なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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間に合った、私は間に合ったぞォォォ!
ちょっとぐろいです


第十八話 作戦開始なんだが

 

 

私にとって、刹那殿は恩人である。

 

初めて彼を知ったのは私が抵抗軍との小競り合いを終え、戦況報告のため一時鳴神島に戻ってきた時の事だった。

 

「正体不明の義賊が出没している…だと?」

 

私が書類を整理していると、部下が出し抜けにそんな事を吹聴してきた。

なんでも、部下の不注意で宝盗団に盗まれてしまった重要宝物を、宝盗団の首と共にいつの間にか天領奉行の庭に返されていたらしい。

当初は「ただの猟奇殺人者ではないか」と思ったが、何件か報告が上がってくるうちに義賊は悪人のみを狙う事に私も気付いたのだ。

 

「───否、幕府の許可無しの殺人は法度だ…一度警告した後また殺すようならば、この私が素っ首叩き落としてくれよう」

 

心のどこかで「それは正しいのか?」と訴えかけてくる自分がいたが、私はそれを握り潰して稲妻中に触れを出した。

 

そして数日後、触れ書きを片手に刹那殿がやってきたのだ。

その日は激しい雷雨の日だったのをよく覚えている。恐らく土砂降りに降られたのだろう、刹那殿の服はびしょびしょで。しかしその返り血は拭えてはいなかった。

 

「───謝罪。約定、破綻」

 

刹那殿のその片手には、天領奉行が総力を挙げてでも始末したかった反乱分子“泰平組“の組長である見村嘉一の首が髪を掴まれぶら下がっていた。

普段なら、良くやってくれたと褒賞を渡していたのだが、刹那殿は人斬りを禁止されている身だった。

 

「…………仕方のない奴だ。だが、その者を始末してくれた事は感謝しよう。褒賞は…貴様の人斬りを解禁するのと、天領奉行の名誉武士になることでどうか?」

 

「疑問。九条沙羅、殺害、嫌厭?」

 

「いや、人死を厭う訳では無い。秩序なく正義が行われることが良くないのだ。それならば、貴様を秩序に組み入れて仕舞えば良い」

 

「………驚愕」

 

くつくつと笑いながら(笑顔は見えなかったが)腹を抱える刹那殿につられ、私も少し笑顔を浮かべていたのは今となっては良い思い出だ。

 

その2週間後、私が前線へ戻る事になった。

刹那殿とはそこで共に治安維持をして仲を深めた。しかし刹那殿は私の見送りには来てくれなかった。

その事を少し寂しく思いつつも私は部下400名を連れて前線へ出かけた。

 

しかし道中、あんな事が起こるなんて予想だにしなかった。

 

 

「九条様…いや、九条沙羅ァ…!ここで会ったが百年目ェ…死んでくれや…!」

 

私が任務で半殺しにしてその際に神の目を奪った旧家の元跡取り息子である翫蓮斬が襲撃してきたのだ。

初めに犠牲になったのは、勇敢で若い精兵だった。

 

「──────クジョウ、サラ…コロス…!」

 

「! 貴様、私の部下に何をした」

 

「くひっ、ひひひひっ!流石は邪眼だぜェ…!さァ、感染しろ…“道化師の舞踊(ピエロダンス)“ゥ…!」

 

下手人がそう唱えた瞬間、私の部下達が一斉に倒れ込む。慌てて声をかけるも、ピクリとも返事をしない。

やがて部下達が起き上がると、彼らは私の方を向き虚な目をしながら叫んだ。

 

「クジョウサラ、コロス!!!!!!!」

 

「………っ!」

 

私は慌てて弓を番え、敵を撃ち殺そうとする。しかし、彼らの顔を見てしまった。彼らの家族の顔が浮かんでしまった。

私に、もう彼らは殺せなかった。

 

「シネ!クジョウ!シネシネシネ!!!!」

 

(嗚呼…そうか、これが私の終わりか)

 

「くひひひひひっ!お前らまだ殺すなよ!コイツはボク様がァ…ぐちゃぐちゃに穢してからじっくり殺すんだからよォ!」

 

どうやら、私はまともには死ねないらしい。と思っていた矢先、一筋の光が下衆の前を通った。

下衆の後ろに立っているのは、ボロボロの笠を深く被り、血で染まった紅い羽織を身に纏い、全身から死の匂いを漂わせた男──刹那殿だった。

 

刹那殿はその手に何者かの心臓を握っていた。

 

