爪の甘い悪のカリスマ──にやたら甘い助手──と昼行灯ロボット転生者。 作:ダイコンハム・レンコーン
サプライズは突然に
悪のカリスマの朝は早い。朝というものは睡眠による記憶整理が完了したばかりの最も頭がすっきりとした状態であり、作戦立案、アイデアの捻出において貴重な時間である。
古臭い悪党は夜中にコソコソとそれを行うが、彼、ローマン・トーチウィックから言わせれば3流だ。朝に計画を立て、夜に実行。それこそが冴えたやり方なのだと言う。
そして今日、ローマン・トーチウィックは朝のシャワータイムで天才的な閃きを見つけた。彼は急いで助手のニオポリタンへと話をする。
「ニオ! 俺はついに気付いてしまった!」
「?」
悪のカリスマらしく薄暗い部屋の中、パリパリの白いジャケットと黒に赤いラインが一本入ったお気に入りの帽子で現れたローマンは、不思議そうな顔をしてフローズンヨーグルトを口にする助手の前にホワイトボードを用意する。
「口だけ達者なトーシロに金を払って失敗続きなら! その金を使って俺に忠実な部下を作ってしまえば良いと」
「!」
ここの所、この悪党のポートレイトは赤点、D -が並びに並んでいた。部下として雇い入れた下っ端も、チームRWBYと言う忌々しい小娘達にあっさりとのされてしまう。支給する黒いスーツとローマンが見繕った帽子もタダではないし汚れればクリーニングに出さなければならない。
それに今手を組んでいる協力者、シンダーの動向も怪しい。悪のカリスマは、悪の方向性の違いを感じていた。ローマンは負け犬になる気も、負ける側につく気もなかったが、もしもに備えて用意をする事に容赦はなかった。
しかし、助手のニオ、彼女の心中は穏やかではない、口元へ運びかけたフローズンヨーグルトは虚しく机に落下し、その目の色は文字通り白、茶色、黒と忙しなく変わる。
──もしかして、私、いらない子?
彼女は喋る事が出来ない、それが生まれによるものか、後天的なものかは不明だが、それでもその衝撃は伝わる物だろう。
「そんな悲しい顔をしないでくれ。別にニオの代わりになる訳じゃない。ニオは唯一無二だ」
「……!」
そしてそれを見抜き、かけて欲しい言葉をかけられるのが悪のカリスマ、ローマン・トーチウィックであった。
ニオは照れながらスプーンで溶けかけのフローズンヨーグルトをかき混ぜる。背が低い彼女の頭、ピンクとブラウンにセパレートされ、ホワイトのメッシュの入ったカラフルな髪がよく見える。そんないじらしい姿を優しい目で見ていたローマンは彼女の頭を撫で、気を取り直し、計画を立てていく。
「よし、早速裏のツテを使って手配する必要があるな」
悪のカリスマは、裏社会でも大きな力を持っている。数多の犯罪を成功させて来たローマン・トーチウィックと言う存在は、悪党にとってのいわば神、信奉者すら居るのだ。故に、その力をもってすれば準備など造作もない。
こうして、ローマン・トーチウィックの新たな舞台の幕が開けた。
──✳︎──
作業は思いの外早く進んだ。人型サイズのロボットには、多大な火力兵装を仕込み、高度な会話型インターフェイスを搭載し、各部にはダストと呼ばれる特殊な結晶体が組み込まれている。炎の力を持つ赤のダストと重力の力を持つ黒のダストを使用したバーニアなども取り付けられた。勿論、このダストを入手したのもローマンだ。どうやらチームRWBY全員と対峙したらしく、少し汚れた格好だったが。
機体のモチーフは騎士。相手に威圧感を与えるデザイン、甲冑のイメージを取り込んだそれは、ローマンとニオを守る堅牢な盾となり、小娘と後小僧どもを叩きのめす矛となるだろう。ローマンはその華やかな未来を想像し、ブルリと震えた。武者震いだろうか。
そして今、ローマンは完成した人型サイズ、騎士モチーフのロボットを前にニオとフローズンヨーグルトのコーンを突き合わせ、乾杯と完成祝いを慎ましやかに行っていた。ニオはどこか感慨深そうにロボットを眺めていた。
「短いようで長かった。ルビー・ローズに追いかけ回され、ワイス・シュニーに愉快な氷のオブジェにされかけ、ブレイク・ベラドンナはサルの小僧と囲んで叩いて来て、ヤン・シャオロンは
ローマンがそう語ると、ニオは何故か泣きそうになった。彼の労苦が報われるのだと、彼の輝かしい栄光にまた1ページが挟まれるのだと。
しかし。
「コードネーム、アトラシアン・ナイト00、起動!」
悪のカリスマですら
「……!」
その助手は勿論、予想だにしない出来事が──
『……あ? どこだ、ここは?』
──起きた。
思い付きなので続きは思い付いた時に書こうと思います。