なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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第十三話 怪しいんだが

 

 

「ここは…」

 

「目覚めたか、堕岩殿」

 

私は目が覚めると、見知らぬ北国銀行にいた。

え?何で?気絶しても大丈夫なように天衡山で戦ったのに。

 

「誰が私を運んだのです?」

 

「俺だ」

 

なんと鍾離先生が運んできてくれたらしい。余計なお世話じゃ、これからここに蛍ちゃん達が来るんだが?

仕方ない、この場で堕岩の名を返上させて貰おう。

 

「あら、モラクス?そいつは誰かしら。私たちの契約の事、知っているの?」

 

階段の上から「淑女」が降りてくる。格好が何というか…奇抜だな。ゲームで見てる分には普通なんだが、実際に見るとちょっと気圧される。

 

「『淑女』殿か。あぁ、この堕岩殿は未来や過去を見通す力を持っている」

 

「眉唾物ね。まぁ良いわ。徽章を付けているって事はファデュイの一員であるらしいし。それで?堕岩とか言ったかしら。あんた何者?」

 

「私はもはや堕岩では無い。DISASTERと呼んでほしい。私が何者かについては…そうだな、まぁ観測者とでも思っていてくれれば良い」

 

「あっそ。別にアンタなんか覚える気は無いわよ」

 

私が堕岩ではなくなった以上、蛍ちゃんと顔を合わせても大丈夫だ。幸い、堕岩としての顔面もまだ見られていない事だし。

まぁファデュイで無くなった以上徽章も付ける意味はないから外してしまおう。

 

「やぁ鍾離先生…ロザリン?何でここにいるのかな?もしかして俺の手柄を横取りしにきたとか?」

 

扉を開けてタルタリヤがやってきた。良かった、ちゃんと目覚められたようだ。あのまま寝ていたらどうなる事だったやら。

 

「アンタの手柄を横取り?違うわよ。最初からこれは私の手柄」

 

「それはどういう…あっ、堕岩じゃないか!いやあ、超えられなかったよ…残念だ。それで?次の壁はどこにあるんだい?」

 

「『公子』様。これからは私の事はDISASTERとお呼びください。もはや私は璃月に敗北した身。この名を使う気はありません」

 

「そうか。ならそうしよう。それで?ディザスター、俺は次に誰を倒せば強くなれるかな?」

 

「………その時になったらいずれまた」

 

凄まじい剣幕で迫ってくる物だから、思わず了承してしまった。どうしよう、スカラマシュでもぶつけるか?

正直タルタリヤならスカラマシュにも勝てそうな気がするし。外交力が無いだけで強さはピカイチだもんなタルタリヤ。

 

「アハハッ、じゃあその時を楽しみにしているよ」

 

「何?アンタ本当にこんな胡散臭い奴のこと信じてる訳…?ま、良いわ。それより『公子』、アンタとの“協力作戦“のお陰で事が上手く進んだわ。その点については感謝するわね」

 

む、外から近づく足音が聞こえる。どうやら蛍ちゃん達が来たみたいだ。話を遮るわけにもいかないし黙っておこう。

 

「ファトゥス同士の協力だって?よくも俺を騙して好き勝手やってくれたね」

 

「ふふっ、目的のためなら手段を気にしてはダメよ『公子』。アンタだって取引なんて無視して暴れてたじゃない。アンタらしいわね」

 

コッソリと扉を開けて蛍とパイモンが入ってくる。タルタリヤはいつもの鋭さを見せずに青筋を浮かべている。キレてて周りを気にする余裕が無いのかな?

 

「……客人だ、良い加減に喧嘩はやめたらどうです?」

 

「鍾離と『公子』だ!それにお前ら…あの時のファトゥスにディザスター…悪い奴ら勢揃いじゃないか!」

 

「『淑女』っ…!」

 

何気に鍾離先生と私も悪い奴カウントされているのが気に食わない。いやまあ確かに私は璃月においては悪い奴なんだが、こう…釈然としないというか。

 

「アンタ達、吟遊詩人の国で会ったわね?私の名前を覚えているなんてやるじゃない。褒めてあげるわ」

「まぁ────大切なものを奪われる友人の前で何も出来なかった訳だし、忘れるわけないわよね」

 

「今から奪い返しても遅くはない」

 

一触即発といった雰囲気だ。まぁ大丈夫だろう、ここで争いは起きないはず。何か起きたら何としてでも止めるが。

辛うじて蛍ちゃんくらいなら制止できそうかな?

