なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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第十一話 決意を固めたんだが

 

 

なんか目覚めたら凝光とファデュイが戦ってるんだけど(困惑)どういうことだ?

確か私は、甘雨に氷漬けにされて脱出できそうに無いから諦めて寝ていたはず…

 

それに、氷も溶けかけてる。何事かと思って見てみると、私のコートに付いていた予備の温度上昇用の宝石が光り輝いている。

見るからに熱そうに輝いているが、熱くない。

 

『目覚めよ』

 

誰だろうか、私に話しかけてくる者がいる。これが璃月名物夢枕だろうか?だとしたら幸運だな、璃月名物を堪能できたのだから。

 

『目覚めよ、そして力を解放せよ』

 

おお、それっぽいそれっぽい!夢枕といえば、覚醒を促すものだからな!いやあ良いものを体験できた。この状況に導いてくれた甘雨には感謝しないとな。

 

『良い加減に目覚めないか。外の者の願いの力が貴様に力を与えたのだ』

 

力ねぇ、欲しいと思ったことは無いが。貰えるものは貰っておこうかな。

それで、どうやって出れば良いんですか鍾離先生。

 

『鍾離?誰だそれは…まぁ良い、今から儂が言うセリフを暗唱せよ。何、長くはないから安心せい』

 

頭の中にカッコいい系のセリフが流れ込んでくる。これなんか例の死神刀剣漫画の解号に似てるな。

 

『期待しておるぞ────・・・」

 

その声と共に気配ごと消える夢枕。

そうか、期待してくれているなら………

 

「焼け付く影となれ…卍華鏡」

 

「そう、目覚めたのね────神の目に」

 

 

 

「ハハ、期待には応えないとね?」

 

私はゆらりと立ちながら周りの状況を確認する。ふむ、何やら大変そうだな。ファデュイの足元が岩で固まってる。

 

「ディザスターさん!お目覚めで!」

 

「あー、その、すまない。君たちの願いを私が受け取ってしまったようだ。不本意ながら神の目を授かってしまった。本来は君たちが貰うべきなのだろうけど」

 

「良いのよ!それで、どうする?そこの女をどうにかしてから行きますか?」

 

チラリと凝光を見ると、臨戦態勢の凝光が目を鋭くして立っていた。コワ〜…やめとこ。

第一、私は原作キャラに対して攻撃したいわけでも嫌がらせをしたいわけでも無いので戦う理由がない。

 

「うん、逃げよう。私たちなら凝光は暗殺できるかも知れないが、意味のない事だ。もはやファデュイが璃月での立場が狭くなるのは確定している事だから、撤退してしまおうか」

 

「逃すと思っているの?」

 

「いや、君は逃さざるを得ないさ凝光」

 

私は炎の力を集めて小さな光球を作り出す。まぁ、簡単に言えば花火だ。色は爆発色だけどな。

理論的にはセフィ○スのフレアと同じようなものだ。

 

「私は今からこれを君に投げる。君は守る。その隙に私たちは退散させてもらうよ」

 

「っ!」

 

「そーれ、『焼き尽くせ────』」

 

光球を投げると共に私はダッシュで逃げる。後ろで大爆発の音が聞こえるが無視だ無視。

凝光が死んでない事を祈りながら群玉閣からダイブだ。

 

「ディザスターさん!死んじゃう!死んじゃうううう!!!」

 

「風の翼を使うんだ!」

 

さて、これで正式に犯罪者なのだがどうしたものか。とりあえずタルタリヤに報告か?それともエラ・マスクとヤルプァに逃げるように言うか?

 

そうだな、先に友達を冤罪から巻き込まないように逃そう。

 

「ディ!空から来るとは何とも勇ましいな。オレとしても誇り高いぞ!しかし驚いたな、爆発したあの高い建物から降りてくるとは!」

 

「あぁ、それなんだが…不味いことになった。実は私、指名手配の犯罪者になるかも知れない…というか既に犯罪者なのだが」

 

「ほう?つまりあのいけ好かん建物を爆破した犯人という訳だな?やるようになったな友よ!」

 

「ちょ、ちょっと!貴方が犯罪者ならその連れの私達はどうなるの!?このままじゃ千岩軍が私たちを捕まえにくるじゃない!」

 

エラ・マスクから正当なツッコミが入る。

 

「そう、だから逃げるように言いに来たんだ」

 

