決闘者の矜持-デュエリスト・プライド-   作:ホッシー@VTuber

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5ターン目

「な、何とか……なりましたね」

 無事に相手のターンが終わり、あたしは思わず椅子の背もたれに背中を預けてしまう。最初はどうなることかと思ったがあの凶悪な<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>を除去できたのはよかった。

「そうでもないわ。神成君は次の自分のターンでもう一度、<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>を召喚するつもりよ」

「確かにレベル5のモンスターは並んでますが……でも、破魔さんにはあのゴーレムがいますし戦闘破壊できるのでは?」

「そこが神成君の上手いところよ。彼はさっき<キメラテック・ランページ・ドラゴン>で<超電磁タートル>を墓地に送ってるわ」

「<超電磁タートル>?」

「墓地にあると相手のバトルフェイズを強制終了するカードよ」

 

 

 

<超電磁タートル>

星4/光属性/機械族/攻 0/守1800

このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

(1):相手バトルフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。

そのバトルフェイズを終了する。

 

 

 

「そ、それじゃ……破魔さんはバトル以外であの2体をどうにかできなければ」

「次の神成君のターンでまたあのモンスターが出てくるわ」

 あたしはフィールドに立つ破魔さんを見つめる。彼女も今の状況を理解しているのか、神成さんのフィールドに立つ2体の機械仕掛けの竜を睨みつけていた。

「でも、まだ希望はあるわ。<ウィッチクラフトゴーレム・アルル>は相手のスタンバイフェイズ時に手札に戻る効果があるの。だから、さっきの<エフェクト・ヴェーラー>のようにもう一手用意出来れば……」

「<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>をどうにかできる!」

「……でも、神成君もそれは知ってるはず。一筋縄ではいかないでしょうね」

「え? それってどういう――」

「――私のターン……ドロー」

 あたしと養護の先生の会話は破魔さんが動き出したことで打ち切られる。運命の3ターン目、破魔さんはドローしたカードを手札に加え、すぐに1枚のカードをデュエルディスクの魔法・罠カードを挿入する穴に差し込んだ。

「私は手札から<一撃必殺!居合いドロー>を発動!」

「はぁ!?」

「い、居合いドロー……」

 破魔さんが使用した魔法カードを見て神成さんが声を荒げ、養護の先生はドン引きしていた。もしかしてとんでもないカードだったりするのだろうか。

「せ、先生……あのカードは……」

「そうね……簡単に言えば一発逆転を狙えるカード、ではあるわね。運が悪ければこのカードで神成君は死ぬわ」

「死ぬ!?」

「このカードは手札1枚捨てて発動することができる。相手フィールド上のカードの枚数だけ自分のデッキからカードを墓地に送り、その後、カードを1枚ドローする。そのカードをお互いに確認し、それが<一撃必殺!居合いドロー>だった場合、フィールドのカードを全て破壊する。そして、破壊され墓地へ送られたカードの数×2000ダメージを相手に与える。違った場合は墓地に送ったカードの数だけ墓地からカードを選び、デッキに戻す」

 淡々とカードの説明をする破魔さんだったが、あたしもそれを聞いて唖然としてしまった。現在、フィールド上にあるカードは破魔さんの<ウィッチクラフトゴーレム・アルル>、神成さんの<サイバー・ドラゴン>、<キメラテック・ランページ・ドラゴン>と伏せカード1枚。この計4枚だが、もし破魔さんが<一撃必殺!居合いドロー>の効果を成功させた場合、合計8000ダメージを与えることになる。まさか破魔さんはここで勝負を決めるつもり――。

「――コストは……<一撃必殺!居合いドロー>」

「だぁー!」

 苦笑気味に墓地へカードを送る破魔さんに対してあたしは思わずずっこけてしまった。きっと<増殖するG>で引いてしまったのだろう。

 

 

 

<一撃必殺!居合いドロー>

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):手札を1枚捨てて発動できる。

相手フィールドのカードの数だけ自分のデッキの上からカードを墓地へ送り、その後自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。

それが「一撃必殺!居合いドロー」だった場合、それを墓地へ送り、フィールドのカードを全て破壊する。

その後、この効果で破壊され墓地へ送られたカードの数×2000ダメージを相手に与える。

違った場合、自分はこの効果でデッキから墓地へ送ったカードの数だけ、自分の墓地のカードを選んでデッキに戻す。

 

