なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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ごめんなさい 遅れました。
リアルの方が忙しく、どうしても昨日投稿することが叶いませんでした。


第十九話 会議なんだが

 

「や、やあ…ディザスター…」

 

私の風呂を覗いていたのは、まさかのパイモンだった。

いや、どう言うことだ?何だ、何かのネタを振られているのか?

 

「やあ♦︎蛍は一緒じゃないのかい♠︎」

 

「なんだよその喋り方!なんか怖いぞ!それと服を着てくれ!」

 

「覗いて来たのはキミだよ♣︎パイモン」

 

思わずサイコピエロになってしまったが、無理はないと思う。幼女がどうして自分の風呂を覗くなんて考えるんだ?

とにかく訳を聞かなければどうしようもない。

 

「それで♦︎どうして覗いてきたんだい♠︎もしかして…私に興味があったとか❤︎」

 

「違ーーーう!そんなこと、絶対に!無いぞ!八重様に見てみろって言われたから!アイツ、オイラを騙したんだ!」

 

「あの女狐…♠︎なるほど、ありがとうパイモン。あとでじっくり“お話し“するからね」

 

「その話し合い、オイラも混ぜろよな」

 

私はピエロのモノマネをやめてさっさと風呂から上がり着替える。

衣装は刹那の物ではなく、包帯が所狭しと沢山巻かれた忍者のような服装だった。センスが高すぎて私には理解出来ないな。

 

パイモンと二人で八重神子の所へ突撃すると、そこでは既に厳かな雰囲気が漂っていた。

上座には八重神子が、下座には蛍ちゃんが。その付き添いか知らないが、宵宮と神里綾華が横に座っている。何でここに居るんだ?

 

「おお、戻って来たのか権兵衛よ。ファデュイはどうじゃった?」

 

「────あぁ、最悪だった。まさかファデュイが人造人型決戦兵器『公子ゲリオン』の建造を終えているとは…」

 

咄嗟に振られたので大嘘をついてしまったが、大丈夫だろうか?八重神子はクスクスと笑っているだけだ。

 

「ディザスター…?何でここに?」

 

「やぁ蛍ちゃん。元気にしていたかい?諸事情で私はここに泊まっているんだ」

 

「っておい!八重神子!オイラをよくも騙したな!?そのせいで、オイラはコイツの裸を見る羽目になったんだぞ!」

 

パイモンが激昂しながら八重神子に詰め寄る。ぷんすかと言った擬音が相応しいほど怒り狂っているのが伝わってくる。

 

「おや?妾は其方には“良いものが見れる“と言っただけじゃ。権兵衛の身体は戦士として引き締まっていてさぞ眼福であったろう?」

 

「野郎の身体なんかみたって、オイラ嬉しくないぞ!お前なんか…変なあだ名をつけてやる!そうだな…お前なんか『お稲荷』だ!」

 

「稲荷寿司は妾も好きじゃ」

 

「って違ーーーう!!!!」

 

パイモンの鋭いツッコミが炸裂したところで、神里綾華がコホンと咳払いをして「本題に入りましょう」と発言する。

そうだ、そもそも何で宵宮と神里綾華がここにいるんだ?

 

「先程、八重宮司様がお話になられていた転廻衆の事ですが…その実態と勢力についてお教え頂けますか?」

 

「うむ。現在妾が確認している転廻衆は三名…見分け方は簡単じゃ、神の目を持っている者に対して過剰な執着を見せる者…それが一番分かりやすくてよい」

 

「お、おい…何の話だよ?」

 

「パイモンは外で権兵衛と戯れておれ…話を戻すぞ。その内の一人、伊井田裕次は妾の指令で刹那に殺させた。残る二人はどこに隠れているのやら…否、ここで話した方が良いな。一人はスメールに、もう一人は璃月にいるそうじゃ」

 

私が殺した奴のような者たちを八重神子は“転廻衆“と呼んでいるらしい。

「生を転じて廻り還る」という古い稲妻の諺から来ているのだろうか。まぁそんな事はどうだって良い。

問題は別にあるのだから。

 

「八重神子」

 

「して────なんじゃ権兵衛?」

 

私は八重神子に詰め寄り、自身の内なる怒りを青筋として額に発露する。

 

