なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

20 / 21
筆が乗りました


第二十話 御前試合なんだが

 

 

一歩、また一歩と歩みを進める。

天守閣に近づくにつれて神の重圧をひしひしと感じる。

それに加えて、濃密なまでの雷の匂い。

 

「………やはり、生きていましたか。今度こそ息の根を止めましょう」

 

天守閣の階段をゆっくりと降りてくる雷電将軍からは必殺の念が飛んできている。私は八重神子から受け取った護符を握り締め、雷電将軍を見据える。

 

「目狩り令を…止めに来た」

 

「言葉は要りません。貴方は永遠の敵、ここで排除します」

 

一瞬、雷電将軍の元素力が膨れ上がったと思った瞬間私は自然と身体が動いていた。

 

「ぐッ…!ゲホッゲホッ…傷口に、堪えるなぁ…!」

 

私は炎元素で刀をコーティングし、雷電将軍の攻撃をガードし過負荷反応で吹き飛んでその場から離脱していた。

お陰で重傷を負わずに済んだ。

 

「…フン、手負いでしたか。手間が省けて良いですね。次は避けられぬと知りなさい」

 

「ふはっ…凄まじいな…」

 

彼我の戦力差は圧倒的だ。正直言って、これ以上抵抗できるビジョンが無い。

だがやるしか無いのだ。雷電将軍に挑んだ以上、善戦しなければ。

 

「剣よ…燃え盛れ!おおおおっ!」

 

私は雄叫びを上げながら刀を燃やし、雷電将軍に斬りかかる。しかし雷電将軍はそれを易々と避け、私を薙刀の柄で殴り飛ばした。

 

「ごあっ!…くっ、まだまだァ!」

 

「その剣術、我流ですね。まさか全力ですか?」

 

「悪かったな、我流で!」

 

一回も打ち合って貰えず、私は何度も雷電将軍に斬りかかる。雷電将軍はつまらなそうにその攻撃を避け、私に軽い反撃をしてくる。

その応酬が20回程続いた時、雷電将軍の目が光った。

 

「貴方の底は知れました。もう結構です…一太刀の下に終わらせましょう」

 

「舐めるなよバアルゼブルッ!」

 

「何故それを…貴方、何者ですか?どこで知ったか吐きなさい」

 

「誰が吐くものか…知りたければ私の脳内でも覗き見るんだな!フッフッフッフ!」

 

さて、こんな三下ムーブは程々にして、カッコよく負ける方法を考えよう。

一番は勝つことだが、それは無理なので前世で有名だったキャラクターを参考にしよう。例えば世紀末覇者とか、その弟など。雲のような漢でも良いかもしれない。

 

「邪念…」

 

「うおっと!危ないな、乙女がそんなもの振り回すもんじゃないぞ!」

 

「お黙りなさい。能書を垂れている余裕があるのなら、その余裕を削り取りましょう」

 

その言葉と共に、雷電将軍を中心に雷のフィールドが形成される。心なしか、雷電将軍の周りの元素力が歪み軽い爆発を起こしている。

これが雷電将軍の本気…いや、その三割と言った所か?まだまだ雷電将軍は遊んでくれるらしい。

 

「やっぱり良いよ…貴女は♥︎どわぁっ!背後からなんて卑怯じゃないか!」

 

「卑怯…?戦いに卑怯などありません。勝者こそ全てです」

 

「お喋りに付き合ってくれてありがとう…イレイザーキャノンッ!」

 

私は雷電将軍との会話中に溜めておいたイレイザーキャノンをヤケクソで放ち、そのまま炎を刀に宿らせ雷電将軍が居るであろう所に刀を振り翳す。

 

「笑止」

 

「何ィ!?」

 

雷電将軍は無傷で立ち、私の刀を薙刀で受け止めていた。魔神オセルが絶叫する程の威力をどうやって減衰したのだろうか。

いや、そもそも七神レベルになると無駄ということか?

