なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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ギリ遅刻では無いです。
スカラマシュとデートしてたらこんなになってました。


第十六話 半年後、稲妻なんだが

 

出立する前に装備の確認だ。

私の現在の装備は、顔を隠せる笠、稲妻風の旅装、凄そうな刀、割れた神の目、筆談用の道具と身軽なものばかりだ。

そういえば、同行者の姫乃さんは荷物とか大丈夫なのだろうか?

 

『荷物は大丈夫ですか?』

 

「大丈夫でございます。わたくし共巫女には各地に行脚用の補給地点が用意されていますので」

 

なるほど、それなら各地に巫女がいたのも納得だ。姫乃さんの荷物は各地にあるらしいので必要無いと。

だったらもう出発してしまおうか。

 

「刹那様…いえ、“英雄を継ぎし者“刹那様。まずはどこへ行かれますか?」

 

『ここからなら離島が近いだろう。そこに行ってみよう』

 

道中で野武士などに襲われるかと思ったが、どうやらテイワットの荒くれ者は仲間同士で攻撃しないらしく、こちらを一瞥するだけで特に争い事は無かった。

 

『しまった。モラが無い』

 

「なんと…無銭飲食を敢行されるのですね?」

 

『するわけないだろう。どこかでモラを稼がなければ』

 

旅商人から米を買おうと思ったら金が無かった。璃月にいた時は金が余るほどあったのに。

なので、働く必要が出来てしまった。稲妻特産品でも集めて売るか?

 

『そういえば、晶化骨髄の相場が急増しているらしいな。集めに行こうか』

 

「あら、そうなのですか?よくご存知で」

 

『離島で安く売り捌こう。少しは彼らの役に立つだろうから』

 

という訳で、離島へ行くついでに晶化骨髄を一箱ほど集めておいた。これで暫くは豪遊できるな。

取らぬ狸の皮算用と知っていてもウキウキしてしまう。

 

『一々筆談て商談をするのも面倒だ。姫乃さんに頼んで良いか?』

 

「ええ、わたくしにお任せください」

 

離島の紅莉栖の所に姫乃さんを行かせて、私は離島中央の広場で屯っていると、見覚えのある顔がいた。

星十字船団の船長北斗と、楓原家の浪人万葉だ。

そうか、これぐらいの時期に璃月に渡ったんだな。

 

「…何を見ているでござるか?」

 

おっと、ジロジロ見過ぎたな。慌てて目を逸らす…が、どうやら目をつけられてしまったようで此方へ迫ってきた。

 

「何やら怪しげな装い…見たところ浪人でござろうが、刀は嘘をつかぬ。ロクに握られていない柄を見るに刀を持ったのもこれが初めてであろう?」

 

「…………………」

 

困った。歴戦の武士とは一目でここまで見抜く者なのか?それとも万葉が凄いだけ?どちらにせよ、誤魔化さなければ。

今喋ろうにもまともな事は言えない。口が滑って要らぬことを言ってもしょうがない。

 

「………ちょっ……めてくだ…!」

 

遠くから姫乃さんの声が聞こえた。誰かに絡まれているらしい。チャンスだ、これを利用して万葉から離れよう。

私はすぐさま駆け出して姫乃さんの所へ向かった。

 

「そんなっ、ルートなんて知りません!離してください!」

 

「へへへ…良いじゃねえか、教えてくれたってよ…」

 

姫乃さんに下卑えた笑みを浮かべながら刀を突きつけている宝盗団…もといゴミどもの前に立ち塞がり、私は抜刀する。

 

「んなっ!何だテメェ!浪人じゃねえか、俺らと同類だろ!?わけ前はやるから──ギャッ!」

 

最後まで言う前に袈裟斬りを繰り出し宝盗団を斬り伏せる。流れるようにその手下を斬る。

良かった、身体は戦い方を覚えていた。それでも以前よりは動き難いが。神の目が割れた弊害だろうな。

 

「刹那様…ありがとうございます。お手数おかけしました」

 

私は首を横に振り「構わない」と言う旨をジェスチャーで伝える。姫乃さんは立ち上がると屋根上を見て眉間に皺を寄せた。

 

