とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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 誤字指摘ありがとうございました。


第27話  モブウマ娘、インタビューされる

 

 

 皐月賞に勝った影響は大きかった。 皐月賞前にも取材は来ていたが、 皐月賞後には倍以上に増えた。一応断ることもできるのだが、トレーナーさんはなるべく真摯に対応しようと悪質なもの以外には基本的に受けることにしていた。

 

 『荒れたバ場を異次元ワープ!!皐月賞ウマ娘ゴールドシップの強さ分析』

 

 『クラシック期にしてチームを引っ張るゴールドシップ、重賞の次はG1タイトルをチームにもたらす!』

 

 『ゴールドシップ制覇の皐月賞で見えた!日本ダービーの本命のウマ娘は!?』

 

 スポーツ雑誌、週刊トゥインクルなどの週刊誌、 スポーツ新聞・・・。どこもかしこもゴルシちゃんが一面を飾った。 部室には取材のお礼としてもらったそれら刊行物が積みあがっている。

 

 「うーん・・・実力の評価は難しい、かぁ・・・。」

 

 今日も今日とて休養で、時間を持て余している私は積みあがっている刊行物に目を通していた。皐月賞でのゴルシちゃんの走りは間違いなく強かった。あの走りができたのはメンバ一のなかでゴルシちゃんただ一人であろう。しかし、あれは特殊な条件のバ場だった。みんな外を回す中、内の経済コースを突けたから突き抜けることができた。つまりコース取りの差が勝敗を分けた。もし、良バ場での開催であったらどうか・・・と論じられている。

 

 ガラッ

 

 「あっ?! ここにも居ない!」

 

 そんな風に私が雑誌を読みふけっている時、部室を訪れてきたのは北山サブトレーナーだ。

 

 「誰か探してるんですか?」

 

 「ああ、ゴルシの奴見なかったか??あいつ今日からトレーニング開始だってのに・・・。」

 

 「はは・・・。すみません見てないです。」

 

 いつものサボりか・・・。 皐月賞獲って G1 ウマ娘になってもそんなところは変わらないようだ。

 

 「すみません、せっかく来て頂いているのに・・・。」

 

 「いえ、しょうがないですね・・・。」

 

 おや、誰か来ている。女性の方だ。どうやら取材に来た記者さんのようだ。

 

 「ほんとすみません・・・。」

 

 「大丈夫ですよ、お気になさらず・・・あっそうだ!せっかくですし、チームメイトを交えてインタビューさせて頂いても?」

 

 「え?」

 

 な、なんかこちらを見ている・・・。嫌な予感がする。

 

 「ああ、 彼女はゴルシの同期ですし、 なんだか仲が良いみたいなので適任ですね!」

 

 は?

 

 「ちょ、ちょっと待ってくださいトレーナーさん・・・!」

 

 「いいだろ? どうせ休養中で雑誌読んでるくらい暇なんだから。 ちょっと協力してくれよ。」

 

 そう言ってサブトレーナーさんは私の隣に座る。

 

 「ひん・・・。」

 

 そんな、いきなりインタビューなんて・・・心の準備というものが・・・

 

 「では、よろしくお願いします! 私、 月間トゥインクルの乙名氏と言います!」

 

 「は、はいぃ・・・!」

 

 素早く名刺を取り出し渡してくる。 だめだ、逃げられそうにない。 乙名氏と名乗った女性記者は手際よく音声レコーダーとメモ帳を取り出し、ペンを構える。

 

 「さあ緊張しないでリラックスして下さい。 答えたくない質問には答えなくて大丈夫ですから!」

 

 ・・・もう覚悟を決めるしかないな。大丈夫、聞かれたことに答えるだけだ。 それに、どうやら映像を撮られる訳ではないようだし・・・。 突然のことに動揺しつつも、なんとか気持ちを持ち直しインタビューに応じることにした。

 

 「ではまず、お名前とゴールドシップさんとのご関係から一ーー

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 「す、 素晴らしいですっ!!」

 

