なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

3 / 21
ほんの少しだけ独自設定がありますが、物語の流れに大して影響はないので石をしまって下さい。


第三話 何もしてないんだが

 

昨日は夜も遅かったのでファデュイのテントにお邪魔させてもらった。寝袋だったが、何かの技術が使われているのか適温だったおかげでぐっすりだ。

 

それにしても、だ。

ファデュイと一緒に歩いているだけであそこまで疑われるとは思いもよらなかった。ファデュイって見えてないところでよっぽど悪いことしてんのかな。

 

「──────って事があったんだけどさ。どう思う?ヤルプァ」

 

「そノ、人間、ディのこト、わかってなイ」

 

「だよなぁ。流石に酷いと思うよな」

 

「オれが、王になっタ、時、そいツ、やっつけテ、やる」

 

「ははは、ありがとうな。さて、私はもう行かなくては。依頼人がそろそろ痺れを切らす頃だろうからね」

 

「オウ、頑張レよ」

 

ヒルチャール・暴徒のヤルプァとは気の置けない仲になった。元々ヤルプァ自身が人間に関心があったのと、私との以前の握手から今ではすっかり親友だ。

 

「全く…遅いじゃない!アタシの料理を味見する約束だったでしょ?」

 

「すまないね、少し運動して腹を空かせて来たんだ。君の料理を楽しむのに、空腹というスパイスが欲しくてね」

 

「………もうっ!言葉が上手いんだからっ!」

 

今日の依頼人は、清泉町の奥さん。内容は新作料理の味見。夫にサプライズで作る料理を精査してほしいそうだ。

私はこれでも繊細な舌を持つ元日本人だ。よほどキツい味でない限りは食べれるだろう。

 

「では頂こうかな……ん?何だ、この…何?」

 

「やっぱり気づいた?璃月の香菱さんを見習って、隠し味に風慕のマッシュルームを入れてみたの!どう?おいしい?」

 

はっきり言って、マズい。と言うより、奇妙な味がする。文字通り風を煮込んだような味。それに焼肉の香りがするものだから酷い。

 

「──────美味しいよ。うん」

 

私は嘘をついた。奥さんの期待に膨らんだ純真無垢な顔を歪ませる訳にはいかなかった。許せ、旦那さん。私は悪くない。

 

「本当!?そう言ってもらえて嬉しいわ!はいこれ、報酬!」

 

「いや、要らないよ。その気持ちだけで十分だ」

 

「で、でも…悪いわよ」

 

「気にしないで」

 

報酬なんて貰ったら、罪悪感が半端ないから。むしろ、タダ飯を食らえた事に感謝しないといけないな。

 

「貴方って人は…なんて無欲なの。貴方に風神様のご加護がありますように。」

 

私は片手を上げてそれに応える。

早くこの場から逃げたかった。

 

モンド城に戻ってきた時、私のよく知った顔が見えた。金髪金眼に端正な顔、そしてそれに付随するようにふよふよ浮かぶ白い幼女。明らかに蛍とパイモンだった。

 

「あーーーーっ!」

 

「? どうしたのパイモン…あっ」

 

「────────。」

 

とうとう出会ってしまった。この世界の主人公、蛍を。私としては、原作の流れを壊したくないのであまり関わりたくはないのだが、そうは問屋が卸さないらしい。

 

「お、おいっ!待てよ!」

 

私が無視して素通りしようとすると、パイモンが静止の声を上げた。やっぱり無理かぁ…

 

「何だ。私に何の用だ」

 

「蛍っ、この人は違うのか?」

 

「違う…お兄ちゃんじゃない…けど、何か近いような気がする」

 

「………もう行って良いか?私は忙しいんだ」

 

「待って!お兄ちゃんは何処にいるの!?貴方なら知ってるはず!お兄ちゃんと波長がよく似た貴方なら!」

 

波長って何だよ。まぁ、知らない事は無い…というか、呼び出し方は知っているけど。でもそれには、ダインスレイヴの協力が必要だ。決して私では無い。

 

「…もし仮に、知っていたとして。君に教えると思うのか?」

 

「なっ…!?やっぱり、知って…」

 

「悪いが、君に言うことは無い。余計な詮索は不幸を招くと知ると良い。君もだパイモン。蛍と離れて私を尾行しようだなんて考えない方が良い」

 

「「…………!」」

 

精一杯のハッタリを仕掛けて私は教会へ帰る。はぁ、何というかドッと疲れたな。今日はもう寝ようか。

 

 

 

翌日。私は騎士団の面々に囲まれていた。

 

「お前はファデュイとの繋がりがあるとの報告が入った。騎士団本部までご同行願おうか?」

 

「困ったな…まさかガイアが来るとは」

 

「俺の名前をよく知っているな。お前はモンド城に来てからまだ数日しか経っていない筈だが?」

 

「親切な人が居てね。その人がモンドに関する事を全て教えてくれたんだ」

 

「ほぉ?それは良い事を聞いた。ぜひ会ってみたいものだな」

 

それ私なんですけどね。或いは原神のゲームそのものとも言う。ここで逆らっても無駄だし、そもそも勝ち目が無いからな。大人しくついていこうか。

 

「素直に連行されてくれるとは、俺も思っていなかったぜ。ファデュイの連中はここまで聞き分けが良くないんだがなぁ」

 

「何、彼らもそこまで悪い人たちでは無いさ」

 

「…案外素直に認めるんだな。ファデュイと一緒に何をして、何をするつもりだったかこの調子で言っちまえば、早くスネージナヤに帰れるぜ?」

 

「生憎、私の故郷には既に帰れないからね。行く当ても帰る場所も無いんだ」

 