「黙って見ているだけとは、楓原家も堕ちたものですね」

 

「そう怒るなでござる。拙者も折を見て助太刀に参ろうと思っておった」

 

「よく口が回るようですね。そこにおられる“英雄を継ぎし者“刹那様がいらっしゃらなければわたくしは今ごろ暴漢に襲われて…ああ恐ろしや」

 

どの口が「よく口が回る」と言えたのだろうか。その後も小一時間に亘って姫乃さんの文句が万葉に浴びせられた。

途中で万葉から困った風な目線を向けられたが、状況が面白いので放置していた。

 

「おーい万葉!どこで油売ってるんだ!もう出航だぞ!」

 

「今行くでござるよ!…という訳で拙者はこれにて────刹那殿、また合間見えた時、此度の件を詫びさせてもらおう」

 

「………………」

 

「今度は、その声を聞いてみたい物でござるな。では!」

 

そう言うと万葉は飛ぶように走っていった。

風のように素早いな、流石は風元素の使い手と言ったところか?

さて、これからどうしようか。晶化骨髄で一儲けした事だし、離島を離れて別のところへ行こうか。

 

『姫乃さん、モラは集まったから別の所へ行こう。セイライ島とかどうだろうか』

 

「セイライ島ですか…あそこは今、とても不安定な状況ですがそれでもですか?」

 

私は首を縦に振り肯定の意を示す。

姫乃さんは何かを考え込んだ後、「あまり直接行くのはお勧めできません」と呟いた。

ウェーブボートを使えばすぐだと思うのだが、何か問題でもあるんだろうか?

 

「セイライ島へ行くには、それ相応の実力と功績が無ければいけません。現在、海乱鬼やフライムの異常個体が闊歩しているらしいのです。刹那様お一人ならともかく、か弱き乙女であるわたくしが行けば…」

 

なるほど。丸切りエネミーの私と違い、姫乃さんは体制側の巫女だ。腑抜けの鳴神島浪人と違って、本物の修羅達相手では何をされるか分かった物ではない、と。

万が一姫乃さんが傷つけられた時、恐らく私は八重神子に消されかねない。だからそれ相応の実力を身につける必要があるんだな。

 

『分かった。では功績を上げに放浪するとしようか。冒険者協会と社奉行の依頼を片っ端から片付けていけば功績は足りるか?』

 

「─────ふふっ、本気ですか?刹那様の仰っている事は…まるで英雄の如くですよ?」

 

『それしか方法が無いからな。仕方の無い事だ。それとも他に何かあるのか?』

 

「……いえ、ありませんね。そうと決まれば善は急げです。わたくしが良さげな依頼を見繕って来ましょう」

 

私はサムズアップして応えると、姫乃さんはニコリと笑って「行きますよ!」と声を上げる。

この日から、私の浪人ライフが始まったのだった。

 

 

 ─────────★─────────

 

 

稲妻には、ある噂がある。

 

とある男と、それに付き従う巫女の噂だ。

何でも、西に困っている者あらば助け、東に貧しい者あらば救い、北に飢える者あらば恵みを与え、南に悪人あらば征伐しに来る。

 

その者の名は───“英雄を継ぎし者“刹那。

 

シニョーラは、その噂を聞いた時嗤った。

「まるでおとぎ話の英雄じゃない」と。その嘲笑は偶像に惑わされる稲妻の民達を嗤ったものか、はたまた自身の幼い幻想を僅かにでも信じた余韻か。

兎角、シニョーラが刹那に興味を持つのは必然でもあった。

 

「『淑女』様。刹那が稲妻城に来ているそうですが…如何なされますか?」

 

「そうね────ま、偽りの英雄さんに会っておくのも一興かしらね」

 

そうして、シニョーラは稲妻城天守閣の一間を借り刹那を招いた。

招かれた刹那が巫女の方を少し見ると、巫女は刹那の目を見て何かを察したようでシニョーラに対して話しかけてくる。

 

「“英雄を継ぎし者“刹那様は気難しい方でして…わたくしが代わりにお話しさせて頂きます」

 

