第9話_
現在第2層。
私___大鎌使いミト___と剣士キリトは、とある《試練》とも呼べるクエストを無事クリアし、アインクラッド第2層主街区《ウルバス》へと足を運んでいた。
時刻は午前10時。
クエストをクリアしたのは午前5時だったので、なかなか時間が経ってしまったが、それには理由があった。
会得したエクストラスキル《体術》を、POPしたモブで試していた為だ。
「……意外と使えるスキルだったね。」
「ああ、そうだな。少なくとも《瞑想》スキルよりは使えるな。」
「ここまで苦労して使えなかったらどうしようかと……」
「……悲しすぎるよな、」
と、ゲーマー2人は身震いをする。
山に篭ったのは別に良かったのだ。
あのフェイスペイントが1番の恐怖である。
そして、ここ《ウルバス》に来た理由は2つ。
ひとつは、私の武器である《アイアンサイズ》を強化すること。
大鎌は珍しい武器であり、私の他に使うプレイヤーは見たことがない。悲しいことに、モンスターではそのうち沢山出くわしそうな気がするが。
故に、圧倒的に武器屋に大鎌が置かれていない。
キリトの扱う片手剣や、かつての親友が扱っていた細剣などは多く置く癖に、大鎌はなかなかお目にかかれない。
2層の鍛冶屋を覗いたが、やはり何処にも大鎌は置いていないのだ。
だから、新しい大鎌が手に入らない。
プレイヤーが武器作成を出来るようになるまでこの《アイアンサイズ》を引き延ばして使うか、メインウェポンを変えるか、意地でもレアドロップを漁りまくるか__この方法くらいしかない。
その中から私が選んだ方法は、《アイアンサイズ》を使う層を引き延ばすこと。
噂によれば、腕の良い鍛冶職のプレイヤーが2層に来ているとのことだ。
その鍛冶屋に、私の大鎌を強化してもらうべく《ウルバス》へと足を運んでいる。
もう1つの理由は、情報屋アルゴに《体術》クエストのクリアを報告する為だ。
私とキリトは、師範にあたるのであろうNPCにヒゲのようなフェイスペイントを施され、彼女に爆笑された。
あの時の悔しさといえば半端ではない。
アルゴはクエストをベータテスト時代に放棄したそうなので、"私たちはクリアしたんだぞ"とドヤ顔してやろうという目論見だ。
「ええと、確かこの辺りだったはずなんだけど……」
「……あれじゃない?あの何というか…ドワーフみたいな。」
「……失礼じゃないか?」
「だってホントのことでしょ。」
まぁそうだけどさ、とキリトが笑いを噛み殺しながら早歩きになる。
置いていかれないように私も速度を上げた。
☽︎︎.*·̩͙
歩きながら、突拍子もなくキリトが振り返った。
「……なぁ、ミトって《大鎌》スキルと《投剣》スキルがあるだろ。」
「そうね。」
あまり手元を見せるのは良くないだろうが、まぁいずれかはバレることなので肯定する。
「それで、《体術》スキルを取っただろ。
その時に、ひとつスキルロットから外したスキルがあるはずなんだ。
_____何を外したんだ?」
鋭い、と少し驚く。
現在のスキルロットは3つ。
多分、もう1つレベルが上がれば4つに増える。
キリトの読み通り、私はひとつ余計にスキルを取得していた。
「…………《細剣》。」
「細剣……?あんたは細剣使わないのに、どうして……」
私にも、理由はよくわからない。
アスナを失って、キリトに飛び降り自殺を止められてからのレベリングで《細剣》スキルを隠れて取得したのだ。
アスナに渡すはずだった、《ウインドフルーレ》。
あれはどうしても持っておかなければいけない気がして、ずっと持っていた。
「私の親友が、使っていたから。
渡すはずの細剣が残ってたの。それを使って習得したんだ。親友の面影を忘れたくなくて。_____それと、親友と戦えたらなって……思って。」
正直、《ウインドフルーレ》で戦っている時、誰かの手が添えられている気がした。
がんばれ、と耳元で応援してくれている気がした。
絶対に死ねないと、思わせてくれた。
だから、きっと私は使っていたのだろう。