 

「やあ蛍、黄金屋での戦いは実に楽しかったね。また会えて嬉しいよ」

 

「フン!お前がファデュイの執行官だって知ってたのに、お前を信用すべきじゃなかった!あの堕岩もだ!」

 

「まぁまぁ…確かに俺は君たちを襲ったけど、蛍に対して悪意はなかったんだよ…ま、最後は本気でやり合ったけど楽しかったからそれで良いじゃないか」

 

「お前は悪意がなくても仕方ないよな!でも堕岩は…アイツはお前が負けるのが分かってたみたいだぞ!『保険だ』とか言ってたしな!まるで悪の黒幕みたいだったぞ!」

 

「そういえば、黄金屋での戦いの後から堕岩を見ないけど…どこに?」

 

おっとこれはまずいな。とりあえず誤魔化しておこう、鍾離先生、タルタリヤ、シニョーラ、口裏合わせを頼んだよ!

 

「……奴は死んだ。私が始末する事に決めたからな」

 

「え…嘘だろ?なんでそんな事したんだよ!?」

 

「璃月港を渦の魔神によって崩壊させようとしたのは奴だ。私にとって都合が悪かったのでな、消えてもらった」

 

「…ふむ、確かに堕岩殿は璃月を堕とそうと企んだ大悪人だ。ディザスター殿は確か…暗殺、それも世に名を残すだろう悪人専門を使命としている。そうだったな?」

 

鍾離先生がノってくれた!ありがたい。これから私は正義の暗殺者DISASTERとして過ごす事になりそうだな。今のうちからエミュレートをしておこうか。

 

「そうだ。黙っていて悪かったな」

 

「なら、なんでそこのファトゥス二人をやっつけないんだ!」

 

「まだ何もしていないからだ。無論、『公子』が魔神オセルを召喚していたら始末する予定だった。しかし、堕岩というバカな奴がそれを行ったが故に始末した」

 

「お前っ…!」

 

「まあそうカッカしない。それでディザスター、堕岩を殺してくれた始末はどうやってつけるつもりだい?」

 

タルタリヤも乗ってくれた。まぁこれからの方針は「適度に介入」に変わりはない。ファデュイの立場を捨てたが、ファデュイに協力出来ないわけじゃない。

 

「では、詫びとして3回だけ全面協力しよう。何、どんな事でもしてやるさ」

 

「3回と言わず何回でも…と言いたいところだけど、君に逃げられてしまってはどうしようもないからね。君の気が変わって何度でも協力してくれる事を祈ってるよ」

 

「────なら、私にも協力してくれるかしら?アンタの“力”、興味があるわ。たとえ嘘でも構わない、私にアンタの真価を見せてみなさい?」

 

「それは命令権を一度使うという事で良いのか?」

 

「おい、俺とディザスターの契約に「ファデュイとディザスターの契約なのよね?」ちっ、上手いこと言って…」

 

「分かった。よろしく頼む、ロザリン・クルーズチカ・ローエフェルタ殿」

 

「アンタ……ふぅん、ほんの僅かに信憑性が出てきたじゃない」

 

こうして私はシニョーラと共に稲妻に行く事になった。しかしまだ私には大陸でやる事がある。それは第一章四節「俺たちは再会する」の観察と介入だ。

世界があるべき形になる為にはそれを鑑賞し干渉する必要があるだろう。

 

私は北国銀行を出ようとして一つ思い立った。蛍ちゃんにモンドへ行くように言っておかないとな。ダインスレイヴと出会う為にはあそこに行く必要がある。

万が一出会わなかった場合、蛍ちゃんは空くんと出逢えずじまいだ。それは可哀想だろう。

 

「モンドへ行け、そこにお前の兄の手掛かりがある」

 

「えっ、それはどういう…」

 

「また会おう。ではな」

 

蛍ちゃんに別れを告げ、ヤルプァ達の元へ向かう。これで漸く稲妻へ行く目処が立った。報告会と行こうじゃないか。

と思っていたら、シニョーラに呼び止められた。

 

「どこに行くつもりかしら?私は今からでも稲妻へ出発するつもりなのだけれど」

 

「知り合いもその船に乗せてくれないか?あと、私はすこしモンドの方に野暮用だ」

 

「そ。じゃあさっさと連れてきて?それと、別行動をするのならこれを渡しておくわ」

 

そう言ってシニョーラは私にプリズムを渡してきた。これミラーメイデンの素材じゃないか?これが何に役に立つんだ?

