なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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第二話 配達なんだが

 

昨日は教会が宿になってくれて助かった。

ロサリアさんが「床で寝るなら良い」と言ってくれたので、喜んで床で寝ることにしたのだ。空調がちゃんとしていたので快適に寝る事が出来た。

 

「ふあぁ……おや、君は…」

 

「バーバラだよ〜!初めまして、私、シスターとアイドルやってるんだ!」

 

「これはご丁寧にどうも。私はDISASTER、気軽にディと呼んで欲しい」

 

「分かった!えーっと、ディ君はどうして床で寝ていたの?言えば寝室くらいあるのに」

 

「あぁ、ロサリアさんの好意でね。案外良いものだった」

 

「ロサリアが?む〜っ、言っておかないと!」

 

「ははは、勘弁してあげてくれ。彼女だって疲れていたんだろう。さて、私はここでお暇させて貰おうかな。」

 

「あ、ついでなんだけど頼んでも良い?ドラゴンスパインに居るアルベドって人に物資を届けて欲しいの。いつもは誰かがやってくれるんだけど、たまたまその子が居なくて」

 

「構わないとも。」

 

バーバラから運ぶように指示されたのは、いくつかの画材や火のアゲートだった。後々知った事だが、火のアゲートはどうやら暖を取れるらしい。僥倖と言ったところか。

 

 

「ふぅ、案外重くないものだな。バーバラが重そうにしていたからそれ相応の重さかと思ったんだけどな。」

 

当然、ワープポイントは使えないため徒歩だ。だが苦にはならない。むしろ調子が良いぐらいだ。道中、ヒルチャール達がこちらを見ていたが挨拶をしたら手を振り返してくれた。

恐らく、私の話が他の集落のヒルチャールにも伝わったのだろう。

 

「……ヒルチャールでも会話する意思は持てると言うのに、君たち宝盗団はヒルチャール以下なのかい?」

 

「ヒャッハー!金を寄越しなァ!」

「よく見たら綺麗な顔してんなァ!」

「マワそうぜ」

「金だァーーーー!」

「そういうの良くないと思う」

 

「意思を統一しなよ君たち…」

 

「「「「「ヒャッハー!」」」」」

 

そこに落ち着くんだ。しかし参ったな、テイワットに来てからというもの…いや、元からそうなんだが、私は戦いの経験が無い。

 

「試しに、やってみようか…?それっ」

 

「うわぁーーっ!?突風!」

 

私が剣を振るうと、目の前でナイフを舐めていた宝盗団が吹き飛ぶ。珍しい事もあったものだ。

 

「何しやがった!?」

 

「何って…剣を振っただけだが……」

 

「舐めやがって!【カミソリ男】の異名を持つ俺の斬撃を喰らえ!」

 

「カミソリ男だと…?何だそれ」

 

「クク、教えてやろう。あれは俺が間違えてカミソリを飲み込んだ時の話…」

 

「しなくていいわ!」

 

私がツッコミのつもりで剣を薙ぐと、カミソリ男が吹っ飛び、盛大にコケる。何なんだ一体…?うわ、額にカミソリが刺さってる…痛そう。

 

「くそ…!こいつ、神の目持ちなのか!?」

 

「生憎、神の視線は頂けて無いものでね」

 

「フン!それならこの俺様に任せて貰おう!」

 

そう言って出て来たのは、妖しく光る神の目を持った男だった。色は赤、炎元素か。神の目をもつ人間は原神になりうる可能性を秘めた奴らだ。凡人の私に勝てるだろうか?

 

「行くぞォ!邪眼・炎舞ゥ!!」

 

「!!!」

 

速い。慌てて剣で受けるが叩き折られてしまう。剣はそのまま私に向かってくると…突き刺さらなかった。

 

「な、固い…!?まるで岩を斬っているみたいだ!」

 

「……何か良く分からないけど、取り敢えずパンチ!」

 

私がパンチを繰り出そうとすると、身体の内から何かよくわからない力が溢れ出してくる。あ、これはマズイ。何か知らないが、取り敢えずパンチを外さないと!

