爪の甘い悪のカリスマ──にやたら甘い助手──と昼行灯ロボット転生者。   作:ダイコンハム・レンコーン

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忘れた頃にお出しするスタイル。


流行り物は忘れた頃に

『……暇だ』

 

 ロボットは、ローマンのアジトのソファーに溶けかかっていた。

 

 ローマンは悪のカリスマとして崇拝者すら居る存在だが、そのカリスマの大部分を担うのは計画の実行力にあると言える。どんな荒唐無稽な作戦であっても、ローマンの手に掛かれば出来てしまう。

 

 例えばそう、国中のダストを集めるなんて大言壮語も現実に変えるだろう。……ただ、そうした計画の実行力の裏には、ローマンによる属人化したワンマン作業が必須となる。作戦立案、準備、協力者の手配。ありとあらゆる情報を一つの頭に収めるからこそ、今日まで彼らは生き延びて来られたのだ。

 

『退屈で死にそう』

 

 溶け切ったロボットはついにソファーにうつ伏せになり、届く筈もない慟哭を垂れ流している。……そう、空いた時間はローマンとニオが戦闘訓練を行うのだ。ロボットに構っている時間は無い。

 

『……あの2人、思った以上に奥手で中々進まないのは誤算だった。あれじゃあ長めのメロドラマだ。訓練は見応えあるんだがな……』

 

 かと言って2人の間にちょっかいを出す無粋など、彼が嫌う最もの事だった。故に、孤独。

 

『……外に出るにも、この格好じゃあ望めやしないしなあ』

 

 ローブを着るだけでは無理があると感じていたロボットは、また新たな変装の手段を求めていた。

 

 ……ただ、その手段はかなり近くにある。ロボットも理解しているが、それをするのにはやや躊躇いを感じていた。その手段を持つ者は──

 

 ──ガチャリ。戸の開く音だ。

 

『ああ、お嬢ちゃんか』

「……」

 

 ソファーの影からひょこりと顔を出したロボットは、今しがた部屋に入って来たニオの姿を見上げる。

 

 普段はローマンに合わせてか、戦闘服と呼ぶにはやや着飾ったスタイルだったニオは今、ホットパンツにタンクトップの薄着姿。厚底ブーツを履いていない為、ただでさえ小柄な身体がより小柄に見える。そんな風だからか、胸に抱えたバケツの様な3色アイスのカップの大きさがより誇張されると言うもの。ロボットはやや引き気味に彼女と話す。

 

『……ああ、それ全部1人で食べる感じ?』

 

 ニオはキョトンとした顔で何の事もなく頷く。ロボットは機械の身でありながら胸焼けがしそうだった。

 

(訓練で疲れてるとは言えこりゃ……どうなんだ? 食べ過ぎたらその分オーラになったりするのか?)

 

 ニオはロボットに目線でソファーに座りたいと合図を送る。それをすぐ理解したロボットも、ソファーから起き上がり端に寄る。この潜伏期間の間、ニオがロボットに対し若干気安くなっているのは、こうする原因となった事件で彼がローマンと自身を助けた事と、ニオの修行に付き合っていた事が原因であった。

 修行とは具体的に「花」から始まる修行だが、果たして相手をモノに出来るのか、今日に至るまでの2人を見ていたロボットには甚だ疑問だった。口に出せばハッシュで突かれかねないので口にはしない。いつもの事ながら彼にとって無口は金である。

 

『なあお嬢ちゃん』

「?」

 

 白、赤、茶の3色アイスにパクつくニオに、ロボットは歯切れ悪く聞いてみる。

 

『その……このやたら黒いアジトも棺桶みたいで死にそうなくらい落ち着くんだが、偶には外に出たいなあ〜、なんてははっ! 無理だよな!』

 

 悪のカリスマ自身も若干使い辛いと感じる黒尽くめの部屋では、ロボットの好奇心を満たすには足りなかったらしい。ロボットの口からはつい要望が溢れ出す。

 

