春休み中、今日はLiella!の練習が休みなので俺は町に遊びに出ていた。四季は新作の発明品に掛かりきりで部屋から出てこないらしい。
まぁしょうが無いな。
表参道の辺りをぶらついていると、雑貨屋の扉が開きこの前知りあった顔が2つ覗いた。
「あれ、紗夜さん? 陽菜ちゃん?」
紗夜「あっ、渚さん……こんにちは」
この間出会った天才空手姉妹だった。
陽菜「奇遇だね。1人?」
「うん。2人は買い物?」
陽菜「うん。この街ってなんかさー、やけにナンパが多いんだけどなんで?」
ん~思い当たることといえば1つしか無いけどな。
「2人が可愛いからだろ?」
紗夜「そういうこと言わないで下さい/// 彼女さんに怒られますよ?」
「だな。聞かなかった事にしてくれると助かる」
陽菜「どうしよっかな〜?」ニヤニヤ
イタズラな笑みを浮かべる陽菜ちゃん。こっちも釣られて笑顔になる。すると、
?「あれ? 真田?」
紗夜「え……、!?」
急に声を掛けてきた男の方を見ると、紗夜さんは驚愕の表情を浮かべていた。
陽菜「アンタ……!! まさか西野!?」
西野「覚えてたか」
西野と呼ばれたその男は、ニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべると、紗夜さんの肩を掴んだ。
紗夜「ビクッ」
? 何か今震えなかったか?
西野「変わってないみたいだなぁ? 何か空手が強くなったって聞いたけど、中身は
紗夜「っ!!」
陽菜「アンタ!!」
なんだコイツ?
紗夜「誰が弱いって?!」
すると紗夜さんは西野と呼ばれた男に掴みかかろうとする。ヤバイ! こんな道の往来で!!
「やめろ紗夜さん!! 手を出して警察沙汰になったらマズい!!」
俺は必死で紗夜さんを抑える。ヤバい、力強い!!
紗夜「離して!! 今の私が弱いか試してやる!!」
紗夜さんの敬語が外れてる。これ相当逆上してるぞ!?
西野「っ!? ハッ……これから楽しみだな……」
そして西野は去っていった。
紗夜「待てぇ!! 止めないで!!」
「ダメだって!!」
紗夜「止めないでよぉっ!!」ガクッ
西野の姿が見えなくなり、紗夜さんは瞳に涙を浮かべ、その場に崩れ落ちる。周りには野次馬が集まってきてる。
「おい、場所変えるぞ」
陽菜「う、うん…」
紗夜「……………」
そして近くの公園に場所を移した俺たち。俺は先程の男について二人から話を聞く。
「で、あの嫌な感じの男は誰なんだよ?」
陽菜「アイツは、小さい頃私をイジメてた奴。でも紗夜が私を守ってくれて…でもそのせいで矛先が紗夜に向いちゃって。転校してったんだけど。まさかこの街にいるなんて……」
「は、イジメ? でも、二人共相当強いって…「今はね」」
陽菜「昔の紗夜は弱ったんだよ。臆病で泣き虫だったの」
紗夜「陽菜!!」
陽菜「ゴメン。でもここまできたら言った方が良いと思って」
紗夜「っ!!」
陽菜「続けるね? 紗夜が空手を始めて強くなったのは小学三年生のとき。そのときにはもうアイツはいなかったんだけど、強くなったとはいえ、昔の思い出がトラウマになってた。だから紗夜は昔の弱い自分が大嫌いなの。それからかな? 誰に対しても敬語で話すようになったのは」
「なるほどな」
大体分かった。
西野「よぉ、さっきぶりだな?」
陽菜「!!」
紗夜「西野ぉ!!」
西野「ああ? 西野さんだろ?」
紗夜「ふざけないで!! ここで決着つけてやる!!」
西野「上等じゃねぇか……」
そして、紗夜さんが西野に殴り掛かる。ヤバい!!
「止めろぉおおおっ!!」
ボグシャアッ!!
