ライネル快進撃!!   作:ムラムリ

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オリ主のタグ入れてなかったけど、流石に入れた方が良くなってきたかもしれない。



閑話

 灼熱の下ですぐに乾いた血をぽりぽりと爪で剥がしながら歩いていると、まだ昼間だというのに十匹以上のキースが飛んできた。

『……討伐は、完了したのですか?』

 アストルとやらが操っているのだろう。頭に直接入ってくるような言葉に、ライネルは無言で屠った首を見せた。

 喜ぶ声でも上げるかと思いきや、返って来たのは少しの沈黙と。

『……まさか、本当に一日で全てを制圧してしまうとは』

 畏怖の声だった。

 それで? ガノンはいつ頃復活するんだ?

 聞けば、アストルは答えた。

『これから一つ先の満月の日です。その日の月は、真っ赤に染まる事でしょう』

 ふぅん。前聞いた時と変わらないが。

 別に殺したからと言って早まる訳じゃないんだな。

 そのつもりだったんだが。

『……封印の巫女も殺しては頂けないでしょうか? 時の勇者もまだ覚醒していないですが、きっとハイラル城に居る誰かかと思いますので』

 図々しく注文してくるアストルに対し、ライネルは素気なく堪えた。

 嫌なこった。

 ガノンは、最終的には封印の巫女が居ないと殺す事が出来ない。それ位は知っている。

 勝ったとしても、延々と復活し続けるのを殺し続けるのなんて、やりたくもねえ。

 時の勇者も、覚醒する前に殺すだとか、そんなつまらない事を誰がするか。

 加えて、城攻めなんて事もしたくない。

 自分達なら出来るだろうが、あんなデカい城に攻め込んだとして、絶対に誰かは犠牲になる。罠に嵌ったりだとか、瓦礫に押し潰されたりだとか。

 そんな死に様は御免だ。

『…………分かりました』

 他の黄金も、同じように答えたのだろう。

『最後に。

 ガノンが復活する数日前に、またお伺いします。どこを戦場にするかなど、打ち合せたいと思いますので』

 そう言うと、キース達は腰に戻そうとした首を奪って一方的に飛び去っていった。

 日の下で飛ばされ続けたからだろうか。飛び方は既に力なく、あのアストルの元に辿り着いたらそのまま死にそうだった。

「……その時が、アストルの最期だな」

 アストルも、ガノンの脅威となる俺達を殺そうとしてくるだろうから。

 

*

 

 水辺まで着いて、体を洗う。

 こびりついた血と砂を落として、それから防具と武器の手入れを。

 適当に獲物を仕留めて、空腹を満たしながら休息を取る。

 別に大した疲労でもないが、連れて来た同族達はまだ戦っている事だろう。戻って来るのを待つ事にしていた。

 

 ただ待つのも性に合わず、そこらの木を一本刈って矢の棒の部分をひたすらに作っていれば、日が暮れてくる。

 火をくべて、それを続ける。

 ちまちま、ちまちまと。

 大剣なんぞは、こんな作業は性に合わないと言って下っ端の頃でもさぼってばかりだったが、自分としては時折、暇潰し程度にやるのならば、こういう作業は好きだった。

 槍はいつまで経とうとも顔色を変えずに、寝食も忘れて続けている事もあった。

 弓は気付いたら全く違うものを作っていて、何度も拳骨を食らっていた。

 仲が良いのは確かだ。ただのライネルだった頃からの腐れ縁でもあり、互いの事は互いが一番知っている。だからと言って、もしこの遠征で誰かが殺されたとしても、そう悲しみはしないだろう。

 寧ろ、そこまで強い存在が居たのならば、次の挑戦者となろうと我先にとすっ飛んでいくだろう。

 黄金達は、そういう関係だった。

 

 騒めきが聞こえて来て、作った棒を矢筒に入れるだけ入れ込んだ。残ったのは誰かに持たせるとして、立ち上がる。

 ライネル達はこちらに寄って来て、他の魔物達はそのまま元々の住処へと帰っていく。

 大漁だったようで、武器や防具、光り物などを手にしている魔物達が多い。

 モリブリンなどはゲルド族を生かしたまま肩に担いでいたりもした。

 ……相変わらず、下衆な種族だ。

「どうだった?」

 先頭を務めている白に聞いた。

「赤が五匹。青が二匹。白が二匹、白銀が一匹の損害でした」

「白銀?」

「最後の最後に、御殿を崩されて、その下敷きに」

 ……あいつ、弱者を弄ぶの好きだったからなあ。

「……で、何か臭いんだが」

 想像はつくが、聞いた。すると、その臭いを醸し出す当ライネル達が前に出て来て。

「本当に助かりました! 貴方様がモルドラジークを殺して下さらなかったら消化されて……」

 近寄ってくるのを思わず手で止めて、叫んだ。

「良いからさっさと水浴びろ! 臭いんだよ!」

「はっ、はい!」

「全く……」

 水に走っていくライネル達を眺めていると、目の前の白が何かを取り出して、渡して来た。

「あ、土産です。好きだと仰っていたので」

 モルドラジークの肝だった。

「ああ。どうも」

 半分程を千切ってそのまま口に入れ、噛み砕く。

 そしてもう半分を白に返した。

「ん」

「え、あ、ありがとうございます」

 食え。

「あ、はい。…………んぐっ、げえええっ!!??」

 そう、それが見たかったんだ。

 こちらに吐かないように、咄嗟に横を向いて。

 飲み込んでから、言った。

「俺も最初は吐いたもんさ。懐かしいなあ」

 変わり者だった年長者のモルドラジーク狩りに付き合った時の事を思い出しながら。

 水を何度も飲むその白を眺めながら、残り同胞達に言った。

「あ、俺はもう慣れてるからそういう事にはならないんだけどな。

 あいつ、明日辺りから三日三晩、とんでもない事になるから気をつけろよな。

 俺はあの時は、この近くの馬の群れを使ってどうにかした」

 おいおい、そんな目で見るなよ。お前達にも食わせてやろうか?

