第2層にて
第7話_
アインクラッド第2層主街区《ウルバス》は、直径三百メートルほどのテーブルマウンテンを、外周部だけ残してまるごと掘り抜いた街だ。
私_____大鎌使いのミトと、暫定的パートナー____ソードマンのキリトは、たった2人でこの第2層へ踏み出した。
出来ることなら、アスナを連れてきたかったのだが、それはもう叶わない。
しかし、以前キリトに言われた言葉__”親友の命を繋いでいく”_その言葉を信じて、私は第2層へ行くことを決意したのだ。
南のゲートから中に入ると、視界に【INNER AREA】の表示が浮かび、スローテンポな街区BGMが耳に届いた。
歩いているNPCの服装も、微妙に変わっていて、新しい層に来た事を実感させられる。
「…来たな…」
「来た、ね…」
「「新しい層に!」」
私は、ここに来る前にもゲームをしていた。
と言うより、ゲーム漬けだった、の方が正しいが、つまりはゲーマーだった訳で。
そんな私が新層に、しかも2人という少人数で、1番初め____正確には、キリトの次なのだが____にこの層を独占することが出来ているのだ。
ここまで最高と呼べるものはあるだろうか。
いや、無い。
_____アスナ、凄い…凄いよ、
そんな感動をアスナに心のなかで伝えながら、キリトと暫し会話をすることにする。
「第2層って、牛ばっかりのフロアよね。」
「ああ、そうだ。」
「……たしか、すんごく美味しいケーキあったよね、」
「……しかも恐ろしく値段が高いやつな。」
「いつか奢ってもらお、」
「……勘弁してくれ、」
苦々しい顔を向けるキリトを見て、私は思わず笑ってしまう。
しかし、この少年はつい先程《ビーター》宣言をしたばかりなのだ。私には成し得ない、解決方法として悪役を買って出た。
どうしてそんな事が出来るのか。
下手したら、殺されていたかもしれない。
もしかしたら、これから先、ずっとソロプレイヤーになるのかもしれない。
もしかしたら、ずっとプレイヤー達に忌み嫌われるかもしれない。
そんなリスクを負ってでも、他人の為に行動出来るこの少年____剣士は、何を考えているのか。
何を見て、何を思い、どう生きるのか。
私にはきっと、想像もつかない生き様なのだろう。
私とはきっと、大きく違った生き様なのだろう。
英雄と称えられるべき、素晴らしい剣士になるのだろう。
______私と違って。
私は、彼と違う。
《ビーター》と《テスター》。
他人の為に行動出来るか、出来ないか。
光を歩むか、影を歩むか。
それに、強さだって彼の方が強い。
いつも先を歩み、私は追い付くことが出来ない。
でも、それで良い。
私には私の生き方があるのだから。
彼を追うこと、共に戦うこと。それに固執する必要はない。_____だから、いつか道は別れるのかもしれない。
そういえば、と ふとボス部屋の事を思い出す。
情報屋_____アルゴのことを。
アルゴは、何故ヒゲペイントを施しているのか?
「ねぇ、キリト。」
「なんだ?」
「アルゴさんって、何でヒゲペイントなの?」
「……それは、俺も知らない。」
「…へぇ、」
知らないんだ。
だとするならば、余計に気になって仕方がない。
「あ、そろそろ街開きするぞ。」
「ん、了解。」
「どっちがする?ミトやるか?」
街開き____それは、転移門の開通のこと。
多分、私たちを除く全プレイヤーが望んでいる瞬間である筈だ。
記念すべき第一回目____二回目まで生きているかは不明だが___を出来るなんて、ゲーマーとしては光栄すぎる、魅力的な誘いではあるが。
「いや、キリトがやって。」
「良いのか?」
「だって、ボス倒したの貴方でしょ。」
「…じゃ、遠慮なく。」
そう言うと、キリトはアーチの手前でぐるりと周囲を見回す。
私には、それが完全に退路を探しているように見えて、
「…退路でも探してるの?」
と尋ねてみる。
あまりにもその動きは不自然すぎないか、と。
「…ああ。ミトも見てた通り、俺は《ビーター》だ。只のベータテスターじゃない。
その結果、今頃俺の悪名がハイレベルプレイヤーたちの間に超高速で轟きまくっているだろう。
そんな中で出ていったら……」
「なるほど、おめでとうの声どころか、帰れコールが湧き起こり得る。だから逃げる、と。」
「ご名答。
ミトは街開きを見ていたかったら、別に俺と逃げなくても_______」
と、キリトはそう言う。
しかし、私の答えは決まっている。
「その心配は無いわ。私も一緒に逃げるから。
もともと、盛り上がってる場所にいるのは好きじゃないしね。」
それに、街開きを終えた直後の景色も見てみたいし、と付け加える。
この言葉は紛れもない本音で、私は逃げる気満々だった。
「そうか。じゃあ、ちゃんとついてこいよな」
「キリトより速いのでご心配なく。」
「…素直じゃないなぁほんとに…」
そう文句を垂れつつ、キリトは揺れる透明なベールへと手を伸ばし、そっと触れた。
「行くぞ!」
「OK!」
街開きがされた確認もせず、私とキリトは全速力で走り出す。
キリトを間違えて追い抜かないように、少し減速したのは内緒にしておこう。
そして、やがて教会めいた建物に辿り着き、そこの三階から見守ることにした。
街開きのファンファーレが鳴り響き、様々なプレイヤーが溢れだしてくる。
先程の静かさはどこへ消え失せたのか、一気に喧騒に包まれた。
そんな中、恐ろしいスピードで走る少女を見つけた。
あれは見覚えがある。
「……アルゴさん?」
キリトも同じことを思ったようだ。
「…やっぱり、アルゴだよな。」
その後を、また恐ろしいスピードで追うプレイヤーが数名。
「……あれ、なんかまずくない?」
「だよな。」
「________追いかけてみる?」
流石に明らかに追われているとするならば、PK___プレイヤーキラー__に狙われている可能性も無くはない。
故に、助けに入った方が良い気もする。
「……追いかけよう、」
「了解。」
キリトの返事を聞くと、私とキリトはシステムにものを言わせて走り出した。
今回はとあるエクストラスキルを手に入れてもらうために、アルゴを追ってもらいました!
このお話の時だと、原作ではアスナが居ないのでどうしようかなと思ったんですが、ゲーマーのミトなら欲しがるかも、と思い一緒に習得してもらいます()
多分、本格的に2層攻略に励み始めるのは次の次くらいになると思いますが、息抜き程度に楽しんでいただけると幸いです!
①ミトにユニークスキルを付けた方が良いですか?
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①付けた方が良い
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①要らない