 

「ここは離脱をッ…「逃げ道はありません」ぬわっ!!」

 

雷電将軍がスキルを使い始めた。まずいな、いよいよどうしようも無くなってきた。刀でガードしていなければ致命傷だったな。

大丈夫、護符はまだ残ってる。無想の一太刀を浴びて離脱。これさえ守れれば私は生きて帰れるのだ。

 

「ほう。今のを避けますか…攻撃のセンスは壊滅的ですが、逃げ足だけは一流のようですね。良いでしょう。では、不可避の斬撃を受けなさい」

 

稲妻が地を走る。雷電将軍の殊勝な御体はその余りある元素力から宙に浮き、その稲妻を惜しみなく具現化せんと胸部に集中する。

本来の時間の流れならば一瞬であっただろうが、命の危険を感じ極度の集中状態に陥った私にはそれがまさに永遠に感じた。

 

「是より──────寂滅の刻」

 

極限まで引き延ばされた時間の中、私は限界まで炎元素を刀に纏わせ相殺せんと刃を雷にぶつけた。

凄まじい音と共に私の身体に防殻が張られ、また崩れ落ちていく。しかしそれも僅か0.1秒しか保たずに霧散し、私の肉体を雷が傷つけていく。

灼けるような痛みを全身に受けながら、私は叫んでいた。

痛みによる絶叫ではない。心が折れない為の雄叫びだ。

 

雷が晴れ、眼前には驚いた顔の雷電将軍がいる。

私は自身の身体が最早限界である事は分かっていた。肉は裂け、血はあらゆる所から流れ出し、全身に酷い火傷を負っている。

しかし、眼前の敵を見逃すほど私の英雄としての経験は易いものではなかった。

 

「ヴ、オオオオァァッ!!!」

 

「…それが、貴方の覚悟なのですね。おいでなさい…」

 

私が雷電将軍の胸元に刃を突き立てようとした瞬間、世界が歪み私は一心浄土へと連れ去られた。

私の刃は瞑想中の雷電影にはまるで刃が立たず、そのまま弾かれてしまった。

 

「初めまして…いえ、お久しぶりです。刹那」

 

「……………」

 

弾かれたことにより、私に幾分か理性が戻ってくる。実際に無想の一太刀を受けてみて思ったが、あれは死ぬわ。というか死にかけたわ。

私は護符ありきで生き延びれたものの、護符が無ければ死んでいたに違いない。

 

「ああ、そうでした。瀕死なのでしたね…少々お待ちを。神子からもらった傷薬がここにあったはずです…」

 

「…………なるはやで」

 

「なるは…?なるべく早くの略語ですか。現代の人はそんな言葉を使うのですね。ありました、今掛けますからまだ死なないで下さいね」

 

雷電影は私にドバドバと傷薬を掛けていく。それと同時に私の傷口がどんどん塞がっていくのを感じる。

凄いな、あっという間に外傷が殆ど消えた。ハラキリ・リチュアルの跡も綺麗さっぱりだ。

 

「忠告しておきますが…今の貴方は戦える身体ではありません。傷は癒えたものの、蓄積されている疲労やダメージはまだ残っているのですから」

 

「ご忠告感謝する、バアルゼブルよ。ところで何故私が一心浄土へ?そんな謂れは無いと思うのだが」

 

「ふふっ、貴方なら既に分かっている筈ですよ。刹那」

 

????????

わからん。刹那と呼び捨てにされるような仲でも無いだろうに、何故雷電影は私にこんなにも親しげにしてくるのだろうか。

 

「さてな。私はついこの間まで意識を失っていた身。貴女との関係など憶えてはいないからな、わかる筈も無いだろう…」

 

「そうですか…私とあんなに蜜月を過ごしたというのに、忘れてしまったのですね。ですが、大丈夫です。思い出はまた作る事が出来ます」

 

「蜜月……」

 

なんだそれは。そもそもこれが2回目の対面だぞ。1回目は天守閣の天井からこんにちは。2回目は今。蜜月?している暇ないだろうが!

いや待てよ。もしかすると、私の他に刹那という人がいて、その人が雷電影と仲が良かったのかも知れない。

 

「バアルゼブル。もしかすると貴女は勘違いをしているのかも知れない。私の本名…まぁ本来の名前などとうに忘れてしまったが、私はDISASTERという者だ。刹那は人から貰った名前だ」

 

「ふふっ、貴方は元はディザスターというのですね。初めて知りました。刹那という名前は、私がつけたのですよ?憶えていますか?」

 

うるせ〜〜〜!!!知らね〜〜〜!!!ファイナルファンタジー…は置いておいて、やはり別の刹那さんがいたのは確定濃厚バレバレだろう。

どうにかして誤解を解こう。そうだ、私のこれまでの来歴を説明すれば別人だと分かってくれるのではないか?

