とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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第24話  モブウマ娘、皐月賞を考える

 

 

 ー先頭はジェンティルドンナだ!!ジェンティルドンナ、ジェンティルドンナーーー!!!

 

 

 桜花賞ではドンナさんは2番人気。1番人気は同じ門下生で阪神ジュベナイルフィリーズを制したジュニア女王、ジョワドヴィーヴルさんだ。4番人気のヴィルシーナさんも門下生で、大舞台での同門対決の様相を呈していた。

 レースでは最後は先に抜け出したヴィルシーナさんと、 中団後方から追いこんできたドンナさんとの叩き合いになった。 結果はドンナさんが半バ身ほど競り勝ち、 見事桜花賞ウマ娘となった。これで去年のマルセリーナさんに続き英雄門下生での桜花賞連覇だ。そういったことも含めてか、新たな桜の女王の誕生に会場は大いに湧いていた。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 桜花賞が終われば次にやってくるのは皐月賞だ。 最も速いウマ娘が勝つと言われているクラシック3冠路線の最初の大一番。 去年は中山レース場が改修のため東京レース場で行われたが、 今年は例年通り中山レース場 2000mで行われる。

 私は放課後、部室で皐月賞特集と題された週刊誌をめくっている。 今はみんなトレーニングに向かって居ないので静かだ。 今村さんのチェックを受けに来たのだが、 どうやらまだしばらく待つ必要がありそうだ。

 

 「今年の皐月賞は混戦模様! 有力なウマ娘たちをピックアップ!!ねぇ・・・。」

 

 ガラッ

 

 「おや、来てたのですね。」

 

 「ジャスタちゃん・・・!」

 

 ソファに寝そべり週刊誌を読んでいると、ジャスタちゃんが現れた。 彼女も体調を崩して休養してたはずだが・・・。

 

 「もう大丈夫なの?」

 

 「ええ、もともとそこまで重い症状ではなかったですから。 予定していたニュージーランドトロフィーは回避せざるを得ませんが・・・。」

 

 「そうなんだ・・・でも回復したならよかったよ!」

 

 「ありがとうございます。 今日はトレーニング再開して大丈夫か今村さんに診てもらおうと思って来たのです。」

 

 「なるほど・・・!私も今村さん待ちなんだよね。 休養中の定期チェック!」

 

 ジャスタちゃんは数日前に感染症にかかり、リンパが腫れてしまって休んでいた。 しかし、もう回復したようで元気そうだ。 この分なら目標にしていたNHKマイルカップには問題なく間に合うだろう。私たちはお互いの休養中どう過ごしているかなど、とりとめのない雑談を交わしていたが、やがて話題は皐月賞へと移っていった。

 

 「有力ウマ娘多数で混戦模様、ですか・・・。確かに私たちの世代は素質のあるウマ娘が多いと言われていますからね。個人的にはシップとトリップさんを推したいところですが・・・。 正直、 誰が勝つか予想がつきません。」

 

 「ちょっと一緒に読んでみる?」

 

 今村さんを待つ間、二人で週刊誌を広げてみることにした。 有力なウマ娘が取り上げられて、あれこれと書いてある。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 ワールドエース・・・能力はこの世代トップレベル。 スタートに課題があるが、 多少出遅れても差し切る力を持っている。 トレーナーもそこを重点的に練習して臨むとのこと。 不安要素としては直線が短いので、位置取り次第で届かない可能性があること。

 

 ディープブリランテ・・・完成度は抜群。 しかし折り合いに不安が残る。 改善傾向にあるが大一番で落ち着いてレースを運べるか。 課題はあれど成績は安定しているため、 上位には来るだろう。

 

 グランデッツァ・・・こちらも完成度は抜群。安定した成績ながら詰めが甘いところがあったが、前走のスプリングステークスではディープブリランテ相手に勝ち切るなど改善傾向。能力は世代トップレベルなので、いとこのダイワスカーレットのような勝負根性を期待したい。

 

 ゴールドシップ・・・出遅れながら重賞で好走を続け、 共同通信杯では逃げるディープブリランテを差し切った。 破天荒なレースが多くポテンシャルは未知数。 うまくポジションをとって力を発揮できれば十分チャンスはありそうだが、 スピードよりパワーのタイプで2000mは短いか。それに共同通信杯からの直行で皐月賞を勝ったウマ娘は居ない。

 

