なぜか無限に勘違いされるんだが 作:雷電双丘の狭間
また独自設定を生やしました。石を持ってください。
折角テイワットに来たのだからモンド以外の所にも行ってみたい、と思うのは普通だと思う。私はヤルプァと共に璃月に行くことにした。
「おレ、もうスぐ王にナれると思ウ。ディがくレた石をノみこんだラ、もっト力が増えた。」
「そりゃあ良かった、おめでとう」
「ディのおかゲだ」
「ははは、ありがとうな」
私がヤルプァと談笑しながら石門に向けて足を進めていると、突然ヤルプァが辺りを見渡し始めた。何だろうか、遺跡守衛でも居るのかな?
「あーーーっ!見つけました!人間と友好的なヒルチャール・暴徒!」
「………ディの知り合イか?」
「名前は知っているけど…会ったことは無いね」
まさかのエラ・マスクだった。ヒルチャールとの交流に命と魂をかけている少女、エラ。彼女の好奇心は凄まじいもので、obaの集落に良く現れて意味不明の言動をしているらしい(jaja集落のヒルチャール談)
「あなたは───ってええっ!?人相書にあった男の人…!?」
「おや、私は指名手配でもされているのかな?だとしたら面白い冗談だね。私は何もしていないのだから」
「えっえっでも……」
「おイ人間のメスの子供!おれ達にナんのヨうだ」
「ふえっ!?ヒルチャール・暴徒が私に話しかけてる!?はぁ、もうマヂ最高かわいい…」
ヤルプァが悪寒を感じたのか少し震えた。大した奴だよエラ・マスク。ヒルチャールの中でも王に近いヤルプァをビビらせるなんて、普通の人には出来ないぞ。
「えーーっと…指名手配犯さんは、このヒルチャール・暴徒とお友達なんですか?」
「そうだね」
「あはは、なんだ!それなら悪い人じゃないですね。ヒルチャールと友好関係を築けるほどの人格者なら、犯罪を犯すことはありませんから」
「はぁ…私がアビス教団だという可能性は考えなかったのかい?」
「いやぁ、アビス教団はみんな変な格好をしていますが、貴方は普通の冒険者らしい格好ですから。その可能性は無いかなと」
うーん賢い。少なくとも私よりは数段賢いね。まぁ私自身がそこまで賢いかと聞かれれば「No」なのだが。
「あなた方はこれから何処へ?」
「璃月に行こうと思っているよ。ヤルプァ…このヒルチャールの武者修行兼、私自身の観光旅行ってとこかな」
「ほへぇ〜…あ、あの…もし、良かったらなんですけど。私も一緒に連れて行ってくれませんか!?」
「良いよ」
断る理由も無いしな。それに、旅の仲間が増えるのは嬉しいから、歓迎する気持ちこそあれ追い出すことなんてしたく無い。
「あ、そういえば。ディザスターさんでしたっけ?貴方はモンド城に戻らない方が良いですよ。騎士団による厳戒態勢が敷かれていますから」
「ご苦労な事だね。無実の男の尻を追いかけ回しても楽しくないだろうに」
「言えてますね。ヒルチャールのお尻を眺めていた方がよっぽど有意義です」
「小娘、やメロ」
「はぁい…」
そんなふうに駄弁りながら歩く。まぁ、モンドから凛月は遠いが二日三日で着く距離だろう。それに、石門にファデュイの人たちがいるらしいので、彼らを頼っても良いだろう。
「あーーーーっ!見つけたぁっ!」
またエラ・マスクのような人が来るのか?と思ったが、違った。赤いリボンに快活そうな瞳。引き締まった脚は健康美を醸し出している。
アンバーだ。
「アンタ、何かヤバい人なんだってね!動かないで!私の弓の方が早いよ!」
「おお、怖い怖い…」
え何?指名手配か…にしたって、ここまで警戒される事あるかな。折れた銀の剣しか持っていない一般成人男性が神の目持ちの騎士に勝てるわけ無いだろうに。
あ、もしかしてヤルプァを警戒してるのか?