「あ────ボク様の心臓、返し……」

 

「笑止」

 

刹那殿が心臓を握りつぶし、蓮斬の身体が斃れる。しかし奴に操られた部下達は枷が外れたかのように私に襲い掛かろうとする。

 

「────雷鳴流、風切」

 

その一声と共に部下達だったものが大地に散乱する。

刹那殿は盛大に返り血を浴び、全身が赤黒で染まっている。その姿はさながら、伝説の英雄のようであった。

 

「きれい…」

 

血が、肉が、散乱しているというのに。私の眼はその美しさにやられてしまったのだ。

数秒硬直した後、私の理性が戻り事の重要さを認識し始める。私を救ったとは言え、結果的に部下を殺した刹那殿をどうするか考えようと思ったその時、

 

「来い」

 

刹那殿は私の腕を引き、物陰へ連れ込んだ。

連れ込まれた先には人の気配などなかったが、明らかな生活の跡が残っていた。恐らくそこが刹那殿の拠点なのだろう。

 

「驚くなよ」

 

「?」

 

「───稲妻を治めし者、内に蛇を飼えり。我がこの後述べし戯言は全て偽りを持たぬ言葉なり。雷霆の守護者よ、心して聞け」

 

突如、刹那殿が饒舌に語りはじめた。その手元には『言葉に従え』と書かれた紙が持たれていた。

私は固唾を飲みながらその言葉を待つ。

 

「これより後の未来、天理に逆らいし愚人共の企てにより火蓋を切りし現人神の勢力、雷霆に刃を突き立てり。されどもそれを防ぐは偏に稲光なり」

 

「……抵抗軍が将軍様に刃を?信じられん」

 

「汝、運命の守護者たりうる覚悟はあるか?」

『稲妻のためだ』

 

刹那殿の言葉と書面から、彼が本気である事は確からしかった。

 

「分かった───私は何をすれば良い?」

 

「我が知識、その一端を受け入れよ……汝、為すべきは即ち“目狩り令“なる悪事の続行、及び火炎の守護者の目狩りである」

 

「づっ…!?な、なんだ…これは…!」

 

その言葉と共に私の目が激しく痛み、瞳の中に映像が流れてくる。

それは、最悪の未来だった。

異邦の旅人により将軍様が討ち倒され、その勢いで天守閣を占拠した抵抗軍に将軍様の首が取られる光景。

そして魔神を殺した余波によりテイワット全域に降り注ぐ滅びの嵐と滅びゆく稲妻。世界から雨が消え、生き残った人々は渇きを訴えながら死にゆく光景。

 

「これが…こんなものが…未来だというのか!?」

 

「────肯定」

 

いつ間にやら口元をキツく縛っていた刹那殿が目を紅く光らせながら紙に素早く書き込む。中には『それが起こりうる未来だ』と書かれていた。

 

「………私は、どうするべきなのだ」

 

『今君が見た未来、それは“天領奉行が失墜し稲妻の全てが雷電将軍の敵に回った時の未来"だ』

 

「そんな、事が…天領奉行が、負ける?義父上が敗北するはず…私だっているのだぞ?」

 

『君も見ただろう。三奉行の役人は皆首を切られ野晒しにされて死んでいる。三奉行に代わって政権を握った現人神も背信によって命を落としている』

 

「………何とか、ならないのか?この最悪の未来を見せて、お前は何をさせたい…刹那殿。答えてくれ」

 

『君には英雄になってもらう。天領奉行を君が失墜させれば民意は君に付くだろう。君の父親はファデュイと繋がり、悪意をばら撒いている。君がこの世界を救うんだ』

 

「義父上が…ファデュイめと…?そうか、成る程そうなれば民意は奉行を疑うだろうな。刹那殿、頼みがある」

「どうか私と共に、稲妻を救ってほしい!」

 

「肯定。実行」

 

刹那殿は大きな紙を取り出すと、そこに計画を書いていった。

私がこれからするべき事。刹那殿がこれからする予定の事。お互いの邪魔をしないように定期的に連絡を取り合う事。その他諸々のことを紙面で、言葉で話し合った。

 

 

そして現在。私は社奉行の家令を包囲していた。

モンドから来たと言うトーマという好青年を私は知っている。

仕事が出来、手先も器用で人柄も良い。しかし計画のために必要であるが故に彼には不幸になって貰わなくては。

 

