それではどうぞ。
「はい、エンデヴァーヒーロー事務所です。敵ですか?事故ですか?依頼ですか?」
「こちらシンリンカムイである。現在東名高速道路を逃走中の敵逮捕のために緊急チームアップの依頼をお願いしたい。ちょうどそちらの事務所方向に逃走中である。」
「かしこまりました。具体的な場所と敵規模、把握済みの個性などの情報をお願いします。」
緑谷さんと麗日さんの結婚式が終わった翌日、私、八百万百は高校3年時からインターンでお世話になっているエンデヴァー事務所の一員として、いつもの日常業務に勤しんでいた。
するとNo.9ヒーローであるシンリンカムイからのチームアップ要請が届いた。
「現在位置は東名高速道路下り御殿場を過ぎたところ、規模は3人組、確認している個性は弾丸の射出、車輪による移動、纏雷の3種。一般車両を守りながらだと人手が足りない。制圧を頼みたい。できれば沼津で確保したい。」
「了解。直ちに向かいます。」
ショートさん参りますわよ。
「オープンチャネル聞いてたから状況はわかった。エンデヴァー、俺たちが出る。20分、いや15分で終わらせるぞ、クリエティ。」
頼もしいお言葉ですわ。移動も焦凍さんに任せれば富士から10分で沼津に着きますわ。
「エンデヴァー、屋上から飛ぶ。行ってくる。」
「ショート、クリエティ、頼んだぞ。」
No.1ヒーローから頼られればやる気も倍増するというもの。
焦凍さん行きますわよ!
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焦凍さんの熱と冷気の同時使用により迅速な移動ができるようになってからは依頼の達成件数が激増しました。
特に高校2年の時に修得したこの移動法は爆豪さんの個性からヒントを得たというもので、当時はとても嬉しそうに話してくださいました。
程なくして沼津に到着し、ご丁寧にICを突っ切ろうとするところに作成したスパイクストリップを射出。
急停止により吹っ飛ばされた敵たちは焦凍さんの氷結によって確保されました。
「ありがとう。助かった。」
「いや、うまく追い込んでくれたからだ。ありがとう。」
「確保した方たちはこちらで県警に引き渡ししておきますわ。お疲れさまでした。」
こうして緊急要請は無事達成し、警察に敵を引き渡した。
県全域に目を張り巡らせることは難しいとはいえ神奈川を横断して逃走してくる根性には称賛致しますわ。おかげで事務所の成果に貢献していただけたのですから。
「依頼達成まで移動含めて10分しか経ってねぇな。時間の感覚を磨かねぇとだな。」
上昇志向は素晴らしいですが焦凍さんはもう少し肩の力を抜いてもいいと思いますの。
ビルボードチャート発表のたびに同級生である緑谷さんと爆豪さんのランキングを気にして「俺も負けてらんねぇ。」とつぶやく姿は鬼気迫る雰囲気で、そんな焦凍さんを見て炎司さんは「息抜きに付き合ってやってくれ。」と私にお願いするほど。
いつの日か炎司さんが焦凍さんを最高のヒーローに育てると言っていたらしいですが、今では能力も相まってか、やる気がありすぎてセーブするのに一苦労しています。
「百、帰るぞ。次の依頼はあるか。」
沼津付近で一件要請がありそうですわね。焦凍さんの気が晴れるまで本日もヒーロー活動に勤しみますか。
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「敵退治は朝の1件、事故対応5件、CM1件、迷子10件、計17件の対応完了致しました。」
「うむ。ご苦労様。焦凍も百も今日は上がっていいぞ。」
「エンデヴァー、まだ俺は「焦凍、昨日の結婚式で何を焚きつけられたのか知らんがこのまま気持ちが昂ったままでは空回りする。学生時代にも言ったがプロというのは常に万全な状態でいることも重要だ。そのための業務のシフト化、休暇の取得というものがある。百、すまないが焦凍の気持ちが落ち着くまで一日の依頼件数は5件以内にするように調整してくれ。」くっ。」
「はぁ、わかりましたわ。失礼します。焦凍さん、行きましょう。」
「失礼…します……。」
