ずっ、ずずっ。
ずず、じゃりっ。
「もうっ、ここらで良くないっ?」
ずずっ、ずずっ。
「それじゃあっ、達成感無えだろっ」
ずっ、ぢぢっ。
「達成感の問題?」
ずり、じゃりり。
「そりゃあ…………そうだろ」
ずずっ、ずずっ。
「……そうか、そうだね」
ぢっ、じじっ。
火口まで後少しを登っていく。
ここまでになると、暑さも更に増して、武器も耐火性の布やらで包んでおかないと背負っていられない程だった。
ヒケシアゲハやらを使って作る薬も、ライネルに使うには量が必要で。
耐えられている黄金達は使わずに、白や白銀達に使っていた。もう、ただのライネルや青髪のライネルは、後からついてくるだけだった。
「それにしてもっ、こんな所に来るのはっ、初めてだなっ」
あの変わり者は、頂上まで登った事がありそうだが、と思いながら。
「……俺はある」
槍がぼそりと答えた。
「神獣とやらを見たくて、ふと気まぐれに」
それ以上は言わなかった。
頂上まで後少し。
「…………やっと、着いた」
疲労困憊になりながら火口まで辿り着けば、若輩達が水を渡してくる。
すっかり湯だったそれを飲み干し、口を拭い。
火口を覗いてみれば、中には神獣が鎮座していた。トカゲの形をしたその巨大な古代兵器は、しかし繰り手の居なければ、物言わぬ置物でしかなかった。
「じゃあ、さっさとやるか。……いや、どうやって落とす?」
押して落とすにせよ、棺はライネルですら手が触れられない程に熱くなっていた。
「そりゃあ、これだろ」
大剣が、得物を布から取り出した。
「じゃあ、頼もうか」
他にも大剣を得物とするライネル達が歩み寄り、そうでないライネルは離れた。
ガァン!! ガァン!!
派手に金属質な音を何度も叩き鳴らしながら、棺が少しずつ火口へと迫り出していき。
後少しのところまでくると、一度止めて。
「……最後、やります?」
大剣以外の黄金達に若輩達から大剣を渡された。
「まあ、やるか」
受け取ると、一発ずつ交互に打っていく。
ぐらぐらとしてきたところで、弓の順番がやってきて。
「じゃ、さよなら〜」
ガァン!!
そんな軽い声と共に叩きつけると、一気に落ちて行った。
ガッ、ガガッ、ドプッ……。
岩肌にぶつかりながら、一度マグマを跳ねさせて。
結局、中のガノンは何の音沙汰も無いまま、その奥底へと沈んでいった。
「起きて来んなよー」
「次起きて来たら、ハイラル城の壁に磔だからなー!」
黄金達はそんな軽い声を投げかけて。
「……じゃあ、戻るか」
片手剣が締めた。
終わってしまえば、二度とこんな場所来るかというように、全員くたびれた顔をしていて、槍は一足先に下山し始めていた。
*
ガノンは、何年経とうとも再び姿を現す事はなかった。
マスターソードはその真価を発揮する事もなく、封印の巫女が力を顕現させる事もなく。
残ったのは、そのガノンを倒した挙句、何かをして封印した黄金のライネル達。
だが、突如として積み重ねられたその武勇は、討伐命令を出すのすら憚られた。
単体で、英傑達を容易く屠った。
また広大な平地で繰り広げられていた、そのアストル、ガノンとの戦闘は、少なからずハイリアの民にも見られていて。
千をも超える魔物を、巨大なガノンの操り人形を、ガーディアン達を、極々短時間で屠り尽くした。
そして厄災ガノンですらも、一匹一匹で交互に戦い、復活する度に遊び半分のように叩き潰してしまった。
その後、アッカレ砦の前を通った黄金のライネルは、ガーディアンの光線すら届かない遥かな遠距離から一発でガーディアンの目を穿った。
それに対して戻って来た所に橋を爆破して仕留めようと画策していたら、それは容易くばれた。そして報復と言わんばかりに、まず同じく爆弾を仕掛けていた連絡橋を破壊され、ガーディアンと大砲の大半を破壊され、極め付けにハイリアの旗を引き千切られた。
人的被害こそなかったものの、アッカレ砦の兵士のトラウマにさせるには十分過ぎる出来事だった。
何を目的として動いていたのか、それは未だに分からない。
だが、以後ライネル達から仕掛けてくる事はなく、被害もぴたりと止まってしまっては、たった一人の退魔の騎士をその討伐に赴かせる事も憚られた。
