各々の異世界で流行っている多次元世界コミュニケーションゲームVRMMO。
今宵はどんな出来事が起こるかな?
今作も百合もの短編
星科静×御伽ミアになります。
※挿絵は瞬さん(@Shundayo_5703)に描いていただきましたー!
多次元世界コミュニケーションゲームVRMMO。
さまざまな異世界…もとい、多次元世界との交流を主流とする現代。各世界の技術者たちはもっと世界を越えた輪を広げたいと望み生まれたVRMMOゲーム。
自由度は高く好きなことが出来る。
しかし決まったルールはあるので犯罪などは許されない。あくまでもプレイヤーひとりひとりが楽しめる場所を作るためのゲーム。
さて、今宵はVRMMOのイベントがあるようだ。
月に一度開催されるモチーフパーティーイベントの日だ。
今月のモチーフはファンタジー世界観ということもあり、開かれる場所も城、イベントに参加するプレイヤーたちは持っているファンタジーモチーフ衣装を着てダンスパーティーを楽しんでいた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
VRMMOシリーズ第1段
【月下の円舞曲】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ダンスパーティー会場である城では無駄に広い屋内でNPCが奏でる音楽に合わせプレイヤーたちが踊ったり、会場の隅にある食事やスイーツを食べて楽しむプレイヤーもいる。
そのどちらでもない空間、テラスで夜風に当たりながら様子を眺めている1人の女性プレイヤー―星科 静がいた。
「はぁ…」
他の女性プレイヤーのほとんどがドレスアバターにも関わらず、静だけは女性物のスーツアバターだ。
理由としては単に動き辛そうだからという理由だ。正直長いスカートは苦手で踏んでしまいそうになる。
あと離れたところ、テラスにいる理由は…人混みが苦手だから。
「(イベントとはいえ、どうしてここまではしゃげるのかしら……)」
今回のイベントに参加した目的は参加者限定に必ず貰えるアバターアイテムがランダムで手に入るから。静が現在身につけているジャケットスーツも今回のイベントで貰えたアバターアイテムだ。貰えるアバターアイテムはランダムでガチャとも言われている。
そしてもう1つの静個人の目的は……。
「まあいいか、色々と今回も眺めがいいし」
女性プレイヤーのドレスアバターを眺める事。
胸元が開いていたり、肩が出ていたり、中にはドレスの一部分が割れていて脚がチラリと見えたりと、際どいものが多いが結局のところはゲームの世界。
自分が作ったゲーム用のアバターなのだから気にしない人が多い。
食べ物や飲み物が置いてあったスペースから取ってきただろうシャンパンをちびちび飲みながら静はダンスを楽しむ人たちを眺めていた。
「お!静ちゃん発見!」
聞こえた声の方向に視線を向けると最近知り合った女性プレイヤーの御伽ミアがいた。
彼女もドレスコーデのアバターらしく普段の服装に似ているがどこか華やかだ。
オフショルダータイプのプリンセスドレス。
プリンセスドレスの中でも前方側のスカートが後方側のスカートよりも短い脚が見えるタイプの物だ。
色合いは普段のアバターの服に寄せているので……これは。
「ミアちゃん、そのアバタードレス可愛いけど、もしかしてオーダー?」
「もちろん!やっぱり普段の白雪姫っぽい服装のままドレスにしておきたいじゃん?」
「でもオフショルダーはエロい、好き」
「見んなー!!」
シャーッ!と威嚇する猫のような顔をしながら腕で胸を隠すミアに対して静はクスクス笑いながら首を傾げる。
「なんで?見せるためにそういう格好してるんでしょ」
「っ〜…!!」
静に背を向けてミアは呼吸を整える。
「(だめ!好き!顔が、声が、良すぎる!てか何でスーツ!?王子様!?イベ限定ランダムのアバターでアレ!?色気やばい!!)」
「ミアちゃーん?」
脳内でセルフ発狂するミアに声をかけるが聞こえていない様子。
このゲームのプレイヤーの多くはその世界での配信者が多い。
静とミアも配信者の1人だ。
だからこそなのかもしれない、だってミアの推しは静なのだから。
「おーい」
耳元で囁くように静がミアに声をかける。
「ひゃん!!」
「なに色気ある声出してるの?…可愛いね」
「静ちゃんもねっとりしないで!!好きっ!!」
「はいありがとう」
グラスに残っていたシャンパンを飲み終わり、グラスはひとりでにポリゴン化されて砕ける。
チラリとダンスホールを見ればプレイヤーたちは自分達の様子に全く気づいていない。
配信するという事も、このイベントに参加するともTwitterに投稿してなければ、掲示板にも書いていない。
だから。
「ミアちゃん、ちょっと付き合ってくれる?」
「静ちゃんなら喜んで」