「オレは逃げんぞ。戦士として恥ずかしいからな」

 

「わ、私も…観察対象を置いて逃げる訳にはいかないし…」

 

「君たちは……何というか、本当に…バカだな」

 

思いの外深かった絆に少しだけ泣きそうになりながら私は精一杯強がってみる。

しかし、私の強がりなどバレているのか「やれやれ」といった風な表情を見せる二人。気恥ずかしいな。

 

「よし、わかった!私は今、都合の良いことにファデュイに属している。そして聞いた話によると、遥か稲妻ではファデュイの力が強く及んでいるらしい。行き場のない私達にとって、稲妻は熱りを冷ますのにうってつけの場所だ」

 

勿論、ファデュイの浸透状況はゲーム知識だ。しかし、潜伏するならもってこいの場所でもある。

だがその前に、やる事がある。それは「淑女」との交渉だ。

 

「淑女」の影響力は稲妻において強い。少なくとも御前試合に敗北する前はその力は絶大な筈だ。

これを利用しない手はないだろう。

題して「『淑女』のヒモになろう大作戦」だ。

 

「ヤルプァ、エラ・マスク。私は今からファトゥス第八位『淑女』シニョーラに会ってくる。その後、話がつき次第迎えにくる。だから今暫く待っていてくれないか?」

 

「友が考え、決めた事ならばオレも異論はあるまい。何、心配するな。この小娘はオレが何があろうとも護ってやる」

 

「ヒルチャールに護られるなんて経験、滅多に無いわ…!学術書が厚くなりそうね……オホン!ディザスター、あなた無理しないようにね。あなたが死んだら暴れるヤルプァを止められる人がいなくなるから」

 

「当然さ、私が死ぬ訳ないだろう?では、行ってくる!」

 

私は二人に見送られながらシニョーラ探しに出かけた。ついでに私を助けにきてくれたファデュイのメンバー達もヤルプァの所に匿ってもらう事にした。

ヤルプァはヒルチャール・雷冠の王だ。

生半可な敵には負けないだろう。

 

「居たぞ!堕岩だ!」

「捕まえろ!」

 

「千岩軍か…新しい力、試してみるか」

 

先程の甘雨との戦いで人は武器を持たずとも戦える事が分かったので、私も真似てみる。

凝光に撃ったギガフレアより威力を落としたメガフレアを千岩軍に向かって撃ってみる。

 

「少しは死ぬかもね?」

 

「なぁっ!?ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「どひゃあああああ!!!!」

「ひええええええっ!」

 

千岩軍は火の玉に巻き込まれて吹き飛び、地面と抱き合っていた。意外と威力が高いな。

これが鍛え上げられた兵士の千岩軍相手だから良かったものの、宝盗団とかに撃ったら消し炭も残らないぞ。

 

「あ、そういえば仮面を壊されてるんだったな。何か無いか────まぁ良いや。徽章さえ見せればシニョーラも対応してくれるだろうし」

 

 

 

「待て」

 

私の前に“見慣れた“石柱が立つ。

 

「おや、鍾離先生。どうしたんですか?」

 

「今、俺を見ずとも俺を俺と判断したな。この柱に見覚えがあるのだろう?堕岩殿…いや、魔神ディザスターよ」

 

は?魔神?どういう事だ。私は神の目を得て原神にはなったが、魔神にはなっていないぞ。魔神になるには一度死なないといけない。

 

「ははは、私が魔神ですか。面白い冗談を言えるんですね?」

 

「質問に答えろ。貴様は俺の出した石柱に見覚えがある。そうだな?」

 

「そりゃあ…ありますよ。ほぼ毎日見てましたからね」

 

ゲームでな。だがそう言う訳にもいかない。突然「お前らはゲームの存在だ」なんて言われたら発狂ものだろう。

バレないように言葉を選ばないとな。

 

「やはり、か。優れた戦士とは肉体に記憶を宿らせるものだ。そして貴様はかつて凶悪な戦士神『厄災』ディザスターであった。誤魔化しは不要だ」

 

そんなの居たのか(困惑)

いや私の知らない設定をお出しされてもよく分からないのですが。私はただのしがない転生者です…出自も無く、デフォ顔で転生してきた大馬鹿者ですが?