苦虫をかみつぶしたような顔で、悔しそうな顔で俯く焦凍さん、きっかけさえあれば一日で人は変わると言いますが昨日の結婚式以来表情がすぐれません。
何かを仕事にぶつけているのでしょうか。
とりあえず本日のところは帰宅しませんと。
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事務所を出て、通りを抜け焦凍さんと私の仮住まいに着くやいなや焦凍さんに呼び止められました。
「百、迷惑かけちまってすまん。」
いいんですのよ。焦凍さんがトップを目指しているのは昔からですものね。
ただ、今日はちょっといつもと違う焦り具合でしたわね。
昨日緑谷さんと爆豪さんと話し込んでいたようですが、麗日さんに「あれは男同士の会話やからまだ聞かんといて。」と言われてしまったので話しかけようにも話しかけられず、手持ち無沙汰な状態で二次会に行きました。
コスチュームから着替えてひと段落してソファーに座ったところで焦凍さんはまた話し始めました。
「昨日緑谷が言ってたんだ。好いた女の前ではかっこいいヒーローでいたいってな。だから、麗日にかっこいい所見せるために、ヒーロー活動も、恋愛も、何もかも全力投球してきたって言ってたんだ。俺も百にかっこつけた方が良いんじゃないかと空回りしちまった。焦って迷惑かけちまって申し訳ない気持ちだ。この通り許してほしい。」
私は頭を下げる焦凍さんを少しあたふたしつつも見ていました。
「わがままだが、大好きな百の前ではヒーローとして活躍してる姿を一番に見てほしかったんだ。」
「そばで、見てほしかったんだ。」
そう、ですか。
いつもより真剣な表情で、視線で、私を捉えるオッドアイは私の胸を刺すようで、一瞬胸が高鳴りました。
私も焦凍さんの隣でヒーロー活動できるのが楽しいのでこれっぽちも迷惑だとは思っていませんのよ。
それならこの話はここで終わりにしましょう。
あまり引きずっても落ち込んでしまうだけですわ。
そう言って立ち上がろうとしたら腕を取られました。
「もう少しだけ、そばに居てくれ。」
珍しく甘えたな焦凍さんが出てきて萌えてしまうところでした。
しょうがないですね。
そんな可愛い焦凍さんも好きですけれど、明日からは有言実行、かっこいい姿を見せてほしいものです。
「これからもずっと隣で見ててほしい。」
「こういう時なんて言うんだ。毎日味噌汁作ってくれだっけか?」
それはプロポーズの口説き文句ですわ!
確かに隣にいるかも知れないですが意味が違います!
「そうか。これはプロポーズか。でも、付き合ったときから俺は百と結婚したいと思ってるぞ。生半可な気持ちで付き合ってくれと言った覚えはない。」
あまりにあっさりと衝撃の告白をされて意識が飛びそうになりました。
でも私ロマンチストなので、麗日さんから聞いた緑谷さんみたいなプロポーズをしてもらいたいと思っておりますの。
なので、これがプロポーズだとしたら今回はNOですわ。
どうでしょう。
計画していただけますか?
「ああ、記憶に残るプロポーズをしてやる。俺がかっこいい姿を見せるまで待っててくれ。」
今はこれだけでも十分ですわ。
今からでもプロポーズが楽しみです。
「期待していますね。」
そう言って私は自室に戻りました。
自室に戻ると響香さんからLIMEが来ていました。
どうやら昨日の今日で籍を入れるらしいです。
おめでたいですね。
私も返信しなくては。
『そのうち最高のプロポーズをしていただけると約束していただいたので、私はもう少し先になりそうです。』
今から、本当に楽しみです。
かっこいいヒーローの姿と普段の姿の焦凍さんをこれからも見させてください。
このあとエンデヴァー事務所の依頼達成件数がすごく伸びたとか。
何かを察したバーニンがエンデヴァーに耳打ちしたとか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次は切芦書きます。
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