「────社奉行家令トーマ。貴様は違法に神の目を所持しているな?貴様は目狩り令に反している。それ故に拘束する」

 

「へぇ?オレの予想だと君たちはファデュイに踊ら…ぐあっ!?乱暴だな、君は…!」

 

トーマが余計なことを喋りそうになったので矢で肩を撃ち抜く。すまない、これも世界のためだ。

 

「ハァ…ぐっ……こんな事して、タダじゃ済まないよ…!刹那さんが来たら、きっと君たちは殺される…!」

 

「小物らしいセリフだな。案ずるな、助けは来ない。刹那殿は海祇島へ襲撃に行ったと聞いているが?」

 

刹那殿がいないのは、私がトーマを拘束するタイミングで海祇島へイレギュラーを排除しに行くという計画が故だ。

その際、刹那殿自身が『私自身、イレギュラーのようなものだから』と言っていたが私はそうではないと思っている。

 

「なん……だと……!?」

 

「連行しろ!奴を百個目に嵌め込む神像の目としろ!」

 

「待て!どう言う事だ!刹那殿は、オレ達の味方じゃ無かったのか──────!」

 

騒ぎながら連行されていくトーマを尻目に、私は遠くの刹那殿を思い馳せる。どうかそちらもご無事であるように、と念を押しながら。

 

空は残酷なまでに青かった。

 

 

 ─────────☆─────────

 

 

九条沙羅と取り決めた計画により、私は海祇島まで密航していた。

ヤシオリ島にヤルプァ達がいるのは分かっているが、会うわけにはいかない。何故なら、この計画には世界の命運がかかっているからだ。

 

初めに私が違和感に気がついたのは、稲妻の作家達があまりにも洗練されている事が発端だった。

姫乃さんに勧められて一冊娯楽小説を読んだ時、明らかに知っている内容があったからだ。

 

その小説のタイトルは

『サムライスレイヤー』。明らかにおかしい文体で描かれたその小説はサイバーパンクかつサツバツとした内容で、私が読んだことのある内容ばかりだった。

ヘッズであった私は一言一句内容を覚えていたので、すぐに「これは変だ」と分かった。

幾ら異世界でも、ここまで精密に書けるはずがない、と。

 

八重神子に聞いてみてすぐに分かった。

この筆者は最近突然現れ、妙なことを口走る癖があるらしく、何でも「稲妻に金色の旅人が現れたか?」と聞いて回っているそうだ。

 

彼の名は既に判明している。

“イイダ ユウジ“と言うらしい。成る程確かに稲妻なら気が付かれにくいだろう。

その時点で私は他の転生者の可能性を疑った。そしてその疑惑は間も無く明らかになろうとしている。

 

「てっ、敵襲ーーーっ!」

「ゴロー様はァ!?」

「居ねえよ!ユウジ隊長の提言で前線だ!」

 

「雷鳴流…濫乱菊」

 

「ギャア!オレの腕が!」

 

私は一人ずつ首根っこを掴んで()()していく。「ユウジはどこか」と。

それが十人ほど続いただろうか、一人が叫んで助けを呼んだ。

 

「ユウジ様ァーーー!!助けてぇーーーー!あたし殺されちゃうーーー!」

 

若い女の兵士に()()していた時だった。遠くから炎の球が私に向けて飛んできた。

私は咄嗟に掴んでいた女兵士を盾にしその場から離脱する。

爆煙が晴れ、火の玉を投げてきた奴の姿が露わになる。

 

「てめぇが俺を探してるっていう奴か?」

 

「──────貴様が…」

 

その男は、脂ぎった顔に脂汗をかいていた。

太く短い指で法器を持ちながらその醜悪な顔を愉悦に捻じ曲げている。

彼に合うサイズが無かったのか、隊服は今にもはち切れそうな程太っていて、度が強いらしい眼鏡はその汗で曇っている。

 

「ぶふー…俺がヒラメ8番隊隊長ユウジ様だ。海乱鬼がんでこんなとこにいんだよ…」

 

「っ、違うユウジ様!こいつは刹那、前話した英雄モドキの!」

 

「あぁ…?あー、いたんだこう言うやつ。バカだよね、結局抵抗軍が勝つのにさ。ま、いいや。俺の愛人に手ぇ出して生きて帰れると思うなよ?」

 

ぶひぶひ笑いながらユウジとやらはその手に元素力をチャージする。6秒チャージ、イレイザーキャノン程の威力があるならば少し危ないか?