「子供にいけないものを見せようとするな」

 

「そう怒るでない。お主は何も恥じるような身体をしてはいないのだから…「そうじゃないだろ」クク、そう憤るな」

 

八重神子の言い分では、私の肉体はそれはもう美しいのだから別に全裸でも恥じる必要は無い…との事だった。

なめんなよマジで。幼女に肉親や相棒でもない男の裸体など見せるものではない。絶対にだ。

 

「パイモン、ディザスターの裸見たかったの?」

 

「蛍っ!?違う、違うぞ!あれは罠だ!」

 

「そうだ。これは罠だ!八重神子が私とパイモンを陥れる為に仕組んだ罠だ!おかしいじゃないか?なぜ裸を見る必要がある?それが罠だと言う証拠!」

 

蛍がキラーパスを投げて来たので全力で回避する。粉バナナ☆と言う事だ。

その後の必死の説得によって、私は幼女に裸体を見せる趣味の変質者になってしまった。解せぬ。

 

「……そろそろ狩るか♠︎」

 

「いくら変質者呼ばわりされたからとて、変な気を起こすでないぞ。ブランディングを忘れるな」

 

「くっ、ガチピエロのモノマネは通じないかァ…!」

 

私が八重神子と戯れていると、宵宮が出し抜けに「刹那さんは帰ってこおへんの?」と発言した。しまった、ここにいるぞ刹那は。

君たち乙女の手によって変質者にされた刹那さんがここにいるぞ。

 

「そうじゃな…刹那との通信が途絶えた故、戦死したやもしれぬな。妾とて信じとう無いが…転廻衆は複数の魔神から力を分け与えられた存在。只人である刹那にはちと厳しかったかもしれんのう」

 

「っ!アンタ、そんな軽々しく…!ええか、刹那さんは死ぬ訳あらへん。あん人は、花火に撃たれても死なんかったんやから!」

 

「おかしいだろ!花火で撃たれたら普通死ぬぞ!?」

 

「それを可能にしてまうんが刹那さんなんや…」

 

そういえば、巨大花火を打ち上げる手伝いをした折に誤って大筒に入ってしまった子供の代わりに射出された事があったな。

あの時は本気で死ぬかと思ったが、落下地点にたまたま荒瀧・命の恩人・一斗が居てくれなければ死んでいただろう。

 

「第一、刹那さんが死んでみい。稲妻中が大騒ぎになるで?あん人はそんぐらいみんなの心に根付いてるんや。いくら八重宮司様でも軽々しくそないな事言わんことやな」

 

「じゃが…約定の時まで連絡が来ないのじゃ。つまりそれは討死を表すと言っても過言では無いのじゃ。ふむ…しかし、皆の祈りがあればこそ奴めも生きて帰ってくるのではないか?」

 

こいつ…まさかアレをするつもりか。

ヒーローショーなんて高度な文明を稲妻に生み出してしまうつもりか、この女狐はっ!?

発想力が段違いすぎる。私では思いつかない手法だ。

 

「──────」

 

「ふむ…」

 

私はエア筆談で「後で話がある。八重堂に来い」と伝える。エア筆談とは、私が自由に喋れない期間が長く続いたために開発した技術で、手の動きだけで意図を伝える役割を持つ。

意外と私は物覚えが良かったので、開発から数日で完全習得することが出来るようになった。

 

「……とにかく、八重神子。パイモンのような純真無垢な子供をその悪辣な唇で騙さない事だな。あの子は私の友人だ」

 

「そう睨むでない…わかったわかった、最早妾はパイモンを騙す事などせぬ。これで良いか?」

 

「初めからそうしていれば良いんだ」

 

私はエア筆談で「作家陣も呼んでおけ」と伝えつつ退室する。パイモンも飽きたのか、オイラもと言って私についてきた。

パイモンは部屋から少し離れた所で私に話しかけてきた。

 

「───なぁ、お前さっき八重神子と八重堂で待ち合わせしたよな?」

 

「………………!?!?!??!?!!?」

 

どういう事だ。パイモンにさっきのエア筆談が筒抜けだったのか?いや、そんな筈は無い。しっかり古代稲妻語でやりとりしていた筈だ。

まさかパイモンにわかる事は無いだろう。

 