 

 

「あなたのフィールドのカードは3枚。よってデッキから3枚カードを墓地に送り、その後ドローする。墓地へ送られたのは<ギャラクシー・サイクロン>、<光の護封霊剣>、<黒き森のウィッチ>……はい、ドロー」

「おい、もっと勿体ぶってくれ! ひやっとするだろうが!」

「だって、絶対に当たらないもの(・・・・・・・・・・)。勿体ぶる時間が勿体ないわ。私がドローしたのは<エフェクト・ヴェーラー>、外れね」

 破魔さんがドローしたカードを神成さんへ見せつける。それとほぼ同時にカードから再び小さな妖精が登場し、神成さんへ『あっかんべー』と挑発した。おそらく彼に妖精の姿は見えていないがそのカードを見た瞬間、頭を抱えてしまう。

「ある意味、大当たりじゃねぇか! また<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>に打つ気だろ!」

「さぁ、どうかしら。外れたから墓地からカードを3枚、デッキへ戻す。戻すのはさっきコストで捨てた<一撃必殺!居合いドロー>、<おろかな副葬>、<黒き森のウィッチ>」

 

 

 

 墓地→<ギャラクシー・サイクロン>、<光の護封霊剣>、<黒き森のウィッチ>

 ドロー→<エフェクト・ヴェーラー>

 デッキ→<一撃必殺!居合いドロー>、<おろかな副葬>、<黒き森のウィッチ>

 

 

 

「当たらなくて残念のような……外れてよかったような……」

「いえ、完全に成功よ。これでさっき言ってた一手を用意できたわ」

「あ、そっか! ゴーレムが手札に戻れば神成さんは<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>の効果を使えないし、攻撃対象に取った時も発動できるから気軽に攻撃もできないですね!」

「……ええ、そうね」

 あたしの言葉を聞いた先生はどこか不安そうにフィールドに視線を戻した。いや、神成さんのフィールドに伏せられているカードを見ている?

「メインフェイズを続けるわ。私は手札から<黒き森のウィッチ>を通常召喚。そして――」

「――おっと、そう焦るなよ! 通常召喚成功時、(トラップ)カード、オープン! <サイバネティック・オーバーフロー>!」

「なんですって!?」

 神成さんが発動した罠カードを見て養護の先生が立ち上がって叫ぶ。破魔さんもカードを見た瞬間、苦しげに顔を歪めた。

「自分の手札・墓地及び自分フィールドの表側表示モンスターの中からレベルの違う<サイバー・ドラゴン>を任意の数だけ除外する! その後、除外した数だけ相手フィールド上のカードを選んで破壊する! 俺が除外するのは<サイバー・ドラゴン>扱いとなっている<サイバー・ドラゴン・ヘルツ>と手札の<サイバー・ドラゴン>!」

 

 

 

<サイバネティック・オーバーフロー>

通常罠

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分の手札・墓地及び自分フィールドの表側表示モンスターの中から、「サイバー・ドラゴン」を任意の数だけ選んで除外する(同じレベルは1体まで)。

その後、除外した数だけ相手フィールドのカードを選んで破壊する。

(2):フィールドのこのカードが効果で破壊された場合に発動できる。

デッキから「サイバー」魔法・罠カードまたは「サイバネティック」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

 

 

 除外→<サイバー・ドラゴン・ヘルツ>、<サイバー・ドラゴン>

 

 

 

「2枚のカードを除外……と、いうことは!?」

「破壊するのは<黒き森のウィッチ>と<ウィッチクラフトゴーレム・アルル>!」

「くっ……」

 除外された2体の機械仕掛けの竜が半透明の状態で出現し、その体から火花を散らしながらレーザーを放つ。そのレーザーを受けた黒い魔法使いと巨大なゴーレムは粉々に砕け散ってしまった。破壊された爆風で破魔さんが僅かに態勢を崩す。

「まさか、破壊されるなんて……」

「神成君もさすが『オベリスク・ブルー』というところね。前のターンで破魔さんにドローさせてでも<サイバー・ドラゴン・ヘルツ>と<超電磁タートル>を墓地に送ったのは破魔さんが動いた瞬間、ゴーレムごと破壊するためだったのね」

「これでゴーレムは手札に戻らない! 通常召喚もすでに終わった! さぁ、どうする!?」

「……<黒き森のウィッチ>の効果を発動。このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、デッキから守備力1500以下のモンスターを手札に加える」

