絶望の淵から
第1話
雨が、首筋を叩く。
私を叱るように、又は鼓舞するように。
雷が、視界を奪う。
私の目を覚ますように、此処が現実だと教えるように。
地面に突き立てられた細剣__《スチール・レイピア》の持ち主は居ない。
私の装備は、大鎌だ。
細剣ではない。
先程まであった温かさが無い。
その代わりに、気分の悪くなる息遣いのみがある。
動く不気味な植物に囲まれ、気持ちの悪い大型の見知らぬ動物___いや、怪物に直面している。
もう、誰も助けてくれないことをこの世界は嫌という程伝えてくる。
______ザアアアァァァ,という土砂降りの雨の音と共に、私は目の前のそいつを殺すために地を蹴った。
そろそろかな。
紫がかった、長い黒髪の上に《ナーヴギア》を被せる。
待ちに待ったこの瞬間。
胸の高鳴りを抑え、あの時と同じ言葉を久しぶりに口にする。
「リンク・スタート!」
兎沢 深澄____《ミト》は、そっと目を開く。
見覚えのある町。
あの時の、遥かに自分より高い位置からの眺め。
ごつごつとした手。
装備はクリアされてしまったが、βテストと同じ。
「よし、来たな_____!」
小さくガッツポーズを作り、迷いなく広場を駆け出した。
ひと狩り終え、コルも溜まった。
これなら、武器も買えそうだと満足気に頷いたその時。
_____だーかーら!と・ざ・わ・み・す___
聞き覚えのある声。
栗色のロングヘア。
華奢な体つき。
あれは________
兎沢 深澄は、ずっと1人だった。
一人っ子で、両親は深澄が初等科1年になる頃にはもう中が冷めきっていて。
表に出すことこそ無かったが、家を留守にしがちで共働きだった故に深澄は寂しかった。
しかし、そんな深澄にも楽しみがあった。
「ナナナとハッチ」というアニメだ。
マイナーなアニメだが、金曜は間に合うように走って帰っていたのを覚えている。
内容は姉弟がゲーム世界に入ってしまったというようなもの。
アニメで描かれる家族愛や友情が、深澄には眩しかった。
それからしばらくした頃。
一緒にゲームをする友達が出来た。
その子たちは、あまりゲームは上手では無かったが、大剣装備アタッカーの深澄が生き残れば何とか倒すことが出来、全滅よりマシだろうと___そんなふうに純粋に楽しんでもらえていると思っていたから。
「いっつも深澄ちゃんだけ生き残るんだもん。」
「もう私たちのことは放っておいてよ。」
いきなりの絶交発言。
深澄はふらふらと帰宅し、そのまま寝込んでしまった。
それから友達を作るのをやめ、一人で優等生を演じ、PvPを続けてきた訳なのだが___
1人だけ例外が居た。
結城明日奈だ。
優等生で、首席の深澄には劣るものの、性格の良さから圧倒的な人気を誇る。
そんな彼女と訳あって仲良くなり、SAOに誘ったのだが。
「ごめんね、受験だから。」
真面目か。
思わず突っ込みかける。
しかし、それならば仕方が無いと諦め、こちらに来たのだが。
_____何故いる。
いないはずだと思ったのに。
いや、そんなことはどうでも良いのだ。
このままでは本名を晒されてしまう。
全速力で走り、明日奈へと飛び上がって。
「待て!!!!!」
と、我ながら強そう__という感想を零しそうな声で告げる。
明日奈は恐ろしく怯えている。
何故??
あ、お面かな。
「私、私よ、深澄。」
「わ,わたしはみすみなんて人知りま__!!深澄?」
声を変えることにして、仕方なく私の声で話す。
ここまで晒さないでくれ、お願いだから____
「本名を 大声で 言わないでッ !!!!!!」
そんな出来事もあった。
楽しかったなぁと、今では苦い過去として思い出に残っている。
なぜなら、もうこのゲームはただのゲームではなくなってしまったから。
なぜなら、明日奈___アスナは、
死んでしまったから。
ある日、大分上達してきたアスナを見かねて、私は《ホルンカの森》へネペントを狩ることを提案した。
理由は、フロントランナーに追いつけるかもしれないから。
正直、アスナは上達にもっと時間がかかると見積もっていたのだが、それを大きく上回って上達したのだ。
アスナも承諾し、2人でネペント狩りへ向かったのだった。
ネペントの注意点も伝えた。
攻撃パターンも。
足りなかったこととすれば、私の注意だろう。
レアモンスターに目を奪われた、私の責任だろう。
アスナは《シューティングスター》という細剣突進技を放った。完成度も完璧で、私も見とれてしまう程だ。
しかし。その後ろにネペントが湧いてしまったのだ。
しかも、実付きの。
必死に叫んだが、もう間に合わない。
煙によって引き寄せられたネペント共を、2人で片付けにかかった。
ネペントだけなら良かったのだ。
順調に倒せていたし、HPもイエローまで落ちていない。
油断が読まれてしまったのだろうか。
私がトラップに掛かり、落下した。
死にはしなかったが、アスナはそれによりパニックを起こした。
必死に打ったと思われる、パーティメンバーへのメッセージ。
『たすけて、』
変換されていない文字が、彼女の切羽詰まっていた様子を物語っている。
それから私は、ネペントが湧く前に道を駆け上がり、アスナの元へ戻った。
______しかし。
運命とは、こんなにも人を欺くものなのか。
フィールドボス《ジャイアント・アンスロー》がポップしていたのだ。
奴に食われる直前、アスナは私に思い切り細剣を投げた。
そんなことをされては、駆け寄れないではないか。
助けられないではないか。
そう。
アスナは、こう言った。
『 ご め ん ね 。 さ よ な ら 。』
と。
アスナの攻撃で私のHPがレッドへ落ち、それと同時に。
アスナは化け物に食われて死んだ。
悲鳴も上げず、ただ、涙を流して。
私に微笑んでいた。
それからの事は、よく覚えていない。
ひたすらフィールドボスを斬りつけ、オーバーキルとも言われる最後の一撃でトドメを刺した。
ネペントは、どう殲滅したのだろうか。
HPバーが残り1ドットを残して、この世界に残ってしまった絶望だけが残っていた。
どうせなら、このまま雨に打たれて朽ち果てて逝きたい。
アスナのところへ。
しかし、どれだけ待ってもその願いを聞いて貰えないことが分かって。
重い脚を引き剥がすように、《ホルンカの森》を立ち去った。
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初めまして!またはこんばんは,こんにちは!
ミト大好き過ぎる人です.
今回は、キリミトを描いて見ようと思いまして、今に至ります。
アスナが大変な目にあってますが、多分生き返りません。
アスナファンの方、ごめんなさい…
①ミトにユニークスキルを付けた方が良いですか?
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①付けた方が良い
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①要らない