 

私は自身が体験してきた事を何一つとして隠さずに伝えた。モンドから指名手配を喰らったこと、璃月でオセルをぶっ飛ばしたこと、稲妻でセイライ島に行くために頑張っていたこと。

それら全てを話し終わった時、雷電影は静かに頷いた。

 

「やはり…刹那、貴方は将軍に斬られた後死んでしまったのですね。しかしこうして私の下へ戻ってきてくれました。あれから、私も寂しかったのですよ?」

 

「いやだから、私はバアルゼブルの言うような刹那さんじゃない。そもそも…刹那という名前を私につけたのは八重堂の作家連中だ」

 

「神子には感謝しなければいけませんね。私の下へと刹那を導いてくれるとは。さぁ、刹那。私に永遠を約束したのですから、その約定を果たして下さい」

 

「────それは、どういう?」

 

「……私の口から言わせるつもりですか?」

 

おいやめろ、頬を朱に染めるな。

ダメだコイツ話を聞いてくれやしない。聞いたとしても自分の理論を押し付けてくる。

仕方ない。一心浄土から抜け出そう。こういうのはな、大抵結界を壊せば抜け出せるものだ。

 

「? 何を…いけません!まだ動いては…!」

 

「へっ…?ゴフッ…そんな、嘘…だろ…」

 

元素力を纏い、刀を振った瞬間に全身から雑に切り裂かれたように血が吹き出してくる。外面は綺麗だったから多少は大丈夫だと思ったが、ダメダメだったようだ。

 

「どうしましょう…一度、外に出る他ありませんね…」

 

雷電影は一心浄土を開けると、私を運んで天守閣を降りて行った。何やら将軍の方に状況を説明しているので、この隙に逃げるとしよう。

 

「ハァ…血が、止まらん…だが死ぬ気配も無いし…!逃げるんだよォー!」

 

私は血を垂らしながら何とか天守閣の外まで来た。運悪く、天守閣周りには何故か人が大勢群がっていた。その中には宵宮の影もある。

 

「イヤーーーーッ!」

 

絹を裂いたような叫び声が聞こえると同時に、周りを囲まれる。心配する気持ちはわかるが退いてほしい。

血まみれで現在も血が流れまくっているが、大事はないんだ。

 

「ッ!刹那さん!?どないしたんこんな怪我…!」

 

「宵宮ちゃん、刹那様は将軍様と戦って…ううっ」

 

「そんな…死んだらアカン!気張りや、今医者を呼んでくるさかい、ホンマに死んだらアカンで!」

 

まずい。医者なんて呼ばれたら追いつかれてしまう。というか雷の音が微かに聞こえてくる。雷電影がすぐそこまで来ている!

えーいこうなれば、当初のプラン通り派手に死んだフリ作戦を決行するまで!

 

「動いちゃダメです刹那様ぁっ!」

 

「…退け!」

 

前を塞ぐ民衆を威圧し、海へと逃げ込める崖へ歩みを進める。ようやく逃げられる、暫くは休ませてもらおう…具体的には、荒瀧・実は家庭的な一面もある・一斗の所に逃げ込もう。

荒瀧・実は私の事が好きなんじゃね?・一斗ならばきっと助けてくれるはず。

 

「お待ちなさい!」

 

「しょ、将軍様…!?」

「何でここに…刹那さんをあんな目に遭わせたんじゃ…」

 

「貴方は私の下に残り、私の下で生きなさい!これは俗世の七執政としての命令です!」

 

やばい。追いつかれた。今こそあのセリフを…!

 

「だ…誰が残るかーーーッ!私は雲!私は私の意志で動く!ざまあ見たか雷電影!私は最後まで自由の象徴!モンド人よ!」

 

私はモンドに出現したので、実質モンド人と言っても過言ではないだろう。

よし、これで気分良く逃げれるな。叫んだから血がいっそう吹き出して意識もちょっとヤバいし、海に落ちよう。

 

「ああああ──────!!!!」

 

誰かの悲鳴を聞きながら私は短い…およそ六時間くらいの眠りに着くのだった。

 

 ──────────★────────

 

「───刹那さんが、死んだ…!?」

 

蛍の耳にその訃報が届いたのは、蛍が藤兜砦でメカジキ2番隊の隊長として正式に着任した頃だった。

暴走したDISASTERによって、後衛ごと前線を上げる他なかった抵抗軍の士気は、多数の犠牲者が出た事もあり頗る低かったが蛍の参戦によってマシなものとなっていた。

 

