ヒーローたちのプロポーズ   作:ドキソルビシン

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黒色と小森の話です。

小森が若干キャラ崩壊しているかもですが悪しからず。

それではどうぞ。


【支希】希望を持ってあなたを支えよう

『拳藤お久しぶり~』

『8月って空いてる日ある?』

『もしお時間あったら相談に乗ってほしいんだけど…。』

同窓会ぶりに連絡を取る委員長は昨年度末結婚した。

彼氏持ちの自分としては恋愛の一歩先を行っている彼女に恋愛のいろはを聞いてみたいと思っていた。

最近になって久しぶりに話したいなとも思い、LIMEで連絡を取ってみた。

『小森おひさ~』

『8月の休日は今のところ予定ないかな。』

『でもお盆前はちょっと忙しいかもしれないからできれば後半がいいかな。』

5分としないうちに連絡が返ってくる。

まめな性格の彼女だからこそ、すぐに意思疎通が取れるのは助かる。

『返信早くて助かる!ありがとう!』

『そしたら8月の23日の11時に新宿駅に集合ね!』

『緊急入ったら教えてね!』

日時の指定をしておくが、一応武闘派ヒーローの彼女のための配慮も忘れない。

了解の返事と可愛いスタンプが返ってきた。

これでよしと。

自分のアイドル業にもスケジュールというものがあるものの、休みらしい休みを自由にとれるようになったのは割と最近のことだ。

やれ特番のロケだとか、ヒーロー限定のバラエティのロケだとかで時間を食われ、新人時代はまともに休んだ覚えがない。

故に今年になってアイドルとしては中堅になったこともありCMや看板番組も持たせてもらえるようになった。

ヒーローとしても敵退治を任されることがあり、スエヒロタケちゃんは役に立ってくれる。

仕事は上々、体も健康、彼氏もいる。

上京していい家も買った。

あとは結婚して子供ができれば女として人生勝ち組と言っていいだろう。

だが私は最近彼氏と会う時間が取れず、私に縛り付けてしまっているという罪悪感、このままでは自然消滅するのではという危機感を持っている。

前回会ったのは昨年の10月頭、今は6月も半ばだから8ヶ月以上も前だ。

もちろん遠距離恋愛なり、仕事の都合なりでもっと会えない人は世の中にいるだろう。

だが、アイドルとして売れていても、女として特別自信を持っているわけではない自分にとって、8ヶ月会わない、否、会えないということは不安でしかないのだ。

だからこそ、同性のお姉さんに恋愛について教えてもらおうと、そういう魂胆で連絡をしたのだった。

 

―――――――――――――――――――

 

あっという間に2か月は過ぎ、ロケの日程もずらしてもらって無事23日の休みを確保した私は彼氏である支配に会うよりも先に拳藤に会うために新宿に来ていた。

せっかくの休みだ。

もちろん彼氏にも連絡し、久しぶりに会えるのが嬉しいと返事をもらい、夜に会うことにした。

彼の個性の関係上、夜に会うことはパパラッチ警戒という点ですごく都合がいい。

今日履いている黒のパンプスに入ってもらえればあとは家に帰るだけで良い。

彼には自分の都合で会えないためにただでさえ窮屈な思いをさせてしまっているが、物理的にも窮屈な思いをさせて会うしかないというのは、アイドルの恋愛の難しいところでもある。

だからこそアイドルの結婚は遅くなりがちなのかもしれない。

業界の先輩でも結婚するのは若くて30歳くらいだ。

一般に20はひよっこ、30までがアイドルの寿命だと言われるだけあって25になった私でも、先輩からしたらまだまだなのかもしれない。

でも、先輩より人気はあるし、売れている自信はある。

ちゃんとアイドルして人気をもぎ取っている。

更に自信をつけるために恋愛をするというのは間違っているのだろうか。

そう思案していると自分と同様に無事休みを獲得したのであろう拳藤が前から歩いてきた。

目が合って声をかける。

「一佳!久しぶりね!元気にしてたノコ?」

「小森久しぶり~。楽しみにしてたよ。もちろん肉体派ですから、元気にしてたよ。」

「肉体派と健康は関係ない気がするけど元気ならよかったノコ!」

変装しているとはいえばれたらファンに囲まれてしまう。

足早に目的のお店に行くことにする。

 

個室のカフェにたどり着き、しばし思い出話に花を咲かせ、一息ついたところで本題である相談に移る。

「一佳、そういえば相談がしたいって言ってたんだけどね、聞いてくれる?」

「そうだよ!今日はそのために呼ばれたのに、私としたことが楽しくって話し過ぎちゃった。ごめんね。」

「ううん。気にしなくていいの。あのねーーー」

そう言って私は支配くんとのお付き合い生活について説明した。

学生時代アイドルを目指すと言ったとき一番に応援してくれたこと、アイドルヒーロー事務所に入所出来て一緒に喜んだこと、でもいざアイドル業界に入ったら忙しくてデートどころじゃなかったこと、恋愛は禁止ではなかったけどパパラッチに気をつけなければいけないとマネージャーに釘を刺されて会う頻度を減らしていったこと、気づけば半年以上も会わず、LIMEで連絡を取るくらいになっている現状であるということ。

そして、女として自信のない私は支配くんと付き合い続けることで支配くんを縛り付けてしまっているのではないかと考えてしまっているということ。

できるだけ簡潔に、そして正直に話した。

故に気になっていることを最後に相談した。

「わたし、このまま支配くんと付き合ってもいいノコか…?」

時たま頷き、相槌を打っていた一佳から帰ってきた答えは、

「私は惚気を聞かされに来たのかな...?」

と相談の回答としてはいささか不適切な回答であった。

だが、続けていう言葉に私はハッとさせられた。

「あのね、黒色も小森のことが心より好きじゃなかったらアイドルと付き合うなんてことできないと思うよ。私は少なくとも武道館でライブできるような程成長したアイドルと8年も付き合い続けるなんて相当な覚悟が無いとできないと思ってる。そういう点で黒色は同窓会ですごいやつだとみんなして褒めてるんだ。その覚悟を小森が否定しちゃだめだろ。」