私は改心させた野武士から教わった瞬歩でユウジの目の前に飛び斬りつける。

 

「ぐえっ!……い、痛え…!クソが!そんなに見たいなら見せてやるよ、俺のチート能力!」

 

「!」

 

やはりこいつ、転生者か。チート能力なんて単語、異世界人以外に使うはずがないからな。というか貰えるのかそういうの。

 

「【能力超向上】【元素支配】【思考多重高速化】【精霊使役・水】!これでどうだ!ぶひゃひゃひゃ!」

 

ユウジが何やらブツブツ唱えた瞬間、奴の力や存在感が格段に上がり、赤黒い鎖で縛られた純水精霊が召喚される。

 

『ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!』

 

「─────!」

 

さて、どう対処しようか。

恐らくコイツが世界滅亡の原因に違いないのだが、殺せそうにもない。かといって雷電将軍に引き合わせるのもそれはそれで嫌だ。

ならば殺せる方法を色々試してみれば良い。

今日の私は血に酔っている。私の口を借りてよく喋ってくる“私“もノリ気みたいだ。

 

「雷鳴流…炎匣鹿鳴ッ!」

 

拾っておいた炎のターコイズを活性化させ、刀に炎を纏わせて純水精霊を両断する。どうせ死なないのだから、好きに斬らせてもらう。

狙うのは当然召喚者だ。

 

「はっ、バカが!そいつは死なな…ぎゃあ!」

 

「雷鳴流…八廻怒濤!」

 

「ぎゃっ!いで!ぐええっ、くそ、ゴミが!【元素支配・炎】!」

 

瞬間的に8連撃をお見舞いしてやっても傷はすぐ治ってしまう。出血はしているが、傷がすぐに治ってしまうようだ。

明後日の方向を狙った炎の渦を軽々と避けながら続け様に斬る。

 

「やめ、やめろって!くそ、逃げるしかねぇ…!【転移】!」

 

「逃さん。汝は我が腕の中で冷たくなるのが定めよ」

 

気持ちが昂って、つい口を開いてしまう。

私は慌てて逃げようとする敵の首根っこを掴み敵と共に転移する。

そこが敵地であろうと関係ない。私はただ、コイツの不幸な未来を見られるならそれで良い。

 

「ぐえっ!た、助けてくれ心海ィ!」

 

「…!?伊井田8番隊隊長が何故…!?」

 

「クク、ハハハハハ…!殺してやる、その死に様を見せろ醜男!」

 

「それに“英雄を継ぎし者“刹那殿まで…!双方、一度矛を引きなさい!」

 

醜男…いや、ユウジくんはその醜い顔を苦しさと痛みで更に醜くしながら必死に珊瑚宮に助けを求める。

大丈夫だよ。君は簡単には殺してあげないから。

 

「………っ!まさか、ディザスターの眷属…!皆の者!伊井田8番隊隊長はこの場で諦めます!悔しいですが、これ以上被害を出さない為です!私たちはこれより、ヤシオリ島へ本陣を移動させます!」

 

「そ、そんな……まっでぐれ!俺は、俺は助けてくれないのぉっ!?ぎゃあああっ!?」

 

ほっぺたがモチモチしていたので引きちぎってみた。白い脂身が沢山出てくる。

すぐに治っちゃうから私としても引き裂き甲斐があってとても良い。

 

「見たでしょう!彼はもはや英雄ではありません!厄災の子、災厄の象徴、ウロボロスの神子!この場に於いては逃げるが最優先です!」

 

「そ、そんに゛あぁあああ!?いやだ!だずげで!じねない!おれ、死ねないんですぅっ!」

 

「………さようなら、伊井田8番隊隊長。あなたの事は決して忘れません。皆の者!撤収!」

 

「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

漸く騒がしいのが居なくなった。

これで二人っきりだね、ユウジくん…❤️

 

 

 

 

 

「全く、情けないな」

 

どこかで聞いたことのある声が聞こえた。

ああ、この声は……我が父よ。

 

「自覚があるのならしゃんとせい。全く…これでは子供とそう変わらないではないか。DISASTER君が侵食されてるでしょーが」

 

あ…ごめんなさい。何故私は謝っている?