 コスモオオゾラ・・・前走で皐月賞と同じ条件のトライアル、 弥生賞を勝っている。 中山2000mとの相性はいいが、切れ味勝負は分が悪いか。 バ場が渋るようならば十分チャンスあり。

 

 スピルバーグ・・・ラジオ NIKKEI 杯では抜け出したグランデッツァを差し切って優勝。切れ味を活かせる展開になれば。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「なるほどなぁ〜。」

 

 「これを見る限り上位人気はワールドエースさん、ディープブリランテさん、グランデッツァさん、それとシップになりそうですね。」

 

 「うん・・・。」

 

 確かにその4人が実力でも上位だろう。 しかし、それぞれに不安要素も指摘されている。

 

 「うーん、 順位予想の記事だとゴルシちゃんを一番に推している人は少ないね・・・。」

 

 「距離とローテの問題ですかね...。 確かに上位4人の中で一番不安要素が大きいのは間違いないでしょう。 しかし、型破りなシップのことだからやってくれるかもしれません。」

 

 「ふふ。確かに・・・!」

 

 そう、彼女なら前例のないローテとか、距離が短いとか・・・そんなありきたりな理由なんてぶち壊して勝ってしまうかもしれない。

 

 ガラッ

 

 「おう。 お待たせ〜。」

 

 そうこうしていると今村さんが現れた。

 

 「あっ!今村さん!・・・とゴルシちゃん・・・!」

 

 「おうおう! 久しぶりだな!」

 

 「ちょうどシップも併走終わったとこやからついでにな。」

 

 「なるほど・・・。」

 

 「ゴルシちゃんの足はガラスのように繊細だからな、 厳しいトレーニングの後はおっちゃんのマッサージがなけりゃ壊れちまうぜ・・・。」

 

 「はいはい。」

 

 ゴルシちゃんが座り、そこへ今村さんが手際よくマッサージを始める。 突っ込みどころ満載のゴルシちゃんの発言は完全スルーだ。指示されたトレーニングを無視して、それより負荷のかかるようなことを平気でするゴルシちゃんの足がちょっとやそっとで壊れる訳がない。 だいたい併走なんて舌をだしながらやったり、白目向いて走ったりして足に負担がかかるほど全力でやった試しがないのだ。

 

 「ほい, 終了。 次はジャスタか。 どうしたの今日は?」

 

 「はい。 体調が回復したようので、 またトレーニングできるかどうか判断を頂きたくて...。」

 

 「なるほど。 じゃあちょっと調べるか・・・・。」

 

 自分の順番が来るまでソファに座って待つ。隣にはマッサージを終えたゴルシちゃんが座ってきた。

 

 「あん?皐月賞特集だぁ?」

 

 「ゴルシちゃんのことも載ってるよ! 読んでみたら?」

 

 「なんだなんだ? この前といいゴルシちゃんもついに週刊誌に狙われるくれーにはビッグになったか?」

 

 「はは。 そりゃあ皐月賞に出走する有力なウマ娘の一人だもん。」

 

 「ん? ゴルシちゃんの次のレースはこれなのか?」

 

 「えぇ・・・。なんで君はいつも次走把握してないんだよ・・・。」

 

 「明日のことは明日考える! それが有限会社ゴルシカンパニーの社訓だからな! まあ特集されてるってんならいっちょ見てみるか・・・ってハァ??」

 

 「!?」

 

 週刊誌を取り上げ読み始めたと思ったら突然奇声をあげた。 ジャスタちゃんや今村さんも驚いてこちらを見ている。何か気に入らないところでもあったのだろうか。

 

 「おいおい 4/15 開催じゃねーかッ! どういうことだ! 4月開催なのに『皐月』ってのはよオオォーー!!『皐月』は旧暦5月のことじゃねーーかッ!!」

 

 「は??」

 

 君は一体何を言っているんだ・・・。いや、確かに考えてみれば確かにそうだけれども・・・気になったのがそこなの??

 

 「畜生ッ!!畜生・・・ッ!!4月を無視しやがって・・・!!これじゃ4月がかわいそうじゃねえか!!!!」

 

 「えー・・・。」

 

 「こうしちゃいられねえ!!何がなんでも勝つぜ、4月のために!!勝って皐月賞を『卯月賞』にしてやるんだァァァッ!!!!」

 

 何だか一人で盛り上がってどこかへ行ってしまった。相変わらずよく分からないが、皐月賞へ向けて闘志を燃やしているようなので本番は期待できる・・・・・・・・かも知れない。

 

 

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