Vtuber短編   作:剣 紅夜

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とある街にあるライブハウス。
1人の男が今日も軽音楽部の学生たちにギターを教えていた。
今回はそんな1人の成人男性と密かにその成人男性に想いを寄せる高校生の話。

※祭前完理様1000人記念SS!


ライブハウスの出来事

 

 

 

「はい、じゃあ今日はこのくらいにしようか」

 

 

ライブハウスのステージに向かって1人の男性が声を上げる。

ステージの上では学生服を着た少年や少女がいた。

 

ステージに近づく男性―祭前完理は楽器をしまうように指示を出す。

 

 

「終わったー!」

 

「足痺れた!」

 

「このエジェクタむずいって!」

 

 

文句を言いながらも学生たちは楽器をしまい始める。

彼ら高校生は近所の高校の軽音楽部だ。

 

音楽室が吹奏楽部に使われている為ほとんど屋上で練習をしていたが、顧問の先生の計らいでOBである完理が働いているライブハウスで練習をしている。

 

ついでにギター経験のある完理は軽音楽部の音楽コーチも担当している。

 

 

「あれ?楽器しまわないの?」

 

 

ギターを出したまま、左手でコードを抑える練習をする女子生徒に友人だろう同じ部活の女子生徒が声をかける。

 

 

『ん、まだ練習する。みんな先帰ってて』

 

「おっけ~!」

 

「じゃー、かーさん!また明日ー」

 

「あざーしたー!」

 

「「かーさん」呼びなっつの!真っ直ぐ帰れるんだよー」

 

 

楽器を片付けた生徒たちは自分たちのスクール鞄をもってライブハウスを後にする生徒たちに完理は声をかけた。

 

 

その後、完理は使われたステージの後片付けや使われた機材の確認をしていた。

チラリと残った彼女を見る。

 

楽譜とにらめっこをしながらコードを抑える練習をしていた。

 

 

「まだ残るのかな?」

 

『す、すみません。もう少しだけ……』

 

 

彼女は軽音楽部のボーカルだ。

純粋に音楽が好きであることは完理もよく理解しているが。

 

 

『っ!』

 

 

ビクッ!と肩を跳ねさせた彼女に完理は察して近づいた。

 

 

「もう練習は止めた方がいいよ」

 

『や、やります』

 

 

左手の指の中で人差し指が切れて血が出ていた。

それでも弦を抑えようする彼女に完理がハッとして「やめるんだ!!」と声を上げ、彼女の左手を掴み上にあげる。

 

 

『なんで止めるんですか!』

 

「錆が傷口に入るのは危険なんだ!」

 

『錆…?』

 

 

彼女の手を放して、完理はギターを取り上げる。

 

 

「やっぱり…ちゃんと手入れしてないだろ!」

 

『え?』

 

「はぁあああ……。これだから最近の若者は…」

 

 

盛大に深いため息をついて完理はギターをそのままステージ裏に持っていく。

 

 

『ちょ、ちょっと!先輩のギター返してよ!』

 

 

完理を追いかけ、普段立ち入らないステージ裏に入ると、完理が作業台の上にギターを置いていて。

ペンチで弦を切っていた。

 

 

『ちょっと!!何してんのよ!!』

 

「弦を張り替えているんだよ。こんな錆びだらけの弦使っていたら破傷風になるだろ」

 

『はしょ……なに?』

 

「そこに救急箱あるから消毒と絆創膏。あと親に連絡して、念のため病院連れて行ってもらって」

 

『はあ?』

 

「切り傷のこと、ギターの錆びた弦で切ったって言えば大丈夫だから」

 

 

慣れた手つきで完理はライブハウスで貸し出し用のギターに使っている替えの弦を張り替え始める。

 

 

『へぇ…』

 

 

張り直して、軽く完理が指で弦を弾き音を確認した。

 

 

「ほら」

 

『ありがとう』

 

「後で先生に弦は請求するからね。あと病院。本当に破傷風はやばいからな」

 

『なにそれ』

 

 

首を傾げる彼女に完理は頭を掻いた。

完理には友人が何人かいる、その中で医療従事者に務めている友人がいて話を聞いたことがある。

 

 

「とりあえず、今日はもう練習をやめること」

 

『はい…』

 

 

先ほど完理に怒鳴られてギターを没収されたのが答えたのだろうか。

完理に睨まれて彼女はすっかり落ち込んでしまった。

 

動かず棒立ちの彼女に対して完理は頬を軽く掻いて、棚に置いていた救急箱を取り出した。

 

 

「練習を頑張りたい気持ちはわかるけど、無茶して迷惑をかける方が、かけた方もかける方も辛いよ?」

 

 

そう言いながら完理は彼女の頭を撫でた。

 

 

『ッ……!き、気安く触んないでよ!』

 

 

睨みつけられて反射的に頭に置いていた手をパッと離した。

 

 

「ア、ハイ」

 

 

最近の子は扱いが難しいなと思いながら、彼女から離れる。

 

 

『ばか……』

 

 

背を向けた完理向かって彼女はそう言った。

ボソリと小さく呟いた。

 

熱くなった顔を隠すように、顔を俯かせる。

それでも彼女は前髪の隙間から見える、自分に背を向けて作業をする完理の姿を見た。

 

 

「どうかした?」

 

 

視線に気づいて完理が彼女へそう言うと『なんでもない』と彼女はいい。

鞄を持ってライブハウスを後にしようとする。

 

 

『また、ね。祭前さん』

 

「うん、またみんなでおいで」

 

『……ほんと、人の気も知らないで……』

 

 

呟いた言葉がわずかに聞こえたのか完理は「ん?」と彼女の方を向いた。

 

 

「なにか言ったかな?」

 

『別に……』

 

 

そう言い彼女はライブハウスを後にした。

 

外に出た直後。

その場に、一気に顔を真っ赤にしてしゃがみ込んだ。

 

 

『っ~!!(手を掴まれた!手を掴まれた!嬉しいけど、嬉しいんだけどぉおお!!)』

 

 

ニヤける顔を必死に抑えながら、ライブハウスの看板をチラッと見た。

 

 

『明日、ちゃんと話せるかな……』

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「はぁああああああ……」

 

 

魂が抜けたような顔で完理は壁に頭を寄りかからせて深いため息を吐いた。

 

 

「女子高校生になにやってんだよ……。絶対やばい、頭撫でんのはアウトだろ……破傷風防ぐのに手を握んのはセーフだろうけど、撫でるのはアウトだろう私ぃい……」

 

 

彼女の恋心のことなんかまったく考えていない鈍感なライブハウス店員がそこにいたのであった。

 

 

 

 

Fin…

 






初めて男性Vtuberさんの夢SSかいちゃ!(/・ω・)/

祭前完理さん登録者1000人記念SS!
乙女心に鈍感な男性って、いいですよねぇ…(シミジミ)

改めまして、祭前完理さん!
登録者1000人達成おめでとうございます!


2022.10.17
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