 

*

 

 改めて帰路につく途中、その白が聞いて来た。

「僕はその……正直、ガノンの恩恵も良いって思ったりもするんですけど、どうして貴方はそこまで嫌うんですか?」

「いや、毛嫌いまではしてない。あのアストルとの会話でそう思われていたのか?

 …………。

 そうだな、確かに死んでも生き返る事が出来るってのが、本当なら結構唆られるところもなくはない。

 赤い月が訪れる度に、同じ黄金達と何度でも殺し合いが出来る訳だしな」

 想像しただけで心が沸き踊る。

「だがな……。そうして生き返った俺は、本当に元のままなのか? って思う訳だ。

 黄金の俺達は、このハイラルでも最強だ。だが、それでも俺達は高尚な訳じゃない。どっかのお伽噺とかのように、死後もその魂とやらが生き続けるとか、そういう事はきっと無い。

 そう考えるとな……、肉体から作り直されたとして、そこに俺らしさがきちんとあったとしても、それは俺じゃないのではないか? って思ってしまう訳だ」

「……修理して使い続けた武器が、気付いたら元の武器の素材を一つも使わなくなっていたような?」

 そう。その賢さを、俺は買っている訳だ。

 だから白銀をも置いておいて、お前を先頭に任命した訳だしな。

「似たようなもんだな。

 要するに、何が言いたいかって言うと、俺の体は俺だけのものだって事だ。

 長年培って来た記憶も、経験も、技量も、全て俺だけのものだ。

 だが生き返ると言っても、一度でも生き返ったら、もう俺の体は俺のものじゃない。ガノンのものだ。その時点で、俺の全てはもう借り物になってしまう。

 俺は、そう考えているし、俺の体が借り物になってしまうなど、許したくはない。

 それに……ガノンのものになるっていうその境界がどこにあるかも分からないしな」

 他にも色々理由はあったりするが、大部分としてはそんなところだ。

 白はじっと考えてから、言った。

「……分かりました。

 では、僕達がもし、ガノンの下に降ったら、どうします?」

 後ろからは、白が質問を始めてからずっと緊張した空気が漂っている。

 そうやって物怖じしないところも買っているんだよ、俺は。

 それに白がその質問をしたのは、後ろの同胞達のその空気を感じながらの、ふざけ半分だ。

 その証拠に顔が笑っている。

 俺もそれに応える事にした。

「別に俺はお前達の保護者ではないし、だから引き止めるつもりはないがな。

 ただ、黄金の俺達は、これからガノンに戦いを挑もうとしている。

 分かるか? 俺達はガノンの敵な訳で、ガノンに降ったお前も敵な訳だ。

 それに生き返るって分かってるなら容赦はしねえ。

 最初こそは多少情けを掛けて早く楽にしてやるかもしれないがな。飽きて来たら気をつけろよ?

 俺達がずっと遊べる、どれだけ壊しても元通りになる玩具を手に入れたらどうなるか……それをちゃーんと理解して、覚悟した上で、降れよ?」

「それは……楽しみですねえ」

「楽しみだよなあ」

 凍りついた空気。

 前を向いて、互いに笑った顔を後ろに見せないように。

 それでも、体が震えるのは堪えきれそうになかった。

「…………体が火照ってきたんですけど、この後付き合って貰えます?」

「……流石に調子に乗るなよ」

 

*

 

*

 

 翌日。

 アストルは瓦礫と化した、その各地に赴いていた。

「…………あの者達を、生かしてはおけぬ」

 そう呟くと。

「ガノンよ、ガノン。

 我等に力を与え給え。

 道半ばにして倒れ伏した哀れな同胞達に、再びの鼓動を」

 ぼたり、ぼたりと。

 溢れる厄災のエネルギーが、アストルの身から魔物の死体へと流れていく。

「ガノンよ、ガノン。

 我等が在るべき未来の為に。

 運命に抗う愚か者共に、裁きの厄災を」

 死体を覆い尽くしたそのエネルギー。

 程なくして、その体はむくりと起き上がり。

「ガノンよ、ガノン! ガノンよ、ガノン! 我等が唯一の絶対神よ!

 我等の絶対なる勝利の為に!

 無礼な背徳者共へ、その怨嗟の矛先を!」

 アストルは、手にした四つの首も空へと掲げて、喉が裂ける程に勝利を願った。




お願い、死なないでアストル! あんたが今ここで倒れたら、黒いガーディアンやガノンとの約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、ライネルに勝てるんだから!

次回、「アストル死す」。デュエルスタンバイ!

ライネルをいきなり喋らせたけど、
狼の研究の本を読んでいたら、狼とカラスは数十の言葉を扱って意思疎通をするっていう研究結果があるっていうのを見てからは、作中で唸り声とかしか出してなくても普通に言葉を持っている、っていうのに肯定的になっている。
それ以前だったら多分無理矢理にでも喋らせていなかったか、この部分は書いていなかったか。

さーて、来週のアストルさんは!

  • 焼き尽くされる
  • 爆死
  • 微塵切り
  • ミンチ
  • 輪切り
  • 全部
  • その他
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