既に、ゾーラの里とリトの村が陥落したとの報告を受けた。
余りにも早すぎるその手際に、アストルは歓喜と、そして僅かばかりの恐怖を覚えていた。
黄金のライネル達は、あれ程の力を持ちながらも、ガノンへの忠誠を微塵も持っていなかった。
ライネル達が黄金まで辿り着いたのは、一から十まで全て、個々の才能と努力によるものであり、そこにガノンの恩寵は微塵たりとも入り込んでいなかったのだ。
一万年という遥かに長い歳月の間、何もして来なかったというガノンに、何の敬意を払えば良いのか?
助力を願い出た時に素気なくそう返されたのに、アストルは愕然とした。
『ハイラルをこの手に収めたいと思わないのか?』
手応えのある奴が居ないのならば、既に手中にあるのと何が変わらない?
そう返されて、更に愕然とする。
退魔の剣士が覚醒したとして、それがこの黄金のライネルより強いとしても、流石に複数同時に相手取る事は出来ないだろう。
封印の巫女が覚醒したとしても、ガノンの恩寵をその身に微塵も宿していないこのライネル達には、為す術ないだろう。
これ以上は時間の無駄だと話を切り上げられる直前、アストルは思いついた。
『も、もし、あなた達がハイラルを制圧したのならば、復活したガノンと戦わせてあげましょう!』
それには、ライネル達も食いついた……のだが。
各地へと散っていった四匹の黄金のライネルは、一日経たずとして四種族の拠点を制圧しつつある。
「まさか……まさか、そんな事はありませんよね?」
ガノンより強いなど、あってたまるものか。
……あってたまるものか。
*
デスマウンテン。
そこはゴロン族が古くから住まう土地であり、そこでしか採れない良質な鉱石が産出される、ハイラル唯一の火山。
また、上位のライネルが使う武器の素材も、そのデスマウンテンの特殊な鉱石を元にしたものであった。
その為に、ゴロン族とライネル達は古くから争い続けてきた。
ハイリアに住まう種族の中でも、屈強な肉体を持つゴロン族。しかし、四つ足と腕を併せ持つ巨体のライネルには流石に及ばない。
だがそのライネル達に、ゴロン族は幾度となく打ち勝ってきていた。
その最大の理由は、そのデスマウンテンの環境に依るものだ。
ライネルの食性は、ボコブリンやモリブリンと同じく、肉食寄りの雑食だ。だがデスマウンテンには、その糧となる獲物が余り存在しない。特に鉱石が採掘出来るような灼熱極まる場所においては全く存在しなかったし、持ち運んだとしても気付けば炭化している程だ。
そして、鉱石を主食とするゴロン族を殺したとしても、その肉体は食す事も出来ず、まずライネル達にとっては持久戦が不可能だった。
加えて、高低差の激しいデスマウンテンにおいて、ライネルという巨体は自由に動く事が出来ない。
体を丸めて跳ねたりする事も出来るゴロン族より機動力も悪ければ、その硬質な肉体には矢も効きづらい。鉱石を食すゴロン族には雷も効き目が薄い。炎も言わずもがな。爆弾矢も持ち運んだ瞬間に爆発する有様であり、氷の矢もこの暑さにやられてすぐに活性を失ってしまう。
だからこそ、そんな数多の環境的な不利を押し退けて金属を採掘出来るようなライネルのみが最終的に優れた武器を作り出す事が出来るのであり、もしゴロン族が存在しなかったら、全てのライネルがそんな武器を振るっているという地獄絵図がハイラル全土で繰り広げられていたのかもしれない。
別に自分達より強い者が居る訳でもない。ライネルとしてより種の繁栄を望んでいる訳でもない。ましてや、一万年もの間何も音沙汰の無い神の復讐になど何もそそられない。
だから、ハイラルを制圧する理由などどこにもない。
ゴロン族が居なくなる事で、どのライネルも好きに最上級の武器を作れるようになる事に関しては、良い事ではないとさえ感じる。
だが、神獣を動かせなくする事は、その繰り手を滅する事は、ハイラルの制圧には必須なのだと言う。
その後にガノンとの対決が出来るのならば、許容するか、と黄金のライネル達は決めていた。
「どぉぉりゃぁっ!!」
ダルケルは、青髪のライネルの大剣を真正面から受け止めると、そのまま脇腹に拳を叩き込んだ。
「ゲブッ!?」
ゴロン族の中でも指折りの怪力から繰り出される、その威力。
それはライネルの肋骨をぼきぼきと砕き、膝を付かせるに値する。
そして、目の前に降りてきたその頭。血を吐きながらも必死にダルケルを睨みつけるその青い顔は、目の前でぐるぐると振り回される巨岩砕きに更に青ざめた。
ドヂャァッ!!