 

「これは古代遺物ワープポイントの技術を応用したもので、それを使えば私の所へ転移できるわ。野暮用とやらが済んだらさっさと来なさいね」

 

おお、それは便利だ。私はそれを受け取ってからヤルプァ達の元へ赴いた。

ヤルプァは既に結果が分かっていたのか、ニヤリと笑った(風に見えた)。エラ・マスクもサムズアップしている。

 

「見ていたぞ、ディが破滅の光線を放ち魔神を討伐せしめた所をな!やるではないか!流石我が友!オレも鼻が高いというものよ!」

 

「お手柄ね!これで指名手配からも逃れられるわね?」

 

「あー、その事なんだけどね…堕岩としての私は死んだ事にした。その代わり、『淑女』が稲妻まで二人を運んでもらえる事になった。私は野暮用があって少し遅れるが、まぁ割とすぐに会えると思う」

 

「ふむ…オレがもう少し人間の前に見せられる姿をしていたら良かったのだがな。相分かった、稲妻にてまた会おう。オレとしても人間と同じような生活をしているうちに何かを思い出させそうでな」

 

「ヤルプァ!その内容詳しく!もしかしたら私の仮説であるヒルチャールの起源人間説の確たる証拠を得られるかも…あっ、ディザスター。ヤルプァは任せておいて!」

 

学者スイッチが入ったエラ・マスクは強い。どれくらい強いかと言うと、ヒルチャールの中でも上澄みの強さを誇るヤルプァでさえ気圧される程だ。

 

「ああ、頼んだよ。それじゃあ行ってくる」

 

「「いってらっしゃい」」

 

こうして送り出されると言うのはなかなかどうして良いものだ。

私は上機嫌でアビスの基地を襲撃した。

 

「い、行け!ヒルチャールども!」

 

「unti buri buri buritania(って言ってもなぁ)」

「ole tachi ning enku(ヤルプァ様の知り合いだろ?)」

「mur dais enp ai(やめとこうぜ)」

 

「お、おい…どこへいくお前達!戻ってこい!待って!戻ってきてください!ホンマにたのんます!」

 

「………可哀想だな、お前」

 

「何で敵に慰められなきゃいけないんだよ…」

 

その後、友好的になったアビスの魔術師から穢れた逆さ神像の有無や「王子様」の存在などを聞いた。まあこれと言って新しい情報はなかったんだが。

 

「ん、あれは…ベネット?なぜこんなところに…」

 

私がアビスの尻を追いかけ回していると、何やらダンジョンでも無いのに大岩に追いかけられているベネットと遭遇した。

会えて嬉しい反面、今日はついてないと知って残念だ。

 

「おーーーい!お前、危ないから逃げた方がいいぞぉーーーっ!!!」

 

「卍華鏡…イレイザーキャノン!」

 

大岩を吹き飛ばしてベネットを救出する。余波でベネットがこちらにぶっ飛んで来るがまあ受け身くらいは取れるだろう。

 

「あたた…お前やるな!凄い威力だったぞ!」

 

「ありがとう。気をつけて行くんだぞ…そうだ。私は訳あってモンド城に入れない身なんだ。もし良ければ私を匿ってくれないか?エンジェルズシェアまでで良い」

 

実際問題、私はどうやらモンドのお尋ね者らしいので協力者がいなければ城に入れないのだ。

もちろん、神の目を手に入れた今門番程度なら打ち勝てるだろうがそれは頂けない。

 

「おう!これでお前に恩返しが出来るしな、任せとけ!」

 

「助かるよ、君のような凄腕の冒険者に手伝ってもらえれば千人力だ」

 

ベネットは炎神とも言われる程強力なキャラクターだ。不運な奴だがその不運から生き延びる実力はしっかりとある名実共に最強格のキャラと言っても過言ではないだろう。

 

「そうだ!行きがけの時間暇だろ?もし良ければなんだがさっきの技をオレにも教えてくれないか!?アレが使えれば色んな場面で役に立ちそうなんだ!」

 

「構わないとも。まず…」

 

私はベネットにイレイザーキャノンの構造を説明しながら道を歩く。教え終わったぐらいに丁度手頃な遺跡重機がいたので試し打ちさせてみる事にした。

 

「ハァァーーーッ…!天に召せ!」

 

ベネットの炎の剣が剣に凝縮され、蒼炎となったタイミングで勢いよく剣が振り下ろされる。炎の斬撃は斬撃波となり遺跡重機を襲う。

 

