爪の甘い悪のカリスマ──にやたら甘い助手──と昼行灯ロボット転生者。   作:ダイコンハム・レンコーン

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RWBY世界って2次創作に非常に向いているんじゃないかなと思う今日この頃です。


遷移と進化

「……厄介だな」

 

 ローマンは机に散らばった数枚の写真を見ながら呟いた。

 

 1枚は以前戦った新種のグリム、ゴルゴーン。そしてそれ以外の写真には、いずれも異なる姿形をしたグリムの姿があった。

 

「霧に変化するグリム。地面を穿孔するグリム。周囲のダストを活性状態にするグリム。……それに白いグリム」

 

 今の今まで発見されていなかった新種が次から次へと現れた。そんな情報がローマンの敷いた情報網に溢れ返っている。表裏問わず、ありとあらゆる被害が齎されたとも。

 

「いつからワイルドハントは本当の話になった? 誰か地獄の釜の蓋でも開いたのか? 今に黙示録がスキップでやって来るだろうな」

 

 彼が落ちるように腰掛けた椅子が軋む。それは彼の悲鳴の代弁か。少なくともローマンは今、笑えるような状況ではない。いつもなら不敵な笑みの1つや2つ浮かべるものだが、相手はグリム。謂わば自然や災害の類である。

 

 何をするにしても、これら未知のグリムがいる状況で計画を遂行するには困難が伴う。ローマンの知る限りの悪党は町の外から町の中へと活動の拠点を移した。悪党が都市部に飽和すれば、それだけハンターや警察の活動が活性化され、それも障害の1つとなる。

 

何故悪党はグリムを恐れるのか、何せ奴らは人の負の感情に惹かれやってくる、ある意味真っ当な善人よりも遥かに悪党の天敵である。

 

「内か外か……。その前に、馬鹿どもに裏切りの代償を払わせなければならないか。()()風情め」

 

 手元のクリップボードにあったのは、赤髪、仮面のファウナス。

 

「しかし、疲れたな」

 

 ローマンは、帽子の庇を落とし目を瞑る。周囲には、エナジードリンクの缶が規則正しく並んでいた。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

 ビーコンの昼も半ばを過ぎた頃、人の流れも落ち着き、ロボットはようやく話に興じる暇を得た。

 

『見慣れないグリムの依頼?』

「そうそう! 何かすっごく硬くてね、亀さんみたいなの!」

 

 紙皿に10段重ねのパンケーキを移しながら、彼はオレンジ髪の少女からある話を聞いている。

 

 内容は単純、ハンターとしての依頼の中に新種グリムを相手としたものが増えていると言う内容だった。ニオも、プラカードを持ち愛想を振り撒きながらも、耳は2人の方へ向けている。

 

『そりゃまた、お嬢ちゃんはどうやって倒したんだ?』

「地面を吹き飛ばしてひっくり返した後、皆で一斉攻撃!」

(見慣れないグリム……? もしかして、あの時みたいなグリムが大量に発生してる? どうして今に)

 

 まるで、赤潮のプランクトンが如く唐突に数を増やしたと言うグリム。もしその様な事が起こりうるとすれば、何が原因か。

 

 自然と言う物は限られたリソースを巧みに動かし成り立っている。人からすれば異常とも言える状態も、自然からすれば、それはどこからの皺寄せの整理をつけるだけに過ぎない。結局のところ、どこかに理由はあるという事だ。ニオは妙な胸騒ぎがした。

 

(──まるで、どこかから大量の()()でも手に入れたみたいに)

 

 グリムの生態には未知も多い。特にグリム発生のプロセスは過去の長い歴史の中でも様々な説が混在する未解決の案件だ。ただ、グリムが負の感情に惹き寄せられると言う習性から、一部の学者はグリムの増殖には負の感情が関係しているかもしれないと言う説も上がっている。

 

 ただ、急にそんな大量の負の感情が湧いて出る、なんて事はあるだろうか。戦争すら起きていないと言うのに。宇宙から負の感情が降り注いで来た、と言う方が余程自然な話だ。

 