思い切り振り抜かれた紗夜さんの拳は、西野ではなく俺の顔を撃ち抜いた。
紗夜「!?」
西野「ああ?」
陽菜「な、なんで……」
「ぐっ、……紗夜さん、逃げずに向き合え」
紗夜「向き合ったじゃない!! だから強くなるために必死で!!」
「今のお前のドコが強いんだ!!」
紗夜「なっ!!」
「くっ、自分の弱さから目を逸らさず……しっかりと向き合うんだ。自分の弱さを理解し向きあう、それが…本当に強いって事なんだ!! 昔の君は、確かに臆病だったかもしれない。けど、妹の為に……恐怖に立ち向かう勇気は持っていたんじゃないのか? それだったら、今の君より、昔の君のほうがずっと強い!!」
紗夜「!!」
陽菜「渚くん………」
西野「ハッ、くだらねぇこと言ってんな!!」ドガッ!!
渚「ぐあっ!!」
紗夜「渚くん!?」
陽菜「渚くん!!」
西野「ほら、邪魔者は片付けたぜ? かかってこいよ」
紗夜「許さない……!!」
紗夜さんは血が出るのではというほどに拳を握り締める。
「紗夜さん……、怒りに身を任せちゃダメだ!! その拳は、誰かを"守るため"に身に着けたんじゃないのか!!」
紗夜「!!」
そうだ……。私は、陽菜を守るために強くなろうとしたんだ。必死に鍛錬して、自分ではなく、大切な物を守るために。でも、いつの間にか……自分の弱さを隠す為の物に変わってしまっていたんだ。
なんで忘れちゃってたんだろう………。
陽菜「紗夜!!」
紗夜「陽菜………」ニコッ
陽菜「え?」
笑ってる?
紗夜「もう大丈夫」
西野「何だぁ? やるのかやらないのかハッキリしろ!」
紗夜「待たせて悪かったわね。勿論やる。でも、私のくだらないエゴを守るためじゃない……私の大切な物に振りかる火の粉を払うためにやる!! 行くよ!!」ダンッ!!
勢いよく西野に急接近する紗夜さん。拳を西野の顔目掛けて突きだす。
西野「甘いぜ!!」ガシッ!!
!! アイツ、あのパンチを掴んで止めやがった!!
すると紗夜さんは腕を振りほどき思いきり踵落としを放つ。
西野「こんな物!!」
西野は上を見上げ、降りてくる足をクロスさせた腕でガードの体勢を取る。
紗夜(釣かった!!)
紗夜さんは落とした足をフェイントに使い、視界から外れている逆の足で西野の大事な所をを蹴り上げた。
西野「グホオアッ!?」
股間を押さえて悶絶する西野。紗夜さんは追撃するような事はせずに、覚束ない足取りで逃げていく西野を見送った。
紗夜「渚くん大丈夫!?」
陽菜「そうだ!! 大丈夫!?」
「おう。何とか……紗夜さん思い切り殴り過ぎ……」
紗夜「ご、ゴメンナサイ……」
叱られた子供みたいにシュンする紗夜さん。俺はハァと息を吐くと紗夜さんの頭を優しく撫でる。
紗夜「え?」
「少しくらいは、言ってること分かってくれたみたいだね?」
紗夜「うん。昔はそうだったのに、いつの間にか忘れちゃってたみたい。情けない……渚くんは、自分の弱い所が嫌じゃないの?」
「そりゃあ嫌さ。けど、だからって目を背けてたら、いくら強くなっても、内側は成長しないから」
紗夜「そうなんだ……」
陽菜「!? 紗夜、言葉使い……」
紗夜「ああ、もう自分を隠すのは止めようかな?って。自分の弱さから目を逸らしちゃ駄目だって、教えてもらったし!」
「そっか……」
陽菜「あっ、もうこんな時間だ……。紗夜、帰ろう?」
紗夜「そうだね。渚くん家まで送るよ? 巻き込んで怪我させちゃったし」
「大丈夫だよ。気をつけてな?」
陽菜「うん。渚くん、その……紗夜を救ってくれてありがとう!!」
「俺は何もしてないよ。じゃあな?」
紗夜「またね?」
陽菜「じゃあね〜!!」
渚が帰ったあと、
紗夜「ねぇ、渚くん……強かったね。私達が今までに出会ったどの男性よりも……」
陽菜「うん。
紗夜「帰ろうか?」
陽菜「うん。あ〜あ……渚くんの彼女さんは幸せ者だなぁ……」
紗夜「ホントだよね? 出会うのが遅すぎたよ」
悔しそうな口調をしていたが、決して暗い顔はしていない仲良し姉妹の姿が、夕暮れの街に消えていった。
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