気付けば、その四匹のライネルの内、片手剣を持つライネルと、大剣を持つライネルは見かけられる事もなくなっていたが。
それでも尚、ライネル達はハイラルの土地を、誰よりも自由に闊歩していた。
*
*
*
*
新大陸は、目で見える程度にしか距離がないからか、そうハイラルと変わったところがある訳でもなかった。
ただ、空を飛べるキースや、海を泳げるリザルフォスは居ても、そうではないライネルはおろか、ボコブリンやモリブリンは一匹も見つかる事はなかった。
「こりゃあ、少し寂しいな……」
海水に浸った武器も防具も手入れをし直して、その草地に足を下ろして。
「誰か一匹くらい付いてくると思っていたんだけどなあ」
はぁ、と溜息を吐く。
変わり者に会いに、別大陸に行く事にしたと伝えてみれば。
大剣は、なら俺は砂漠を超えてみるとか言い出して。
槍と弓は残ると言い、息子の白も、俺ですら片手剣を極めていないと知ったら、その弓の弟子になったりと。
正直意外だったし、俺だけで行く事になったのに、俺自身が一番驚いていた。
……俺って、寂しがりだったんだな。
一匹で過ごした時間も、気付けばあんまり無い。
俺の周りにはいつも誰かが居たが、もしかして俺は一匹で居るのが寂しかったから自然とそうなるようにしていたんじゃねえか?
「…………否定出来ねえ」
何で着いて早々、こんな気持ちになってんだか。
草原を歩き、森に入り。
時折獲物を仕留めて腹を膨らませ、また立ったまま、僅かに浅い睡眠を取りながらも、あてもなく歩き続ける。
人は居てもおかしくないと思っていたが、ここはもしかすると、未開の地なのだろうか?
「見つけるのにも、骨が折れそうだな……」
一匹になってから、独り言が増えていた。
*
森を抜け、更に北へ、北へ。
ただひたすらに歩いていけば、段々と寒さも強くなってくる。
吹雪で、金属を肌身につけていても気にする事はない頑強な肉体を持っているものの、必要な食事の量は増えてくる。
「お? おお??」
黄金のライネルは、そこでやっと、焚き火の痕跡を見つけた。
少なくとも、人のような存在は居るらしい。それなら、あの変わり者も近くに居る可能性が高い。
その翌日。
二人の人族の子供。俺を見つけるや否や走って来て、キラキラした目で勝手に話しかけて来た。
「****? *********ライネル!!」
「**、ライネル*******! **、*****!」
「ハイリア人の言葉なら少しは分かるんだけどな……」
死ね! とか、殺せ! だとかその位なら。
ハイリア人と全く同じ、耳の尖った姿形をしているが、その言葉は全く別物だった。
そして怖がらないどころか、好奇心旺盛にペタペタと体を触って来る子供達に困惑しながらも。
「でも、当たりを引いたようだ」
「****! ********」
「****、****〜」
足を掴んで、どこかへと連れて行こうとする子供は、ライネルという存在自体は知っていた。それだけは聞き取れていた。
そんな子供達に素直に付いていけば、再びの森の中から、煙が立ち上っているのが見えてくる。
「人里に混じって暮らしてるのか?」
普通のライネルには、いや、魔物全体にはまず無い発想だ。
でも、あの変わり者なら十分あった。
いや……もしかすると、ここでは魔物と人という括りすらないのかもしれない。
そんな事まですら思う。
「****〜****〜!」
「****〜**、**〜〜!!」
子供達は、森の中だというのに、まともな狩猟道具も持たずに、大声で歌いながら歩いていく。
熊どころか、狼に襲われても一溜りもない、そんな弱々しい生き物なのに。
そしてふと、足跡を見れば。
巨大馬と似た、しかしそれよりも深く重い蹄の跡が目の先に続いていた。
「****〜! ****!」
「****? ……****ライネル!!??」
集落の近くまで来れば、寄って来た大人が驚いて、そのライネルという言葉を発した。
ピィーーーー!! と緊急用らしい笛が吹かれて、すぐさま、その駆け足が聞こえて来る。
どがらっ、どがらっ!!