「即答助かるわ」
それじゃあ、と静はミアを抱き上げる。お姫様抱っこで。
スカートの彼女には荷が重いと感じたらしい。静に姫抱きされたことにミアは頭が真っ白になったのか思考回路を停止させた。
そんなことも気にせず、静はテラスの手すりに飛び乗り、テラスから飛び降りる。
「ちょーーーー!?!?」
驚いてミアは腕を静の首に回してしがみつく。
地面にぶつかる前に静はゲームのロールコマンドである《着地》を発動させ難なく地面に着地する。
「ミアちゃん大丈夫?」
「ろ、ロールコマンドの存在忘れてた」
「まあ普段使わないものね。私は魔法職でよく空飛ぶから使うけど」
説明しながらミアのことを下ろすこともせず抱き上げた状態のまま、静はある場所に向かう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はーい、到着しましたよ。お姫様」
結局そのままの状態で運ばれたミアは顔が茹タコのように真っ赤になっていたが、静が連れてきた場所を見るなり顔の熱が引いていく代わりに目を輝かせた。
一面に広がる色とりどりの薔薇。
月の光に照らされてか、その薔薇の特徴なのか、ひとつひとつがイルミネーションのように仄かな優しい光を放っていた。
「すごい」
「昔のダンスイベント会場だった場所なの。流石に昔ってこともあってエリア規模は今よりは全然小さいわね」
ミアを下ろして、ミアに手を差し伸べる。
「エスコートしましょうか?」
「え、なにこれ夢?天国?」
「やめる?」
「ぜひエスコートしてください!」
手を引っ込めようとする静の手を掴み、ミアは食い気味に言い放つ。
ミアの反応に静は噴き出しながらも声に出して笑うのを必死に堪えた。
「はいはい、じゃあご案内します」
手を繋いで花園エリアの奥へ進むと小規模だが円状に敷かれた石畳のダンスエリアにたどり着く。
周りの薔薇の花が仄かな光を放ち、空から照らされる月が明かりの役割を担っていた。
「ここがダンスエリアだったところ?」
「そ。あと、ここなら人は来ないしのんびり出来る」
「あー、確か…に?」
静が自分のゲーム内のメイン武器職業である杖を取り出す姿にミアは首を傾げる。
取り出した杖を石畳に軽くぶつけ、カツンと音が響く。
それと同時に薔薇の光ひとつひとつがキラキラと交互に点滅を始めどこからかワルツが聞こえてくる。
見てみると小さな羽の生えた小人、妖精が楽器を持って演奏していた。
「え?どゆこと?」
「ここの薔薇園の手入れはNPC妖精がしているの。魔法職のプレイヤーや魔法アイテムをこのエリアに魔力を送ると演奏してくれる仕組み。まあ、この仕組みのせいで最初はアバターアイテム目的で来る人ばかりだったのよね、このイベント」
「へぇ…」
聞こえてくるバイオリンやヴィオラ、チェロにコントラバス。その中に混じるバンドネオンや打楽器。
「御伽ミア姫」
「!」
「私と一曲踊っていただけませんか?」
手を差し伸べ微笑む静にミアは笑顔でその手を取る。
色とりどりのの薔薇の光、月明かりに照らされ、妖精の音楽と共に2人だけの舞踏会が開かれた。
誰にも邪魔されない、誰の目も気にしない、2人だけの空間の中、静とミアはワルツを踊る。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
妖精たちの演奏は止まり、静とミアは花園にある木下近くの芝生の上に仰向けに並んで身体を横にしていた。
「やー、踊った踊ったー」
「リアルじゃ普通できないことが出来るのがいいわよねぇ、このゲーム」
「ほんとほんと……でも疲れて、ゲームの中で寝落ちしたりとかもさー」
ミアの言葉を聞いて静はミアの方を見た。
眠そうに瞼が閉じかけているが、楽しそうにへにゃ…と笑っていた。
「寝てもいいよ?起こしてあげるから」
そう言って、ミアの手を上から重ねるように静は自分の手を乗せる。
「んー…やだ、かな。静ちゃんと、もう少し話したいし…」
「また一緒に遊ぼうよ、私は逃げないから」
「んー……」
優しい声にどこか安心する、自然と瞼が重くなる。
やがて、ミアの寝息が聞こえて来て、静はクスクス笑い、身体を起こす。
ミアの顔にかかった髪を優しく指で払い、彼女の頬に手を添え…自分の額と彼女の額を重ねた。
「おやすみ、『白雪姫』」
優しい夢が、見れますように。
小さなダンスエリアで、風に草木が揺れる音に混じり一度だけ。
小さく、誰にも聞こえないだろうリップ音が響いた。
さて、次のイベントではどう過ごそうか。
Fin…
[後書き]
22.07.24.のコラボにて盛大な供給を受けてしまったので書かせていただきました…(過呼吸)
普段書くピュア恋愛よりもディープな恋愛模様も良いですよな…(過呼吸)
by剣 紅夜
第1段ということは同じ世界観でのシリーズとして検討していく予定です。