「そ、そんな不思議そうな顔するなよ…。ほら、オイラは立派なテイワットの頼れるガイドだろ?だから各国の文字や文化には詳しいんだ」

 

「知らなかったな…それで、私と八重神子の会話内容を知った君はどうする?」

 

私はそれっぽく暗黒微笑を浮かべてパイモンを挑発してみる。さて、蛇が出るか鬼が出るか…

どちらにせよ私ではパイモンに手出しは出来ないのだが。あくまでこれは信条の問題なので、不可能では無いがな。

 

「どうって…お稲荷に文句言いに行くんだろ?オイラにも言わせろよな!オイラ、まだあいつに文句を言い足りないぞ…」

 

「君がパイモンで本当に良かったよ」

 

パイモンの発想力が子供程度で良かった。密談しているのだから何か隠し事を疑っても良いものを…まさか文句を言いに行くのだとは。

丁度良い、私も八重神子には言いたいことがあったんだ。この機会に存分に言わせてもらうとしよう。

 

「───え、ディザスターさん?」

 

八重堂に向かっている最中にファデュイの使節団の一人にばったり出会した。

そういえばコイツらをほっといて私は稲妻で半年も過ごしていたという事になるな。すっかり忘れていた。

 

「ファ、ファデュイが何でここに…!?ディザスター、こいつやっつけてやれ!」

 

「ちょ待てよ。どういう事だ?アンタ今までどこに行ってた?淑女様がブチ切れなさってたぞ。『ディザスターに刹那の対処をして貰おうと思ったのに肝心な時にいない』って感じで」

 

「ッスゥーーーーー…まぁずいなそれ。私殺されやしないか?」

 

「淑女!?淑女が稲妻にいるのか!?あんな奴、早くとっちめに行こうぜ!ディザスターは神の目を持ってるんだし、倒せなくはないはずだ!」

 

「淑女に炎は効かない…いや効かない事は無いが途中から使えなくなるからな。私が水とか雷元素なら良かったのだがね。いかんせん私は炎だ」

 

淑女を倒せる倒せないは置いておいて、私は約定により淑女に敵対することが出来ないのだ。どうせ死ぬんだ、それまでは付き合ってやらねばな。

 

私とパイモンはファデュイの使節団の男に別れを告げてから八重堂に到着した。

八重堂には既に誰ががいるのか明かりがついていた。どうせ作家陣か誰かだろう…

 

「こんにちは、刹那さん」

 

!? おかしい。なぜこの男がここに居るんだ。

 

「まさか巷を賑わす義賊の正体が貴方だったとは、流石に思いませんでしたよ」

 

優男の面に、今にも裏切りそうな声。男は静々と茶を飲むと、私の思考を読んだかのように「予想外でしたか?」と揶揄ってくる。

 

「神里…綾人……!?」

 

「こんにちは、刹那さん。おや、以前社奉行にいらしたパイモンさんもいらっしゃいますね。こんにちは」

 

誰だ、どこから漏れた。いやどうせ八重神子だろう。あの女狐ならそういうことする。それでもって私のテンパる反応を見たいのだろうな、分かってるんだぞ。

ならば私はその期待を裏切ってやろうではないか。

 

「……少々取り乱した、この非礼を詫びよう。して八重堂に何用か?ここはお世辞にも貴殿のような雅人が足を運ぶ場では無いと思うが」

 

「ええ、あなたに会いに来たのですよ。請け負って欲しい案件がありまして」

 

さも当然のように言い、書類を手渡してくる神里綾人に若干の困惑をしながら書類を読む。

内容は至ってシンプル。「半暴徒化している抵抗軍の鎮圧」だ。これに関してはヒーローショーで何とか解決できれば良いのだが。

 

「っておいおい、お前は何を言ってるんだ?こいつはディザスターで刹那さんじゃないぞ!」

 

「あぁ、そういうことですか。話しても?」

 

「パイモンにバレたところで計画に支障は無い。好きにしてくれ」

 

「オホン…パイモンさん、巷で英雄と言われている刹那さんの正体は実はディザスターさんだったのです」

 

「え?それはおかしいだろ!だったら何で、町奉行襲撃の時にディザスターが居たんだ?オイラと目が合った瞬間にどっか行っちゃったけど…確かにオイラとディザスターは町奉行で会ってるぞ!」

 

「馬鹿な…」

 

刹那の正体はこの私DISASTERだ。もう一人私のそっくりさんが居るはずがない。もしかしたら私のようにデフォルトの見た目で降臨した転生者か?