 

「我が与えた神の目を勝手に割りよって…タイミングは最適だったが、あれは我の加護でもあったのだぞ?」

 

あ、えっと…その………元素力にかまけて近接戦闘の訓練をして来なかった私にとって、良い薬になったな。

 

「よし、だいぶ戻ってきたな。すまないねDISASTER、我が唯一の眷属よ。厄災の獣(こいつ)は昔作った簡単眷属作製キットなんだが、まさか遺跡に残ってるとは。回収しておくから安心せよ」

 

そんなもの作るなと私は言いたい。最悪だ、人の味を知ってしまったんだが?

それに、私の刹那としてのブランドが完全におじゃんだ。姫乃さんが私のグッズでひと財産稼ごうとしているのを知っている分、罪悪感がすごいんだが?

 

「すまんすまん、我としても最近復活したばかりでの。これぐらいしかしてやれん。にしても驚いたな、ソロモンの奴が動いていたとは」

 

ソロモン?あのソロモンか。居るのか。

いやまぁ、バエルやらバルバトスやらが居るのだから居てもおかしく無いが。

つまり、このユウジとかいうミンチはソロモンとやらの差金と言うことか?

 

「いんや、違うね。コイツの能力には制限があったろう?“名前を呼ばないと発動しない能力“。我ら魔神の中では名前は大切な指標なんだ。まぁ詳しいことは天理ちゃんに聞いてくれ。お前のお母さんだぞ?」

 

えっ。

 

「それじゃ、我は天星ん所…層岩巨淵で待ってるから。迎えにきてね」

 

おい、待て……と思考する前に声は行ってしまった。

改めて状況を整理しよう。

 

まず、私は厄災の獣とやらに侵食されていたらしい。これは良いとしよう。

そして、転生者と思わしき人物を惨殺してしまった。首を絞めて拘束した所までは覚えているが、そこからの記憶は無い。

目覚めた時にはソイツの臓物を咀嚼している途中だったから、気分は最悪だ。

 

それでもって謎の声。

いや、謎ではないな。私に神の目を渡してきた奴が話しかけてきたのか。

それで層岩巨淵に来いとの事らしい。

残る厄介そうな事柄は…私の母親問題。天理が母親だと?あり得ないだろ、アレからどうやって子供が生まれるんだ?

 

「くそ…口の中が気持ち悪い…ぺっぺっ」

 

私は口の中に残った血を吐き出しながら、とりあえずイレギュラーを片付けられたことを安堵する。

 

「刹那としては終わったな…どうするか。そういえばパイモンに姿を見られていたな?よし…」

 

決まりだ。謎の侠客・刹那には死んでもらおう。堕岩の二番煎じになるからそれはどうかと思うので、一応姫乃さんに相談してみようか。

 

 

私はとりあえず、鳴神島に帰ることにした。

血塗れの浪人装束を着て鳴神大社に戻ると、八重神子から嫌そうな顔で見られた。

 

「お主、臭いぞ…遠くから見ておったが、なんじゃアレは。獣と豚の捕食パーティーなど見とうなかったぞ」

 

「すまないな八重宮司。浴場と着替えを貸してくれるか?」

 

「………話せるようになったのじゃな。ふむ、憑き物が落ちたといって良いようじゃな…“英雄を継ぎし者“刹那としてはどうするつもりじゃ?」

 

「それを話し合いたい」

 

「ふむ、相分かった。お主が風呂に入っている間に作家陣を呼んで相談会を開いておく。着替えは姫乃に持って行かせるが故、気にせずとも良いぞ」

 

「助かる」

 

私は巫女さんに浴場まで案内され、身体を洗う。

かれこれ稲妻には長くいる。私がテイワットに来てからの大半はここにいる事になるな。

少しは身体も成長したようで、すっかり戦士の体らしく筋肉がついて来ている。

 

「ふぅ……さて、覗いているのは分かっているんだ。出てくると良い」

 

「…………!」

 

壁に微かに空いた穴から視線を感じた為、一応警告をしておく。しかしよく覗けたものだ。

ここは山の中にある秘境(ダンジョンではない)のような場所にある。ここまで来るのには相当手間が必要な筈だが。

 

「まだ、隠れているな。そこか!」

 

気配の強い壁を殴って破壊する。木造なので簡単に壊せる。

 

「こら、覗きは────んっ!?」

 

覗いていたのは、まさかの人物だった。

まさかそんな、君だけは違うと信じていたのに…!

 

 

「や、やあ…ディザスター…」

 

「パイモン!?」

 

覗き魔は、まさかのパイモンであった。

 




次回は一週間以内か雷電将軍の谷間に顔を埋めれたら投稿します
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