もうスキルロットからは外してしまったけど。
「……そうか。
…………その細剣、どうするんだ?」
「……強化するか、芯材にするか、保管するか迷ってる。でも、暫くは保管してると思うよ。」
「分かったよ。鍛冶屋に先客居るみたいだから、並んで待ってようぜ。」
「了解。」
☽︎︎.*·̩͙
「ふ……ふざっ、ふざけんなよ!!」
並んでいる私たちの前の客が絶叫する。
「も、戻せ!!元に戻せよ!!プラス4だったんだぞ……そ、そこまで戻せよッ!!」
思わず後ずさりしたくなるような怒鳴り声。
可哀想なことに、この剣の持ち主は強化に失敗したようだ。
出来事を見ている限り、プラス4まで鍛えた剣を強化してもらったところ、成功率が低く連続で失敗し、強化回数を終わらせてしまった______というところだろう。
そして、その声の先でへこへこと謝っているのは、プレイヤー。
彼こそが私の探していた鍛冶屋だった。
「……もう少し素材を集めてからやり直せば済む話だった筈よね。」
「それが、何故か連続してやっちゃうんだよなぁ……」
「…………まぁ、私も1回それでやらかしたから気持ちは分かるけど。」
「ミトがそれやってるのは意外だな。」
「どういう意味?」
と、キリトと他愛の無い会話を繰り広げる。
しかし、目の前で失敗されてしまっては私の大鎌の強化にも失敗してしまうんじゃないか____と、そんな予感に駆られる。
ここまで戦ってきた_____アスナを亡くしたり、キリトと出会ったり、自殺を企てたりとあまり良くないことも多かったが____大鎌をエンド品にされてしまっては、流石に悲しい。
自分の1部がそれこそ壊されてしまうような、そんな気がする。
アスナとの思い出を繋ぎ止めておくアイテムであり、私の罪を証明するこのアイテムが無意味のアイテムになってしまうような気がしてならない。
だからこそ、不安だった。
「……取り敢えず、強化は1回で良い?」
「素材はもっとあるんじゃないのか?」
「失敗されたら怖いし、」
「まぁ、ミトの武器だし好きにして良いと思うよ。」
「じゃあ1回にしとく。」
前の哀れな客が列から外れた。
つまり、私たちの番が回ってきたということだ。
「いらっしゃいませ、今回はどんなご要件で?」
ドワーフのような少年がそう話しかけてくる。
おどおどとした態度が全面に出され、此方としても少し不安になるが取引は続けることにする。
「強化をお願い。
素材はこっちで用意してあるものを使って。」
「分かりました。……武器は大鎌ですか?」
「そうね。これをお願い。」
背中の大鎌を外し、彼に差し出す。
どこか安心したような表情で彼が受け取ると、特に問題なく強化を終わらせた。
無事に私の《アイアンサイズ》はプラス6になり、妖しい輝きと艶を纏った。
「やっぱり、強化すると武器も見た目とか雰囲気変わって良いわよね……」
思わず、うっとりとした表情になってしまう。
きっと、VRMMOでないRPGのキャラクター達も同じように強くなった己の剣には見とれていたんじゃないだろうか。そんなことを考えてしまう。
「そうだな。俺もそれは凄く分かるよ……」
「やっぱり?剣が今までとは違う……新品とはまた違った輝きを放つのってまた良いわよね……」
「ミトもそう思うよな……」
はぁぁ、と2人でため息をつき、今日は宿屋へ戻ることにした。
更新遅れてしまい申し訳ないです……!
今回は儚き剣のロンド編となっております!
ミトの大鎌を強化成功させようか迷ったんですが,大鎌はこの先の展開でもいらなさそうだなぁと思ったので強化を成功させてます.
スローペースの投稿になってしまいますが,読んでいただけると嬉しいです!
①ミトにユニークスキルを付けた方が良いですか?
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①付けた方が良い
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①要らない