いや、それは無い。三十億通りのキャラクリができるのに態々無視してサッサと転生するような酔狂者は私ぐらいだろう。

であれば、考えられるのはただ一人。空くんだ。

 

「……パイモン、残念ながら君の認識は間違っている。君が町奉行で会ったのは、君の相棒の兄だ」

 

「えええっ!?それ、蛍に教えてやらなくちゃ!」

 

「待てパイモン!それは今じゃない」

 

「何で止めるんだ!あいつは、お兄さんにずっと会いたがっているんだぞ、相棒ならその想いを汲んでやりたいのがスジだろ!」

 

やはり言うべきでは無かった。こうなる事は分かっていたはずなのに。

こうなれば仕方ない、パイモンには黙っていてもらうために何でもするしかない!

 

「何でも!何でも言う事を聞くから…!どうか蛍に内緒にしていてくれ!内緒にしなくちゃいけない理由が確かにあるんだ!」

 

私は恥も外聞もかなぐり捨て、両手を差し出してパイモンに土下座した。

パイモンに危害を加えたくない私と、パイモンに何もしてほしくない私が同居しこのような事しかすることが出来なかった。

 

「ナイショ…ナイショ…何?」

 

「何でも?刹那さんの言う何でもって…「綾人。オイラが聞いてるんだ」…ッ!」

 

パイモンからとてつもない重圧を感じる。これが本当にあの天真爛漫なパイモンか?いや、そうか。

純真無垢だからこそ、蛍を想う澄み渡った心がこの重圧を生み出しているのか!

 

「ナイショニシナクチャ…って何だ?」

 

返答次第では私の秘密は暴かれ、世界の命運は全てめちゃくちゃになってしまうだろう。

だがどう答えれば良いか分からない。何とか絞り出して出た言葉は。

 

「蛍と空が出会ってはいけないんだ…そうなれば、君たちの旅が終わってしまう。それでは世界がおかしくなってしまうんだ…君たちの旅無しでは、世界は…」

 

私に出来る事は、偽らない事だった。

決して信じて貰えないかもしれない。だが、私の懸念する全ては彼女らの旅に掛かっている。

転廻衆(イレギュラー)の動向が分からない以上、同じイレギュラーである私が対応するほか無かろう。

しかしそれにも限度がある。大きな流れが乱れてしまえば、私は手の打ちようが無いのだから。

 

「全てが終わったその時、君たちの望み通りにする…!だから…待ってくれ」

 

「──────内緒にするって事か?ナイショニシナクチャって、内緒にしなくちゃってことか?」

 

更にパイモンの重圧が膨れ上がる。何という圧だ、周囲の元素が悲鳴を上げ軋み出している。この小さな体のどこにそんな力が…?

 

「……勝手なこと、言いやがって…!!勝手だお前は…!!畜生…!誰が、お前なんかの言う通りになんか…っ!」

 

「ッ、パイモンさん!お待ちください!刹那さんの言っている事は信じるべき根拠があります!」

 

「それで?」

 

「刹那さんがここまでして秘密にさせようとするのには、おそらく重大な理由があるはずです!彼は多分嘘をついていません!」

 

「……だから?」

 

「待ちましょう、彼が言うその時まで…」

 

「おそらく?多分?それで待つって言うのか!?待った後でコイツがオイラの望み通りにするってのもおそらくか!!!」

「ふざけるなよ、コイツはファデュイとも繋がってるんだ!そんな……そんな奴のことを信じられるのかよ!?信じられるわけ無いだろ!」

 

そうか。もう交渉の余地はないと言うことか。

これも、私が隠し事をしたりファデュイなんかと連んだりしたせいだろう。

自業自得だ。ザマァない…だが、それでも私には為さねばならない事がある。

 

「ッ─────!」

 

私は自らの刀を抜き放ち、ハラキリ・リチュアルをすべく服を脱ぎ半裸になる。

大丈夫、痛いのは一瞬だけだ。これで世界が救えるのなら構わない。

 

「ぐっ、あ゛…!フゥーッ!フゥーッ!」

 

