とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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第21話  モブウマ娘とチーム初重賞制覇

 

 

 2月中頃の東京レース場、天候にも恵まれ良バ場の発表となった。芝1800mで行われるG3共同通信杯。トキノミノル記念の副称が付けられたこのレースは、三冠ウマ娘のミスターシービーさん・ナリタブライアンさんの他、アイネスフウジンさんやエルコンドルパサーさんなど歴史にその名を刻んだ名ウマ娘たちが走ってきた。今回もゴルシちゃんやブリランテさんをはじめ実力者が揃っている。今後のクラシックを戦っていく上でも、重要なレースだ。

 

 ワアアアアアアア!

 

 返しウマが始まり歓声が上がる。期待の実力者達を見てみようとしてか、お客さんの入りも良い。

 

 「頼むぞ・・・・。」

 

 トレーナーさんも緊張した面持ちでターフを見つめている。ここ一週間はゴルシちゃんのフリーダムっぷりに振り回され続けて、少し痩せてしまったようだ。記者に向けたコメントではポジティブなことを話していたが、ゴルシちゃんが言うことを聞かないので良い調整ができたとは言えないだろう。期待と不安が入り混じった表情をしている。

 ファンファーレが鳴り、続々とゲートインしていく。前評判は断然ブリランテさんで、どう勝つのか・・・きさらぎ賞のワールドエースさんのように圧倒的な強さを見せてくれるかが話題だ。オッズも断然1番人気の1.4倍。一方、荒削りながら重賞で好走を続けているゴルシちゃんは4.1倍の2番人気だ。

 

 

 ガシャン!!

 

 ースタートしました!好スタートを切ったのはタガノグーフォ、しかし内からディープブリランテ交わして出て行きました。

 

 「!!」

 

 ブリランテさんがハナを取ってバ群を引っ張る。しかし今回は珍しく好スタートを切ったゴルシちゃんが前目につけていた。ゴルシちゃん、先行できたのか・・・。

 

 ー逃げます、ディープブリランテ。リードを2バ身取ってこれから3コーナーカーブ。そして今日は3番手のインコースにつけています、ゴールドシップ。

 

 少し掛かり気味にブリランテさんが飛ばし、それをマークするようにタガノグーフォさんとゴルシちゃんが追走している。なかなか速いペースだ。ブリランテさんは東スポ杯の重バ場でも突き抜けた。このペースでも最後伸びてくるかも知れない。一方で今まで後ろから良い脚を使っていたウマ娘が、先行策をとった途端に脚が溜められずこれまでの末脚がなくなってしまうことも多い。ゴルシちゃんはここまで理想的な位置どりで来ているが、果たして・・・。

 

 ー600を切って第4コーナーカーブ。各ウマ娘を引き連れて、ディープブリランテ、ディープブリランテ先頭で直線に向かいました。

 

 最終コーナーで番手に控えていたウマ娘たちがブリランテさんを捉えにかかり、差がなくなっていく。

 

 ー残り400を切ります!外から迫るのはコスモオオオゾラ、コスモオオゾラ迫っていく!この二人の間を狙ってゴールドシップが3番手から前を追って、外からはストローハット追い込んできた!さらにはスピルバーグ・・・さあディープブリランテスパートを開始している!

 

 ゴールが迫りブリランテさんがさらに脚を使って捉えに来た先行勢を再び引き離す・・・!先行してマークしていたウマ娘たちは脚色が悪くなってきた。無理もない、緩みないペースで進むブリランテさんにずっと張り付いて来たのだ。スタミナの限界が来ても不思議じゃない。後は後方で脚を溜めていたウマ娘たちが伸びて来ているが、届くかどうか・・・。

 

 ー残り200!ディープブリランテスパートしている!ディープブリランテ・・・

 

 「!!」

 

 ブリランテさんが引き離していたが残り100m、いっぱいになっていたかと思われた先行勢の中から芦毛のウマ娘が飛び出した。

 

 ー・・・これをゴールドシップがとらえました! ゴールドシップ先頭ゴールイン!2番手が接戦になる!

