なぜか無限に勘違いされるんだが   作:雷電双丘の狭間

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筆者がコロナで倒れていた為更新出来ていませんでした!本当に申し訳ありません!今後は前の投稿ペースに戻りますので、何卒応援していただければ幸いです!


第六話 ミッション完了なんだが

 

 

 ー数十分前ー

 

 

「花初お姉ちゃんを、探してくださいっ!」

 

お前かよ袁坊。こんな所に居たんじゃ、そりゃあ璃月港で見つかるはずもないわな。にしたって、何故こんな所に?

 

「良いとも。ただその前に、なぜ君が『花初を殺した』という事になっているのか聞いても良いかな?」

 

「っ、それは…花初お姉ちゃんが、みんなを驚かせたいって言ってて…それで、僕が殺したって事にしたら、みんなもびっくりするって…けど、気がついたら花初お姉ちゃんはいなくて…ワ…ぁ、あ……」

 

とうとう泣き出してしまった。

成る程?つまり袁坊は花初に騙されて、一方的に不名誉な肩書きを押し付け、自分は恋人と逃げたと言うことか。

 

幼気な少年の心を踏み躙るとは…許せんっ!

これは、地獄から来た男になる必要があるな。

 

「お、兄ちゃん…?顔、怖いよ…?」

 

さっきは、服に宿った氷の力を使って攻撃出来た。それなら、海や川だって凍らせられるのは道理だ。試しに水溜りに足を踏み入れると、水溜りが凍った。

 

「袁坊、花初は石門にいる。私の後をついて来なさい」

 

「う、うん…わぁ!川の水が凍ってる!すごいや!」

 

「私の行く先に花初が居る。奴は君を騙し、自分の欲望を満たす為だけに君を人殺しに仕立て上げた。だから、奴は報いを受けなければいけないんだ」

 

「で、でも…ううん、僕は自分の目で見たことを信じるよ!」

 

偉いなこの子。けどまぁ、花初は死亡騒動で親を悲しませ、挙句の果てに幼気な少年の心すら踏み躙った。タダでは許さないぞ。

 

 

そして、袁坊がついて来れるようにゆっくり歩いて石門まで向かったら蛍とウェンティが居た。ウェンティと会うのはこれが初だ。あんまり悪印象を持たれないようにしよう。

 

「君、初対面の人には名乗るのが礼儀だと思うよ。ボクはウェンティ、吟遊詩人さ!君は?」

 

「私の名は堕岩。幼気な少年の心を守る男だ」

 

これで正義アピールも出来たし、好感度アップ間違い無しだろ。何しろ、少年の心を守るとなれば正義の味方確定だ。

 

「へぇ、それで君はボク達に何の用だい?」

 

「お前たちには用はない。そこで転んでいる女に用事がある。奴は報いを受けなければならない」

 

私がそう厳格に言い放つと、花初は心当たりがあるようで袁坊に縋りつこうと這いつくばりながらにじり寄って来る。

 

「袁坊、この女をどうするかは君が決めなさい」

 

「袁坊ぉ…!私は、私は悪くないのよぉっ!全部、逃げたあの男がいけないのよぉ!そ、そうだ!堕岩さん、あの男をやっつけて頂戴!?」

 

花初は袁坊に抱きつくと、惨めで醜い責任転嫁を始めた。こいつマジでここで痛い目見せるべきじゃないのか?幸い、氷元素で凍った物はそのものの命が尽きないかぎり凍り続けるからな。

 

「お姉ちゃん…」

 

「そうよ、お姉ちゃんよっ!わかってくれたのね!?良かったわ!」

 

「わかったよ……おまえが、本物のクズだって事が!」

 

「!?」

 

「堕岩さん。お願い…さよなら、お姉ちゃん」

 

私は花初を掴んで川に投げ入れると、私自身も川の中に入り花初を水中深くに叩きつけ、氷の力を発動させる。

花初は水中で物言えぬ氷像となる。これで暫くは、少なくとも袁坊の気持ちに整理がつくまでは凍り続けるだろう。

 

「袁坊、迎えがきている。彼女について行くと良い」

 

そう言って私は指を刺す。その先にはおそらく心配でついて来てくれたであろうミロスラーヴァさんが立っていた。彼女なら確実に袁坊を璃月まで送り届けてくれるだろう。

 

 

「ほ、蛍っ!あいつ、人を…!」

 

「しかもファデュイ…!」

 

さて、私も璃月に戻るとするか。もうじき夜だしな。怒ったらお腹も減って来たし、今日は万民堂に行ってみようかな?

それにしても、正義アピールが出来て良かったな。弱きを助け、邪悪を挫く。これは好印象間違いなしだろう。

 

「待って、どうして殺したの?彼女はそこまでされるような事をしたの?」

 

「……いいや、死んではいない。少し長い眠りについているだけだ。業腹だがな」

 

「永い眠り…?どう言う事!?」

 

「全身を凍結させた。碌な抵抗力も持たないような奴では目覚めるのは程遠い未来になるだろう。もっとも、その時奴に生きていられる場所があるとは思えないが」

 

袁坊の誤解を解く為に真相を話せば、もう璃月では生きていけないだろう。それに、たった一人では冒険者や力ある者以外はモンドにはたどり着けないだろう。少なくとも、冒険慣れしていないとな。

 

「貴方は…一体……」

 

「ファデュイ……堕岩。覚えておくと良い」

 

また会うかもしれないからな。

 

 

 

璃月に帰ると、私はニッコニコのタルタリヤに出迎えられた。何?私何かしたかな。

 