「「!?」」

 

「頼む……ハァ、秘密に、フゥ、しておいてくれ…!頼む…!」

 

私のハラキリ・リチュアルの迫力に押されたのか、パイモンの圧が一瞬緩む。畳み掛けるのなら、ここしかない。

 

「望むなら…心臓まで……!私が気に食わないのならば、何度だって殺してくれ…だから秘密だけは…!」

 

「…………ッ、ずるい、そんな事されたら!ずるいぞ!時間は!時間はどれぐらい待てば良いんだ!」

 

よし、交渉成功だな。ハラキリ・リチュアルはニンジャの秘奥義。本来の効果とは違うが、覚悟を示す上では充分以上の効果を発揮する。

何せ腹を切って臓物を垂れ流しながらの交渉だ。人の心がある者ならば聞かざるを得ないだろう。

 

「少なくとも…ハァ…!蛍が、稲妻を出るまで…!そのあとは、好きなだけ喋ると良い…!」

 

「分かった…この件は覚えておけよ。オイラの望みを何でも叶えてもらうからな」

 

これで一安心だ。気が抜けたからか、意識が朦朧としてくる。そりゃそうだ、出血が酷すぎるからな。

では、次に目覚める時までおやすみ───…

 

 

 

 ─────────☆─────────

 

 

パイモンは自身の目の前で出血多量で気絶している男を見て、ゾッとしていた。

 

(コイツがここまでして蛍とお兄さんを合わせたくない理由は何だ?世界がおかしくなるって、どういう事だ?コイツは、オイラ達も知らないオイラ達の旅の意義を知っているのか?)

 

パイモンがそう考察していると、八重堂の扉が勢いよく開かれる。

やって来たのは、八重堂の主人である八重神子だ。

 

「何じゃ…切腹とはまた懐かしい儀式をしているものじゃな。しかしのう、ここで此奴を失っては拙い。姫乃」

 

八重神子のそばに控えていた姫乃が自身の神の目を使い、掌から淡い光を出してニヤケ顔で気絶しているDISASTERを治療していく。

パイモンはそれを眺めながら、「オイラが蛍に蛍のお兄さんの事を伝えたら何か悪い事が起こるのか?」と八重神子に問う。

 

「そうじゃのう…彼奴は何か()()のやも知れぬ。知らぬようじゃから教えてやる。此奴はの、未来が見えるのじゃ。それ故重宝しておったのじゃが…さてはパイモン、何か知ったな?」

 

「………!(そうか、ディザスターは良くない未来を知っていたからオイラを必死で止めようとしてたのか!うぅ、だとしたら悪い事したぞ…)」

 

「姫乃。容体はどうじゃ?」

 

「意外と良い状態です。腹を切ったにしては内臓が傷ついていません。手慣れているとしか言いようがないほどに美しい断面なんです」

 

「ほう…どこぞで練習でもしておったのかも知れんのう。してパイモンや、妾に文句を言いたいらしいな?」

 

「ゔ…な、何でもないぞ…」

 

パイモンが気まずそうにしていると、それまで黙っていた神里綾人がおずおずと声をかける。

彼もまた、DISASTERが未来視できる事を知っている者であった。

 

「私から宜しいですか?これは好機であると見るのが良いでしょう。現在、刹那さんは腹を斬られて倒れている…と言う状態にあります。つまり、刹那さんの復活演出により力が入るかと」

 

「然り、姫乃や。治療は程々で良いぞ」

 

「しかし…」

 

「計画に必要な事じゃ」

 

「………はい」

 

姫乃の内心としては、DISASTERを完治させたい気持ちでいっぱいであった。それも無理はないだろう、かれこれ半年以上DISASTERと苦楽を共にしてきているのだ。

当然、情も湧く上に絆も芽生えるというもの。しかしそのDISASTER本人が文字通り心血を注いで成そうとしている計画の邪魔は出来なかった。

 

「さて、パイモンや。汝は旅人の元へ戻るが良い。権兵衛が傷を負う原因になってくれた事、真に感謝しておるぞ?」

 

「ッ!」

 

