星の無い夜から   作:ミト推しのレイ

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エクストラスキル《体術》

第8話_

 

 

「アルゴさんの居場所は?」

 

「この道で合ってる。大丈夫な筈だ。」

 

キリトの《追跡(ついせき)》スキルでアルゴの足跡を辿る。

私とキリトは、情報屋アルゴを追いかけているのだが、その理由は怪しいプレイヤーがアルゴを追いかけているからである。

 

「アルゴさんが追われる理由とか、アルゴさんを追い掛けそうなプレイヤーに心当たりってある?」

 

「そうだな…理由は色々思いつくけど、プレイヤーはPK以外はあんまり…アルゴに告白迫ってるとかか…?」

 

「……,」

 

「……,」

 

私とキリトは多分、同じことを考えているだろう。

アルゴに一方的に迫る男性____この時代なら女性もあるかもしれないが____がいて、必死に追いかけている様子を。

 

「「__________いや、無いな。」」

 

お互いにハモる。

 

「…我ながら失礼よね、」

 

「確かにな。」

 

キリトと顔を見合わせて笑う。

というか、この人と一緒に行動していたとすれば、そういう関係に見られたりするのだろうか。

 

「___私、これからフード被ろうかな…」

 

「どうしたんだよ急に…」

 

いや、でもそういう関係に見られても悪くないかも……レストランとかでカップル割とかあれば安くなるかもしれないし…

ここで私は冷静になる。

 

_____あれ、なんでこんなこと考えてるんだ

 

ぺちん、と頬を叩き、

 

「…ど、どうしたんだよ」

 

と、キリトに気味悪がられる。

 

「別に?」

 

「そ、そうか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☽︎‪︎.*·̩͙‬

 

 

 

 

 

 

 

暫くすると、アルゴと私たちの距離が狭まったのか話し声が聞こえてきた。

 

「この声…アルゴさんだよね」

 

「ああ、間違いない…」

 

「…んども言ってるだロ!この情報だけは、幾ら積まれても売らないんダ!」

 

語尾にコケティッシュな鼻音が被さる声。

その声は、明らかにアルゴの声だった。

しかし、普段の3割増しで険悪な、棘のある響きだ。それに続けて、こちらも刺々しい男の声。

 

「情報を独占する気はない。しかし公開するつもりもない。それでは、値段の吊り上げを狙っているとしか思えないでござるぞ!」

 

よくよく聞いてみると、やはり男性プレイヤーの声が響いて来る。

しかし、口調がおかしいのだ。

現代にいるんですか、と訊きたくなるくらいのロールプレイ。ある意味、一種の厨二病とかいうやつでは…?という淡い疑問を抱くが、とりあえず置いておく。

 

キリトが何やら傍らの岸壁を登り始めたので、何をするつもりなのかと少し考える。

1箇所に固まっていると、何が起こるのか。

____なるほど。

すぐに納得し、苦労はするが私も同じように登り始める。

 

「…察しが良くて助かったよ。

それに、ここからだと良く見えるだろ。」

 

ひそひそと声を殺して話しかけてくる。

何故わざわざ苦労してアルゴたちの死角から山をよじ登っているのか、という理由は、チャレンジ精神から来るものでは無い。

安全保障に関わるものだ。

5mほど登ったところにテラス状の狭い平面があり、私はキリトに呼ばれてその上を四つん這いで進んだ。

ここまで来ると、やり合う声の発生源はもう真下にある。

 

「値段の問題じゃないんだヨ!オイラは情報を売った挙げ句に恨まれるのはゴメンだって言ってるんダ!」

 

そんなに大変な情報なのか、と私は内心首をかしげる。

ここで盗み聞きをするのは果たして許されるのか…と若干心配になりながら成り行きを見守ることにして。

 

「なぜ拙者たちが貴様を恨むのだ!?金も言い値で払うし感謝もすると言っているでござる!!この層に隠された__《エクストラスキル》獲得クエストの情報を売ってくれればな!!」

 

 

 

あのプレイヤー、どこかで見覚えが____

 

そう思い、ベータテストの記憶を懸命に辿る。

あれくらい最近の記憶なら、記憶力のある私は覚えている筈…とこめかみに手を当てて。

 

 

 

「あ、思い出した。」

 

「何をだ?」

 

