決闘者の矜持-デュエリスト・プライド- 作:ホッシー@VTuber
破魔さんがドローしたカードを手札に加え、神成さんのプレイを真剣な眼差しで眺める。だが、あたしはそれ以上に彼女の肩の上に座った小さな妖精が気になって仕方ない。いきなり、カードから飛び出したそれは半透明であり、破魔さんに付き添うようにジッと前を見つめていた。
「有栖川さん、どうしたの? なんだかボーっとしてるようだけど」
「え? あー、えっと……展開が早すぎて追いつけなくて……」
「まぁ、今の環境は高速化が進んで一瞬で形勢逆転とかしちゃうもの」
『でもね』と養護の先生は神成さんを指さす。彼のフィールドにはレベル5の上級モンスターが2体。確か、先生はこの2体が並んだ時、何か言っていたような気がする。何かが来る、と。
「レベル5の<サイバー・ドラゴン>と<
「オーバー?」
「同じレベルのモンスターがいる時にできる召喚方法――【エクシーズ召喚】よ」
デュエルモンスターズには様々な召喚方法が存在する。
モンスター同士を融合させる、【融合召喚】。
専用魔法カードとモンスターを必要レベル分生贄にしなければならない、【儀式召喚】。
他にもあるらしいがまだ覚えきれておらず、あたしはゴクリと生唾を飲みこんでフィールドを見つめる。
「エクシーズ召喚! 現れろ、<サイバー・ドラゴン・ノヴァ>!」
<サイバー・ドラゴン>と<
「あれが【エクシーズ召喚】……」
「<サイバー・ドラゴン・ノヴァ>が特殊召喚されたことにより、カードをドロー」
「もう一枚、くれてやるよ! <サイバー・ドラゴン・ノヴァ>の効果! このカードの
「え? でも、神成さんの墓地には<サイバー・ドラゴン>はいないはず……」
「いえ、いるのよ……<サイバー・ドラゴン>になってるカードが、ね」
ドラゴンの周囲を回っていた光の球が破裂するのを見ながら呟くと養護の先生は唸るように答えた。その証拠に神成さんは素材になっていた<サイバー・ドラゴン>を墓地に送った後、何事もなかったようにそのカードをフィールドに特殊召喚する。それを見て破魔さんがカードをドローした。
<サイバー・ドラゴン・ノヴァ>
ランク5/光属性/機械族/攻2100/守1600
機械族レベル5モンスター×2
(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分の墓地の「サイバー・ドラゴン」1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
(2):1ターンに1度、手札及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、「サイバー・ドラゴン」1体を除外して発動できる。
このカードの攻撃力はターン終了時まで2100アップする。
この効果は相手ターンでも発動できる。
(3):このカードが相手の効果で墓地へ送られた場合に発動できる。
EXデッキから機械族の融合モンスター1体を特殊召喚する
「<サイバー・ドラゴン>になってるってどういうことですか?」
「さっき、<
<サイバー・ドラゴン・ネクステア>
星1/光属性/機械族/攻 200/守 200
このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う。
(2):手札からこのカード以外のモンスター1体を捨てて発動できる。
このカードを手札から特殊召喚する。
(3):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、自分の墓地の、攻撃力か守備力が2100の機械族モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。
この効果の発動後、ターン終了時まで自分は機械族モンスターしか特殊召喚できない。
「そ、そんなことってできるんですか?」
「できるのよね……でも、まだ終わってないわ。むしろ、ここからが本番よ」
「まだ、何かあるんですか?」
確かに神成さんはまだ通常召喚を行っていない。これから更に展開するという――。
「――<サイバー・ドラゴン・ノヴァ>1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!」
「は!? 1体で【エクシーズ召喚】!?」
思わず、声を荒げてしまったあたしは悪くないと思う。【エクシーズ召喚】は同じレベルのモンスターが複数体いないとできない召喚方法だ。それなのに今、フィールドで行われているそれはその条件を完全に無視している。
「エクシーズ・チェンジ! 現れろ、<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>!!」
神成さんが召喚したモンスターは<サイバー・ドラゴン・ノヴァ>を凶悪化させたような巨大な機械仕掛けの翼竜だった。
