唐突に各地に現れた黄金のライネルがそれぞれの長を、神獣の繰り手候補達を容易く屠っていった。
たった一日で、ハイラル王家が何も認知する間もなく、四つの種族が壊滅させられた。
僅かに生き残った民達から伝えられたその事実はハイラル王家にとっては酷く重く、しかし、それ以降そのライネル達はどこにも姿を現さなかった。
存在自体は認知されていたが、今までは大して動く事もなかった。それどころか、それに連なるライネル達は基本こちらから手を出さなければ目視されても襲いかかっては来なかった程に温厚だった。それなのに何故。
やはりガノンの復活が近いからなのか。
しかし、活発に動き回る魔物達の中でライネルの存在は黄金でなくとも殆ど認知されなくなっており。
ガノンにとって最も潰したいであろうハイラル城には、そのライネル達が姿を表す事もなく。
更に、これから動くであろうと予想されていたイーガ団達も全く動きを見せず。
不可解な事が多過ぎる中、封印の巫女はその力を目覚めさせようと必死に努力し続けて、しかしそれが実を結ぶ気配も未だない。
せめて退魔の剣士だけは、と数打ちゃ当たる戦法で何人も迷いの森へと送れば、それは辛うじて見つかった。
しかし……唐突に活動を見せた黄金のライネル達に関しては、デクの樹さまでもその目的が何なのか、分かる事はなかった。
散々苦しめられて来たウルボザを難なく屠り、その直後にモルドラジークを素手で潰した様を見て、イーガ団が酷く怖気付いたのにも。
ライネル達の目的がガノンと戦う事だとも。
何も分からないままに時間だけが過ぎていった。
*
満月から新月へと、そして新月から満月へと成る、その数日前の夜。
昼頃に、今晩向かいますとキースを通じて連絡が来た時には、黄金のライネル達は少しばかりの期待をしていた。
口調からしても、ガノンと戦いたいと願う自分達を討伐する気を隠せておらず。
そわそわと、落ち着きを見せない黄金の四匹。
ただ、準備はいつだって出来ていた。
防具はもとより、片手剣と盾、それから槍は、入念に研がれて欠けの一つもない。
刃を持たない大剣も、内側から皹が入っていないかなどを毎日のように確かめてある。
弓の胴体はデスマウンテンの金属を板にして、何枚も貼り合わせたもの。人族の鎧など意味を成さない威力と精密さを併せ持つその弓は、正にライネルの知恵の結晶と言って過言ではない。
弦を外して、その板の一枚一枚に指を滑らせ、軽く叩き。再び弦を充てがう時の感触にも入念に意識を割く。
弓の弦もまた、そのデスマウンテンの金属を細い糸として、それを至極丁寧に束ねたものだ。とりわけ、特別な弓を使うライネルは、弓矢に関する事には全て自分だけで賄っていた。
一つ一つ作られたその金属の矢は、その奔放な性格とは裏腹に、矢尻から矢羽まで、間近で見ても全く差異を見いだせない程だった。
しかし。
片手剣のライネルは、落ち着かないように髭を幾度となく触る。
ウルボザにすっぱりと切られたその髭は、まだ以前までのように伸び切っていなかった。
別に不恰好ではない程度ではあるが、いつもきちっと身なりを整えていれば、その違和感はどうにも拭えない。
それに、傍迷惑なモルドラジークを殺す為に、純粋に武術だけを競っていた戦いを切り上げてしまった事は、今でも少しばかり惜しかったと思い返す程だった。
あのアストルとやらが、どのように自分達を屠ろうとしているのか、それは余り具体的には想像出来ない。
卑怯な手も沢山使ってくるだろうし、きっと、これまでの死者を蘇らせる……あの長達の死体も有効活用してくるのではないか、とまでは思うが。
死ぬ時は、自分を実力で上回る者の手に掛かって、全力を絞り尽くした上で死にたい。
黄金達に共通するその思いは、そんな卑怯な手に弄ばれて死んでたまるものかと、警戒を若干ながらも強くさせていた。
「……別に居ても良いが、巻き込まれても知らんぞ」
ゲルドの街の攻略において先頭を務めた白から、他の腕利き達も、その黄金達に連なっている。
