第4話_
○月✕日
「明日、トールバーナで攻略会議があるから、良ければ出てくれないか。」
そう彼に言われ、今日は攻略会議に出た。
大分不快な出来事もあったが、まぁ無事に収まったので良かったとは思う。
しかし、ディアベル______あの男は、何かがある気がするのだ。気のせいなのだろうか。
━━━━━━━━━━━━━━━
「俺はディアベル。職業は、気持ち的にナイトやらせてもらってます」
そんな言葉とともに始まった、攻略会議。
キリトの言った時間通りに始まった。
私は比較的ぎりぎり_____といっても5分前だが_____に着いた為、後ろくらいしか座るところが無かった。
故にそこに座った。
そこから、色々な説明を受ける。
まぁ別に、当たり前か。
そんな感想を抱くようなレイド内でのルールや作戦等だ。
しかし、此処で事件が起きる。
《キバオウ》というプレイヤーが苦言を呈したのだ。
βテスターは、ビギナーに謝罪しなければならないと。
自分らを見捨てて、アイテムを漁っていると。
正直なところ、心が抉られた。
見捨てたくてしている訳では無いのだ。
助けることは、出来なかったが。
目の前で死んでしまったが。
この後、《エギル》という巨漢プレイヤーの発言により収まったのだが、心に影を落としたままだった。
そして、第2の事件が起きる。
「じゃあ、この中で6人くらいのパーティを組んでみてくれ!」
「な……!?」
そう。
知り合いなんて居ないし、もう皆組み終わっている。その場に固まって座っていたからだ。
しかし、私はというと。
そんなことを考えていなかったので、ひとりぽつんと座っている。
____ヤバいヤバい、これはまずい終わった詰んだか???詰みか????______
いや、もともとひとりぼっちだったから良いのだ。そのことに関しては。
しかし、パーティが組めない=攻略に参加出来ない、という式が出来てしまう。
冷静さの欠けらも無いことを考えていると。
「アンタもあぶれたのか。」
癪に障る一言と共に、聞き覚えのある声が。
事の発端は、此奴な気がする。
というか、アンタもということは此奴もあぶれたのか。そうで良いのだな……?振り返ったらパーティメンバーと嘲笑いに来ました、とか無いよな……?
そう思いながら、恐る恐る振り返ると、そこにはキリトの姿が。
「アンタ、じゃないわ。ミトよ。」
「あぶれたのは認めるんだな。」
「……仕方ないでしょ、コミュ障だし。」
「……やめろよ、悲しくなってくるだろ……」
と、くだらない会話を繰り広げる。
「なら、俺とパーティ組まないか。
ボス戦までの、暫定的な。」
「……それしか方法無いし。
良いわよ、」
申請してよ、と言いたいのだが、昨日の自殺未遂の件もあり言いづらい。
仕方が無いので、私から送ることにした。
そして、アスナのHPバーがあった場所に《Kirito》というHPバーが表示される。
それは、2人がバトンタッチしたように思えてならなかった。
「……じゃ、宜しくな。」
「ええ、宜しく。」
そんなシンプルなやり取りを交わして、無事乗り切った。
2人しかいないので、雑魚コボルトの相手なのだが、まぁ良いだろう。とそこは許すことにした。
「あー、疲れた……」
私はパンを片手に、如何にも光の当たらない裏路地に居る。
人混みは苦手だし、下手に絡まれなくないのだ。もそもそと硬いパンを齧り、ため息をつく。
クリームがあればなぁ_____
そんなことを思いながら齧っていると。
「そのパン、上手いよな」
またか。
「クリームがあればね。」
「あ、俺持ってるよ。使うか?」
マジか。
なら遠慮なく、とふんだんにパンに使う。はむ、と齧ってみれば、爽やかな味とどっしりとした濃厚さが丁度よく合わさって、田舎風ケーキになったような味になる。
私はあっという間に食べきってしまったが、まぁ気にしてはいない。
「昨日言ってた農家の近くで受けられるぜ。どうせ知ってるんだろうけどな。」
「どうせって何よ。
というか、村移動したから宿取んなきゃか……」
また宿探しか、とため息をつく。
が、キリトが意外な一言を告げる。
「俺のところはベット付き、無料のミルク付き、それに眺めも良くて風呂付きなんだぜ____」
ぺらぺらと続く自慢より、ある単語が私に思い切りダメージを与える。
いや、でも借りるなんて良いのか?