「(これがアイツの言ってた『計画』って奴か…)エー!ナンテコッタ!オイラビックリダゾ!」

 

「……パイモン?」

 

パイモンはDISASTERとの約定により知らないフリをしたが、残念ながらパイモンはウソが下手くそであった。

しかし、事の重大さから抵抗軍の面々はそれに気づく由も無かった。

 

「…私たちに天命がついて参りました。後衛を海祇島に撤退させます!旅人さん、貴方には万が一の為の殿を頼みます」

 

「ちょっと待って。刹那さんは民衆の英雄じゃないの?その人が死んだのに、どうしてそんなに嬉しそうなの?」

 

蛍はまるで仇敵が死んだかのようにはしゃぐ抵抗軍に苛立ちを覚えていた。その胸にはDISASTERから受け取ったネックレスが鈍色に輝いていた。

 

「話は後です。哲平は道案内役として旅人さんに同行を。宜しいですね?」

 

「了解ですっ!誠心誠意、励ませて頂きます!相棒、僕が道案内をするからね。任せておいてよ!近道があるんだ」

 

「質問に答えて。わたしは納得するまで任務に承諾できない」

 

蛍は善性の者であった。それこそ、森の民に好かれるほどには心の清い者であった。

故に自身と交流がある者の死が喜ばれているのが腹立たしかった。

 

「それに関しては僕が説明するよ。まぁ、僕も実は刹那様のファンなんだけどね…」

 

ひっそりと事の顛末を哲平は蛍に耳打ちした。

蛍はそれを聞くと、少し目を見開き小さな声で「嘘だ…」と呟いた。

 

「僕もそんなの嘘だって信じたいよ。だってあの人は僕の憧れでもあったんだから。神の目を持たないが、最強の英雄。そんな人に僕もなりたいなぁ」

 

そう語る哲平の顔はどこか寂しげであり、遠くの何かを見ているようであった。蛍は哲平もまた悲しみの中にいると気がつき、少しだけ哲平への好感度が上がった。

しかし事情知るパイモンは気まずいばかりで、自分が一言「死んだフリしてるだけだぞ」と言って仕舞えば全てが瓦解してしまう事を理解していた。

 

(…言えない!絶対に、何としても!ディザスターの気持ちが何となくわかった気がするぞ…今度、アイツに美味いもの食わせてやろ…)

 

「…パイモン?」

 

「いやぁ、何でもないぞ!それより、まだ着かないのか?オイラお腹すいたぞ!」

 

パイモンは誤魔化した。実際のところ、別にパイモンは空腹なではなかったが言わざるを得なかった。

結果的に、パイモンは食いしん坊の白いふわふわ呼ばわりされる羽目になるのだが、それはまた後の話だ。

 

「…ふぅ、やっと元の拠点に着けたね。相棒、少し休憩したら珊瑚宮様の所へ行こう。僕たちを待ってるはずだよ」

 

海祇島までついた一行は、珊瑚宮の所まで向かい無事を報告した。珊瑚宮はほっとしたような顔をして「おかえりなさい」と言って蛍に労いの言葉をかけた。

珊瑚宮はその後、メカジキ2番隊の隊長としての任務を幾つか蛍に言い渡すと、社へ引っ込んでいった。

 

「哲平はこれからどうするの?」

 

「僕は…そうだね。また前線勤務かなぁ。でも大丈夫さ、すぐにでも君に追いついてみせるよ。もし僕が隊長になったら、お揃いの制服を一緒に着よう」

 

しかし、この後哲平は“協力者“に掴まされた邪眼によって命を落とすことになる。DISASTERが介入せずとも、死んでいた運命に変わりはない。

ただ一つ、正史と違った所があるとするのなら。それは哲平の憧れた刹那が実は神の目を持っていたという事実を哲平が知ってしまった事くらいか。

 

降りしきる雨の中、蛍は邪眼により風前の灯と化した哲平を見ていた。

 

「──────やっぱり、僕じゃあ英雄には、なれなかったな…」

 

「哲平はもう、立派な英雄だよ」

 

「僕を気遣ってくれるのかい…?ありがとう、相棒…そうだ、僕たちのお揃いの隊服が出来たんだ…一緒に着てさ、それでさ…」

 

「哲平…」

 

「おいおい、そんな顔するなよ相棒……大丈夫、少し、休めば、すぐに元気に…」

 

「哲平!寝ちゃだめだ!おいっ!」

 

