「ビシッと一発決めろよな!!」
・・・・えええええええええええ?!
「ちょ、ちょっと?え?」
どういうこと?まったく話が理解できない。
「は?ゴルシ、どういうことだ?」
「おう!こいつ、今日からうちのチーム加入するからな!よろしく頼むぜ!」
「????????」
唐突な展開に頭が追いつかない。え?私チーム入るの?スカウトされていませんけど??
「は?おいゴルシ、俺は何も聞いてないぞ?」
「言ってないからな!けど決定事項だからな、よろしく頼むぜ!」
いや言ってないのかよ。
「おいおいチーフは知っているのか?」
「はあ?さっき決めたんだから知ってるわけないだろ。」
「はぁぁ?」
えぇ・・・思いつきかよ・・・。
「とにかく!アタシはこいつをうちにいれる!もう決めたからな!」
「お前そんな、いくらなんでも無理があるだろ・・・。」
「・・・ゴルシちゃん、チームに誘ってくれるのは嬉しいけどそういうのはトレーナーさんが決めることじゃないかな・・・。それに、いきなり言われてもトレーナーさん困っちゃうよ・・・。」
「いいんだ!こいつの仕事はアタシに困らされることだからな!」
「・・・そもそも彼女に加入する意志はあるのか?」
「ある!!なぁそうだよな!?」
「そ、それはまあ。チームに入れてもらえるならありがたいですけど・・・。」
「ほら!!決まりだ決まり!!」
「いやしかし・・・。」
「決まりったら決まりだ!!こいつをうちに入れてくんなきゃもうトレーニング行かないもんね!!」
「お前なぁ・・・」
無茶苦茶だ・・・。確かにチームに加入できるなら渡に船な話だが・・・。そもそもなぜ私なのか。
「とにかく、新メンバーの加入に関してのことは俺には決められん。チーフに判断してもらわんことには。」
「だからこれから部室に向かうんだろ?タイムイズマニー!さっさと行こうぜ。」
「・・・すまないが君にも付き合ってもらうしかない。こうなったら手に負えないんだ。」
「は、はあ、分かりました…。」
まだ混乱している私を置いて話は進み、3人でゴルシちゃんのチームの部室へ向かうことになった。
・・・・・・・・
部室棟はグラウンドのすぐ近くにあり、チームに所属したことのない私はほとんど立ち入ったことがないため、少し緊張する。部室に入ると、スーツ姿での少し強面な中年の男と白髪の混じった細身の優しそうなジャージ姿の壮年、さらに数名のウマ娘がおり一様に怪訝な顔をして迎えてくれた。サブトレーナーさんは男二人を呼んで説明してくれている。どうやら強面な男の方がチーフトレーナーらしい。うーんなんだか大ごとになってきたぞ・・・。
やがて説明が終わると、強面なチーフトレーナーは部屋の端でひそひそ話をしているウマ娘たちに外へ出ているよう指示し、私と、なぜかルービックキューブを弄っているゴルシちゃんを呼んだ。
「このチームのチーフトレーナーをしている須川です。今回はシップの気まぐれに巻き込んでしまったようで、すまないね。」
「い、いえ。」
意外にも丁寧な対応で少しびっくりする。でもやはりチーム全体を管理するチーフトレーナーなだけあってオーラあるなぁ・・・。
「で、どうしてそんなに彼女をうちのチームに入れたいんだ?シップ。」
「デリカシーのねえ質問するんじゃねえ、どうしてもだ。」
「しかしそんな急には決められないよ。」
「人数はまだ空きがあるだろ。それにこいつは宇宙の舌を持つ女だ。引く気はねえぜ。」
「・・・うーん、どうやら君は余程気に入られてしまった見たいだな。」
「あはは・・・」
少し同情を含んだ微笑みを向けてくる。心なしかゴルシちゃんも真剣な様子で、それが余計に私の緊張を煽る。どうしてこうなった……。
「君の希望としては?チームへの加入する意思はあるの?」
チーフトレーナーさんがこちらに向き直り問いかけてくる。私をまっすぐ見つめる目からは試されているような感覚すら覚えた。
「それは・・・」
それはもちろん、チームに所属できるならしたい。これまで全くスカウトされず、今後される保証もないのだ。もしスカウトされなければデビューすることなく学園を去る未来すら見えてくる。しかし、チームに所属しさえすれば少なくともデビューは出来るはずだ。これはチャンスなのかも知れない。
「それはもちろん、チームに所属したいです・・・。チームに所属してデビューしたいです・・・。」
「・・・・」
「・・・けど、私は・・・私の走りを見て、評価してくれたチームで頑張りたいです。」
「!」
「ゴルシちゃん、せっかくだけどごめんね。この場でチームに入れてもらうことはやっぱりできないよ。」
「お前・・・」
「トレーナーさん、お騒がせしました。次の選抜レースで走るのでよかったら見ていただけると嬉しいです。・・・失礼します。」
一礼して部屋を出る。そうだ、しっかり実力で勝ち取らないと。そうじゃないとベルちゃんたちに胸を張って報告できない。選抜レースはもうすぐだ。絶対にスカウトを勝ち取る。そんな決意を胸に私は部室棟を後にした。