 「!?」

 

 「まさに水魚の交わり、布衣の交 ! 生まれた日は違えども死する日は同じと誓い合った仲という訳ですねっ!!」

 

 「はい??」

 

 な、なにを言っているんだこの人は.. ゴルシちゃんとにチームに誘われて入り、それ以来彼女の破天荒なノリに付き合わされていることをざっくりと話しただけなのだが・・・。

 

 「大丈夫です!十分伝わりました! ああ、あなたにインタビューできてよかった・・・。」

 

 いや、大丈夫じゃないが・・・。なんだかやばい記者に当たってしまったようだ。 サブトレーナーさんに視線を送るが、苦笑いするのみだ。 いや、助けてくれ・・・。 完成する記事が不安になった、そんなインタビューだった。

 

 「ありがとうございました。しかしほんとうに素晴らしい皐月賞の勝利でしたね。」

 

 彼女は今度はサブトレーナーさんに問いかける。

 

 「ええ、本当に凄い走りでした。」

 

 「これで去年のオルフェーヴルさんに続き、2年連続でメジロの血筋にあたるウマ娘がクラシック制覇となりました。関係者の間では大変話題になっておりますし、由緒ある家系のウマ娘が活躍するのはかつてのファンにとっても嬉しいことかと思います。つきましては何かチームにその影響はありましたでしょうか?」

 

 ん?え、メジロ?

 

 「はい。以前から関係のあるチーフも大変喜んでいまして、メジロ家関係者の方達からも喜びの声を頂きました。初めは我々としても由緒ある家系のウマ娘を預かるプレッシャーはありましたが、いかんせん本人が破天荒なもので・・・いざ担当してみるとその辺を感じる暇もなくここまで来ました。」

 

 「なるほど・・・。プレッシャーを忘れさせるくらいのキャラクターなんですね・・・!」

 

 「はい。しかし、ほんとに困っていますよ・・・。もう少し落ち着いてくれれば良いのですが・・・。」

 

 「ちょ、ちょっと待って下さい・・・!え?メジロ家ってあのメジロ家ですか?」

  

 「ああ、そう言えばお前は知らなかったのか・・・。そうだぞ、あのメジロ家だ。ゴルシのお母さんはあのメジロマックイーンさんの血縁なんだ。」

 

 「ふふ。若い頃のマックイーンさんにそっくりだ・・・なんて言われてますもんね。」

 

 「えぇ・・・。まじかよ・・・。」

 

 メジロ家。かつて史上初のトリプルティアラを達成したメジロラモーヌさんや、メジロマックイーンさんなど数々の名ウマ娘を排出してきた。最近は一族からウマ娘が生まれなくなってしまい、メジロの名をもつウマ娘をレースで見ることはなくなってしまった。しかしそれでも今なおURAに強い影響力を持ち、その名を知らない人は居ない名家だ。

 まさかゴルシちゃんがそんな名家の親戚にあたる存在だったとは・・・。しかもメジロマックイーンさんの血縁・・・。メジロマックイーンさんと言えば菊花賞や天皇賞春の連覇、さらに宝塚記念の制覇などG1を4勝。それらを含んだ重賞9勝を挙げるなど史上初めて獲得賞金が10億円を突破し、顕彰ウマ娘にも選ばれた史上屈指の名ウマ娘だ。 

 確か現役時代はその優雅な立ち振る舞いと気品ある走りから名優の名で呼ばれていたと聞いたが・・・あのゴルシちゃんにその血が流れているとは、とても信じられない。名家のお嬢様などというものからは最も遠い存在のように思われるのに・・・。

 

 突然告げられた衝撃の事実。その後、もう少しトレーナーさんへのインタビューが続けられた気がするがイマイチ内容が入ってこなかった。でも、どこかチーム内でゴルシちゃんが特別感があったのは彼女の実力やキャラクターだけでなくそういった理由もあったのかもしれない。そんな風に思った。

 

 

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