「ガガ──────ピ──」

 

遺跡重機は炎の剣によって真っ二つに斬られ、その断面は赤熱していた。流石はベネット、出来ると信じていた。

 

「よっしゃあ!一撃で撃破したぞ!こんなの初めてだ、ありがとう…えーっと、まだお前の名前を聞いてなかったな。何で言うんだ?お礼を言わせてほしい!」

 

「私は…そうだな、ディとでも呼んでくれ」

 

「おう!ありがとな、ディ!」

 

「こちらこそ、君のような強者に私の技を使ってもらえた事を嬉しく思うよ」

 

「そう褒めるなよ、まあ悪い気はしないけどな!ほら、そろそろモンド城につくぞ。この外套を渡しておく、これは凄い品でな?なんでも炎元素の応用で陽炎みたいに姿を隠すらしいんだ!」

 

「それは……凄いな。試しに着てみるから見えてるか確かめてくれ」

 

私はベネットから外套を受け取り羽織る。うおっ暑!慌てて氷元素の力で温度を中和すると何とか真夏直前の晴れの日みたいな温度になった。

これ、氷元素の力が無かったら普通の人は死んでしまうぞ。サウナより暑かったからな。

 

「おおっ!凄い、本当に消えてる!よく目を凝らすとぼんやり空気の揺らぎが見えるぐらいだ!さ、行こう!これで安心だ!」

 

その後、ベネットのお陰で無事にエンジェルズシェアまで辿り着いた。私は二階に陣取ると、ベネットにひっそりとお礼を言って別れた。

あとはダインスレイヴが来るのを待つだけだ。必要があればベネットから貰った外套を使って暗躍できる。良い貰い物だ。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

「いつものをくれ。俺はいつもの場所で座っている」

 

おっ、渋い良い声の奴…ダインスレイヴがやってきた。早速コンタクトを取ろう。

 

「『末光の剣』…話がある、二階に来られるか?」

 

「その声…ディザスターか。分かった、行こう」

 

ダインスレイヴが私のいる席にやってくると、私は外套を外し素顔を晒す。ダインスレイヴと会うのはこれが二度目だ。

前回は通りすがりの物知りとして。今回は協力者としてだ。

 

「この間ぶりだね、ダイン。今日は訳あって君に協力しに来たんだ」

 

「協力…?アビス教団に関係する事で何か知っているのか?」

 

「私は少し先の未来が見えるんだ。そこである未来を見た。無論、予知夢のようなもので確定事項とは程遠いのだけれどね」

 

「構わん。人の夢とはその者の精神の核に最も近く、知識やインスパイアなどの源流でもあるからな。話してみろ」

 

「ああ、それで私が見た夢では…『王子様』とその妹が邂逅し、騎士がかつての旅の仲間と再会する…と言うものだ。そして物語の開始地点はここ、エンジェルズシェアだ」

 

「つまり、俺に暫くの間ここにいろと言う事か?そして彼の妹に会え…と言いたいみたいだな。分かった、良いだろう。しかしそれはアビス教団に関係があるのか?まさか…」

 

「おっと、それ以上は藪蛇だ。真実は往々にして一つとは限らないからね。自分の目で見たものを信じると良い」

 

「────そうか。しかし驚いたな、まさか空とこんなにも酷似している者がいるとは。貴様は本当に空の関係者ではないのか?」

 

「さぁ、そこまでは知らないな。私とて暗闇に向かって投げ出された身、彼との因果関係はハッキリしていないんだ。もしかしたら重大な事実があるのかも知れないがね」

 

実際問題、私の見た目はデフォルトで決まっていたものだ。そしてそれが空くんの外見を大きくしたものとなっている。

髪は初めから結われていたし、服装のデザインこそ違えど基本色は同じ白色だった。すぐに別の服に替えてしまったが。

 

実は本当に空くんと関わりがあるかもしれないと考えるのは不自然なことではない。が、私自身の記憶が関係ないと激しく主張している為恐らく関係は無いんだろう。

 

「さて…俺は元の位置に戻らせてもらう。ディザスター、また新たな情報があれば教えろ。俺も協力者として色々探ってみる」

 

「了解した」

 

そして二日後、蛍とパイモンがダインスレイヴの噂を聞きつけてエンジェルズシェアまでやって来た。

下の階でダインスレイヴが蛍に三つの質問を出しているのを私は眺めていたのだが、急にダインスレイヴが隠れていたはずの私を見て「降りて来い」という視線を飛ばして来た。

どうして急に呼び出すんだ…?ああそうか、予言が当たったから色々話すことがあるんだろう。

 