巫女が会釈をすると、シニョーラは怪訝な顔をしたが、執行官たる冷静さで真顔へ戻った。

シニョーラは「どうにかして男の方と話せないか」と考えを回しつつ巫女と対話する。

 

「ええ…じゃあ、アンタに質問するわ。アンタは確か、稲妻中を放浪して悪人退治に勤しんでいる────そうよね?」

 

「はい。“英雄を継ぎし者“刹那様はその強い義侠心から世のため人の為行動を開始されました。その者がどのような地位にあろうとも、仁義に悖る行いをした者を刹那様は許しません」

 

「ふぅん、御大層な事ね。それじゃあ、私達のような稲妻の貴賓がもし悪事を働いた時、その刹那様とやらが私達を退治しに来るのかしら?」

 

「無論です。刹那様は悪を絶対に許しませんから…ご存じですか?刹那様は宝盗団のような他人から物を奪い私腹を肥やす者をこれまで500人以上誅して来たと」

 

「(500人以上…フン、英雄だのなんだの言う割にただの大量殺人者じゃない。警戒して損したわ)…あら、それは凄いわね。でも、それは宝盗団のような地位も戸籍も無いような連中でしょう?私のようなスネージナヤの権力者は殺せるというの?」

 

「ふむ────刹那様、どうなさるのですか?」

 

巫女は刹那に尋ねると、刹那が小さな紙を渡した。巫女がそれを見ると、僅かに驚愕した表情を浮かべた後話し始めた。

 

「刹那様は、『どうせ死ぬのだから態々私手ずから殺してやる必要が無い』と仰っています」

 

「───何ですって?」

 

「そしてこうも仰っています。『お前達の謀りは既に見抜いている。大事に隠しているらしい工場の位置も把握済みだ』…と」

 

「っ、アンタ達…最初からそのつもりで…!でもね。勘違いしないことよ?アンタ達じゃ私には勝てないの」

 

シニョーラは元素力を荒れ狂わせながら妖艶に微笑む。しかし、それをそよ風でも吹いたかのように座っている刹那と巫女。

「根本的に見下されている」とシニョーラが気付くまでそう時間はかからなかった。

 

「言ったはずです。態々殺す必要は無い…と。それとも、行く末短い命をここで散らしたいのですか?」

 

「従者風情が…大口を叩く…!良いわ、かかってらっしゃい。アンタ達と私の力の差を見せつけてやるわ!」

 

シニョーラがそう言った瞬間、刹那が刀を抜きはなった。

一瞬、刹那の身体が消えたかと思うとシニョーラの背後には既に、刹那が刀を突きつけていた。

 

 ──────偽典の剣術五ノ型。

かつて刹那が見たガイア・アルベリヒの剣術を見よう見まねで真似し、それを実戦の中で自らの形にしたもの。

高い攻撃力と相手の背後を取るような素早い動きが特徴だ。

 

「ッ…!いつの間に…!」

 

「……………………」

 

「流石は刹那様!その剣で何人もの悪党を切り崩してきた実力は伊達ではありませんね!」

 

シニョーラは自身の背後で刀を向けてくる男に恐怖していた。

何も言わず、顔を隠しているが故の不気味さもさることながら、刀を持っているのに明らかにモンド流の剣術を使う刹那への奇妙さを感じていた。

 

「(コイツは危険…いずれファデュイに仇なす者になるかもしれないわね…!ならば…)ねぇ、アンタ…世界の“真相“に興味はない?」

 

「──────」

 

ピクリと刀が動き、刹那が明らかに動揺したのが見てとれる。これ幸いとシニョーラはファデュイの───スネージナヤの目標と氷の女皇の計画を話した。

刹那は話を最後まで聞くと、刀を下ろした。

 

「刹那様……まさか今の戯言を信じたのですか?」

 

「戯言?違うわよ、この世界の来るべき道。この世界が直面する未来よ!巫女のアンタは分からないみたいだけど、アンタのご主人サマは理解したみたいね」

 

シニョーラは嘲るように言うと、「さあ選びなさい?」と言い手を差し伸べる。

この手を取れば刹那はまたもやファデュイになり、その自由は失われる。しかしこの世界に生まれ、生ける者であれば必ずファデュイの手を取るのは必定だ。

 