「安心してくれ。ヤルプァ…彼は危険なヒルチャールではない。彼は私友人でね、気のいい奴なんだ」
「っ、ヒルチャールを配下に…!?まるでアビス教団じゃない…!」
「配下だなんて、ヤルプァに失礼だろう?彼は私と対等な友人さ。安心して欲しい、君が何もしない限り誰も何もしないさ」
「ん〜〜っ…!優しそうに言ったってダメ!とにかく、騎士団本部に来てもらうんだから!今なら何もしないから、お願い」
な、なんて頑固な子なんだ…!こうなったら、奥の手を使うしか無いのか!?うおお、唸れ謎パワー!当てないように調節して…!
「何を…元素反応!?嘘、神の目も持ってないのに!?」
「何だかよくわからないけどパンチ!」
私が拳を振り抜くと、私の腕が薄緑色に光り突風が吹き荒れる。アンバーは遠くまで吹っ飛ばされたようだが、風の翼を使ってうまく受身を取っている。
「……?おイ、ディ。風ノアゲートが一つチリになっタぞ」
「風の…?ハッ!そういう事かぁ!」
どうやら、私の謎パワーはアゲートを消費して放つ技のようだ。何ともコスパの悪い。アゲートは買えるとは言っても、出費が嵩む。これからは使用を控えよう。
「追手は…無さそうだな。さっさと行こうか」
その後すんなりと石門に辿り着いた。
石門ではお迎えのミラーメイデンさんが待ってくれていた。それにしても、ミラーメイデンさん…刺激が強い!チェリーボーイの私にとって、テイワットに来てから一番緊張した。
「ごめんなさいね、わたくしの力では一人しか通れないの。でも道案内は任せて頂戴?公子様のお供で良く通る道だから、覚えているの」
「ハ、ハイ!」
「…………フッ」
ヤルプァに鼻で笑われた気がしたが、気にしないでおこう。しかし良い匂いだ…おっと、変態みたいになってしまったな。自重しよう。
「貴方の事は弟のアントニーから聞いているわ。とっても良い人だって」
「い、いやぁ…そうですかね?ありがとうございます」
「うふふっ、そう謙遜しないで。そっちのヒルチャールさんももっと近くに来て、お話ししましょう?」
そんな風に話していたら、いつの間にか望舒旅館に着いていた。日はもうじき落ちようかと言った所で、今日はここに泊まっていこうと言う話になった。
「いやその…そこの方、ヒルチャールですよね?」
「丘々人で『人』って付いているので人です」
「いや、でもその人危なくないですか?」
「危なくないです。もし彼が暴れ出す時は、襲われた時か余程彼の気に障る事をしたかのどちらかだと思います」
「そ、そうですか…そちらの方は、ファデュイの…?」
「はい、ミロスラーヴァと申しますわ。今は彼らを璃月港まで案内する役割を請け負っていますの」
「は、はぁ…そちらのお子さんは?」
「ヒルチャール学者の、エラ・マスクよ。ヒルチャールについて知りたかったら私に聞いて?答えられる範囲で答えるわ」
「………くれぐれも、問題は起こさないようにお願いしますね。如実に!」
「そこまで言わなくても大丈夫ですよ。私たちは良識人なので」
「(ヒルチャールとファデュイ連れてる人は良識人かなぁ…)わかりました」
何やら失礼な事を考えられている気がしたが、気にしないでおこう。何しろ、これから私を待ち受けているのは大料理人言笑さんの料理だ。
あの降魔大聖すら魅了するその味、是非とも堪能したい!
