決闘者の矜持-デュエリスト・プライド-   作:ホッシー@VTuber

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2ターン目

 あれから廊下を駆け回り、なんとか養護の先生を見つけたあたしたちは入学式に間に合った。それから厳かに始まった入学式だったが、この後に待つ決闘(デュエル)が気になって仕方ない。それに――。

(なんで、赤い制服を着てる人がいないんだろ……)

 キョロキョロと辺りを見渡すがあたしや破魔さんのように『オシリス・レッド』に所属している生徒が見当たらない。それも新入生だけじゃなく、在校生の中にも赤い制服を着ている人はいなかった。

(もしかして……もしかすると)

 今思えばブルーの生徒はあたしや破魔さんを見てすぐに1年生だと気づいていたような気がする。所属する学部は制服の色を見れば一目瞭然だが、学年まではわからない。だが、『オシリス・レッド』の生徒が在校生にいないのなら『オシリス・レッド』を見かけた場合、その生徒は1年生ということになる。

 つまり、それはこの学校の『オシリス・レッド』はあたしと破魔さんしかいないというわけで。先ほどから周りの視線が突き刺さりまくっており、とても居心地が悪い。

 そんな苦痛な時間が過ぎ、入学式が終わった。そして――。

『これより入学式恒例イベント! ウェルカムデュエルを始めます!』

 ――会場をデュエル場へ移動し、あたしは観客席の最前列で不安になりながらフィールドに立つ破魔さんを見守っていた。もちろん、彼女の前にはあの変態ブルー先輩が勝ち誇ったような顔で立っている。

『今回、志願してくれた決闘者(デュエリスト)はこの人たち! まずは在校生代表、『オベリスク・ブルー』の神成ー!』

 司会を務める先輩が声高らかにブルーの先輩――神成先輩の紹介をした。彼も観客に向かって手を振っており、余裕綽々と言わんばかりである。

『そして、新入生代表! 『オシリス・レッド』の破魔ー! まさかレッドの生徒が名乗りを上げるとは思わずどんな決闘(デュエル)をしてくれるのか楽しみです!』

 司会の人が破魔さんを紹介すると彼女は静かに頭を下げた。彼女の美貌とその仕草に観客たちは一瞬、息を飲んだが美人決闘者(デュエリスト)の登場にすぐに歓声を上げる。しかし、どうも観客の反応に違和感を覚えた。

「あら、どうしたの? そんな不安そうな顔をして」

「あれ? 養護の先生?」

 いつの間にかあたしの隣に座っていたのは入学式の会場まで案内してくれた養護の先生だった。破魔さんとはまた違った美人さんであり、あたしの顔色を窺っている顔に心配の色が見える。

「こんにちは、遅くなったけど隣、いい?」

「あ、はい。どうぞ」

「それでどうしたの?」

「えっと……なんか観客の反応が変だなって……」

 あたしの疑問に養護の先生はどこか納得したように視線を前に移す。そこに頭を上げ、デュエルディスクを右腕に装着する破魔さんの姿があった。観客に対して特に反応せずに彼女はデッキをディスクにセットし、自動的にシャッフルされている。

「……きっと、期待されてないのね」

「え?」

「この学校はレッドの生徒がいない……ううん、前年度までいなかった。それはね、よっぽどのことがない限り、レッドに配属されないからなの」

「それって基本的に生徒たちはブルーかイエローになるってことですか?」

 あたしの言葉に養護の先生はコクリと頷いた。確かにあたしはデッキ未所持者だし、『オシリス・レッド』に配属されるのはわかる。なら、破魔さんは? 彼女はどんな事情があって『オシリス・レッド』に入ることになったのだろうか。