三日三晩精を出し続けて、若干痩せたその白が答えた。
「そもそも、僕達の誰も、黄金の貴方達が全力で戦っていたのを見た事がないんですよ。
この前だって、こっちはモルドラジークに手一杯でしたし」
そう答える白は、好奇心で目をキラキラとさせていた。
「……本気になれると良いんだがな」
髭を弄りながら答える。
何を用意してくるのか知らんが、ここで出て来たのが本当に卑怯なだけで大したものでなかったら、一万年間封印されていただけのガノンとやらも高が知れてしまう。
それはがっかりするから、止して欲しかった。
日が暮れていく、この時間帯。
地平線をじっと見続けていた槍が「……来た」と小さく呟いた。
お、と眺めて、それは数多の魔物達の行列。その中にはライネルも幾つか居て。
「……アレ、今回の抗争で死んだ同胞達ですね」
白が言う通り、近付いて来るに連れて、数も色も合致している事が分かる。
「良かったな」
「何が……ああ、はい」
大剣が、待ちきれないように得物を背から抜き、肩に担いで、歯を剥き出しにした笑顔を浮かべながら言った。
「ガノンに降ったらどうなるかって事、手前等に教えてやろう」
それから槍も、得物をくるくると回しながら。
「同胞の死体を好き勝手に弄る愚か者の末路も、な」
弔いなどはしないが、死体を好き勝手に弄るその所業は、単純に、非常に腹が立つものだった。
最初に決めていた事が、一つだけあった。
『もし、あのゴロン族の死体がまた蘇って来るなら、真っ先に殺せ』
大剣が言うそれは、納得のものだった。
ゴロン族の長は、取り囲んで大剣で百回以上殴らないと壊れない壁を貼るのだとか。
戦っててつまらなかったから、囲んで潰した。
辟易とそう話した大剣に、他の黄金達も否定する事はなかった。
『じゃあ、ボクが射抜くよ』
『よろしく頼む』
地平線の先から、数多の魔物が、未だ列を為してやって来る。百や二百では数えきれない。千も超えているかもしれない。
「今回の抗争で死んだ魔物の総数より多くないですか?」
白が言った。
「……哀れだな」
力量差も分からずに操られているのだろう。
それから、噂に聞いた事のある古代兵器が十、二十と。
そして、ガノンの化身なのか、ウィズローブのように翼もないのに飛んでくるのが四体。
弓が矢を番えながら聞いて来た。
「多分さぁ、あの浮いてる奴等……ガノンの化身? も同じだよねえ。赤い奴が多分、その壁貼れるんじゃないかなあ。
どっちを先に潰す?」
槍が言った。
「後回しに出来ない方」
「じゃあ、浮いてる方で」
キィ、と引いて、狙いを定める時間など殆ど取らないまま、バァンッ! と派手な弓音を響かせた。
パキィッ!?
「……は?」
アストルは、何が起きたのか全く分からなかった。
英傑達の死体を土台として厄災ガノンのエネルギーと古代技術を組み合わせて作り上げた、英傑と比べるまでもない程に強力無比な人形、カースガノンの一体が、唐突にその額を真っ二つに割って地に伏したのだ。
断末魔すら上げなかった、即死。
それを皮切りに、丘陵の上で待ち構えていた黄金のライネルの三体が駆け出して来た。
残りの一体はここからじゃ良く見えないが……何をしている? いや、まさか、そんな!?
腕が動いたのが辛うじて見えた。
次の瞬間、今度は風のカースガノンが砕けて地に伏した。
「水よ!! 今すぐ氷の壁を張れっ!!
雷よ!! あのライネルを今すぐに仕留めろっっ!!」
水のカースガノンが腕を振れば、瞬く間に巨大な氷塊が数多に現れる。
雷のカースガノンは瞬間移動の如く、弓を操るライネルへと向かうが……それは、明らかに矢の速さよりは劣っていた。
そして次の矢は、何個も連なった氷塊を砕き、水のカースガノンに届く。
「ギィッ!?」
辛うじて即死こそ免れたものの、怯んで立ち直るまでの間に、二の矢が飛んできて同じ末路を迎えた。
「……悪夢を見ているのか?」
どうしてライネルの一撃でカースガノンが破壊されるんだ?