「──────協力者を紹介しよう、コイツはディザスター。予知夢の力を持っていて俺たちが出会う未来を予想していた」

 

「久しぶりだな、蛍。パイモン。そう言う訳だから私は今回協力者だ。誰も不和は望んでないから仲良くしようじゃないか」

 

「あなたは堕岩を殺した」

 

「そう怖い顔をするな。私は飽くまで世界の均衡の為にやったのであって特別殺意があった訳じゃない。それによく言うだろう、獲物を殺すのは道具ではなく殺意だ…と」

 

「貴様らは面識があるとは思っていたが、そこまで険悪だったとはな。しかし任務に私情を交えるのは冒険者としては愚の骨頂だ。今は感情を抑えろ、一時的とは言え命を預ける仲間だからな」

 

「仕方ない…蛍、今はダインの言う事に従っておこうぜ。ディザスターは堕岩を殺した嫌なやつだけど、得体の知れないアイツを殺せる程の力を持っているんだ。協力しておこうぜ」

 

「パイモンがそこまで言うなら…でも、完全に信じた訳じゃないから」

 

「そこまでは私とて望まん。さぁ、アビス教団退治に行こうか?善は急げというだろう」

 

「それなら、早速現地に行こう…俺の仕入れた情報によれば、アビス教団は再びセピュロスの神殿に潜伏しているようだ」

 

ダインスレイヴとそこで落ち合う事に決め、私はダインスレイヴについていく事にした。欲を言うなら蛍ちゃんと行きたかったが、今は目の敵にされているので不可能だろう。

 

「そういえば────ディザスターというのは旧い魔神の名だったな。貴様と何か関係があるのか?」

 

「かつて私がそう名乗っていたからこの名前にしているだけだ。別に名前があるならそれでも構わない、本来の名前も失ってしまったしな」

 

「ふむ…人の記憶とは忘れたと思っていても魂の奥底に刻まれいるものだと言う。スメールの草神なら何か知っているかも知れないな」

 

「クラクサナリデビが…?あぁ、アーカーシャ端末を通じてなら出来るかも知れないな」

 

ダインスレイヴとは同じ真実を知る者だから知識のレベルを下げなくてもいいのが楽で良い。言い方を変えればお互いに世界の異端者であるからこそ合う話があるというものだ。

私はこの世界のイレギュラー。ダインスレイヴは呪いを受けながらも自我を保つイレギュラー。そして同じ金髪というのも同調意識を上げてくれる。

 

「着いたぞ。ここがセピュロスの神殿だ…確かに僅かながらアビスの気配がするな。ディザスター、未来はどうなっている?」

 

「変わっていない…ここに来ることが楔となっているからな。例えここに何も無くとも、ここに来ること自体に意味があり世界を繋ぎ止めている」

 

「そうか」

 

暫く待っていると、元気いっぱいな声と共に蛍とパイモンがやってきた。パイモンの片手には肉串が握られている。恐らく作ってもらったんだろう。

 

「おーいっ!ダイン、ディザスター!来たぞ!」

 

「人のいないこの神殿だが、アビスの痕跡が残っている。『西風の鷹』…風を操り空を飛ぶ。それは同時に神々の光による支配を意味する」

 

「何のこと?」

 

「何でも無い。中に入ろう」

 

遺跡の中はゲームで見たのと何ら変わり無く、ギミックも既知のものだった為スルスルと進むことが出来た。

途中で何体かのヒルチャールがいたが、対話によってそこを退いてもらった。

 

「ディザスターはヒルチャールと会話出来るのか…意味を理解できているのか?」

 

「言葉はわからないが意図は伝わるさ。何せ同じ────ああいけない。これはまだだったね」

 

元が人間だから話も通じるし理性もあるというのは、層岩巨淵のストーリーで明かされるものだ。今知ってしまっては時系列がズレてしまう。

私が異世界人と知られたら面倒事が起こるに決まっているんだ。言わぬが花だろう。

 

「む、構えろ────敵だ」

 

「何だ貴様ら…!?って、ディザスターじゃ無いか!オレだよ、こないだヒルチャールどもに逃げられてアンタに慰めてもらった!」

 

「……お前か!お前達の服装は似たようなものばっかりだから覚えにくくてな、すぐ気づけなくてすまない」

 

