翌日の結ヶ丘、Liella!の部室には久しぶりにかのん先輩が足を運んでいた。
かのん「……冬毬ちゃん、お姉ちゃんのこと……夏美ちゃんが大好きなんだよね」
可可「はい。最初はスクールアイドルやる事を心配してたって言ってまシタけど……」
かのん「初めて目標を叶えて、笑顔を見せた夏美ちゃんの事が凄く嬉しかったって言ってたし……」
千砂都「たぶん冬毬ちゃんも、今年は心配してないんだと思うんだ。問題は、私たちが居なくなったあと。夏美ちゃんたちが3年生になったときに、笑って終われる保証があるのか?ってことだと思う」
かのん「まあ、結ヶ丘は新設校でわたしたちが1期生だから……他の学校と違ってわたしたちだけ強くてニューゲーム状態だからねぇ……」
すると、
ガラッ!!!
勢いよく部室の扉が開くと、額に青筋浮かべたマルガレーテが入って来てかのん先輩に詰め寄る。
マルガレーテ「やっぱりここにいた!なんであんたがここに居るのよ!敵の本部みたいな所でしょここは!!」
マルガレーテがかのん先輩の頬を引っ張って問い詰める。
かのん「敵って言うのやめようよ!同じスクールアイドルなんだよ〜!!」
反論するかのん先輩。一緒にやってきたみんなを敵だなどとは思いたくないし、思うことなどできない。
マルガレーテ「だからあんたと組むのは嫌だって言ってんのよ! そんな甘い考え!!「ねぇ」あ"あ"?!」
千砂都先輩に声をかけられ、マルガレーテは動きを止めてヤンキーの威圧のような声を出してから千砂都先輩を見る。
千砂都「……マルガレーテちゃんは、冬毬ちゃんの事どう思う?」
千砂都先輩の問に、マルガレーテはキョトンとするが、少し考え、
マルガレーテ「は?……そうね。少し思う所はあるけど、私たちのメンバーとしてちゃんと本気でLiella!と戦う気なら文句ないわ。あ……、そういえはさっき2年生の廊下を通った時に聞こえたけど、2年生がなにか話してたわよ?」
かのん・千砂都・可可「「「え?」」」
―――その頃、2年生の教室、
俺たちは夏美に、昨日冬毬ちゃんから渡された【夢ノート】を返した。
メイ「悪い。一応中身見た」
きな子「夏美ちゃんが、どれだけ挑戦して…」
四季「どれだけ諦めてきたか……」
夏美「……昨日、冬毬と話しましたの。今年はまだかのん先輩たちが居るし卒業した先輩も居ないから優勝する可能性は十分だと思うけど、居なくなった来年に私が笑って終われるのかが心配だと……」
メイ「まあ実際、あたしたちが先輩に勝ててるところなんて……思い当たらないし」
四季「私たちが最上級生になって優勝できるかなんて……」
きな子「そんなの、夢のまた夢な気がするっす……」
「後ろ向き過ぎやしねぇか……?」
皆にはちゃんとそれぞれの魅力があると思うけどな……。
ライカ「3人とも………」
陽菜「あはは………」
メイ「だって実際、スクールアイドルとしては……あたしは恋先輩、四季は千砂都先輩、きな子はかのん先輩の下位互換って感じだし……」
(メイ………ん?)
その時、教室の外から物音がした。渚がそっちを見ると、柱の影にオレンジ色の髪の毛が見えた。
(かのん先輩……か?)
気にはなるが、いまは夏美だ。
ライカ「でも、このノートを見た時、正直感動したわ」
夏美「感動……?」
きな子「そうっすよ! 夏美ちゃん…こんなにいっぱい今まで頑張ってきたんだって……!!」
2人の言葉に、夏美は信じられないと言う顔をする。
夏美「全部、失敗してきたんですのよ……?」
メイ「あたしは、対した挑戦もしないでくよくよしたことけっこうあったから、これ見て自分が恥ずかしくなった。夏美はスゲェよ! それに、昔のナギと似てる気がした」
四季「私も」
夏美「いや、ナギくんはちゃんと叶えられたんですの。私とは違うんですの……」
夏美の言葉に、「自分はそもそも対した挑戦すらしてこなかった」と、恥じるメイ。
四季も、小さい頃からずっと挑戦してきたと言う意味では俺と似てると言う。
それでも夏美は、叶わなかった自分と叶えた俺では違うと言うが、
「そうか?身長が必要とか、生まれ持ったもので決まってしまう物はともかく、科学者とかだったら、一回ダメでも、めげずに何年も何年も泥くさくやり続ければ……そこまでは行けなかったとしても、今頃ものすごい頭良かったかもしれないぜ?これだけやれるんだし。……何より俺でもこんなになるんだから」
メイ「そうだな。あのナギがこんなに成長するんだから夏美だったらとんでも無かっただろうな」
四季「持った才能は断然夏美ちゃんが上」
「自分で言った事実だけど、酷ぇなお前ら!!」
笑いが漏れる幼馴染。
「ったく……何より、そうやって辛い思いをした過去があるから、今こうして初めて成功して……心からの笑顔でいられるんだろ?雨上がりみたいにさ」
陽菜「《No Rain,No Rainbow》だね」
きな子「何すかそれ?」
四季「外国のことわざだよね。雨が降らなきゃ、虹は出ないって意味」
陽菜「さすが四季!物知り!」
きな子「っ! 素敵な言葉っすね〜!!」
夏美「みんな……」
「だからさ、冬毬ちゃんに大丈夫だってところ……みせてやろう」
俺たちが頷くと……
夏美「〜っ!! ですの!!」
―――学校終わり、冬毬ちゃんが帰宅するために電車を待っていると、
ピリリ
冬毬(ん?)
スマホが鳴り、画面を見る冬毬ちゃん。
冬毬(姉者……?)
そのメールには、とある場所へ来てくれとの文章と、目的地の地図が表示されていた。
―――そして数十分後、冬毬ちゃんがやって来た場所は牛久市の牛久シャトー。雨が降る中、冬毬ちゃんは来てくれた。
奥へと進んでいくと、噴水前広場に出る。すると噴水の前には、透明な雨合羽をイメージした衣装を着た2年生4人がいた。
冬毬「姉者、何ですか?こんなところに呼び出して……」
夏美「ありがとう。冬毬……私のことを心配してくれて、私の笑顔を好きだと言ってくれて……」
冬毬「……それは事実ですし」
夏美「でも、もう大丈夫。例え最後に泣くことになっても、この仲間と過ごした3年間は、夏美の宝物。決して暗い思い出になることは無いんですの!!」
冬毬「………」
夏美「たしかに、負けたら悔しくて泣くと思いますの。けど、その時は私といっしょに泣いてくれる仲間がいますの。お姉ちゃんが心から大切だと思える親友が、こんなにいるんですの!」
冬毬「姉者……」
夏美「だから、今ここから、夏美を見ててほしい!」
そして、四季と夏美たち4人は手を繋ぐ。
夏美「涙のあとの、あの虹のように!!」
夏美「オニナッツ〜!」
夏美・きな子・メイ・四季「「「「Song for all!!!」」」」
Liella!の先輩たちやマルガレーテが見守る中、雨が上がりの水たまりに、夕暮れの空と、4人の笑顔が映った。
― つづく ―
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