その時、大地の裂け目から現れた無数の地涌の菩薩達はお釈迦様に向かって手を合わせ、次のように申し上げた。
「お釈迦様。お釈迦様が長い旅に出発された後、お釈迦様がどこに旅立たれようと、そこがどこであっても、お釈迦様が旅立たれた所で、私達はこの法門を説き示すでありましょう。私達は受け止め、読誦し、教示し、説明し、書写するために、このような優れた法門を求めているのです」
すると文殊菩薩をはじめとする、この人間界に住む、数多くの菩薩達や四衆の人々、神々や人間以外のもの達、あるいはこの人間界以外の世界に住む数多くの菩薩達もお釈迦様に次にように申し上げた。
「お釈迦様。お釈迦様が長い旅に出発された後、私達もまた、この法門を説き明かしましょう。お釈迦様。私達自身は決して目立つことはないかもしれませんが、声を届け、善行を積んでいない衆生に善行を積ませることを約束しましょう」
するとその時、お釈迦様は地涌の菩薩を従え、その大集団を率いている四人の指導者である立派な菩薩のうちの一人である上行菩薩に向かっておっしゃられた。
「上行菩薩、あなた達は素晴らしい。本当に素晴らしい。この法門のためにぜひそうするべきである。如来はあなた達を既に完成させているのだ」
その時、師であるお釈迦様と既に長い旅に出発されたはずの多宝如来は墓碑の中央の椅子の上で座禅を組んでおられた。そして二人とも微笑みを浮かべながら口を開き、舌を出されると、その舌は長く伸び、神々の世界にまで達し、さらにその二人の舌から多くの光明が現れた。
その一つひとつの光明の中から立派な身体を持つ多くの菩薩達が出現し、紅蓮華の咲く椅子の上で座禅を組んだ。それからその菩薩達は四方八方に散らばって行き、空の上からこの法門を説き示した。
お釈迦様と多宝如来がその舌で神通力による奇跡をなしたように、同じように数えきれないほど多くの、他の世界からやって来られた、宝の木の根元の椅子の上で座禅を組んでおられる如来達もその全員が、その舌で神通力による奇跡を見せられた。
しばらくしてからお釈迦様や多宝如来、その他の如来達は舌を収められ、次の瞬間に大きな咳払いをされたかと思うと大きく指を鳴らされた。その咳払いと指を鳴らす音で、十方にある世界は激しく震え、動き、揺れた。
しかもそれらの世界にはあらゆる衆生や神々、人間や人間以外のものもいて、それらすべてが、神通力により、その世界にいるままで、自分のいる場所からこの人間界をあるがまま見ることができた。すなわち、多くの如来達が宝の木の根元の椅子の上で座禅を組んでいるのを見たし、お釈迦様を見たし、多宝如来がその宝石造りの大きな墓碑の真ん中の椅子の上でお釈迦様と一緒に座禅を組んでいるのを見たし、四衆の人々をも見た。
それらの衆生は、そのような風景を見て、普段感じたことのない思いを抱き、驚くと共に、喜んだ。そして、それらの衆生は次のような天の声を聴いた。
「数えきれないほどの世界を通り過ぎるとそこに、この人間界という名前の世界がある。そこには釈迦如来という正しく完全に悟られた尊敬されるべき如来がおられる。その如来は今、菩薩のための教えであり、すべての正しく完全な悟りに至った人々が把握している『白蓮華のように最も優れた正しい教え』、すなわち『法華経』を説き示される。あなた達はその法門を清らかな心を持って喜んで受け入れると良い。そして師である釈迦如来と多宝如来に敬礼すると良い」
そこで、全世界のすべての衆生は、天からの声を聴き、その場で手を合わせ「師であり正しく完全に悟られた尊敬されるべき釈迦如来に敬礼致します」と言った。
そして、師である釈迦如来と多宝如来を供養するために、また「法華経」を供養するために、様々な花や香、花輪、衣、傘、旗あるいはのぼりをこの人間界に向けて投げ込んだ。さらにまた色々な種類の装飾品や服、宝飾品あるいは宝石も投げ込んだ。そしてそれらの品々はこの人間界に届き、この人間界において、そこで座禅を組んでいる如来達の頭上を覆った。
そこでお釈迦様は上行菩薩をはじめとする立派な菩薩達におっしゃられた。
「正しく完全に悟られた尊敬されるべき如来達は説明できないような神通力を持っているのだ。この法門をあなた達に託すため、私はとても長い時間に渡り様々な方法によってその多くの功徳を語るだろう。しかし、私がどんなに長い時間その功徳について語っても、その功徳を言い尽くしてしまうということはない。今、私はこの法門についてすべての法、神通力、秘儀、深遠な場所を要約して説いた。それゆえ私が長い旅に出発した後、あなた達はこの法門を敬い、受け入れ、説き示し、書写し、読誦し、説明し、修行し、供養するべきである。果樹園であれ、精舎であれ、在家信者の家であれ、森であれ、街であれ、木の根元であれ、宮殿であれ、普通の家であれ、洞穴であれ、この法門が読誦され、説明され、説き示され、書写され、考察され、語られ、朗読され、写本になって存在する地上の場所は、どこであれ如来のためにその身体を安置した墓碑が造られるべきである。地上のその場所はすべての如来達にとって悟りを得るための椅子だからである。また地上のその場所においてすべての如来達が正しく完全な悟りを得られたのだということが知られるべきだからである。また、地上のその場所においてすべての如来達が真理の車輪を回したのであり、さらには地上のその場所において、すべての如来達が長い旅に出発したのだと知られるべきだからである」
お釈迦様はそうおっしゃられると次の詩を吟じてみせられた。
神通力に満ち
世の人々の安寧を願う
正しく完全な悟りに至った如来は
思議を越えている
無限の視力を持ち
この世のすべての
身体あるものの喜びのために
神の力を示す
幾千もの光明を示し
その舌を神々の下に到達させる
悟りに向けて立ち上がった人のために
驚くべき神力を示す
その人は咳払いをし
指を鳴らして音を立て
十方の世界のすべての人々に
その音を知らせる
長い旅に出た後
衆生を喜ばせこの経を受け止めさせるため
この世の人々の安寧のため
奇跡や功徳を示してみせる
長い旅に出た後の
賞賛の言葉を私は語る
その功徳には限りがなく
受け止める人の功徳は思議を越えている
受け止める人は私やすべての指導者達
既に長い旅に出た多宝如来
多くの菩薩達
あるいはすべての四衆の人々を見ている
受け止める人は私やすべての指導者達
既に長い旅に出た多宝如来
さらに世界中の
正しく完全な悟りを得た如来を喜ばせる
受け止める人は
未来と過去そして現在
すべての正しく完全な悟りを得た如来を
よく供養する
受け止める人は
悟りの座において
熟慮された秘儀を
速やかに思い出す
受け止める人は
風のように何物にも囚われず
無限の理解力を持ち
法の意味をもまた知る
その人は指導者が込めた
深い意味を理解し
指導者が長い旅に出た後でさえ
経の真実の意味を知る
その人は月であり
太陽のように輝いていて
この地上にいて
多くの菩薩達を奮い立たせる
この世でこのような功徳を聴いて
私が長い旅に出た後も
この経を受け止める
賢明な菩薩達の悟りに疑いはない