「へっ、良いんだよ。あの方がそうせよと言ったんだ、オレみたいな下っ端は従うしかないからな…」

 

「アビスも世知辛いな」

 

私がアビスの魔術師の知り合いと会話を咲かせていると背後からとんでもないものを見る目で見られている事に気がついた。

しまった、今はアビスの敵と行動しているんだった。

 

「ディザスター…そのまま剣を捨てて手を上げろ」

 

「アビスがあんなに気さくに話してるのオイラ初めて見たぞ…」

「私も」

 

「何も、アビス全てと分かり合えない訳じゃ無いだろう。現に私はそこなアビスの魔術師と知己だ。話し合いによる解決も出来ると言うことを覚えておくと良い」

 

「あー…ひょっとしてディザスター、オレのせいで立場悪くなってるな?すまんな、オレはもう退散するから。な、アンタら!コイツは悪い奴じゃねえよ、アビスのオレなんかの相談乗ってくれるくらいには優しいからさ!」

 

そう言ってアビスの魔術師はどこかへ転移してしまう。後には微妙な空気が流れていた。

ダインスレイヴからは殺気とも取れる空気が。蛍からは疑いの目が。パイモンからは純粋な感動の目が。

 

「釈明しておくと、私は特定の立場に着くことは基本的に無い───が、可能な限り対話による解決を図りたいと思っている。それに本当の敵はアビスだけじゃないからな」

 

遥か未来に天理との戦いを控えている以上、戦力となりうるアビスの勢力を削いでしまってはいけないだろう。

それに、神の心を奪って回っているスネージナヤと神の国を壊そうと画策しているアビスは似たり寄ったりな所がある。

 

どちらも最終的には天理と対決する事になるんだ。数は多い方が良いだろう。

 

「………なるほど、理解した。貴様がディザスターである理由もな。あの事件はアレが原因であった…そうだな?」

 

「恐らくは。しかしそれはそれとしてアビスは悪だ。その末端こそあんな感じとは言え、その中枢は明確に悪だ。人間の敵だ。」

 

「お、おい…何の話をしてるんだよ…?」

 

「結局ディザスターは敵なの?味方なの?」

 

「私はみんなの──「俺の味方だろう」ああ、そうだね。ダインスレイヴの味方で間違いない。まあ正しくは世界の味方…と言った方が良いのかも知れないが」

 

実際、この先でダインスレイヴや蛍ちゃんがどうなろうとも(出来れば仲良くしたいが)、私の立ち位置はどこまで行っても調整役だ。

故に決して物語の大筋を変える事は無い。もし自ら物語を書き換える時が来るとしたら、その時はきっと世界でも滅ぶ時なんだろう。

 

「世界の味方…それはファデュイと協力する事が世界の為になるって事?」

 

「彼らの理念は歪んでいるが間違いではない。神の心を集め、『計画』を達成する…しかし歪みは正されなくてはいけない。そしてそれを担うのは…私ではない」

 

実際、天理ってキナ臭いし正直スネージナヤの方針が間違っているとは思えない。哀切なアイスクリスタルのフレーバーテキストを見る限り、スネージナヤの女皇は彼女の正義に基づいているように思える。

まあやり方は問題があるが、それを正すのは蛍ちゃんの役割だ。決して私が出張って良い役ではない。

 

「お前ら難しいことしか言わないからオイラ付いていけないぞ…」

 

「いずれ理解する事だ、今はあまり気にしなくていい」

 

その後、私達は別れ別々にアビスについて捜索する事になった。しかし私には行かなくてはいけない所がある。

シニョーラの所へ戻らなければ。良い加減、ヤルプァ達を放置しておくのは私としても偲ばれる。親友と顔を合わせられないのも辛いしな。

 

「さて…これどうやって使うんだ?」

 

貰ったプリズムをいじくりまわしながらボヤいていると、突如としてプリズムが眩く白光し始めた。

 

次の瞬間。

私は天守閣の上にいた。文字通り上だ。

 

「おわぁぁっ!?落ちるっ、死ぬ!?」

 

手に握っているプリズムがそれを否定するかのように私の周囲にバリアを張り始める。そして私はそのまま天守閣へ突っ込み…

 

 

 

「────何者ですか?」

 

「…初めまして、雷電将軍。私はDISASTER、以後お見知り置きを」

 

天守閣の天井をブチ破り、最高に怪しい登場をしてしまった。




次回は一週間以内に投稿します
もしくはナヒーダと結婚できたら。
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