 

「鍾離先生が何を言っているのかさっぱりだが…まぁ良いでしょう。それで、何の用です?私はこう見えても忙しいのですが」

 

「貴様の企みを阻止しにきた。これから璃月は人の時代になる。邪悪な貴様の思い通りにはさせん」

 

「──────何か勘違いなさっているのでは?不本意ながら、私の本質は『泣き飯』ですよ。恵まれた環境にいた者はそれを失ってから初めてその大切さに気付く…私がこの地に来てから痛感したことです」

 

現代日本に比べてテイワットの何たる生きづらさか。物価は安いが、公共交通機関が存在しない。辛うじて船があるぐらいだが、それも法外な値段を請求される。

はっきり言って、テイワットの生活は現代人にとっては不便である。それを痛いほど痛感した後の現代でも通用する食事。

これに感動しないわけは無かった。

 

「だとしたら何故群玉閣を爆破した」

 

「本来はこうなる筈ではなかったんですがね。巡り合わせが悪かった、としか」

 

「璃月に何をするつもりだ」

 

「何かするのは私ではありませんよ」

 

「公子殿を利用しているのか?」

 

「いいえ。むしろ利用されている側ですね」

 

その後も質問の応酬が続いたので、大量に時間を食ってしまった。おかげで千岩軍に包囲されてしまった。

これが狙いだったのか?

 

「いたぞ!今度こそ捕まえてやれ!」

 

「はぁ、面倒だ…!良いだろう鍾離先生、私も楽しくなってきた!話に乗ってやろう!」

 

私を『厄災』とかいうのと勘違いしているのなら都合が良い。最大限そのネームバリューを利用させて貰うとしよう。

ごめんな『厄災』くん。私の茶番に付き合ってくれよ。

 

「クク、ハハハハ!我が名は『厄災』!岩王帝君の創りし璃月を堕とす者なり!命惜しい者は去るが良い!我が遊戯に付き合える者は即ち強者のみである!」

 

厨二スイッチ全開でいこう。こうなりゃとことん暴れてやるぞ。怪我しても知らないからな!

私は小さく「卍華鏡」と呟き元素力を解放する。

ついでにコートの氷元素も活用して一人溶解パーティだ。

 

「ひっ、怯むな!かかれ!」

「「「うおおおおおおおっ!!!!」」」

 

「勇敢な事だ……故に惜しい、ここでその命を散らす事がなぁ!蒼炎爆裂弾!」

 

青色まで高まった炎の球を投げつける。無論死なない程度に威力は抑えてある。これで弱めの兵士は全滅しただろう。

次に、私は片手に炎、もう片方に氷元素を纏う。

狙うのはラッシュ攻撃だ。俗に言うオラオラ攻撃。これで溶解反応を起こしてみよう。

 

「させるか!岩山破竹ッ!」

 

「ほう、もはや正体は隠さないのか?」

 

「貴様を生かしておくよりマシだ」

 

おお怖い。本気の鍾離先生、いやモラクスには私なんぞがいくら逆立ちしようとも勝てる筈は無いだろう。

だから私が取るべき最善の手段。それは…

 

「良いのか?私は腐れども魔神。私が死んだことによる余波は璃月中を覆うことになる。そうなれば…フン、楽しいことになりそうだな?」

 

「外道が…」

 

「好きに言え。元はと言えば貴様らが悪いのだ!私を一方的に封じ込め、謂れのない罪で私を長い眠りにつかせた!これに憤らずに何が人間だ!」

 

「何?待て、貴様…いや、堕岩殿。どういう事だ。説明してくれないか?」

 

「今更わかってもらおうだなんて思わないさ。しかし、話し合いの余地があるのなら私とてそれに応じよう。丁度邪魔な千岩軍も消し飛んだ事だしね」

 

急に態度が軟化した鍾離先生に戸惑いつつ、私はチラリと周りを見る。もはや周りには誰も居ない。

逃げるにはうってつけだ。

 

「さて…どこから話そうか────おや」

 

視界の端に蛍を捉えた。こっちに向かってきている。私は破損した兜を鍾離先生に投げつけ脱兎の如く逃げ出す。

せっかく蛍ちゃんと仲良くなれそうなのに機会を失ってしまう事になる。シニョーラ探しはまた後でだな。

 

 

 ──────────★────────

 

 

蛍は群玉閣で凝光から衝撃的な話を聞いた。

 

「堕岩って男に気を付けなさい。あの男は…危険よ」

その言葉が蛍の中で棘のように突き刺さっていた。

 

(本当に?わたし達に対してまるで敵意を出さなかった彼が?あまつさえ食べ物まで作ってくれた彼が?)