『そういや、さっきからロッカーみたいなのが校舎から飛んでいってるんだが、ありゃなんだ? 新手のミサイル?』

「ん? あれはね。ドゥルルルルル、ダン! ロケット推進ロッカー! じゅるっ!」

『……まんま、だな』

 

 無駄に巧みなボイスドラムロールと目の前でワンタンが如く飲み込まれていくパンケーキには敢えて触れず、ロボットは校舎に突き立つ飛行機雲を指す。指で飛行機雲をなぞりながら、速度を見る。ロボットの中の演算機能が自ずと答えを出した。

 

(……ロッカーは人が入れる程度か。それをあんな風に飛ばせるロケットがあるなら便利だろうな)

 

 既にスラスターは搭載されているが、それ以外にも推進力があれば様々な状況に対応出来るとロボットは考えていた。彼の思考の中心は、相手を一瞬で捩じ伏せる『力』よりも、逃げにも攻めにも使える『速さ』に置かれている様だ。

 

「ねぇ店員さん、ホイップクリームある?」

『あるよ、はい』

「わ〜い! ありがとう……ふん!」

 

 文字通り()()()の彼から差し出されたホイップクリームのチューブを掻っ攫ったオレンジ髪の少女は、一瞬にしてホイップクリームの容器をグロテスクな音と共に空にした。桁違いの握力で一瞬にして絞り出したのだ。

 

『──追加でリエン(お金)、払うんだな?』

「えっ、金取るの?」

『いいか量を考えろ。無いなら身体で払ってもらうぞ?』

「……ウソ」

『女の敵、サイテー』

『プラカードに書くな書くな! ただのバイトだ!』

 

 ──しかし何故、彼と彼女は普通に話をしているのか。

 

 彼は騎士の姿をしたロボットである筈だ。ニオもまた、2色の髪にオッドアイと言う奇天烈な見た目である。しかし学生諸君はロールアイスとパンケーキに夢中だ。

 

(……にしても、これがお嬢ちゃんのセンブランス"幻影"ね。完全に姿を偽れるなんて、全く途方もねぇなあ。おじさんには着いてけないね)

 

 ニオはオーラが続く限り幻影を生み出す事が出来る。今のロボットは、特にこれと言った特徴もない褐色の大男として周囲には映っている。ニオは髪を黒く染め、眼鏡を掛けたやや野暮ったい少女の姿を演じていた。

 

 幻影は元の存在とかけ離れた存在に映そうとするとその分オーラの消耗が激しくなると彼は彼女から聞いていた為、見た目に注文はつけなかった。しかし仮初であっても人の身体を得られた事は、ロボットの孤独を大きく癒すきっかけとなっていた。

 

「まさか、私の体目当てでパンケーキを……」

『回りくどい! 誰がパンケーキで借金背負わせるんだ?! なるとしたら世紀のバカだ!』

『血も涙も無い』

『嬢ちゃんジョークか本気か分からないのはやめてくれ、後プラカードに書くなって言った筈だよな? レンタルなんだよそれ』

『面白い顔』

『はは〜ん、ワザとやってるな?』

 

 青い顔をして身を庇う少女、プラカードで会話する少女。そんな2人にタジタジになっている彼。どうやらこの世界は女子が強い世界らしい、そうロボットは痛感するのだった──

 

 それから、しばらくして。

 

「──申し訳ありません。ウチのノーラがご迷惑をおかけしたそうで……ホイップクリームの代金です」

『いや、あれは想定してなかった俺の落ち度だったんだがな。……でもありがとう。こう言うのもなんだが、アンタ、なにか苦労してそうな顔つきだな? ちゃんと寝てたりするか?』

「よく言われます。ちゃんと寝てはいますよ」

『睡眠は、大事だぞ』

「……はい」

 

 ──その後、ピンクのメッシュを入れた男子生徒が謝罪に現れ、ロボットはそんな彼の帰る後ろ姿を見ながら、改めてそう思ったそうな。

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