やって来たのは、未だに白のままの、その変わり者だった。
少しばかり記憶の中より老けているその髪には花が挿されていて。
笑いながらも、言った。
「よお、やって来たぞ、ジジイ」
「……おー、懐かしい顔だな。
立派になりやがって。……だが、どうしてここに来た?」
一度力を抜いたと思いきや、唐突に膨れ上がった殺気は俺が思わず怖気付く程。
……やっぱり、勝てる気がしない。触れられる気もしない。
子供に連れられてここまでやって来たんだ。ここの人族にどうこうする意思はないって分かっているだろうに。
そう思いながら、腕の盾を外し、背負っていた片手剣と弓矢も目の前で落とした。
「あんたに会いに来たんだよ。強くなりたいんだ、俺」
そう言うと、その変わり者は殺気も武器も収めて歩いて来て。
「相っ変わらず、欲張りな奴だなあ、この坊主は。黄金になっても物足りねえのかよ」
そう言って、歩いて来て。
抱き締められて、抱き締め返すと。耳に口を近付けられて。
「あっちで沢山殺して来ただろう? こっちで似たような事少しでもしたら、目ん玉剥いて、野に晒してやるからな」
……生涯で何よりも背筋が凍った。
固まっている俺を放って、人族のように振り返ると。
「****! ****」
こいつは安全だ! とでも言うようにか当然のように人の言葉を操り、そしてまたこっちを向くと。
「ほら、さっさと武器を拾え。
……だが、村の中では一切手に取るなよ。その瞬間、お前の首を捻じ切るからな」
「……花、やっぱり似合ってねえよ。ジジイ」
ガノンより怖えよ。
武器を拾って、盾も背負って村へと歩き始める。
「はっはっは!
来るんじゃないかとは思っていたがな。
……そういや、俺の息子は元気か?」
「白にまでもう成ってるよ。あんたに似て好奇心旺盛だし、筋も良い」
「そうかそうか。
ま、ちゃんとここに馴染めたなら、手合わせくらいはしてやるよ。
ちゃんと武器を持ってな」
「……分かったよ」
そうして、俺は初めて、人里に足を踏み入れた。
変わり者の白:
生まれながらにして全てを持って生まれた突然変異レベルの天才。
争い事は好きではなく、それ故にその実力に気付く同胞は少なかったが、リンクを普通に上回っているレベル。
いつまでもハイリア人と殺し合ってるのに嫌気が差して、北の大陸に行って、人と共にのんびりスローライフを堪能してる。
要するにチートですがスローライフに生きる事にします、みたいな奴。
10年後、戻って来た片手剣はリンクに戦いを挑もうとするが、ガノンがデスマウンテンの地底からパワーアップして復活し、成り行きでリンクと共闘する事になり……。
そしてガノンを今度こそ封印した後に、今度こそリンクとの一騎討ちに臨む、みたいな第二部が構想としてあったりするけど、まあ、書くかは微妙。
ライネルを題材にして何かまた書くとしても、第二部より、また性癖120%のR18Gになると思う。
話としてはこれで終わりだけど、キャラの纏めやら戦歴やら、その後の妄想とか色々取りまとめたものを後日投稿する。
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他