だからこそ、刹那はその手を払い除けた。

「知ったことか」と。「それはお前達の問題だろう」と。そう言うかのように手を払ったのだ。

 

「なっ…!アンタ…この世界を見殺しにするつもり!?もはや人に500年前以上の発展はなく、ただ崩壊を待つだけの世界をより良くしようとは思わないわけ!?」

 

刹那は紙に何かを書き記したかと思うと、シニョーラに渡して来た。

シニョーラはそれを受け取ると、初めに「嘘だ」と言う顔をして、その後に確信を得たのか驚愕する。

 

「そんな…いや、確かにその可能性は『賢人』によって唱えられたわ……でもそれは『博士』によって否定されたはず。アンタ一体…」

 

「刹那様、わたくしにも見せていただけますか?」

 

姫乃が刹那に手を出し要求するも、刹那は首を横に振るだけで応えない。シニョーラも誰にも見せたくないのかその文書を懐にしまってしまった。

 

刹那は天守閣を出て姫乃と共に空を見上げる。

空には星々が煌めき、二人を見つめていた。一言、刹那が呟いた。

 

「────醜いな」

 

テイワットの星空は“あなた“を祝福する。

それがどのような意味か、刹那…いやDISASTERには理解できてしまっていた。

悍ましい真相と、スネージナヤの計画。

それが明かされる日は……まだ来ない。

 

 

 ─────────☆─────────

 

 

シニョーラからファデュイの目的を聞いた。

まぁ概ね私の知っている目的と同じで、特に収穫は無かったのだが、私の中の何かがシニョーラに警告をせよと叫ぶので私の知りうる“真実“の一つを教えてやった。

 

半年以上エネミーを狩り、戦い詰めになっていたことでようやく私はこの世界の歪さに気がついた。

だが、これはまだ知られるべきでは無いしそうではない可能性もある。悲観的なことはあまり考えない事だ。

 

テイワットの星空は動かない。それはこの世界で生きる者なら常識なんだろうが、異世界人からしてみれば余りにも異常だ。

それは即ち、この星が静止している事に他ならないからだ。

 

「刹那様、先程のは一体何だったのですか?」

 

『ファデュイを責めないでやってくれ。彼らは間違っていないのだから』

 

少し前から私が寝ている最中に夢を見ることが出来るようになった。

今までは夢など見れなかったのだが、神の目が割れてからは薄らと。今でははっきりと明晰夢となって見ることが出来る。

夢は荒唐無稽なものだが、これに関しては違う。

 

私の知り得ない情報…即ちゲーム内で開示されていない情報。それを教えてくれるのだ。

今まで私は「キングデシェレトの知識」や「アビスより来る真実」などの悍ましい秘密を知らされてきた。

それとは別に、別の世界線の出来事も見ることが出来たりする。

 

例えば、

私が力に飲まれ殺戮の限りを尽くした世界。

私が力を以て皆の幸せを奪った世界。

私が死を用い全ての未来の芽を摘んだ世界。

 

それらは悍ましく、また甘美なものであった。

まるで私に「このようにしろ」と言っているかのように。

まあ私が私である限りそのような事はしない。したくない。

 

「ところで…言葉の方は……?」

 

「──────まだ、万全ではない」

 

失われた言語野は僅かながら回復しつつある。

と言っても、一行程しか喋ることが出来ないのだが。

 

「しかし、1ヶ月前よりは良くなっていますよ!この調子です。ですがマーケティング的には寡黙キャラの方が売れますよ!」

 

「そう…か───」

 

姫乃さんは私を描いた伝奇小説を書いて世に売り出している。

『英雄再誕伝』と言うらしく、1ヶ月毎に刊行されているそうだ。私としても良い小遣い稼ぎになるので放置している。

 

「─────敵だ」

 

「あら無粋…刹那様、頼めますか?」

 

私は無言で刀を抜くと、野伏衆に斬りかかる。

 

 

「鍔ァ……置いてけェ!!!!!」

 

夜の月の下、鮮血が舞った。




次回から第二章入ります
次は一週間以内もしくはティナリがモフらせてくれたらです
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