とあるモブウマ娘の物語   作:トルポめぐろ

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第5話  モブウマ娘、菊花賞を見る

 

 

 「すごいすごい!またタイム更新だよー!」

 

 「はあ、はあ、・・・よしっ・・・!」

 

 10月も後半に差し掛かり次の選抜レースも近づく中、私の調子は上向いていた。チームに加入しすぐにデビュー戦で見事勝利したブリランテさんをはじめ、続々と結果を残すウマ娘が増えているこの頃。以前の私なら感じていただろう焦りは無かった。

 未熟者。私は未熟者なのだ。みんなのような大きな目標を掲げることはおろか、進む路線も決められない未熟者。そんな私だからこそ目の前のことにベストを尽くしていこう。そう考えることにした。いいトレーニング、いい休養、いい食事、いい遊び・・・。一つ一つのことに向き合い、大事に集中する。そうすることで周りと自分とを比べ、焦るようなことはなくなった。今では、そんな積み重ねの成果が少しずつ現れている。

 

 「これは私も負けないように頑張らないと!」

 

 「ベルちゃん、今日もありがとね。」

 

 ベルちゃんはとっくにチームに加入してデビューのことを考えてもいいはずだ。そんな彼女がいまだに私に付き合ってくれている。本当に感謝しかない。

 

 「おーい!お疲れ様ー!」

 

 「!ブリランテさん・・・!」

 

 「やあ。二人とも頑張ってるね!」

 

 「ブリランテ今日はどうしたの?チームのトレーニングはいいの?」

 

 「ああ、まだ次走に向けた調整始めたばかりだからね。トレーニングは軽めなんだ。それより、今日は二人に聞きたいことがあってね。」

 

 「?」

 

 「菊花賞、見に行かないかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 日曜日、京都レース場はものすごい人であふれていた。学園ではこのレベルの人の多さを体験することはほとんどないため、

思わず圧倒されてしまう。

 

 「ごめんね〜!私が途中ではぐれたせいでこんな時間になっちゃった!」

 

 「ベルちゃんがはぐれるのを想定してなかった私も悪いよ・・・。」

 

 「いや、それにしてもすごい熱気だ。」

 

 「さすがクラシック最後のレースだね。」

 

 菊花賞。京都外回り3000mで争われるクラシック三冠最後のレースであり、世代を代表するウマ娘たちの大一番だ。そんなビッグレースなため毎年盛り上がっているのだが、今年は例年以上だ。

 

 「ああ。それに今日、三冠ウマ娘が誕生するかもしれないんだ。みんな見にくるさ。」

 

 「先生の時も凄かったもんね。」

 

 三冠ウマ娘。世代の頂点が集まり競い合う、求められる適性の異なる3つのレース。そのすべてに勝利したウマ娘はそう呼ばれる。その称号で呼ばれることは名実ともに世代最強であることの証明であり、手にできたのは史上たった6人しかいない。それが今日、新たに誕生するかもしれないのだ。

 

 ワアアアアアアアアア

 

 「やばい!もう本バ場入場の時間だ!」

 

 「急がなきゃ!」

 

 「ベルちゃんは私の手に掴まって!」

 

 人混みをかき分けながら目的の場所へたどり着く。

 

 「ちょっと、遅かったじゃない。もう本バ場入場終わるわよ。」

 

 「ごめんごめん。」

 

 「おーおー貴婦人様がお怒りだ。」

 

 「私がはぐれちゃったのが悪いの・・・。」

 

 もみくちゃにされながらもやっとたどり着いた私たちをジェンティルドンナさんとワールドエースさんが出迎えてくれた。ターフではウマ娘たちが出揃ったようで、続々と返しウマを行っていた。

 

 「あれがオルフェーヴルさんか・・・。」

 

 三冠制覇にリーチをかけ、今最も注目の的になっているウマ娘だ。体はそんなに大きくないが、生で見ると綺麗な栗毛もあいまって圧倒的な存在感を感じる。

 

 「単勝1.4倍か・・・すごいな・・・!」

 

 「まァ、あのダービーであんなイカれた勝ち方したんだ。前走も完勝だったし妥当だろうよ。」

 

 「あの日はぐちゃぐちゃの不良バ場だったもんね。ほんとにこんなところ走るの?って思っちゃったもん・・・。」

 

 「でも、ラー先輩だって一期生の中では一番先生に近いって言われてたのよ。そう簡単に最後の一冠を取らせやしないわ。」

 

 ターフではちょうど話題に出たトーセンラー先輩が返しウマを行っている。やはりこの一走にかける思いは大きいようで、かなり気合の入った様子だ。もちろん他のウマ娘たちも本気で最後の一冠を獲りにきている世代を代表するウマ娘たちだ。負けられない。そんな気迫がここまで伝わってくる。

 やがて全ての返しウマが終了し、ゲートインへの準備が整う。皆が無言になり、じりじりと空気が張り詰める。いよいよだ。あまりの緊張感に喉の渇きを感じたその時、ファンファーレが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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