エクシーズ・チェンジ。彼は確かにそう言った。もしかしたらエクシーズモンスターの中には特殊な条件を満たせばエクシーズモンスターの上に更に重ねることで【エクシーズ召喚】を行えるものもいるのかもしれない。
「……ドロー」
「さぁ、ここからが本番だ! こいつの前ではどんな行為も無駄! どれだけ手札を増やそうとも意味がないのさ!」
「……それは、どうかしら? <サイバー・ドラゴン・インフィニティ>の特殊召喚成功時、私は手札から<エフェクト・ヴェーラー>の効果を発動」
「ッ!? 破魔さん、駄目よ!」
凶悪な機械仕掛けの翼竜を前に破魔さんが取った行動は手札誘発を使用することだった。しかし、養護の先生が悲鳴をあげるように叫び、それで彼女がプレイングミスをしたのだと理解してしまう。
「このカードを墓地に送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする」
「はっ、よくカードのテキストは読んだ方がいいぜ? <サイバー・ドラゴン・インフィニティ>の効果を発動! 1ターンに1度、カードの効果が発動した時、X素材を1つ、取り除いてその効果を無効にし、破壊する!」
破魔さんが使用したのはあの半透明の小さな妖精が描かれたカードだった。彼女の肩に乗っていた妖精は意を決したように機械仕掛けの翼竜へ突撃。しかし、翼竜へ辿り着く前に大きな翼によって弾き飛ばされ、消えてしまった。
<エフェクト・ヴェーラー>
星1/光属性/魔法使い族/攻 0/守 0
(1):相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。
その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
「そんな……」
「<エフェクト・ヴェーラー>は相手のモンスターの効果を無効化する、とても強力なカード……でも、相手が悪かったわね。もう、あのドラゴンは止められない」
「で、でも、あのドラゴンの攻撃力はそこまで高くないですよね? それに破魔さんのフィールドにモンスターはいるから少しぐらいダメージを軽減してくれるのでは?」
「いえ……ここからがあのドラゴンの凶悪な効果が発動するわ」
「<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>の効果を発動! 1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象に取って発動! そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする!」
養護の先生の言葉を証明するように神成さんが破魔さんの<ライトロード・マジシャン・ライラ>を指さして効果を発動する。相手のモンスターを、吸収? この効果が通れば破魔さんのフィールドはがら空きになってしまう。
「<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>はX素材の数だけ攻撃力が200アップする。<エフェクト・ヴェーラー>によって下げられた攻撃力、返してもらうぜ」
「今の<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>のX素材は1つ。<ライトロード・マジシャン・ライラ>が吸収されたら攻撃力は2500。<サイバー・ドラゴン>もいるからこのままではLPの半分以上を削られてしまうわ」
「そんな……破魔さん!」
<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>
ランク6/光属性/機械族/攻2100/守1600
機械族・光属性レベル6モンスター×3
「サイバー・ドラゴン・インフィニティ」は1ターンに1度、自分フィールドの「サイバー・ドラゴン・ノヴァ」の上に重ねてX召喚する事もできる。
(1):このカードの攻撃力は、このカードのX素材の数×200アップする。
(2):1ターンに1度、フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターをこのカードの下に重ねてX素材とする。
(3):1ターンに1度、カードの効果が発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
その発動を無効にし破壊する。
「さぁ、その白い魔法使いを吸収しろ!」
無情にも機械仕掛けの翼竜は無防備な白い魔法使いを捕えるために機械のコードを体から放つ。それを破魔さんは黙って――いや、一枚のカードに手を伸ばしている?
そして、彼女の動きに合わせ、機械仕掛けの翼竜から放たれたコードは突如として現れた巨大な手によって弾かれた。