そうして、ダルケルはそのライネルに襲われていたゴロン族の方を向いた。
「た、助かったゴロ!」
「腰抜かしてないでさっさと起きな! 本番はここからだぞ……!」
遠くから悠々と歩いて来るその黄金のライネルは同族を屠ろうとも、大して気にした様子を見せていなかった。
そんな目立つ色をしたそのライネルは、白髪や、白銀とすら、比べ物にならない強さを感じさせた。
見かけ倒しではない、別格の迫力。
そのライネルは、ダルケルを見つけると背負っていた大剣をそこで初めて手に持った。
「……アレは俺がやる。お前達は他の奴らを助けてやってくれ」
「は、はいゴロ」
「早く!」
どどっ、どどっ、どがらっ、どがらっ!!
軽い助走から一気に駆けて来る黄金のライネルに、ダルケルは急かしながら前へと出た。
銅に似た、鈍い茶色をした金棒。高く掲げられたそれは白髪、白銀のライネルが持つそれと同等なはずなのに、このライネルが振るおうとするそれは、どうしても同じだとは思えなかった。
受け止め……られないな、これは。
ダルケルの目の前に到達したライネルが大剣を振り下ろす、が。
ガインッ!!
突如発生した赤いオーラに大剣が弾かれる。
黄金のライネルの顔を一瞬驚愕させるも、そのまま反動で横殴りに変えて来る。
「うおっ!!」
跳んで躱せば、大剣を振り切った姿勢から体当たりをしてきて、吹き飛ばされた。
ごんっ、ごん!!
ボールのように一度、二度と跳ねながら着地して、思わず口に出た。
「ちったぁ固まってくれよ……」
他のゴロン族が持たない力を初めて見せても、一瞬で落ち着きやがった。
そして、無理な姿勢からの体当たりでも、この俺が簡単に弾き飛ばされた。更に、オーラ越しでも鼓膜が破れるかと思うほどの威力はこの巨岩砕きでも受け止められそうにはない。
万一食らってしまったら、この体は粉々に砕け散るだろうな……。
白銀のライネルとも打ち合えるってのによ、こいつは明らかに俺のパワーを上回っている。
殴っても、この青髪のようにくたばってくれるようにも思えねえ。
なら、どうするべきか……。大剣を両手で持ち直す黄金のライネルも、絶対的な防御を持つ自身に対して考えているようだった。
数瞬の空白。その後、またそれぞれ得物を構えた。
大剣を肩に担ぐダルケルに対し、ライネルは再び大剣を高く掲げる。
「砕けるか試してみるってか? やってみろよこの野郎!」
ぐるんぐるんと巨岩砕きを回しながら、ダルケルは待ち構える。
もしかしたら何か変化させてくるかと警戒しながらも、再びそのまま叩きつけて来た。
赤いオーラで身を守りながら、ダルケルは巨岩砕きをその脚へと叩き込もうとし、しかしそれは弾かれると同時に空を切った。
弾かれる勢いをもう完全に利用してやがるっ!
ライネルは、高く跳んでいた。再び、全体重を乗せて大剣を掲げて。
「やってみろやぁ!」
ダルケルは叫びながら再び赤いオーラを纏う。
ギィンッッ!!
全く、変わらず、ライネルの攻撃は弾かれた。大剣はライネルの手をすっぽ抜け、空高く舞い上がる。
だが、その威力はダルケルを覆うオーラ越しに、地面を一気に陥没させ。
「おわっ、とっ、くそっ」
反撃に巨岩砕きを振るう事も許さなかった。
うおんっ、うおんっ、とその重量にふさわしい音を立てながら落ちて来る獣神の大剣。
それを難なく掴み取ると、ライネルは一度距離を取り、そしてどうしてか肩を竦めた。
面倒臭げに息を吐き、大剣を肩に担ぎ直し。一度周りを見渡すその姿。
「なんだてめぇ……?」
それは、ダルケルが絶対的な防御を持っていても、大して問題はない。面倒臭いだけだと思われているような。
なら、先にさっさと他のゴロン族を始末するかと言わんばかり。
「させっかよぉ!」
今度はダルケルから駆けた。赤いオーラ、その絶対的な防御を纏いながら、巨岩砕きに勢いを加えながら。
それに対しライネルは大剣を掲げて、ダルケルが目の前に来るその直前に、地面に叩きつけた。
「なっ!?」
その衝撃で、オーラを纏いながらも、ダルケルは宙へと跳ね上がった。そしてすかさず、ライネルはダルケルを更に宙へと打ち上げて。
「あっ、このっ、クソッ!?」
意図を理解した時には、もう遅かった。
ライネルは降って来るダルケルを、全身を回転させながら待ち構えて。
ガァァンッッ!!