雷のカースガノンは辛うじてその弓を放つライネルに到達したが、仕留める事は出来ていない。
「いや、あそこで固めているだけで十分だ。こちらを片付けてから……」
そう言う頃には、黄金のライネル達はもう辿り着いていて。
「……なんだ、この光景は?」
アストルの頭上を数多の魔物達が吹き飛んでいった。
その中には、ガーディアンの破片も幾つかあった。
「グゴガガガ!!」
ガノンの恨みのエネルギーのようなものだろうか。そんな黒い泥に塗れた、自我もないような白銀のライネルを目にして、片手剣は槍へと伝えた。
「アストルを生捕りにしろ」
「言われなくても」
その両手にそれぞれ構えられた、片手剣の二刀流。
少しでも自我が残っていないかと、僅かながらに期待をしつつ聞いてみる。
「一応聞くが、まだ間に合うぞ?」
「ガグゲギグッ!!」
やはり駄目か、でも念の為、もう少し。
力任せに振るわれたその剣戟の一発を、容易く弾く。
体勢が崩れたその両腕を掴み、握り潰しながら、ずい、と顔を近付けた。
「ガギィ!?」
手から滑り落ちる二つの片手剣。
目と目を合わせても、そこに正気は全くない。
「……」
最後に、強く頭突いてみる事にした。
ゴンッ!!
「ギィッ……、ア゛……ガ? グ、グググ!!」
何だろうな……もっと自我が強ければ、少しは可能性もありそうだったが。
「やっぱり駄目か」
そう結論づけると、盾の刃で首を切り裂いた。
どこまでも惜しい奴だったよ、お前は。
ぐるんぐるんと全身を回しながら大剣を振り回す。
ボコブリンやモリブリンまでもが幾つも弾き飛ばされようともその勢いは全く衰えず、一気に百を超える魔物が吹き飛ばされ、命を散らしていった。
そして最後の一振りはビームを貯める直前のガーディアンの頭を、一気に捥ぎ飛ばす。
後ろを振り返れば、ガノンに乗っ取られた白銀の首を裂いたところの片手剣が見えて。
「駄目だな」
「分かった」
そう返して向き直る。
目の前からやって来る数体のライネルは、殺意だけを撒き散らしている。
そこにどれだけの力量差が理解しないまま。
「ま、そうだよな」
大剣を横溜めに構えると、今度は一気に全ての胴体を抉り取る。
膝を着き、むき出しになった内臓からどばどばと血を流すライネル達。
空飛ぶ古代兵器がこちらを向いているのに対し、その頭は丁度良い位置にあった。
生き返らされ、アストルに従うがままだったライネルの頭は、打たれて、捥げて、そして古代兵器を撃ち落す球となった。
軽快に振るわれる槍は、半端な盾も真っ二つにしながら、魔物を的確に切断していく。
空いた片腕には既に矢を番えた状態で弓を手にしており、片腕だけで振るう槍で同じライネルも含めて命を絶ちながら鋭く進軍していく。
地を走る古代兵器も石突で目を突かれ、空を駆けるガーディアンも槍を咥えて即座に放たれる弓矢で的確に堕とされていく。
そうして突き進んでいくと愕然としているばかりのアストルが遠くに見えるが、その前に泥人形の英傑達が立ち塞がった。
「…………」
四体の、技量に長けた戦士達。
泥人形と言えど、流石に無視するのはリスクがあるか?
