 

 「まあなんとかなるだろ!ちょっと遅刻とかしたらわりーな!」

 

 「えぇ・・・。」 

 

 初重賞制覇に向けてみんな頑張っている中、期待されている当人がいまいち緊張感に欠けている・・・。確か共同通信杯はブリランテさんも出走するはずだ。この世代ナンバーワンに近い評価をされている彼女だが、ゴルシちゃんもポテンシャル自体は彼女にも劣っていないように思う。力を出し切れれば勝負になるはずだ。今度こそチーム初重賞制覇を期待したいが・・・こんな締まらない感じで大丈夫なのだろうか。

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 「うおおおおお!ファイヤーーーッ!!!」

 

 「うおっ?!」

 

 「ちょっ?!」

 

 大丈夫では無かった。坂路コースのスタート地点へ向かう私たちの横をすごい勢いで一輪車に跨ったゴルシちゃんが通り過ぎてゆく。共同通信杯へ一週間を切ったこの日、ゴルシちゃんは珍しくやる気の漲る様子でトレーニングに来た。しかしトレーナーさんの指示したメニューを気分じゃないと切り捨て、なぜか持ってきている一輪車に跨がり坂路を暴走している。

 

 「いやー、相変わらずやばいな。一輪車で坂路をあのスピードで登っていくとは・・・。」

 

 「はは・・・。」

 

 私は次走の1勝クラスへ向け、同じダート路線のシルクシュナイダー先輩と坂路をこなす。シュナイダー先輩も今週末レースを控えていて強めのトレーニングをしている。トレーナーさんの指示で先輩と一緒にトレーニングしているが流石はオープンウマ娘、食らいつくのに必死で坂路2本終わる頃にはヘトヘトになってしまった。

 

 「はい、お疲れさん。」

 

 「はぁはぁ・・・ありがとうございます。」

 

 2本走ってヘトヘトになった私に今村サブトレーナーさんがドリンクを持ってきてくれた。

 

 「よーう!おっちゃん!見てくれよこのゴルシちゃん号2号機!」

 

 「そんなのどっから持ってきたんや。坂路乗り回すのも良いけど、疲れたまらんようしとけよ。」

 

 「今日のゴルシちゃんは疲れ知らずだぜ!それにアタシは今を生きてんだ・・・明日のことなんざ知らねェ!宵越しのマニーは持たねェ、それがゴルシソリューションだ・・・。」

 

 ゴルシちゃんは今村さんからドリンクを受け取ると、そのまま走り去ってしまった。

 

 「やっぱり彼女今村さんには懐いてますよねー。チーフと北山さんのいうことは全然聞かないのに。」

 

 「ははは・・・。」

 

 確かに先輩のいう通り、私もそう感じていた。

 

 「でもよくわからないノリで絡まれても全然動じないのは流石ベテランって感じです。」

 

 「はは。俺もこの仕事長いけどシップみたいなんは初めてやわ。」

 

 「確かに彼女は色々規格外ですからね。」

 

 「ああ。なかなか難しいやっちゃね。でも賢い子やから、あのよくわからん言動も何か意味があるんやと思う。・・・まあ、俺の仕事は怪我しないように見守ることだけやね。」

 

  ・・・・意味、ゴルシちゃんの奇行に果たしてそんなものがあるのだろうか。いつもその場の思いつきで行動しているような気がするが・・・。でもそんな彼女を押さえつけずに見守る、そう言った姿勢で接してくれているのがゴルシちゃんからするとやりやすいのかも知れない。

 

 結局ゴルシちゃんは坂路コースの使用時間いっぱいまで散々一輪車で走り回り、入れ替わりで来たチームの子たちにドン引きされながらこの日のトレーニングを終えた。次の日以降も今日のやる気はどこ行ったのかトレーニングに来なかったり、もしくは来ても指示を無視して好き放題やるなど一段とハジけた日々が続く。

 結局、初重賞制覇へ向けてトレーナーさんが組み立てた調整メニューは全く実施されることないままレース当日を迎えるのだった。

 

 

 

 

 

 

  

 

 

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