 

 ワアアアアアアアアア!

 

 <うおお!まじかよ・・・!

 

 <いっぱいになったかと思ってたのにまた伸びんのかよ・・・。

 

 <ブリランテが横綱相撲で引き離したと思ったんだがな・・・。

 

 スタンドのお客さんがどよめいている。 当然だ。 レースの展開はブリランテさんがかかり気味に飛ばしたことで緩みないものになり、 完全に前崩れのものになった。 しかしそんな展開で前目につけていながら最後グンと突き抜けたのだ。 一見すると定石通りの先行抜け出しだが、この展開でそれができるとは・・・。

 ブリランテさんは流石にいっぱいになり、ゴルシちゃんから2バ身近く離れた2着争いの集団でゴール。課題の残りそうなレース運びだったがなんとか 2着に残したのは流石だ。

 

 「おめでとう!ゴルシちゃん!」

 

 「シップ!よくやった!!」

 

 ターフから戻るゴルシちゃんを出迎える。 チーム初重賞制覇だ。 トレーナーさんたち含め、みんな喜んでいる。

 

 「へへーん!ざっとこんなもんよー!」

 

 ワイワイとチームのみんなで祝福の言葉をかけていると、こちらへ近づいてくるウマ娘の姿があった。

 

 「ゴールドシップ、今日は負けたよ。君、先行できたんだな。」

 

 ブリランテさんだ。 勝ったゴルシちゃんの走りを称えに来てくれたようだ。

 

 「おう!!おめーも熱い走りだったぜ。出世しきってからのこの季節、流石に脂乗ってたぜ・・・。並みの奴じゃあ返り討ちになるとこだな。だがアタシは並みの漁師じゃなかった、そういうことだな・・・。」

 

 「??」

 

 「ブリランテさん、一応ゴルシちゃんなりに走りを称えてるんだと思う・・・。」

 

 謎の言い回しに困惑している様子を見て、すかさず通訳に入る。

 

 「ああ、それはありがとう。でも自分としては反省点のあるレースだった。君もクラシックは出るんだろ? この借りはしっかり返すよ。」

 

 「・・・・・。」

 

 爽やかながらも闘志を漲らせブリランテさんは去っていった。 ゴルシちゃんを新たなライバルに認定したんだろうな・・・次はもっと意識してくるだろう。

 

 「あれだけ最後いっぱいになったレースしたのに完全にもう息が戻ってます。 流石ですね。」

 

 「ああ、ジャスタの言う通りやはりクラシックの主役候補なだけはある。 だが、 シップは今日そいつに勝ったんだ。 クラシックでもやれるかもしれない。」

 

 初重賞制覇で舞い上がっているのかも知れないが、 トレーナーさんの言う通り今日のゴルシちゃんはクラシックでの好走を期待させる走りだった。 ワールドエースさん、 グランデッツァさん、ブリランテさんが最有力と言われていたが、そこにゴルシちゃんが割り込む形になるのかも知れない。

 

 「クラシックか・・・。 アタシはバッハよりベートーヴェン、ベートーヴェンよりワーグナーのが好みだな・・・。」

 

 「は?いやいや、そのクラシックじゃなくてクラシック三冠の話でしょ...。」

 

 「なんだとオメー!古きを温めて新しきを知る、 古い形式を踏襲しつつも新しさも打ち出した新古典主義の良さが分からねーってのかァーッ?!!」 

 

 「ひぃ〜っ!誰もそんなこと言ってない〜っ!」

 

 走る方ではお手本のような内容を見せたのに、会話の方は相変わらずだ・・・。あのペースでの先行策は勝ちにいく意識がなければ出来ないはずだ。きっとゴルシちゃんなりに考えてその作戦を取ったのだろう。・・・・・そんなまともな思考ができるなら少しは会話の方にも反映させて欲しいのだが。

 

 

 

 

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