蛍は刹那の死を喜んだ抵抗軍があまり好ましくは無かったが、それでも哲平だけは友人として、相棒として大事に思っていた。

 

(雨が降っていて良かった。雨は色んなものを隠してくれるから)

 

蛍が永い眠りについた哲平から離れ、俯きながら、誰にもその表情を見せずにゆっくりと海祇島を出て行った。

理由は単純だ。哲平が死んだ以上、これ以上抵抗軍に居ても不愉快なだけであるし、哲平に邪眼を渡した相手にも心当たりがあったからだ。

 

「待て。その道行き、オレも連れて行け」

 

海祇島から出る直前、蛍は一人のヒルチャールのような男に声をかけられた。

男はヒルチャール雷兜の王を模した仮面を着け、2mはあるかと言った大男であった。しかしその身体はヒルチャールとは違い、やや黒ずんでいるのみで悍ましい魔物の気配はまるでしなかった。

 

「貴方は?」

 

「オレの名はギャラルホルン。抵抗軍から消えてしまった友人を探している。オレも貴殿らに同行したい」

 

「わたし達、これからファデュイの基地に攻め入るつもりなんだけど。貴方はそれでも良いの?」

 

「構わない。ファデュイならば我が友人もそこにいるやも知れぬからな」

 

ギャラルホルンは背に括り付けていた大剣を掲げ、地面に突き刺し誠意を見せた。仮面の中からは蛍の見覚えのある瞳が覗いていた。

当然、それに気づかない蛍ではない。すぐに不審がるのは自然な事だった。

 

「貴方のその瞳…どこかで見たことがある」

 

「ほう?貴殿は既に我が同胞に会っていたのか。息災であったか?…もっとも、理性を保てる同胞は少ないだろうが…」

 

「……まぁ、それは後で考えよう。ギャラルホルン、行こう」

 

一行は鳴神島へと向かい、ファデュイの待つ拠点まで行くのだった。

 

 ──────────★────────

 

「……ここは」

 

「おっ!ようやく目が覚めたか刹那!ここがどこだか分かるか?」

 

「…一斗がいるからアジトだろ」

 

「よく分かったな!ガッハッハ!!!おい子分ども、コイツに粥を作ってやってくれ!」

 

私は気がつくと、荒瀧・面倒見の良さは天下一・一斗のアジトに匿われていた。

なんでも、久岐忍が血だらけで倒れている私を見て急いで搬送したとの事。殆どの処置は久岐忍がやって、他のメンバーは必死に私を励ましていたらしい。

 

「しっかしよぉ、お前はよく血まみれになって来るよなぁ。空から降ってきて全身ボロボロになったり、腕が千切れかけの状態で『匿ってくれ』だなんて言ってきたりよ…俺様は心配だぜ」

 

「いやぁ、すまんすまん…私としても不本意なものが殆どなんだ。それに、私の犠牲で誰かを守れたのならそれに越したことはないだろう」

 

「馬鹿野郎。お前が死んだら忍が悲しむだろ?俺様も、子分たちも悲しむ」

 

「忍さんが?」

 

「あぁ、言ってたぜ?『何回も治療してれば愛着も湧いてきますよ』ってな」

 

そうだったのか。いつも治療してもらう時に「怪我する理由を他人に求めないでください」って結構辛辣な事言われて落ち込んでいるのだが、実は心配して言ってくれてたのか。

 

「失礼します…具合は良さそうですね」

 

扉がノックされ、久岐忍が部屋に入って来た。その手にはお粥が入った皿がお盆に乗っけられている。

香ばしい香りだ。香草でも使っているのだろうか?

 

「治療助かるよ、忍さん」

 

「治療するこちらの身にもなってください…しかし今回はお叱りは無しです。貴方の所業を聞き及んでいますので」

 

「凄えよなぁ、あの雷電将軍の無想の一太刀を受けて生きてるんだからよ。ま、次は俺様が受けきってやるけどな!ガーッハッハ!!!!!!!」

 

「やめてください。死んでしまいます」

 

さて。私はいつ復活すれば良いのだろうか。

もうじき蛍ちゃんが雷電将軍にカチこむ頃だろうか?いずれにせよ、八重神子と連絡をとっておかないと。

しかし傷が癒え切ってないのも事実。次に激しい運動を完治せずにしたらまぁ死ぬだろう。

 

