とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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 誤字指摘ありがとうございました。


第30話  モブウマ娘の日本ダービー(2)

 

 

 ーさあこの世代、7572人のウマ娘たちの頂点を決める大一番。第79回日本ダービー・・・

 

 ガシャン!!

 

 ースタートしました!

 

 ワアアアアアアア!!

 

 ゲートが開き一斉に飛び出していく。ちょうどゴール前の坂を上り切ったあたりがスタート位置だ。凄まじい歓声と拍手に包まれる。

 

 ーさあ先行争いまずはゼロス行くか、さらにディープブリランテ。そしてトリップも果敢に上がってさらに外、トーセンホマレボシ。グランデッツァも今日は先行策。さらにはコスモオオゾラ、その後11番フェノーメノも行きました。

 

 ブリランテさんをはじめとした先行勢がポジションを争いながら1コーナーへ向かっていく。ゴルシちゃんは上手くスタートしたようで内めの中団後方、ワールドエースさんのすぐ後ろにつけている。ジャスタちゃんはスタート直後に隣のウマ娘と接触し進路を奪われてしまい、出遅れた最内枠のスピルバーグさんと共に後方を追走している。

 

 ーさあ3番ゼロス行きました1バ身半のリード、2番手14番トーセンホマレボシ。2バ身空いてクラレントが3番手で10番ディープブリランテ4番手で抑えが効いて2コーナーを回ります。

 

 ゼロスさんが皐月賞に続き飛ばして逃げている。ブリランテさんは今日はかかる様子もなく落ち着いて好位を追走している。皐月賞では大外で前のポジションを取れなかったグランデッツァさんも好位で行っている。中団グループではクラシック初出走のフェノーメノさんが先頭で、外目にエースさんがつけている。ゴルシちゃんはそんなエースさんをぴったりマークしている。ベルちゃんやジャスタちゃんはそのさらに後ろ、中団後方グループに固まっている。

 

 ーさあ3、4コーナー中間前二人が飛ばしています!10バ身ほど離しています!

 

 逃げた二人がリードを広げ続けたまま4コーナーを回っていく。通常ならばセーフティリードだがここは東京レース場、最終直線は600mもある。徐々に後方のウマ娘たちが上がって来て、エースさんやゴルシちゃんが外に出て進路を確保していく。

 

 ー2強が追い上げて直線の攻防、残り400を切りました!トーセンホマレボシが先頭、坂を駆け上がってくる。懸命にディープブリランテ、スパートを掛けている!その外からはグランデッツァ 、さらに外からフェノーメノ上がって来た!ワールドエース、ゴールドシップはまだ中団・・・!!

 

 ワアアアアアアアアアア!!

 

 場内が大歓声に包まれる。思っていたよりも前ウマ娘が垂れてこない。ブリランテさんはしっかり折り合っていたようで伸びてくる。中団ではエースさんやゴルシちゃんも脚を伸ばしてはいるが果たして届くのか・・・。

 

 「うおおおおおおおおお!!」

 

 「だあああああああああ!!」

 

 ー200を切りました!さあディープブリランテ、悲願のダービー制覇へ先頭ですが・・・外から11番フェノーメノ、フェノーメノ!内からトーセンホマレボシ食い下がっている!フェノーメノか、ディープブリランテか!?内外並びました!!

 

 揺れるような歓声の中ウマ娘達がゴールラインを駆け抜ける。前が止まらない展開になり、後方からのレースになったジャスタちゃんやベルちゃんは中団まで押し上げるのが精一杯で出遅れたスピルバーグさんも沈んでしまった。そんな中でもゴルシちゃんとエースさんは物凄い脚で追い込んで前に迫っていった。

 

 

 どよどよ・・・

 

 「・・・・!」

 

 これは接戦だ・・・!目視では分からない。写真判定だ・・・!ターフビジョンに映し出されるリプレイ映像にかじり付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ❶ 10

       < ハナ   

  ❷ 11

 

 

 

 ー内です!内、10番ディープブリランテ!!ディープブリランテです!!!

 

 

 ワアアアアアアアアアアア!!