「あの、エセ忍者プレイヤーのこと。」

 

「…ちょっと失礼じゃないか…?」

 

「だって、本当のことだし。」

 

私が思い出したのは、ギルド(自称)《風魔忍軍》のことだ。

全身、濃い灰色の布防具。上半身は中に軽めのチェーンメイルを着込んでいるそうで、武器は背中に帯びた小型のシミター。そして頭には同じく灰色のバンダナキャップとパイレーツマスク。

大分無理をしているように見えるが、まぁ一応忍者には見える。

 

私は、ベータテスト中にこいつら2人組を何度か見かけたことがある。

この2人組は、ベータ時代にとんでもない素早さで恐れられた忍者ギルドのメンバーだ。

恐れられた、というのは、大分迷惑でという意味だが。

彼らは全員がAGIにステータスを全振りし、最前線でAGI壁だけの目まぐるしい____それこそ酔いそうな____戦闘を繰り広げ、危なくなるとダッシュ力に物を言わせて逃走、近くのパーティーにモンスターのタゲを擦り付けていくというMPK顔負けの悪の忍者集団だった。

 

あまりにもベータテストの時は腹が立ったので、わざと引っかかった振りをしてデュエルに持ち込み、HPを全損させた記憶がある。

今では出来ないが、本来ならそうなっていてもおかしくはない。

 

______というか。

今、エクストラスキル、と言わなかったか。

エクストラスキルとは、特殊な条件を満たさなければ選択肢に出現しない、いわば《隠しスキル》。

ベータテストでも発見された《瞑想》スキルはあまりにも使えなさすぎて取らなかったが、それ以外なら盗み聞きする価値はあるかもしれない、と胸を高鳴らせる。

 

 

「今日という今日は、絶対に引き下がらないでござる!」

 

「あのエクストラスキルは、拙者たちが完成するために絶対必要なのでござる!」

 

「わっかんない奴らだナー!なんと言われようとあれの情報は売らないでゴザ…じゃない、売らないんだヨ!」

 

空気に流れる緊張感に、びりっとした電流が流れる。

これはまずい。MPKまがいのプレイヤーであろうが私にはまず関係無いが、女性プレイヤーのアルゴに二対一で迫るのは流石に見逃せない。

 

「…少し待っててくれ、」

 

「……2分待ってあげる。それ以上遅れたら私も飛び出すから。」

 

「了解。すぐ終わらせる」

 

そう言うと、キリトは飛び降りていく。

 

「_____何者でござる!?」

 

「他藩の透波か!?」

 

キリトも思い出したのだろう。

しかし、多分はっきりとは分かっていないはずだ。

 

「えーと、えーーーっと…あんたら確か、ふ、ふーどじゃなくて…ふーが…でもなくて、…」

 

「フウマでござる!!」

 

「ギルド風魔忍軍のコタローとイスケとは拙者たちのことでござる!!」

 

____思い出した。

私も、すこし記憶が欠けていた。

コタローと言う奴だ。私がPvPでボコボコにしたのは。

散々悪態をついた挙げ句に爆散するという、なんとも悪役チックな敗北をして、イスケが黒鉄宮に迎えにすっとんでいったのだ。

 

「そう、それ!」

 

キリトも思い出し、嬉しそうに指を鳴らした。

 

_____あと、30秒ね。

 

何を思ったのか、ニヤリと彼は笑う。

手振りでアルゴを下がらせると、背中に吊った愛剣《アニールブレード+6》の柄に指を走らせる。

手振りでアルゴを下がらせると、

 

「公儀の隠密としては、風魔忍者の悪行は見過ごせないな」

 

その途端_____。

 

「「おのれ、きさま伊賀者かッ!!」」

 

コタローとイスケがそう叫ぶ。

 

「「は!?」」

 

私とキリトも驚き、素っ頓狂な声を出してしまう。

まさか、キリトが適当なノリで発したセリフが、彼らの重要すぎるロールプレイのスイッチを押してしまったようだ。

 

面倒すぎる、助けてくれ、俺ひとりで巻き込まれたくない、という表情でちらりとこちらを見上げるキリト。

 

____えー、面倒くさい……

 

しかし、2人の右手がじりじりと忍者刀のつもりの格好悪いシミターへと伸びていく。

最悪、抜かれてしまえばキリトが斬られる可能性も否定は出来ない。

 