 

「ひいっ!お、俺様の邪眼が…!?」

 

私の拳は赤いなモヤを纏い、神の目を粉砕した。しかし、パンチのエネルギーは止まらずその先にあった岩を灰にする。

 

「お、お前一体…何なんだ!?」

 

「DISASTER…そう名乗っている」

 

「た…頼むっ!命だけは!許してくれ!」

 

宝盗団全員が綺麗な土下座をしてきた。土下座とかされても困る。何せ、私は小心者だから。だから、その、対応に困る。

 

「そこまではしない。だが誓え、私に二度と近寄らないと」

 

「それで良いのかっ!?ありがとうっ!」

 

「じゃあ行け。それと、部下の回収を忘れるな」

 

これで後願の憂は無くなったな。それにしても、私に宿るこの力は一体…?いや、もしかしたら誰かが私にバフでもかけてくれたのかもしれないな。

 

「見つけたわよ…厄災の申し子にして、遥か幽夜浄土より到来せし使徒。今こそ汝、運命の皇女フィッシュルたる私を幽夜浄土に導きたまえ!」

 

おや、この独特な口上は。

 

「フィッシュルか…。すまないが、私は君を幽夜浄土へと連れて行くことは出来ない。私とて幽夜浄土への道を知らないんだ」

 

「嘘…!?コホン、メギストス卿は貴公が確かに異界からの来たと言っていたわ。来たのなら戻れるのは道理でしょう?」

 

「生憎、道理の外から来たものでね。私にはどうする事も出来ないよ。それこそ、天上の神ぐらいしか知らないんじゃないかな」

 

「っ、貴方は一体…!?」

 

「モナから聞いていなかったのかい?私はDISASTER。今は冒険者をしている」

 

「ディザスター…ね、覚えておくわ。」

 

その後、フィッシュルはすんなり帰った。もう少しゴネられるかと思ったが、案外素直に行くものだ。

 

「さて、さっさと依頼を完了しないとな。ドラゴンスパインでアルベドの居るところは一つしかないもんな…居なかったら置いていけば良いかな」

 

しばらく歩いて、ようやくドラゴンスパインに辿り着いた。朝早くに出発したのだが、もう正午過ぎだ。ワープポイントが使えないのは痛いな。

こういう時、早袖や夜蘭のように高速移動出来たら良いんだけど。

 

「おい兄ちゃん、そんな格好で雪山に挑むつもりか?死ぬぞ」

 

「でしたら、松明か何かを頂けませんか?」

 

「おいおい、そんなんで良いのか?防寒具とか貸すぞ?」

 

「いえ、大丈夫です。とりあえず炎の力があれば良いので」

 

その後も、親切なおじさんは私に色々くれようとしたが、そこまでしてもらう訳にはいかないので無理矢理走ってドラゴンスパインに入った。

ドラゴンスパインは危険な場所だ。イノシシにアビス、ヒルチャール氷冠の王などの危険性の高い奴らが居る。

 

何よりファデュイが一番怖い。だって、何か良からぬことを企んでいるに決まっているから。なので私もファデュイを避けようとした…のだが。

 

「おうアンタ、度胸あるな!一人で雪山とは、モンド人にしておくには勿体無いぜ!」

「ここまで大変だったろ?飯食ってけよ」

「ちぃとばかし時間が掛かるが、風呂だって沸かせられるぜ!何せ俺たちには邪が…神の目があるからな!」

 

「あ、ありがとう…ございます……」

 

私はいつの間にやら、ファデュイの歓待を受けていた。どうやら彼らの任務はドラゴンスパインの調査らしく、わざわざ敵でも無いのに襲いに行かないとの事だった。

 

「アンタ名前は?」

 

「DISASTERです。よろしくお願いします」

 

「おうよろしくな!俺はヴァジム。この調査隊のリーダーやってんだ。雷元素の力を使えるぜ」

 

「へぇ〜凄いですね。私は神の目を持っていないので元素力が使えるのは羨ましいです」

 

「アンタも使いたいか?なら稲妻に行くと良い。そこのファデュイのメンバーに『力が欲しい』って言えば貰えるぜ?」

 

邪眼か。いやしかし、アレを使うと老衰しちゃうんだよなぁ。そういえば、私は歳を取るのだろうか?曲がりなりにも転生特典だ。歳ぐらい取らなくてもバチは当たらないんじゃないか?