そう思った次の瞬間、ゴロン族の泥人形が一気に弾け飛んだ。
振り向けば、弓も雷の化身を倒したようで、丘陵の上から再び矢を放っていた。
それなら、と残りの泥人形を無視してアストルへと距離を詰める。
「こ、この、背徳者どもがああああああああ!!!!」
叫ぶ暇があるなら、何かすれば良いのに。
いや、もう諦めているのか。
そう思いながら、再び槍を口で咥え、弓矢を構えて即座に放った。
弱めに放たれたその矢は、アストルの両足を貫き、そして痺れさせ。
「あぎぃぃがががががが!?」
ごろごろと転がって来た、その力の源でありそうな水晶を踏み砕く。
ぱきゃっ。
すると残っていた泥人形達も一気に形を失せさせていき、後は有象無象ばかりだった。
*
「……がっかりだよ、お前」
まだ、完全に夜にもなっていない。
そんな短時間で、アストルが用意したカースガノンも、支配したガーディアンも、英傑の泥人形も、千を超えるライネルを含む魔物も、全てが屠り尽くされた。
仰向けにされ、その黄金のライネル達に囲まれ。
黄金色の肉体は、その落胆した顔は、そんな薄明かりの中で覗き込まれる形でもはっきりと見えるものだった。
「ひ、は、はは」
「どうする、こいつ?」
大剣が聞きながらも、その手を踏み砕いた。
「ぎゃあ!!」
「うるさい」
弓が顎を砕いて、喉を軽く踏んだ。
「どうするも何も」
どすっ、どすっ。
槍が足を先から細かく切断している。
「気が済むまで、そうするだけだな」
「そうだな」
片手剣は、びくんびくんと動く腕を、段々と体重を掛けて踏み潰していき。
「普通の矢、ちょうだい」
「ほらよ」
「どうも」
どすっ、どすっ。
弓はその胴体に穴を開けていく。
この様子では、ガノンも弱いに違いない。
そんな確信、したくはなかった。
「はぁ」
「ったく」
「……」
「俺達の期待を返せよ」
黄金のライネル達は、深く、深く溜息を吐きながら、アストルを気が済むまで切って、潰して、貫いて、焼いた。
雷のカースガノンは、一度目は攻撃を多少通すものの、二度目で似たような動きして「流石に舐めてるでしょ」とパリィされて踏み潰されて死亡。
一応弓も盾と片手剣は持ってる。
アストルは、輪切りのソルベしようとだけ決めてました。
この作品、個人的には性癖満載な割には綺麗な方で、1日で5000文字も書けるくらいには気に入ってるんだけど、まあアクセスやら評価やらで自分が特殊性癖なんだなーって事を再認識したりしてる。
10万円くらいまで使って挿絵依頼して、それらを含めて物理化したいなーとかも思ったりするレベルなんだけど、そうしても誰も手に取る人いなさそうって思うと、まあ、ね。
因みに、特殊性癖名はオートアサシノフィリアです。
端的に言えば、自分が殺されるところに興奮するっていう性癖。
挿絵にしたいシーン:
・ミファーが空から降って来た雷の矢を飛び退いて躱した瞬間、止めの矢を放ったライネル。
構図としては、ライネルが前面で背中を向いてて、弦を離した手が一番手前にある感じ。
・リーバルがライネルに捕えられて首を食いちぎられるシーン。
頸動脈がむき出しになって引きちぎれていると良し。
・窪みに嵌まったダルケルにライネルが複数歩み寄って来るシーン。
膝をついているダルケルが真ん中で、絵の両端の前面から歩いて来るライネル二匹と、奥から歩いて来るライネル三匹。それぞれ、大剣を両手で持っていたり、肩に担いでいたり、地面を引きずっていたり。
・ウルボザが爆風に吹き飛ばされるシーン。
地面に片手剣を叩きつけたライネルのパワーが演出されていてほしい。
・黄金のライネルがモルドラジークに花山薫したシーン
肩まで血まみれにして、その手には脳味噌が握られていて、溜息を吐いてる。
10万で足りねえわ。
Scene
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ミファー宙返り
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ミファー狙撃
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ミファー斬首
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リーバル狙撃
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リーバル捕食
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ダルケルホームラン
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ダルケル取り囲み
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ウルボザ剣戟
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ウルボザ爆撃
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ウルボザ斬首
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モルドラジーク殺害
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矢制作
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武器の手入れ
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カースガノン狙撃
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怨念のライネル始末
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ガーディアンホームラン
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ライネルの頭ホームラン
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アストル狙撃、水晶破壊
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アストル殺害
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他