____仕方ないか…

 

はぁ、と思い、ふとアスナと初めて会った時の仮面を思い出す。

あれ、大分怖がってたよな____と。

あの仮面、声も変わるんだよな___と。

それに、マントも被れば大分怖いのでは___と。

そもそも、コタローは私のアバターに少し既視感を覚える筈だ。だとすれば、私との相性は良い。

 

私は意を決して、忍者2人の前に飛び込んだ。その瞬間にマントのフードを被り、仮面を付け、大鎌をぎらりと光らせる。

 

「貴様等、私の連れに何をしている。」

 

仮面越しに、威圧感たっぷりでそう告げてみる。イメージは某鬼滅殺アニメのラスボス。意外とこのロールプレイ楽しいかも____とノってみると、もう止まらない。

 

「な……貴様も伊賀者でござるか!」

 

真っ先に反応したのはコタロー。

 

「ッはははは_____、私は伊賀者ではない。甲賀者だ。

そんなことも知らないのに、ロールプレイとは随分と危機感が欠如しているようだな。」

 

と、あまりにもおかしくて高笑いしてしまう。そして、いつもの癖なのか間違いも指摘してしまう。

 

「本人は必死なんだ…我慢してやれよ、」

 

と、必死に笑いを堪えるキリトが耳打ちしてくる。

その後ろでは、忍者2人組の怯えようにぷるぷると震えて、同じく笑いを堪えているアルゴが。

程々にしといてやるわ、____

そんな意味を込めてキリトに視線を送る。

 

「さて。私は君と会ったことがある。

《コタロー》と名乗っていたな。

 

______私は《ミト》だ。久しぶりだね?」

 

そこまで言っても、コタローはピンと来ていない。

焦れったくなったので、私はフードを思い切り下げ、仮面を取る。露わになった赤目と紫の髪を見て、私の大鎌へと目が行く。

 

「____き、貴様____!!あの時の____!!」

 

コタローもイスケもやっと思い出したようだ。

私はわざとらしく大鎌を回して構え、トドメの一言とともにキリトと去ることにした。

勿論、アルゴも連れて。

キリトを見ると、準備万端だ、というようにアルゴと親指を立てている。勿論、上にだ。

 

「思い出してくれたようで何よりね。

だけど、再開を喜んでる暇は無いみたい。

 

________後ろ。」

 

「「その手は喰わないでござる!!」」

 

「何の手でもないよ、後ろを見ろって。」

 

 

キリトの一言とともに、私達___キリト、アルゴ、ミト___の3人はかけ出す。

忍者2人組の背後に居たのは、《トレンブリング・オックス》。超巨大の牛型モンスターだ。

外見通りの頑丈さと攻撃力もさることながら、何より厄介なのはタゲの持続時間がえらく長いこと。

忍者2人組は見事にタゲを取り、擦り付けられる前に私達は逃げたという訳だ。

彼らの悲鳴を聞きながら、私達は逃げ続けた。

 

 

 

 

 

 

 

☽︎‪︎.*·̩͙‬

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ疲れた…」

 

「ミト、あの格好似合ってたぞ…」

 

「笑い堪えながら言わないでくれる?説得力無さすぎるわ、」

 

マントに仮面、嗄れ声の事を指しているのであろうその言葉は、意外と傷つく。

_____厨二病から目が醒めた人って、こんな気持ちなのかなぁ…___

と若干謎の共感を抱いていると。

 

「…かっこつけすぎだヨ、キリ坊、ミーちゃん」

 

その声は、今まで沈黙していたアルゴのものだ。

しかし、いつもの元気が無い。

 

「そんなことされると、オネーサン、情報屋のオキテ第一条を破りそうになっちゃうじゃないカ」

 

____オネーサン?

 

____情報屋のオキテ?

 

気になる、とキリトと顔を見合わせるが、多分ゲーマー2人組には即座に正しい返答が出来るとは思わない。

キリトが平静を装って答える。

 

「あんたには一つ貸しがあるからな。おヒゲの理由を教えてもらうまでは、どうにかなってもらっちゃ困る」

 

そう。凄く気になる、と私も頷く。

アルゴのヒゲはトレードマークだが、その理由は教えて貰えないのだ。今まで何度尋ねたことか。

 