でもどうしても借りたい……
貸家は1人しか借りることが出来ないし、この人の事だ。どうせ長めに取っているのだろう。だとすれば、もうこれしか手はないわけだが。一応確認は必要か。
気がつけば、私は壁際のキリトの行先を脚で遮っていた。
「今、なんて??」
「え、ええと……ベッド付き?」
「その後。」
「ミルク付き?」
「もっと後。」
「眺めも良くて……」
「その後」
「……風呂付き?」
よし、聞き間違いではなかった、と安心して次の作業に取り掛かる。
「……ねぇ、お風呂貸して。」
「……はい??」
「凄ぉ……」
キリトに承諾を得て、風呂場へと案内してもらう。
綺麗すぎるだろというか豪華____という素直な感想を抱き、
「本当に借りて良いの?」
「あ、ああ。勿論。」
そう確認してしまう。
しかし、本人が許可するなら良いのだろう。
遠慮なく借りることにした。
「じ、じゃあごゆっくり!!!」
不自然な速さで去っていくキリトを見送りつつ、風呂場へ入る。
_____鍵かかんないじゃん、
という重大すぎるミスに気づくが、もうどうしようもない。
そう腹を括って、装備を全解除した。
何も身につけていない背中に髪の感触が触れる。
行儀は悪いが、そのまま思い切り風呂へダイブして。
「……うあぁ……」
間の抜けた声が出る。
暖かい、と目を細めて、このままなら死んでも良いかも知れないと思う。
しかし、アスナは怒るだろうからまだ死なないが。
キリトは何をしているのか、と若干不安を抱きつつも十数分風呂を堪能したその時。
「じゃ,部屋借りるぞ,キー坊.」
と、誰かが扉を開ける。
「は!?」
正常な思考を投げ出し、風呂から飛び出す。
その先は何も覚えていない。
「悪かった、俺が悪かったって。」
「……絶対忘れてよね」
暫定的パートナーの目の前にてやらかしてしまった私は、ソファに腰掛けてそう述べる。
情報屋アルゴ_____彼女はそう名乗った。
「……それにしても、ミト。
ミトは、昨日…,自殺しようとしてただろ。
その……今はどうなんだ。」
たどたどしくそう尋ねてくるキリト。
私は、少し返答に困る。
別に、生きたいと私が願っている訳では無いし、かといって死にたい訳でも無いのだ。
ただひとつ、理由があるとするならば。
「今は死ぬ気は無いわ。
生きたいとも思わないけど。
だけど、ひとつ理由というか……決意っぽいものはあって。」
ただ醜いだけの決意だが。
きっとアスナなら、世界に負けない為に戦うと____そう前向きな、真っ当なことを言うのだろう。
しかし、私にはそんな綺麗事は言えない。
「アスナを___明日奈を奪ったこの世界を終わらせる……滅ぼすために、復讐してやりたい。」
「復讐……」
これが私の、最終的な答えだ。
醜くて、何処までも真っ黒で、澄んでなんて居ない。
光に満ち溢れたアスナとは違い、私は影で生きている。そんな思いがあったのかもしれない。
だけど、今の私にはこの理由で十分だ。
「だから、明日のボス戦も。その先も。
百層をクリアするその日まで____ボスを殺して、復讐を遂げるまで、私は死ぬ気は無いわ。」
その宣言を、キリトにしたのだった。
次回はボス戦になります!
あんまりキリミト出来なかったような、出来たような……微妙ですね。
ミトはアスナと対照的なイメージが勝手にあるので、アスナが《閃光》ならミトは《閃影》じゃないか……?
ミトは多分、アスナみたいな真っ直ぐな答えは出さないんじゃないか……?
と思った末に書きました!
後に変わっては行きますが、決意したミトの先を是非見守ってください……!
①ミトにユニークスキルを付けた方が良いですか?
-
①付けた方が良い
-
①要らない