「おまちどおさま。カニとエビのポテト包み焼きと、チーズたっぷり鶏肉丼と、望舒旅館特製麦酒、4人前だ。そっちの子にはリンゴジュースだが良いか?」
「サービスドリンクも付いてくるとは…なんと素晴らしい…!」
「はっはっは!客に美味い飯を食わせるのが料理人だからな。それに、ヒルチャールの客だなんてこれとないチャンスだ!」
「と言うと?」
「ヒルチャールが俺の飯を美味いと言ったら、俺の飯は人間以外にも通用する事になるだろ?つまり、いずれ世界中の連中に飯を食わせられるようになるって事だ。そんな時が来りゃあ、料理人冥利に尽きるってもんよ」
何という事だろうか。言笑さんはこれ程までに素晴らしい料理人だったとは。その野望、是非叶えてほしい。どうにか出来ないだろうか?
「ン、メシか。どレ、一つ頂こウか…こ、コれは!?ウマい!おレが今マで食ってキたモノの中で一番ダ!」
「ごくり…で、では…私も頂こうかな……えっ?な、何だ…この美味さは…知らない、知らないぞこの美味さは!?」
私は前世で、幾らかの高級店などで食事をした事がある。だが、この料理の美味さと言ったらそれら全てを超えていると言っても過言ではない。
とろけるチーズの舌触りは滑らかで、プリップリの鶏肉とご飯がとても良く進む。唯一残念なのが、米の質だ。これはまぁ仕方ないとしよう。
日本人の血と汗の結晶は料理の質ではどうしてもカバーしきれないのだ。
「あらあら、そこまではしゃぐ事ですの?確かに、わたくしが普段食べている物よりは美味しいのですが…」
「そうね、そこまで騒ぐほどじゃないわよ」
「「あなた方(お前ら)は黙ってて(ロ)!!」
普段からこんな良いもん食ってる連中に、私達の気持ちはわからないんだ。『鹿狩り』の料理は何というか普通だったのだが、これは別だ。
この一皿一皿に、言笑さんの努力と誇りが宿っているように思える。
「うおっ、兄ちゃん!そんなに泣くほど美味いのか?」
「えっ、私泣いてましたか?」
「おう。こう…つぅーっと一条の涙がな」
気がついたら泣いていたらしい。
やっぱり、料理は人の心を動かすね。
その後も、私は食べながら感極まる事を繰り返した。
翌日。私は璃月港に到着していた。
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ウェンティは今、とても困惑していた。
自分が酒場で酔い潰れて寝ている間にモンド城中が大荒れしていたのだから。
慌ててウェンティがバーテンダーに何があったか聞くと、バーテンダーは「ヤバいのが出たらしい」とだけ言った。
(ヤバいのってなんだろう…?もっと他の人に聞いてみようか。)
ウェンティが情報に詳しそうな人物を探していると、丁度ウェンティの目線の先に蛍とパイモンがいた。
「ちょうど良いや!おーい、旅人!ちょっと聞きたいんだけど良いかな?」
「あっ、吟遊野郎じゃないか!どこ行ってたんだ?」
「えへへ、ちょっと酔い潰れちゃってて…それはともかく。今、風の噂で『モンドにヤバい奴がいる』って聞いたんだけど…どういうこと?」
「ディザスターと名乗る人物が現れたの。」
「ディザスター?ふぅん、そんな事する奴居たんだ。ボクが本当に『厄災』か確かめてこようか?」
「えーーーっ!?吟遊野郎、死ぬ気か!?いくらお前でも、世界を滅ぼせる相手に無茶だぞ!」
「あははっ、そんなの居たらとっくにテイワットは無くなってるだろうね。だって君たち、そのディザスターをどう扱ったんだい?」
「確か指名手配にして生死問わず連れて来いって命令が出されて…」
「そんな事したらディザスターがいくら懐が深くたって少しは気分を害するとは思わないのかな?ボクが知ってるディザスターはね…とにかく怒りんぼうだったんだ。」
「彼を知っているの?」
「そりゃあそうさ!だってボク達魔神は、初めの方はアイツに怯えていたからね!いやあ、いつカミナリが落ちるか怖くてさ。目の前を横切っただけでチリに変えられた魔神も居たしね」