そう言われて気づいた。

アイドルと付き合うことは難しくない、付き合い続ける覚悟を持つことが難しいのだと。

実際アイドル事務所の先輩の中にはは彼氏をとっかえひっかえしてる人もいる。

男運が無いなぁと思っていたが、自分はとても運が良かったことに8年してようやく気付いたのだ。

ただ、好きだから、という思いだけで付き合ってはいないことに、気づかせてもらった。

「一佳、ありがとう。私、バカだったよ。いま、黒色くんにとても会いたい。愛してるって言いたい。」

「おう!行ってきな!今日はあたしが奢ってやるからさっさと行ってこい、トップアイドル!」

「ありがとノコ!結婚式にはいくノコ!」

「黒色と二人して呼ぶから安心しな!行ってらっしゃい!」

気づけば走りなれない靴で変装も中途半端に走り出していた。

黒色くんにはLIMEで『今から会いに行く。』とだけ送った。

アイドル失格かもしれない。

でも、それ以前に彼女失格だった。

汚名挽回のために私は彼に愛を伝えなければいけない。

走って、走って、走って、黒色の家の前に着いた。

写真に撮られたらアウトだろうなと思いつつ、後悔はしていない。

事務所に彼氏がいることは話しているし、万が一すっぱ抜かれたときの対応も教えてもらっている。

Prpr…Prpr…

電話が鳴っている。

きっと黒色くんからだ。

携帯の画面を見ると予想通り、彼氏の名前があった。

「もしもし、黒色くん、わたしシーメイジ、今、あなたの、家の、前に、いる、ノコ。」

息も絶え絶えに黒色くんに伝える。

『ちょっと希乃子!?大丈夫なの?まだ約束の時間までだいぶあったけど!?』

「入るから。開けて。」

『え、ちょっと、だっ、えっ、マジで家の前にいるの?』

キィ、とドアが少し開く。

「『マジでいるじゃん!は…入って!』」

「おじゃまするノコ。」

現役アイドルにしては不用意すぎる言動ではあるものの、残念ながら私の感情は爆発している。

止められそうにない。

「支配くん、私ね、支配くんがすっごく愛してくれてるんだってこと気づいたノコ。」

「え、う、うん。もちろん希乃子のことを愛してるよ。」

「だからね、私も支配くんにちゃんと愛情表現をするべきなんだと気づいたノコ。」

「ど、どういうこと?」

未だに状況が読めずに玄関で佇んでいる二人。

だが、私の思いはやはり止まらなかった。

「だからこの8年間我慢させちゃってたぶん、愛してるって伝えるために来ちゃったノコ。」

「支配くん、愛してるノコ。世界で一番、好キノコ!」

呆然としていた支配くんだったが何かを決心したかのように言い放った。

「お、俺はシーメイジのファン第一号としてもシーメイジが好きだし、女の子としての小森希乃子を太陽系一愛してる自信あるよ。だから8年付き合い続けてきたし、これからも付き合っていこうって思っているよ。」

私はよくわからないが太陽系一愛してるというところに引っかかりを覚えた。

感情が爆発している今の私よりも愛してるというのか。

よくわからない対抗心に促され、思いは口から飛び出ていた。

「わ、私は銀河一支配くんのことを愛してるノコ!」

「俺は宇宙一希乃子のことを愛している!」

「私は結婚したいくらいに支配くんのことを愛してる!」

「俺は生まれ変わっても結婚したいくらい希乃子のことを愛してる!」

「私は前世からずっと支配くんのことを愛してる!」

「俺は未来永劫希乃子のことを愛し続ける。だから、結婚してくれ。」

「私は!…ふぇ?」

「だから、結婚してくれ、と言ったんだ。」

ヒートアップして周りが見えなくなっていた私の心を温かくも冷静にさせたのは支配くんが放った一言だった。

「結婚、しよう。希乃子。」

今度は全身沸騰しそうなほどの幸福感が体を襲う。

急に膝に力が入らなくなって崩れそうになるところを支配くんが支える。

「は、はい。します。結婚、します!役所に行く、ノコ!」

回らない頭からようやく出てきたのは肯定の返事。

そこで私は意識を手放した。

 

――――――――――――――――――――――

 

知ってる天井だ。

お姫様抱っこをされて支配くんの自室に連れていかれたのか。

今は彼のベッドの上だ。

時間は19時と日が沈みかけているものの、まだ出かけることはできそうだ。

それこそ、役所に行くのには問題なさそうだ。

ずっと手を握っててくれたのか、支配くんがベッドの横で座ってうつらうつらしている。

「支配くん、起きるノコ。」

「へ、ああ、希乃子、起きたのか。」

「結婚、しよ?」

「ああ、しよう。」

夕日が沈むと同時に私たちは唇を重ね、久方ぶりの愛情表現をするのであった。

 




婚姻届けを印刷してすぐさま役所に言った模様。
無事パパラッチにはすっぱ抜かれたがそれより早く事務所が結婚報道をしたことで大した問題にはならなかった模様。

―――――――――――――――――――――――――

最後まで読んでいただきありがとうございました。
次は鎌切と取蔭を書こうと思います。

この小説で出てない人で書いてほしい人の話

  • 上鳴→耳郎の思い
  • 口田→耳郎の思い
  • 飯田の思い
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