「堕岩、君やるね。まさかファデュイになってから1日も経ってないのに俺たちの友達が狙ってたターゲットと宝盗団を始末するなんてさ!アハハッ!素質あるよ、君」

 

「はぁ、ありがとうございます…?」

 

「そんな君に朗報だ。この手紙を往生堂という所に届けてほしい。まぁ、定期連絡のような物だから、あまり重要な物ではないんだけどね」

 

「ええ、構いませんとも。何だってやらさせて頂きます」

 

だってタルタリヤ怖いもん。この人が私と戦った時、100:0で私が負ける。そしてそのまま殺されてしまうだろう。

 

早速夕飯がてら往生堂に向かうと、堂内の明かりが消えていた。このまま扉の下に挟んでも良いが、誰かに取られた時に洒落にならないから店の中に入って手紙を置いておこうかな。

 

「お邪魔しま〜す…北国銀行の者ですが、鍾離先生はいらっしゃいますでしょうか…」

 

返事はない。それどころか、どこでも騒がしそうな胡桃の声と気配すらない。出かけてるのかな?なら話は早い。さっさと手紙を置いて万民堂行こう。

 

 

「たっだいま〜!」

「胡堂主、少しはしゃぎ過ぎだ」

 

あ、帰ってきたのか。よし、じゃあ手紙を鍾離先生に手渡しで…いや待てよ。もしかしなくても、今の私ってすごく怪しくないか?

獣に裂かれたような兜に、ファデュイ御用達のコート。そんな奴が自宅の暗がりにいるわけだ。完全に不審者です。

 

「ん〜?誰?」

 

「────私の名は堕岩。今宵は、鍾離殿に御用があり参上した。以後お見知り置きを」

 

「俺にか?何用だ。」

 

「これを」

 

私は震える手と声を必死に抑えながら、鍾離先生に手渡した。鍾離先生はその手紙の中身を一瞥すると、「そうか」と言って手紙を裂いてしまった。

そんなに機密情報だったのだろうか。

 

「それでは私はこれで。」

 

「少し待て。お前は今までの使者とは違うようだが…彼女はどうした?」

 

「さてね、私には何のことやら。言いたいことはそれだけですか?ではさようなら。また会う機会があればいずれまた」

 

私の胃袋はもう空腹で限界だった。私はダッシュで万民堂に向かうと、満腹になるまで飯を食った。言笑さんの料理に負けず劣らずの美味さで、またしても泣きながら飯を食った。

 

 

 ─────────***─────────

 

 

鍾離は一人考察していた。

堕岩と名乗る男の正体、そして以前の使者ミロスラーヴァの所在。特に、堕岩の正体についての考察は鍾離を悩ませる事になった。

 

「…堕岩、と言う名は岩を堕とす、つまりは岩神モラクスを…ひいては璃月そのものを堕とすという事だろうな。しかしどうしてそんな名を名乗る?」

 

堕岩と言う名前は、単にタルタリヤが『璃月めちゃくちゃにできるくらい頑張ってね』くらいの勢いでつけた名前である。奇しくも、モラクスまで堕とす事以外は正しい解釈であった。

 

「ふむ…少し、外で考えてみるか」

 

鍾離が街へ繰り出し暫く歩いていると、万民堂の方が何やら騒がしい事になっていた。不審に思って鍾離が見に行くと、そこには人だかりが出来ていた。しかし、集まっている人々は皆涙を流しており、その視線は一人に向けられていた。

 

 

「かたじけねェ…!美味え…美味えよぉ…!」

 

「そこまで喜んでくれるたぁ、嬉しいねえ…」

 

「素敵…」

「これが、料理人と客の絆…!」

「涙を流しながら食うなんて…そんなに美味いのか」

「きっと、今まで碌なご飯を食べれてなかったのよ」

「まあ…可哀想っ…ぐすっ」

 

そこにいたのは、兜を外した堕岩だった。

 

 

鍾離は、先程まで自身が抱いていた疑惑がバカらしくなった。涙を流しながら美味しそうに飯を食える人間が、璃月を堕とそうなどと考える筈が無いからだ。

 

「おそらく、ミロスラーヴァ殿には別の任務が与えられたのだろう。さて、帰るとするか…」

 

 

そして、それを見ていたのは鍾離だけではなかった。万民堂の一人娘、香菱もその光景を眺めていたのだ。

 

「お父さんはやっぱり凄いや…アタシも、人を感動させる料理を作れたらなぁ。いけない、あの人見てたら貰い泣きしちゃいそうだよ」

 

香菱は乗っていた屋根から飛び降りると、街に繰り出した。香菱が「最高の料理」について考えていると、いつの間にか香菱の隣には大泣きしている辛炎がいた。

 

「うえっ!?辛炎、どうしたの!?」

 

「うォおン…!!最高に、情熱的だぁッ!!!万民堂の近くで渦巻いていた感情の奔流!熱いぜ!!!」

 

「あはは、辛炎もアタシとおんなじ事考えてたみたいだね。よーし、アタシも頑張らなきゃ!」

 

「? おう!頑張ろうな!うおおおおおっ!やるぜえええええ!!!!」

 

この日、璃月に一つの物語が生まれた。

その名も、『泣き飯の男』である。

 

この物語はあっという間に流行し、璃月でその話を知らない者はモグリとまで言われるほどになった。

結果、万民堂の売上はかつての五倍になり、堕岩が泣いているのを見ていた者達の中で『泣き飯ファンクラブ』なるものが結成された。

 

堕岩は着実に璃月に馴染んでいた。




少し重い話を挟んでしまったのでプレ飯回を挟んでおいたよ…"これはコメディ小説だった"…とね
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