 

「オイラ、信じられないぞ…アイツは絶対いい奴だ!アイツのご飯には優しさがたくさん入ってたんだぞ!」

 

「わたしもそう思う。とにかく、話を聞いてみない事には…」

 

群玉閣から降りた二人は顔を見合わせて話し合う。その直後、再び爆発音が今度は街中から聞こえた。

 

「行こう!」

 

「おう!」

 

しかし蛍がついた頃には時すでに遅く、道路は硝子化し商店は焼け焦げ、倒れ伏す大量の千岩軍の真ん中に鍾離が一人佇むばかりだった。

 

「鍾離!何があったんだ!?あと、その持ってる物は一体…?」

 

「あぁ…これは、堕岩殿のものだ。俺も今状況を整理している所だ。何かがズレているような気がしてならなくてな」

 

「ズレてる…?そう言えば、堕岩は『嘘つきに気をつけろ』って言ってたよね。その事が関係あるのかな」

 

「何…?(嘘つきだと?それは誰の事を───そうか、俺があの契約の事を黙っている事を知っているのか。確かに彼はファデュイだ…しかし、あり得ない。あれは氷の女皇と『淑女』しか知らない筈…)」

 

「鍾離先生、何か思い当たる事があるのか?」

 

「ああ。俺の推論が正しいとするのなら、堕岩殿には恐らく…『見通す力』が備わっているのではないかと思っている」

 

「「『見通す力』?」」

 

「そうだ。未来、過去、現在。その全てを見通す力があればこそのあの達観したような言動なのではないか?“全て見た”から感動も無い、“全て知っている”から先回りする。彼がどのような未来を望んでいるのかはわからないがな」

 

鍾離は心の内で「『厄災』にはそんな力はなかったな」と呟きつつ、その叡智を発揮する。

 

 

 

一方、タルタリヤはその会話を陰から全て聞いていた。タルタリヤはニヤリと笑うと部下達を呼び出す。

 

「各員に通達。ディザスター、コードネーム堕岩を確保してくれ。場所を見つけたら教えてくれるだけでも良い」

 

さて、と一息つきタルタリヤは歓喜する。

 

「俺が世界征服した未来はあるのかな───ああ、楽しみだ!」

 

タルタリヤは獰猛な笑みを浮かべながら駆け出し、任務も忘れて璃月中を双剣を持って暴れ回る。

 

タルタリヤが璃沙郊へ着いた時、休憩中の獲物…もとい堕岩が何者かの血で塗れた壁に寝そべっていた。

 

「見つけた♪おーい堕岩。起きるんだ、そうでなきゃ殺してしまうよ?」

 

脅してみるも、堕岩は唸りながら寝ているだけで反応はない。

仕方ないか、とタルタリヤが堕岩を担いで璃月港に戻ろうとした時、背後からふと声が飛んできた。

 

「シニョーラは死ぬ」

 

 

「──────何だって?堕岩、今なんて…」

 

「むにゃむにゃ……うん?タルタ、リヤ?なぜここに…」

 

驚いた風にタルタリヤを見る堕岩。タルタリヤの中での期待は確信へと変わっていた。

タルタリヤは堕岩を降ろし、双剣を出し見つめる。その顔は狩人のものだった。

 

「堕岩。君に聞きたい事があるんだ」

 

「ッスゥー…いや、あれは事故というか不幸なだけだったと言いますか…」

 

「シニョーラが死ぬって…本当かい?ああ、嘘をついたら殺すから」

 

脅され戦慄いていた堕岩は突如として落ち着きを取り戻すと、すっと目を細めた。その瞳はどこまでも人間を人として見ていない無機質な目だった。

 

「そうですね、死にます。死因は…言った方が?」

 

「言ってくれ」

 

「はぁ…『淑女』様には内密にお願いしますね?色々とまずいので。『淑女』は稲妻の将軍によって一刀の下斬り捨てられます」

 

「へぇ〜。あの女、あんな辺境で死ぬのか。それで?俺は君の見た未来では死ぬのかな?」

 

「言ってどうするんです?未来は変わらないというのに。それに、こういうのは知らない方が楽しいのでは無いですか?」

 

堕岩の指摘を受けてタルタリヤは少し考え、「別に良いや」と言い急かす。

 