八重神子の挑発的な笑みに正義心を刺激されたパイモンだが、ここで暴れても無駄であるという事に気がつき、すぐにその昂りを抑えた。

神里綾人はその様子を見て、「正義とは美徳ですが」と一呼吸置いてから「時に大いなる正義を妨げてしまいます」と言った。

 

「フンだ!ディザスターとの約束だからな、お前たちの計画は黙っててやるぞ!でも、後でちゃんとオシオキするからな!」

 

パイモンはぷんすこしながら飛び去る。

八重神子と神里綾人は傷がまだ残るディザスターを尻目に計画を話し始めた──────

 

 

 

 ─────────★─────────

 

 

目が覚めたら、知ってる天井だった。

傍には俯き罪悪感に押しつぶされそうな顔の姫乃さんが座っていた。

その後ろには性悪に顔を歪めた八重神子。

 

「……姫乃さんに何をした」

 

多少威圧しながら言うと、八重神子は「くくく」と笑い「なんじゃろうな」と揶揄ってくる。

ふと腹部に違和感を感じ見てみると、私の傷は完治していなかった。

 

「お主には今から雷電将軍と御前試合をしてもらう…無論、負けたら死ぬ故勝たねばならぬのじゃが…対戦相手は何と将軍本人じゃ。喜ぶが良いぞ」

 

「私を殺す気か」

 

神の目が回復した今、善戦は出来るだろうが私は所詮人間だ。無想の一太刀で一撃で死ぬだろう。

そんな危惧を予見していたのか、八重神子は私に護符を手渡してくる。

 

「これは?」

 

「将軍の攻撃を一度だけ防いでくれる護符じゃ。無論、普通の人間であるお主が受ければ瀕死は免れんじゃろうが…命の保証はしてやる」

 

「……やはり!このような事はいくら八重様のご命令でも承服できません!別の手を考えるべきです!」

 

俯いていた姫乃さんが弾かれたように立ち上がり訴える。しかしそれも予見されていたようで、八重神子は理路整然とその反論を潰す。

 

「姫乃、お前に説明してやらねばな。現在の抵抗軍の状況じゃが、殆ど野盗と変わらぬのじゃ。そんな連中が旅人の助けを得て稲妻城まで登ってみよ。たちまち稲妻城は地獄の生き写しになるじゃろうなぁ」

 

「…それが刹那様と何の関係があるんですか」

 

「故に…じゃ。『刹那』という偶像を神輿にあげさせて統率を取らせ、天領奉行に代わるのじゃ。権兵衛には悪いが、百年ほど稲妻にいてもらう事になるがの」

 

は?嫌だが???

私はテイワット全土を旅して、安息の地で過ごしたいんだ。断じて稲妻を統べたい訳ではない。

 

「丁重にお断りする…私は稲妻に長く留まるつもりは無い。そもそもこの件に協力しているのはセイライ島に行くためだ。断じて善意からでは無い」

 

「決定事項じゃ。もはや変えられぬ定めと知るが良い」

 

そうか…そんなに言うならお兄さんファデュイに寝返っちゃおっかな。稲妻にスーパータルタルランド建設するぞ。

八重神子にはその覚悟があるみたいで結構。

 

「行く気は…ふむ、無いと見た。ではこうしよう」

 

八重神子は法器を姫乃さんに突きつけると「二択じゃ」と言って来た。

 

「姫乃が死ぬ代わりに貴様が解放されるか、姫乃を生かしておく代わりに雷電将軍と戦うか。選ぶと良い」

 

おお、ブッダよ。寝ておられるのですか!

姫乃さんにはとてもお世話になった。その恩をまだ返しきれてない。であれば私が選ぶべき選択は…

 

「分かった、戦おう」

 

「刹那様!?どうかご再考を、わたくしの命などどうだって良いのですから!」

 

「すまない。今からで良いか?」

 

「うむ。早う行け」

 

私は静止を振り切り、天守閣に駆け出した。




刹那さんのプロフィール(民衆視点)
・悪を絶対に許さない正義漢
・お付きの巫女さんとデキてる
・草笛が得意
・子供達に遊び道具を作ってくれる好漢
・不死身の男
・地獄から来た男(自称)
・宝盗団キラー(自称)
・親の愛子の愛、大切な心を守る男(自称)
・子供達の味方(自称)

次回は七聖召喚でグランドマスターになれたらもしくは一週間以内に投稿します
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