「ほお…?」

 

騎士団本部はゲームで見るよりも綺麗だった。私はジン団長の目の前で拘束されていた。私悪い事何にもしてないのにどうしてこんな事に…

 

「……さて、君がファデュイの関係者であるという報告が入ったのだが…本当か?」

 

「ジン団長、こいつはさっき俺の前で『ファデュイはそこまで悪い奴らじゃない』と言い張った。確定と見て良いだろう」

 

「そうか。まぁ、今ここで問題なのは『君がモンドに害する者か』と言う事だ。もしそうなら、私は君を追放しなければならない」

 

「答えなさいディザスター。貴方がファデュイの関係者であると分かった以上、容赦はしないわ」

 

 

「────フ、くくっ…アハハハハ!」

 

「なっ、何故笑う…!?」

 

滑稽だ。面白すぎる。たかが一般人相手に、この厳戒態勢。幾ら何でも馬鹿馬鹿しすぎる。今、私がしなければならないのは、「誤解を解く」事だけ。それなら簡単だ。ヒルチャールと友達になるよりずっとな。

 

「これが笑わずに居られるか?君達は固定観念に囚われ、目の前にゴールがあるというのに道に迷っている。長く騎士なんてやっていると、騎士道精神よりも猜疑心が成長するのかな?」

 

「何が言いたいっ!」

 

「風を司る国の騎士たらんとするならば、風のように柔軟に物事を考えるべきだ。正義と悪に境など無い。」

 

「────っ、貴様らファデュイは!このモンドで何をするつもりだ!言え!」

 

「雪山の調査だ。」

 

「へ?」

 

「雪山の調査。聞こえなかったのかな?」

 

「いや、まさか。そんな訳…!だって、ファデュイだぞ?」

 

「そういう所だよ。まぁ良いや。ガイア、私は目的を言ったぞ。早く解放してくれないか?ここは狭苦しくてね」

 

「おいおい、俺の氷のような心はまだお前を疑っているぜ?────本当なのか?」

 

「私はそのように聞いている。しかし気をつけるんだね、あそこには黒龍の…いや、やめておこう。あとは君たちが知る楽しみを得るべきだ」

 

「貴様は…一体……?」

 

「DISASTER。そう名乗っている」

 

私はカッコつけて名乗り、騎士団本部を後にした。モンド城も居心地が悪くなってしまったな。街中の人たちが私を胡乱な目で見てくる。暫くはファデュイかヒルチャールのお世話になろう。

 

「さて、次は何処に行こうか…」

 

 

 ─────────★─────────

 

蛍が騎士団本部を訪れた時、本部は大慌てだった。謎の人物「DISASTER」の調査、またファデュイの「調査」の詳細などの対応で忙殺されている。

 

「うわわ…皆忙しそうだぞ!」

 

「どうしたんだろう…騎士団にお兄ちゃんに似た人の事を聞きたかったんだけど…」

 

蛍とパイモンが不思議そうにしていると、アンバーが小走りで近づいてきた。非常に緊迫した表情をしており、物事の緊急性をよく表している。

 

「蛍じゃない!どうしたの?」

 

「あの…お兄ちゃんに似た人を見つけたんだ。わたしと同じ金髪金眼で…」

 

「えっ!?それって、今私たちが探している人じゃない!?」

 

「騎士団もか!?アイツ…何者なんだ!?」

 

「その人の名前は?」

 

「えっとね、確か…ディザスター。特別協力してくれてるモナさん曰く、『厄災』って意味なんだって。」

 

「『厄災』…ディザスター…まさか!」

 

蛍にはこの単語に聞き覚えがあった。

はるか昔、蛍達兄妹がテイワットとは別の世界にいた頃。とある世界に於いて、「ディザスター」とは世界の崩壊そのものであった。

「ディザスター」が現れるだけで海は割れ、地は裂け、あらゆる生命体が苦悶の声を上げながら死んで行った。

その事を知っている者なら、ディザスターなどという不穏な名前は名乗らないのが普通だし、好き好んで口に出したいとは思わない。

 

だが、DISASTERは日本人だったのでそんな事つゆも知らない。それが結果的に警戒を招くのだが。

 

「蛍…?どうしたの、そんなに顔を青ざめさせて」

 

「今すぐにディザスターを捕まえないと…マズい。最悪、テイワットそのものが危ないかもしれない。」

 

「ええっ!?大変、早くみんなに知らせないと!」

 

早速、アンバーの迅速な報告により再び集結した騎士団の精鋭達。その表情は緊張に彩られていた。

 

「蛍…どう言うことか説明してくれる?」

 

「うん。私がいた所では、『ディザスター』というのは『全てを喰らう星』という意味だったの。古い詩には、『それは全てを焼き尽くすもの、それは全てを押し流すもの、それは全てに裁きを与えるもの』とあって…まぁとにかく。アレをほっといたらマズいの」

 

「成る程な…そりゃあファデュイと繋がるはずだぜ。連中が世界を滅ぼそうとしてたっておかしくはないからな…」

 

ガイアはもっともらしい事を言うが、本心ではDISASTERとアビスの関わりを疑っていた。DISASTERの言っていた「固定観念」という発言。これがアビス教団やその後ろにあるナニカとの繋がりを示唆するものでは無いのか。

そう考えずにはいられなかった。

 

「先輩…いや、私がしっかりしなくては。全騎士隊に通達!ディザスターと名乗る人物の討伐、もしくは捕縛を命ずる!」

 

「「「はっ!!!」」」

 

歯車は見当違いの所で動き出そうとしていた。

 

 

 

「へっくし!誰か私の噂でもしているのか?」

 

「そうかもしれないっスね!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。