「えっと…怒らないで聞いてくださいね?あなたは負けます。蛍に打倒され、計画は全て頓挫します。はぁ、もう良いでしょう!?私だって言いたくありませんよ!」

 

キレ気味で突っかかってくる堕岩をいなしながらタルタリヤはニヤリと笑い心の中で炎を燃やす。「それが運命なら受けてたとう」と。

 

戦士の挑戦が今始まった。

 

 

 ──────────★────────

 

なんか急にタルタリヤが来て原作知識を聞きに来た。原作改変は趣味じゃ無いから絶対に言いたくなかったんだけど、命の危機だったから言ってしまった。

 

「変わらないと良いが…そうもいかないな。今までみたいに見ているだけじゃダメだ。自分から動かないと…」

 

私は決意新たに今しがた見つけた星3武器の冷刃を手にする。宝盗団のアジトを殲滅した時に拾えてよかった。

銀の剣はいつの間にか無くなってたし丁度良い。

 

「さて…シニョーラ探しはどうしたものか。最悪の場合は渦の魔神オセル復活のタイミングで北国銀行に行けば会えるか…?」

 

いや、と思い直してみる。オセル復活までに私は千岩軍の目から逃れられるのか?タルタリヤにすぐ見つけられたぐらいだ、無理に決まっているだろう。

 

「まず逃げるという考えが間違っているんじゃないか?さっき自分から介入すると決意したばかりだろう…そうだな、まずは禁忌滅却の札からだ」

 

いざという時の保険…タルタリヤが完膚なきまでにやられて行動不能になった場合に私が代わりにオセルを復活させるために集めなければいけない。

場所は分かっているんだ、そこにいるだろうファデュイを訪ねれば渡してくれるだろう。堕岩の名前は売れているからな。

 

「しかし堕岩としての仮面を失ってしまった…仕方ない、代用品を使うか」

 

私は押収した『泣き飯』のお面を被る。まさかこんな所で役に立つとは。氷像にも価値があったみたいだな。

 

 

 

私がファデュイの拠点に着くと、何やら激しい戦闘音が聞こえた。まさか蛍がもう到着しているのか。

急いで行ってみると、やはり蛍が戦っていた。

 

「冷刃、試してみるか………纏え。」

 

私は冷刃に炎を付与し、片手に氷の力を纏う。視界の先では丁度ファデュイ・岩術士に止めが刺される所だった。

 

「させん!」

 

「っ!堕岩!?どうして…」

 

私はそこに割り込むと蛍に氷元素を付与し炎の冷刃で斬り払う。多少は効いたみたいだな。

流石は溶解反応、二倍のダメージ効率は強いな。

名付けて『溶解剣』。そのまま過ぎるな。

 

「ぐうっ…!やめて堕岩、どうしてこんなことするの!?」

 

「私にも立場というものがあるのさ!」

 

これで言い訳は十分だろう。口が裂けても戦闘訓練がしたかったからなんて言えない。

数回切り結んだ後、私はファデュイ先遣隊の面々が逃げ出したのを確認してから剣を降ろした。

 

「──────さて。君との戦いも意味は無くなったし談笑でもしようじゃないか?」

 

「っておい!今戦ってたのに切り替え早過ぎだろ!?」

 

パイモンからの鋭いツッコミ。耳が痛いね。

 

「まぁまぁ…それで、蛍。君は私に聞きたい事があるんじゃ無いか?」

 

この場を使って群玉閣爆破の事について釈明しよう。別に千岩軍のモブにどう思われようが知ったことでは無いが、キャラクターは別だ。

世界を動かすのは常に彼らだし、その運命は数奇な物語を生み出すのだ。

 

要するに、原作キャラに嫌われたくないだけだ。

普通に好きだからね。

 

「堕岩、あなた未来が見えるんでしょ?」

 

「未来は見えないな。未来というのは、私達人間が作っていくものであり変える事ができるものだ。未来が見えたからと言って、それにさして意味はない。だろう?」

 

「なら質問を変えるね。わたしのお兄ちゃんはどこ?知っているなら教えて」

 

蛍ちゃんが必死の形相で懇願してくる。これが他の事だったら二つ返事で了承してしまいそうだが、こればかりはダメだ。

蛍ちゃんはこの世界の中核に位置する存在。それを変えるということは世界の崩壊につながりかねない。

 