 

 

 届かなかった。ゴルちゃんとエースさんはよく追い込んだが、内で粘っていたトーセンホマレボシさんとの3着争いだ。その前でブリランテさんがフェノーメノさんとの争いをハナ差で制した。

 掲示板を見てブリランテさんがガッツポーズ、フェノーメノさんは拳を握り締めている。本当に僅差だった。僅かにブリランテさんの執念が上回った。

 

 ―ディープブリランテ、顔を上げられません・・・

 

 ブリランテさんが泣いている。大観衆の歓声に包まれたウイニングランだが、顔を上げることができず走り出すことができない。無理もない。相当なプレッシャーがあっただろう。

 英雄門下生の中でも一際期待を受けながら早期にデビュー、順調に勝ち上がりジャスタちゃんらと走った東スポ杯では圧倒的な走りを見せ世代 NO.1 と言われるようになった。 去年の菊花賞を見た後に学園の校門前で誓った通り、決意と覚悟に満ちた走りだった。

 しかし年が明けクラシック級になると、圧倒的な人気を集めながら共同通信杯でゴルシちゃんに完敗。続くスプリングステークスでも、同じように早期デビューの有望株だったグランデッツァさんに競り負けた。さらに年末にデビューしたエースさんがきさらぎ賞で衝撃的な強さをみせるなど、続々とライバルが台頭。皐月賞では好走するも1,2着の強さが際立つ内容で相対的に評価を落とし、いつしか世代 NO.1に推す声も聞こえなくなっていた。

 あの英雄の弟子としてのプレッシャー、同期の活躍、それに反比例するような自身の成績と下降する世間からの評価・・・。彼女が遅くまで残ってトレーニングしていた姿がよみがえる。再び世代の主役になるんだ、このクラシック舞台で・・・この日本ダービーで・・・!そんな思いを抱えての今日、この大一番だったのだ。

 

 ざわっ・・・!

 

 「・・・!」

 

 そんなブリランテさんに出走したウマ娘たちが駆け寄っていく。 エースさんやゴルシちゃんが彼女の肩を抱いてなにか話しかけている。 みんなブリランテさんを励ましているのだ。

 

 「勝った奴が下向いてどうすんだ。 胸張ってお客さんに挨拶しろ!」

 

 ・・・なんて言っているのだろう。 やがてベルちゃんがスタンドを指さしてブリランテさんの背中を押していく。

 

 <ブリランテ!! ブリランテ!!

 

 スタンドからはブリランテコールが鳴り始めた。背中を押されてスタンドの前に出されたブリランテさんは、 そんな様子のスタンドを少しの間呆然と眺めていた。 しかしやがて後ろを振り返って頷くと、顔を上げて走り始めた。 先ほどまで泣いていた様子は感じさせない堂々とした走り。 第79回日本ダービー、勝者のウイニングランだ。

 

 

 ワアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

 万雷の拍手と歓声が彼女に贈られる。 栄光あふれるエリート街道から一転、苦しみを味わった。しかし、この大舞台で再び自身が世代の主役であることを証明した。世代の頂点に立ったのだ。 これはそんな彼女を称えるもの。そしてレースに敗れて悔しさのある中でも勝ったライバルを称え、励ました 17 人に向けたものでもある。

 

 ああ、いいなぁ・・・

 

 私の同期の友人たちは本当にすごい。私もあんな風にライバルと励ましあって走れたら・・・、そしてこんなにも感動を与えるレースをすることが出来たら・・・どんなにいいだろう。

 ・・・早く走りたい。レースで競いたい。幼いころにテレビで見て感じた、 忘れていた気持ちがよみがえってくる。けどあの頃とは違う。 自分はもうトゥインクルシリーズを走っているのだ。自分は憧れの舞台には立てなかった、 そんな現実を今更ながら感じる。しかし、いい走り、いいダービーだった。みんなかっこよかったのだ。私も周りの観客達と同じように彼女たちへ拍手を送った。

 

 

 

 






ストックが尽きてしまった為、申し訳ありませんが次回から3日おきの更新となります。ニッチな内容の作品ですが今後ともよろしくお願いします。


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