「つまり、どんな事情があれ、破魔さんは少なくとも真っ当な決闘者(デュエリスト)ではない。だからこそ、今の環境では期待されないの」

「今の、環境……」

「見ていればわかるわ」

 あたしはあまりデュエルモンスターズに詳しくない。基本的なルールは勉強してきたがどんなカードが強いとか、コンボの繋ぎ方は全くわからないのが現状。

「すみません……あたし、全然詳しくなくて……」

「……そうね。なら、少しだけ解説するわね」

「お願いします」

『さぁ、両者の準備が整いました! それでは、行きましょう! ウェルカムデュエル! 開始ィイイイイイ!!』

 その時、司会の人が決闘(デュエル)開始の宣言をする。そして、破魔さんと神成さんは同時に5枚のカードをドローした。

「……先攻は私ね」

 機械によって自動的に先攻は破魔さんとなる。しかし、彼女は手札を眺めながら少しだけ考え始めた。

「……どうした?」

「いえ……私は<ライトロード・マジシャン・ライラ>を通常召喚」

 破魔さんはカードを1枚、ディスクに置くとソリッドヴィジョンによって白い服を着た黒髪の女性が召喚される。

 

 

 

 

 

<ライトロード・マジシャン・ライラ>

星4/光属性/魔法使い族/攻1700/守 200

(1):自分メインフェイズに相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。

自分フィールドの表側攻撃表示のこのカードを守備表示にし、対象の相手のカードを破壊する。

この効果の発動後、次の自分ターンの終了時までこのカードは表示形式を変更できない。

(2):自分エンドフェイズに発動する。自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。

 

 

 

 

 

「破魔さんは『ライトロード』デッキみたいね」

「え? 『ライトロード』、ですか?」

 右手に小さな杖を持った女性モンスターを眺めていると養護の先生がそう呟いた。確かに名前に『ライトロード』と付いているがどんな意味なのだろう。

「デュエルモンスターズにはカテゴリーというものがあって……簡単にいえば、仲間みたいなものなの」

「仲間……」

「共通効果があったり、サポートカードがあったり……今の環境は基本的にカテゴリーを揃えてデッキを作るのが主流ね」

 なるほど、確かにカテゴリーを揃えた方が戦いやすそうだ。果たして破魔さんの使う『ライトロード』はどんな――。

「ターンエンド」

「は!?」

 ――戦い方をするのだろうと思っていた矢先、彼女は自身のターンを終了してしまう。神成さんも驚きのあまり、目を丸くしていた。

「そ、そんな! 伏せカードもなしにターンを終えちゃうんですか!?」

「待って、『ライトロード』の本領はここから」

「エンドフェイズ、<ライトロード・マジシャン・ライラ>の効果を発動。デッキトップから3枚、墓地に送る」

 養護の先生の言葉通り、女性モンスターが杖を掲げ、効果を発動する。破魔さんはデッキから3枚カードを墓地に送った。

 

 

 

 

 

 墓地→<黒き森のウィッチ>、<おろかな副葬>、<沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン>

 

 

 

 

「おー、カードが墓地に……これでどうなるんですか?」

「……どうにもならないわね」

「……へ?」

「『ライトロード』の中には墓地に落ちた瞬間、効果が発動するカードがあるけど……落ちた中にはない。それに落ちたカードの種類も『ライトロード』とは関係ないものばかり……」

 墓地に落ちたカードを見て養護の先生も驚いている。確かに落ちたカードの中に『ライトロード』と名の付くものはなかった。ただ、運が悪かっただけ、なのだろうか。

(それに……)

 最後に落ちたあのカードが少しだけ気になる。何だが、他のカードとは何か違うような気がする。雰囲気というか、オーラというか。とにかく、あのカードから何かを感じた。

 

 

 

 

 

 1ターン目終了

 

 破魔 手札:4枚 フィールド:<ライトロード・マジシャン・ライラ>

 神成 手札:5枚 フィールド:なし

 

 

 

 

 

「おいおい、さすがに舐めすぎだろ。まぁ、いい。俺のターン、ドロー!」

 神成さんはどこか馬鹿にしたような口ぶりでドローし、手札に加え――ニヤリと笑った。これは、嫌な予感。

「カードを1枚、セット。そして、このカードは相手フィールドのみモンスターが存在する場合、手札から特殊召喚することができる。来い、<サイバー・ドラゴン>!」

 ディスクに伏せカードをセットした後、神成さんは1枚のカードを掲げて叫んだ。そのまま、機械でできたドラゴンがフィールドに登場する。

 

 

 

 

 

<サイバー・ドラゴン>

星5/光属性/機械族/攻2100/守1600

(1):相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

 

 

 