 

 

 

<黒き森のウィッチ>

星4/闇属性/魔法使い族/攻1100/守1200

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。

デッキから守備力1500以下のモンスター1体を手札に加える。

このターン、自分はこの効果で手札に加えたカード及びその同名カードの効果を発動できない。

 

 

 

「サーチ、ですか」

「ええ……でも、<黒き森のウィッチ>でサーチしたカードはこのターン中、効果の発動ができないからこの状況をどうにかすることも……」

 もし、このまま破魔さんがターンを終了した場合、次のターンに<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>が召喚されるうえ、<超電磁タートル>も健在。その状態で逆転するのは難しいだろう。

「ほら、サーチしろよ。まぁ、どうすることもできないだろうけどな」

「私がサーチするのは……<Em(エンタメイジ)ハットトリッカー>!」

「『Em(エンタメイジ)』!? どうして、そんなカードが!?」

 破魔さんがサーチしたのは紫色のとんがり帽子、オレンジ色のサングラスに緑のマントと手袋をくっつけた変なモンスターだった。きっと、あれも『ライトロード』や『ウィッチクラフト』とは違うカテゴリーなのだろう。本当に彼女のデッキはバラバラ――いや、違う。共通点が一つだけある。

「そんなモンスターをサーチして何になる! どうせ、効果を使えないのに!」

「確かに効果は使えない……でもね、発動を含まない効果は制限されないわ! このカードはフィールド上にモンスターが2体以上存在する場合、手札から特殊召喚できる! 来て、<Em(エンタメイジ)ハットトリッカー>!」

 

 

 

Em(エンタメイジ)ハットトリッカー>

星4/地属性/魔法使い族/攻1100/守1100

(1):フィールドにモンスターが2体以上存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

(2):自分にダメージを与える魔法・罠・モンスターの効果が発動した時に発動できる。

このカードにEmカウンターを1つ置く(最大3つまで)。

その後、その効果で自分が受けるダメージを0にする。

(3):このカードにEmカウンターが3つ置かれた時にこのカードの攻撃力・守備力は3300になる。

 

 

 

「この状況でモンスターを呼び出した……守備表示で特殊召喚すれば<サイバー・ドラゴン・インフィニティ>の吸収効果は使えない。壁としては役に立つ、けど」

「いいえ、来ます……」

 養護の先生は感心したように呟くがあたしは破魔さん見ながら震える声でそう言葉を零した。思い出すのは<ライトロード・マジシャン・ライラ>の効果で最後に落ちたあのカード。

 <ライトロード・マジシャン・ライラ>、<ウィッチクラフトゴーレム・アルル>、<黒き森のウィッチ>、<Em(エンタメイジ)ハットトリッカー>。

 カテゴリーはバラバラで一見、統一性のないように見えるカードたち。しかし、彼らは全員――『魔法使い族』モンスターだった。

「壁モンスターを用意したのは褒めてやる! だが、残念だったな! 俺のデッキは壁モンスター1体でどうにかなるデッキじゃないぜ!」

「ええ、知ってるわよ。『サイバー・ドラゴン』デッキは有名だから知り尽くしてるわ」

 そう言いながら破魔さんは手札から一枚のカードを手に取る。やはり、あのカードだけは違う。<エフェクト・ヴェーラー>も他のカードとは違うけど、あのカードは、魂を宿しているように感じる。

「だからこそ、何をしてくるか……予想しやすい! 魔法使い族モンスターである<Em(エンタメイジ)ハットトリッカー>をリリース!」

「リリースだと!?」

 守備表示で特殊召喚されたモンスターはその姿を消し、その刹那、会場に凛とした何かが迸る。

「…………」

 静寂、というのだろうか。静まり返る会場にあたしは言葉を失っていた。いや、あたしだけじゃない。隣に座る養護の先生も、相手である神成さんも、司会者も、一切、声を発していない。

 そう、ただのソリッドヴィジョンのはずなのに会場にいる全員が破魔さんの持つカードに沈黙(・・)させられているのだ。

「見せてあげるわ、これが私のデッキのエース! 顕現せよ、<沈黙の魔術師-サイレント・マジシャン>!」

 

 

 

 

 

 そして、破魔さんのフィールドに彼女にそっくりな白銀の髪を持つ美しい魔法使いが現れた。

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