 

「考えておきます。あ、そうだ。私ドラゴンスパインに配達しに来たんでした。早く届けてあげないとなぁ」

 

「おっ、それなら部下を付けてやるよ。見たところ武器も無えみてえだし、暖を取る手段は限られてるだろ?アントニー、お前ついていってやれ」

 

「ウス。アントニーっス!ディザスターさん、よろしくお願いしますっス!」

 

「何から何までお世話になります…本当にありがとうございます」

 

「良いんだよ。ここには執行官殿も居ねえし、夜だからあの金髪のガキも来やしねえ。山頂に行くんでもなきゃ、すぐ戻ってくるだろうしな」

 

もしかしたら、ファデュイはいい人達かも知れない。そうだよ、ヒルチャールとも仲良くなれたんだから、同じ人間のファデュイと仲良くなれない理由なんて無いんだ。

ただし宝盗団、てめーらはダメだ。

 

私は派遣で来たミラーメイデンのイエヴァさんの作ったご飯を食べ、そのままアントニーさんと共に出発した。

 

 ─────────★─────────

 

 

氷風呂帰りのエウルアが上機嫌でモンドへ向かっていた時、彼女は驚くべきものを見た。

 

(あれは…ファデュイ?そしてその隣を歩いているのは…蛍、に似ているわね。でも、性別や身長が違うわ。何より、目が違う)

 

実際のところ、DISASTERの目は死んでいる。別に、疲れているとか心が壊れているとかでは無い。デフォルト設定でハイライトはついていなかったのだ。

本来、胡桃のように特徴的なハイライトにも出来たはずなのだが、DISASTERはとにかく早く転生したがった為に完全デフォルトになったのだ。

 

(あの目…恐らく、何人か殺しているわね)

 

DISASTERが「やさぐれた空くん」と言ったように、全体的にぶっきらぼうな雰囲気をDISASTERは持っている。なので、こう言った見当違いのことを考察されるのも無理はない。

 

そして、DISASTER一行が向かう方向に問題があった。そう、アルベド宅である。それが一層DISASTERの怪しさを増やしていた。

 

「貴方たち、この先で何をするつもりかしら?場合によっては、ここで倒れてもらう事になるわ」

 

エウルアは正義の人だ。それに、西風騎士団としての責務もある。故にDISASTER一行に立ち塞がるのは道理である。

 

「ディザスターさん、下がってくださいっス!この女…かなりやりますっス!」

 

「アントニーさん…大丈夫。私が話をつけます」

 

「……随分と余裕みたいね?私と貴方達に話し合う余地があるとでも思っているのかしら?恨むわよ」

 

「おお怖い怖い…私はDISASTER。此度はアルベドさんに教会からの依頼で届け物をしに来たんですよ」

 

「信じられないわ。教会が貴方のような怪しい人物に頼み事をする筈ないもの。それとも、脅したのかしら?」

 

「────困りましたね。どうにも信じて貰えなさそうです。どうしても通してくれないというのなら、然るべき所へ連絡させて頂きますが」

 

(…!増援を呼ぶ気!?いやでも、然るべき所って何かしら…?)

 

エウルアは、まさか自分が冒険者の依頼の邪魔をしているとは考えもしなかった。何しろ、ファデュイと一緒にいる人相の悪い男が善人である事など、普通ならありえないからだ。

 

「増援を呼んだって無駄よ。私は西風騎士団遊撃小隊隊長、『波花騎士』エウルア。命が惜しかったら逃げ帰る事ね」

 

「はぁ。しょうがないですね…では、エウルア。これを貴方に預けます。中身は画材と火のアゲートです。アルベドに渡してください、彼はきっと待っているでしょうから」

 

そう言ってDISASTERはファデュイのアントニーを連れて行ってしまう。残されたエウルアは渡された荷物を検分する。

 

「───本当にこれしか入っていない…。だとしたら何故これを……?」

 

エウルアの中で謎は深まるばかりであった。

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