「断る。そればかりは君に教えることは出来ない」

 

「どうして!知っているんでしょう!?答えて!わたしのお兄ちゃんはどこにいるの!?」

 

「お、おい蛍…!落ち着けって!」

 

「止めないでパイモン。堕岩は絶対にお兄ちゃんのいる所を知っているんだ!」

 

「…こうなるなら初めから接触しなければ良かったな。良いかい蛍、君が兄を求めるのなら自分の手で手がかりを見つけるんだ。私に頼るのはチートだからね」

 

「“ちーと“?何語だ?」

 

「おっと失礼。つい母国…国?語が出てしまった。とにかく、私は君に空くんの居場所を教えることは出来ない。知る知らぬではなく、それが道理なんだ」

 

「あなたは…お兄ちゃんと面識があるの?」

 

「無い。だがあくまで一方的にだが知っている」

 

私は一息ついて禁忌滅却の札が詰め込まれた箱を見る。傷はついてないみたいだ。この中から幾らか持っていけば足りるだろうか?

 

「そもそもお前は何をしに来たんだ?ファデュイ先遣隊の援護か?」

 

「いや、そこな札を回収しにきただけだ。」

 

「その札…禁忌滅却の札か?なぁそれって魔神戦争中に仙力を使うために作られた物だろ?なんでお前が欲しがるんだよ?」

 

「そんなの決まっているだろう。璃月を滅ぼす為だ」

 

「ええーーっ!?やっぱり悪いやつじゃないか!信頼してたのに!」

 

「嘘だ。あくまでもこれは保険に過ぎない。全てが上手くいくために。或いは───」

 

全て何をしてもどうしようもなくなった時、これを使うことになるかもしれないな。そんな事起こらないようにする為に努力しないといけないんだが。

 

「嘘かよ!?」

 

「堕岩、『嘘つき』について聞きたいんだけど。あなたは誰を嘘つきと言ったの?『公子』?それとも自分の事を指して?」

 

「あぁ、その事か。その事については説明しなくとも近々わかる事になる。何、君たちに直接の被害がある訳ではない。ただ、嘘を嘘であると見抜いた時の衝撃を和らげてあげようと思ってね」

 

私は禁忌滅却の札がしこたま入った箱を担ぐと、「では私はこれで」と言って立ち去る。急がないとな、後もう少しで璃月事件のクライマックスだ。

 

「しかし、少し疲れた…紙しか入っていないとは言え荷物を抱えたまま黄金屋まで歩くのは酷だな…」

 

私が仮面を外し、空を仰いでいると私を覗く顔と目があった。そしてその人物は私の全くの想定外の人物だった。

 

「な、ダイン……スレイヴ…!?」

 

「空…?いや、彼はもっと幼げがあった筈…貴様は一体…」

 

「なぜこんな所にダインが居るんだ…モンドに居るんじゃ無かったのか?」

 

「モンド?貴様なぜ俺の行き先を知っている。その風貌に存在感。アビス教団の関係者か?」

 

今更になってようやく気づいた。そういえば私の顔ってやさぐれた大人の空くんじゃん。ダインからすれば怪しい奴筆頭じゃないか。

どうしよう。想定外すぎて何も考えてなかった。何とかして切り抜けないとな。

 

「アビス教団は私の敵だ、勘違いは程々にしてくれるか?『末光の剣』殿。ああそうだ、名乗っておこうか。私の名はDISASTERだ。よろしく頼む」

 

方針としては「訳知り顔の謎の人物」という立ち位置を確立する方向で行こうと思う。幸い、堕岩がDISASTERである事は蛍ちゃんにはバレてない。

顔を合わせても大丈夫な状況を作ってしまおう。

 

「なぜ『末光の剣』の事を…フン、まあ良い。貴様が何者であるかは追々聞くとしよう。俺の事は知っているようだから自己紹介は省かせてもらおう。何をしていた?」

 

私は璃月でしようとしている事を嘘を交えながら説明すると、急いでいる事を理由にその場を立ち去る。最後までダインの視線が突き刺さっていたのは心に来た。

日も落ち、夜がやってくる。急がないと戦いが始まってしまう。そう思い焦りながら全力疾走した。

 

 

私が黄金屋に着くと、既にそこは死屍累々だった。

既に始まっているかもしれない。

さて、ここからが正念場だ。

私も気合を入れないとな!




ダインのちょい見せです。
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