「あ、そうだ。刹那さん、あなたあと3ヶ月は安静にしててくださいね。でないと全身から血を吹き出して死にますよ」

 

「3ヶ月!?そんなには待てない、せめてあと1ヶ月でなんとかならないか!?」

 

「なりません、これでも早い方です。良いですか?貴方の容体は深刻なんです。貴方は今元気に喋っていますが、本来なら喋ったら血を吐くぐらいには悲惨なんですよ」

 

「ぐ、具体的には…?」

 

「そうですね…まず、全身の筋肉断裂、複数箇所の複雑骨折、雷により内臓に損傷複数、無理矢理蘇生されたような再生跡が大量にあったのでそれを切除、無理に元素力を使ったのか体内の水元素が薄くなっています。正直言って、生きてるのが不思議なくらいです」

 

そんなにヤバい状況だったのか。雷電影に貰った傷薬、あれ外見しか効いてなかったみたいだな…そりゃ動けないわけだ。

いや、痛みはあまり感じないし、動こうと思えば動けるだろうが死ぬ。十中八九死ぬ。

 

「英雄の貴方には辛い事かも知れませんが…大人しくしていてください」

 

「くっ…!」

 

こうなった以上、もう暫くは私は動けはしないだろう。つまり、暇だ。娯楽小説でも読みながら時間を潰すしかないのか…

半年以上毎日ずっと人助けの日々だったため、とにかく動いていないと落ち着かない。どこかで困っている人はいないかと考えてしまう。

 

「あ、それと刹那さんの髪結は無くなっていました。探そうかと思ったのですが、今頃海の中でしょう」

 

「ああ、構わないよアレは。別に高いものでもないから」

 

しかし困ったな。髪結が無ければ長髪をそのままにしておくことになる。まぁ動かないし別に良いか。

まあ気掛かりと言えば気掛かりなので杖付きで歩き回る事だけは許可してもらった。勿論仕込み杖だ。

 

「相変わらず、街の人々は呑気なものだ…いや、それでこそ戦った甲斐があるというもの…」

 

アジトに運び込まれてから一週間ほど経ち、多少傷も癒えてきたので私は街へと繰り出していた。

街は以前と変わらず、平穏の一言に尽きる。しかし彼らの心の中は?

それがわからない以上、人助けをしてくれる人がいないといけないのは変わらないのだろう。

 

「徒然なるままに日暮…硯に向かはず、唯その瞳を以て民を見守る…か。フン」

 

「よお、そこの姉ちゃん。俺らと遊ばねえ?」

 

私が小高い丘の上で一休みしていると、如何にもと言った風貌の男達が話しかけて来た。

いや私は性別的にも魂的にも男そのものだが…

 

「断る。私はそもそも女ではない」

 

「え?いや、マジ?ちょっと服脱いでみてよ」

 

「構わない。ほら、これで良いか?」

 

私は衣服を上半身だけ脱ぐと、男達に私の肉体を見せつけてけてやる。そもそも彼らと私では戦士としての肉体的違いがあるため、見るものを圧倒するのが常である。

 

「……!なんて戦士として完成された身体…!武人として手合わせ願いたい!」

「お、俺も!武術家としてお相手願おう!」

「僕もお願いしても?久々に血が騒ぎますね…!」

 

「すまない、私は見た目上は治っているように見えるかも知れないが瀕死の身だ。私と戦いたいのなら、人を助け、困っている者たちを救ってからにしてくれ。私の代わりを果たせるのなら戦ってもいい」

 

我ながら妙案を思いついたものだ。私が動けないなら彼らに動いて貰えばいい。幸い、彼らも中々の実力者である事はわかる。

彼らに任せておけば基本大丈夫だろう。

 

「聞いたか?お前ら、人助けの時間だ!お、そうだ。貴方の名前を教えていただいても?」

 

「私のことは刹那と呼んでくれ。この国ではそれで通っている。あ、これは秘密だぞ?」

 

「…………え?」

 

「さあ行きたまえ!今の稲妻は表面上平穏そのものだが、その実暗雲が立ち込めている。君たちでなんとかするんだ。頼んだよ」

 

私は服を着直し、立ち上がって城下町の方へと歩みを進めた。背後から驚愕の声が聞こえてくるが無視だ無視。

 

その後、私は街で何度も女性と間違われ絶対に髪留めを買おうと決意したのだった。




次回は一週間以内か、アルハイゼンとデートに行ったら投稿します
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。