 いきなり上級モンスターが登場し、あたしは目を丸くしてしまう。基本、レベル5以上のモンスターの召喚には生贄(リリース)が必要。そのはずなのに相手の場にモンスターがいるだけで手札から出てくるなんて卑怯にもほどがある。

「……まずいわね」

「え?」

「神成君のデッキは『サイバー・ドラゴン』デッキ。サポートも豊富で、強力なモンスターもたくさんいる、強力なデッキよ」

「そ、そんな!?」

 あれだけ自信満々に条件を出してきただけのことはある、ということだろう。そんな相手に破魔さんは本当に勝てるのだろうか。

「<サイバー・ドラゴン>の特殊召喚成功時、手札の<増殖するG>を捨てて効果を発動!」

「上手い!」

「せ、先生!?」

 機械のドラゴンが轟かせた咆哮に臆することなく、破魔さんは手札からカードを捨てて効果を発動する。その行動に養護の先生が興奮したように声を荒げ、思わず彼女を見てしまった。

「この先、相手が特殊召喚する度、ドローすることができる。何か、チェーンは?」

「……ない」

 挑発するように笑う破魔さんに神成さんは悔しそうに顔を歪める。きっと、今の一手は神成さんにとって痛いものなのだろう。

「今、何が起こったんですか? そもそも手札からカードの効果って……」

「あれは手札誘発と呼ばれるものなの。手札にあるだけで条件を満たせば相手のターンでも使えるカードね。今回、破魔さんが使った<増殖するG>はこれから神成君が特殊召喚する度にカードをドローできるようにするの」

「……それって強くないですか?」

「実際、強いわよ。基本的に展開するためには特殊召喚は欠かせない。でも、下手に展開すればそれだけ破魔さんの手札が増えていく。つまり、神成君はこれから最低限の特殊召喚で場を展開しなければならなくなった」

 

 

 

 

 

<増殖するG>

星2/地属性/昆虫族/攻 500/守 200

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できず、相手ターンでも発動できる。

(1):このカードを手札から墓地へ送って発動できる。このターン、以下の効果を適用する。

●相手がモンスターの特殊召喚に成功する度に、自分はデッキから1枚ドローしなければならない。

 

 

 

 

 

「展開するならどうぞ?」

「ちっ……だが、いくらドローしたところであいつ(・・・)には勝てない! 手札の<銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)>の効果! このカード以外の手札の光属性モンスター1体を墓地に送って発動できる。このカードを手札から守備表示で特殊召喚する!」

「……相手が特殊召喚したのでカードをドロー」

「更に追加効果! このカードが特殊召喚に成功した時に発動する! デッキから『ギャラクシー』モンスター1体を手札に加える! <銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)>をサーチ!」

 神成さんのフィールドに黄色い戦士のようなモンスターが片膝を付いた状態で特殊召喚され、破魔さんはデッキからカードをドローする。しかし、それに対抗するように神成さんもモンスターを手札に呼び込んだ。因みに神成さんが墓地に送ったのは<サイバー・ドラゴン・ネクステア>というモンスターだった。

 

 

 

 

銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)

星5/光属性/機械族/攻2000/守 0

「銀河戦士」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカード以外の手札の光属性モンスター1体を墓地へ送って発動できる。

このカードを手札から守備表示で特殊召喚する。

(2):このカードが特殊召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「ギャラクシー」モンスター1体を手札に加える。

 

 

 

 

 

 墓地→<サイバー・ドラゴン・ネクステア>

 

 

 

 

 

「ふふっ、いつもありがとう」

「……破魔さん?」

「レベル5のモンスターが2体……有栖川さん、来るわよ」

 隣で養護の先生が何か言っているか、あたしは破魔さんの様子が気になってそれどころではなかった。彼女はたった今ドローしたカードを見て微笑んでいる。そして――。

「……え?」

 

 

 

 

 

 ――そのカードから青くて長い髪を持つ、大きな羽を生やした小さな妖精が飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 2ターン目途中

 

 破魔 手札:4枚 フィールド:<ライトロード・マジシャン・ライラ>

 神成 手札:3枚 フィールド:<サイバー・ドラゴン>、<銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)>、伏せカード1枚

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