遥か遠くへと打ち飛ばした。
「うおああああぁぁぁぁ…………」
一気に遠くへとゴロン族が点となっていくその感触には、多少なりとも快感があった。
遠くのマグマへ、ぼちゃんと落ちたそのゴロン族の首領。
そこから這い出してくるまでには、きっとかなりの時間が必要だろう。
はあ、と黄金のライネルは再び溜息を吐いた。
そうなる事位、予想出来なかったのか?
もう少し、真っ当な抵抗を僅かながらでも期待していたライネルはつまらない顔を隠さなかった。
また目の前を見れば、ゴロン族達が体を震わせながらも歯向かおうとしてきている。
数人掛かりで他のライネルも一匹二匹と屠ってはいるようだが。
「ダルケル様が戻るまで、持ち堪えるんだゴロ!!」
一人のゴロン族が奮い立たせるように、声を上げて。石打ちを振り被って来るのに対し。
べぢゃっ。
ライネルはそれを、片腕で石打ちごと叩き潰した。
「え、え……?」
軽く振り下ろしただけなのに?
こつ、こつ。
ぐしゃ、べきゃ。
大剣をゆっくりと持ち上げ、叩き潰したゴロン族を踏みつけながら。
残りも潰そうと歩いて来る黄金のライネルは面倒臭い顔を隠さない。
そんなライネルの陰に入ってしまおうとも、残りのゴロン族はもう動けなかった。
*
「く、くそ、やっとだ、皆、持ち堪えていてくれよ……!」
ダルケルがマグマから這い上がってきた頃にはしかし、ゴロンシティはもう既に瓦礫の山と化していた。
先代の首領の顔を象った石像までもが見るも無惨に砕かれており。
また、魔物達は既に勝鬨を上げていて、掲げる槍には生首が突き刺さってもいた。
「お……あ……」
そして、黄金のライネルはやっと這い上がってきたダルケルに対し、待ち構えるかのような位置に立って、嘲笑の目で見ていた。
「き、きさまらああああああああああ!!」
吼えながら、ダルケルは黄金のライネルに向かって一心不乱に駆けていく。
逆上した頭には黄金のライネルしか見えておらず、しかし幾ら近付こうとも、ライネルは背負った大剣を手に持つ雰囲気すら見せない。
それが何を意味するのか、理解しないままに。
唐突に横から何かが突っ込んできた。
「あがっ、ぐっ!?」
その正体は、大剣を叩きつけて来た別のライネル。
咄嗟に赤いオーラで身を守るものの、ゴロゴロと転がって、窪みに嵌る。
「あ、ちくしょう…………?」
体を起こせば、その窪みがまるで誂えられたようなものであるのに気付き。
嫌な予感がして周りを見渡せば、四方八方からライネルが歩み寄ってきていた。
こつ、こつ。こつ、こつ。
「あ、えっと……? いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、……」
その誰もが、獣王、獣神の大剣を手に持って。
そして、黄金のライネルも大剣を取り出しながら、嘲笑を隠さずゆったりと歩んできた。
「ろく……。う、あ、あ、ああ」
こつ、こつ、こつ、こつ。
「グルゥ?」
さて。貴様のその防御は、いつまで持ち堪えられるのかな?
こつ、こつ。
こつ。
ダルケルの周りを取り囲んだライネル達は、同胞を少なからず殺された怒りの表情から、また最後の馳走に愉悦の表情までの多種多様な顔をしてダルケルを見下ろしており。
「あ、あ……」
そんな様子に、ダルケルはがくがくと震えながら巨岩砕きも放って、赤いオーラを纏って蹲るしか出来なかった。
「ゴルルッ」
そして、黄金のライネルが命令をすれば。
全員が大剣を振りかぶり、そのオーラが壊れるまで叩きつけ始めた。
A. 囲んで諦めるまで叩きつけ続けます。
リンクに託された英傑の力は制限付きだけど、多分本来は制限なしだよなーっての考えたら、ダルケルがクソキャラになってしまったその末路。
面倒臭いボスキャラは後回しにして、雑魚を先に掃除する。真に正しい攻略方法ですね。
Q. 黄金のライネル4体と厄災ガノン、どっちが強い?
A. 察しましょう。
しかも、黙示録のプレイアブルとしての厄災ガノンって、自分はあんまり使ってないけどかなり弱い方って聞いてます。
因みに、マスターソード持ちのリンクが1.5黄金ライネルくらいの想定。
参戦していなかったら、全てが終わった後にリンクに一体ずつ正々堂々と戦いを挑んで満足の内に死んでいくんじゃないかな。
構想が出来てたから1日でこんな5000文字も書き上げちゃったけど、資格試験1週間前なんですよね。
現実逃避ってやつです。
黄金のライネル
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英傑未満
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英傑と同等
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英傑より強くリンクより弱い
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リンクと同等
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リンクより強い