 するとニオは少し間を置くとアイスの蓋についた結露を指でなぞり──

 

『OK』

 

 と書いて返して来た。

 

 ロボットはこれに驚く。何せニオはローマン第一の人間であり、基本的にはローマンの忠臣である事は疑いようが無い。それこそローマンが滝から身を投げれば一瞬の逡巡もなく後を追いそうな危うさを彼が感じている程に。

 だからと、彼女がローマン無しに勝手に動く事を認める筈は無いだろうと考えていた。ロボットも流石に自身がローマンの所有()である事は理解していた為に、勝手に答えを出して日和っていたのだ。

 

『良いのか? ローマンがお冠になるかもしれないぞ?』

 

 すると、顎に指を当て少し考えたニオは、ロボットの手を取り、指文字を描く。

 

『感謝はしてるから』

 

 ……どうやら、ロボットが思っていたよりも悪のカリスマの助手は冷血ではなかったらしい。彼女はロボットへの恩義を精算するつもりだった。

 案外義理堅いな、と彼は思いつつ、もしかすれば、ローマンとニオの間には大きな恩があるのだろうか、と考える。

 

(非情、無慈悲、残虐……どれも悪の類義語にはなり得ない、か)

 

 人を語るのに2、3文字の言葉では少な過ぎると感じる彼であった。

 

 勿論、手に入れたチャンスをむざむざ逃すロボットでは無い。この期に乗じ、外の世界をより知ることが出来れば、自分がここに居る意味を理解する助けになると彼は意気込む。

 

 そう、ニオのセンブランスがあれば、ロボットであろうと問題無く外出出来るのだ。

 

『──閃いた!』

「……?」

 

 ロボットは、ニオの抱えるアイスのカップを見ながら手を叩く。彼女は1人盛り上がるロボットを尻目にアイスを食べ続ける。

 

『情報収集と小銭稼ぎを兼ねた名案だ!』

 

 渡されたアイスの()()蓋と睨めっこし、ロボットは部屋の外へと飛び出した。

 

 その名案とは、冷たく、甘い──

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 ビーコンアカデミーに、昼が来た。

 

 食堂に広々とした広場、至る所に未来のハンター達が友と談笑し、子供である時間を楽しんでいる。

 

 そんな中、ビーコンアカデミーの門前、噴水広場には何やら人だかりが出来ていた。

 

『新装開店、全品50%OFF』

 

 ニコニコと笑う()()の店員が掲げるプラカードに刻まれた文言は、人々を引き寄せる魅力でもあるのだろうか。

 

 今もまた、騒ぎを聞き付けた生徒が嬉々と語る。

 

「ねぇワイス! 広場にアイス屋さんが来てるんだって!」

 

 タン、タンと跳ねる足取りでやって来た少女は腕を組み人垣を見据える少女に話しかける。

 

「……アイス屋? 待ってくださいただのアイスで……あの、騒ぎですの?」

 

 その話を聞いた少女は驚きを隠さない。高貴な身でありながら思わず人混みを指差す程だ。その少女ならば、それこそ飽きるまで食べられそうなモノである事も驚きに拍車をかけた。勿論、普通の暮らしぶりをしていても食うのに困るモノではない。

 

 しかし、少女は言う。違う、と。

 

「いやいやいや! ただのアイスじゃなくて──」

 

 そのアイス屋の屋台にはこう書かれていた。

 

 ──つめたい()()()()()()とふわふわ()()()()()のお店、『ロボナッテ』と。




ビーコンアカデミーのセキュリティレベルが気になる今日この頃。

ps.この話を書き始めた後にRWBYOCと言う物を知ってネタ被り起こしてないか気になって来た今日この頃。経歴アトラシアン・ナイトのオリキャラとか居たりするのか気になって夜しか眠れません。

psのps.誤字修正感謝
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