「はわわ…!そんな奴に指名手配なんてしたら…!」
「だろう?だから今回現れたディザスターは『厄災』じゃないと思うなあ。それに、彼の本拠地はスメールだった筈だし」
「な、なら…あのディザスターは一体?蛍のお兄さんに似てたらしいぞ?」
「それも含めて、ボクが調べてこよう。大丈夫、神の心を失ってもボクはボクだからね」
「待ってウェンティ。わたしも連れて行って」
「おや旅人、君も来たいのかい?それなら一緒に行こう!旅は楽しい方が良いからね!」
そうして、ウェンティ達は璃月へと旅立った。
途中、何体かのヒルチャールが武器も持たずに近寄ってきて、蛍を見て何かを言っていた。
「Chi nchi npelo(アイツ…見たことあるぞ)」
「Unc hi bur ibur(ヤルプァ様の友人の?)」
「Miu la dai(待て、アイツはメスだ。ディザスターくんじゃない)」
「Sen pa ye(でも似てるぞ!兄妹か何かじゃないか?)」
「…っ!ヒルチャール!」
「Faa!?(ファッ!?コイツ剣構えて来ましたよ)」
「Sor da yo(やっぱ戦闘好きなんすね人間って)」
「Bac ah ooo!(おい誰か人間語喋れる奴連れて来いよ)」
「Shuw acha n(ちょっとアビスの人呼ぶわ)」
「何を…っ、アビスまで…!」
「Con ohen ni(アビスさん、アイツと対話って出来ます?」
「出来ない訳ないだろう!?オレ様を何だと思ってるんだ!」
「Uma irar men(頼んます)」
「アビス…!覚悟!」
「うォいちょっと待て!話をしよう!」
「アビスと話す事なんてない!」
呼ばれてやってきたアビス炎術士は早くも泣きそうになっていた。手下のヒルチャールから緊急応援要請を受けて飛んできたというのに、これではあんまりであった。
「まあまあ…旅人、話を聞いてみようよ。もしかしたら良い人かもしれないだろう?」
「おお!話がわかる奴がいて良かった!…それで、何話せば良いんだ?」
アビス炎術士は近くにいたヒルチャールに問いかける。しかし、誰も思い付いてはいなかった。何故なら、DISASTERと似ているから話しかけてみようと思っただけで、これと言って話すようなことも無かったからだ。
「……lulu sh vi brita nia(そうだ、ディの事聞けば良いんじゃないか?)」
「何?ディ…?ディって誰の事だ。ルピオブ、説明しろ」
「Su zak tuch oaji。Yarpha Dy nak yos(この間来た人間だよ。ヤルプァとディは親友なんだ)」
「何だと!?人間とヒルチャールがか!?もしかしたら、仲間に引き入れられるかもしれないな……おっとすまない、じゃあアンタらには用はなかったって事で。無闇にヒルチャールを襲うと痛い目みるぜ、じゃあな」
蛍が発言する前にアビス炎術士は立ち去ってしまった。それを契機に、ヒルチャール達もぞろぞろと引き上げていく。
「…ね?」
「ね?って何だよ!?ありゃ何だよ吟遊野郎!アビスも、ヒルチャールも襲ってこなかったぞ!これじゃまるでオイラたちが怖い奴じゃないか!」
「そうは言ってもね。ほら、よく言うだろう?『事実は小説より奇なり』ってさ」
「……………。」
騒ぐパイモンを他所に、蛍は一人考察していた。
(さっきのアビスが言うには、ヒルチャールと友好的な関係を結んだ人間がいる……。もしかしたら、万が一にでもその人がお兄ちゃんであるかもしれない可能性を否定しきれない。お兄ちゃんは優しいから、きっとヒルチャールとも仲良くなれる…)
「ウェンティ、パイモン。知性あるヒルチャールを辿ったら、お兄ちゃんへの可能性へ繋がるかもしれないの。だから協力してくれる?」
「ボクは構わないよ。どうせ暇だしね」
「オ、オイラは……う〜ん…怖いけど、協力するぞ!」
「ありがとう。二人とも。」
いつしか旅はDISASTERを追う旅から、謎のヒルチャールの調査になりつつあった。