「………いいヨ、教えてあげル。でもちょっと待って、ペイントを取るかラ…」

 

「「え」」

 

ペイントを取る、即ちそれは素顔を私とキリトに見せてしまうことになる。

そこには流石に踏み込むのは____と2人で躊躇い、

 

「……私も気になるなぁと思ったけど、やっぱり教えてもらう情報変更!!さっき忍者2人組と話してた、この層の隠しスキルのことを教えて!!」

 

と、断った。

 

 

 

暫くして歩き始めたアルゴを追いかけ、ある一つの場所へたどり着く。

いつものふてぶてしい表情に戻り、腕を組んだアルゴ。

 

「オイラから行ったことだから、約束は守るヨ。でも、キー坊もミーちゃんも約束シロ。どんな結果になっても、オイラを恨まないってナ!」

 

「それ、さっきも忍者2人組に言ってたよな。どういう意味なんだ?」

 

キリトの問いに、アルゴはにんまりと笑顔を浮かべて

 

「そっちの情報は有料だヨ、キー坊。」

 

思わずため息を呑み込んだキリトを見て、私は笑いを堪える。

む、とした表情を向けるキリトをアルゴとともにからかっていると、

 

「解った。約束する。神___じゃない、システムさまに誓って、何がどうあってもあんたを恨まない。」

 

「私も誓う。システムに誓って。」

 

もとより恨む気はないけど、と思いつつも一応真似しておく。

その後は森のようなフィールドをふらふらと歩き回る。やがて、小さな小屋が見えて。

 

「……ここか?」

 

キリトが尋ねる。

 

スキンヘッドの、如何にも厳しいですよといわんばかりのNPCが立っている。

 

「アイツが、エクストラスキル《体術》をくれるNPCだヨ。オイラの提供する情報はここまでダ。クエを受けるかどうかは、キー坊とミーちゃんが決めるんだナ。」

 

____体術。

聞いたことがない。瞑想スキルよりは使い道はありそうだが。

 

「…でも、習得したら武器破損時でも戦闘可能になる、かもしれないのか…」

 

「ミトは投剣スキルがあるけど、俺は無いしな…」

 

「投剣のストックが切れて、大鎌が壊れたら私も致命的よ。」

 

そうして、私達はクエを受けることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

のだが。

今になって後悔している。

 

 

目の前の、それぞれに置かれた岩を見て。

NPCに言わせれば、これを割れというのだ。

 

 

「「岩って、拳で割るものだっけ。」」

 

と、キリトと私は某アニメの主人公的な言葉を零す。

多分、こんなことを言っていると"判断が遅い!!”と叱られるのだろうが。

 

そして、最悪なのはここから先だ。

 

「この岩を割るまで、山を下りることは許さん。汝らには、その証を立ててもらうぞ」

 

手にあるのは、小型のツボ。

あ、嫌な予感が______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ、あの、私きょうで辞めます!

あっ、あの、僕きょうで辞めます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

「お、おわぁあ!?」

 

 

 

 

 

 

 

私とキリトは、そう言う前にヒゲを描かれてしまったのだった。

アルゴは、深い哀しみと共感___そして爆笑を必死に堪える顔をしていた。

憎き師匠に言わせれば、このヒゲペイントはクエをクリアするまで消せないんだとか。

 

 

「…私、アルゴさんのヒゲの理由がよーーーく解った。」

 

「奇遇だな。俺もだ。」

 

「そうカ!そうカ!」

 

アルゴは満足そうに頷き、あとは2人でごゆっくり!!と言い残して去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対習得してドヤ顔してやろう。」

 

「ああ、1週間以内にな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☽︎‪︎.*·̩͙‬

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、私とキリトは3日間山にこもり、途方もない苦闘の果てに揃って岩を割った。

アルゴを一生恨まずに済んだのは、不幸中の幸いであった。

 

 




これにて体術習得しましたね!
キリトくんにカッコよく忍者を退治してもらおうかと思ったんですが,少しミトちゃんも活躍させようと思いまして……()
KOBの件,回答していただきありがとうございます!
参考にさせていただきますね!
できれば,理由などもコメントに残していただけると嬉しいです!
では,次話でお会いしましょう!

①ミトにユニークスキルを付けた方が良いですか?

  • ①付けた方が良い
  • ①要らない
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