超昂大戦 二次創作SS 虜囚の花嫁! エスカチーム、明日へのブーケトス 作:環 藍河
「追い詰めました! 覚悟の時です!」
「投降しろ! 逃げ場は無い!」
「往生際が悪い男は、モテないぞっ」
「なーんかフラグっぽいけど、一対一で勝負する?」
「くっ…」
オルタナスタイン壊滅後、ネオ・ノロイ党を標榜する一派の示威行為と並行して続く、旧アルダークの残党による散発的破壊活動。エスカチームの今日の出動も、フーマン部隊を難なく掃討、あとはコマンダー4人を仕留め、呆気なく完了する任務…のはずだった。
コマンダー4人が、懐から取り出したリモコンのボタンを押す。
「『〘〔!?〕〙』」
その瞬間、ルビーが、サファイアが、トパーズもアメイズも、四方をそれぞれ歪曲空間の壁に包まれ、声を上げる間も無く、異空間に転送されてしまう。
「ふははははは! 追い詰めたあ? 誘い込んだのはこちらさ。」
「これより、エスカチーム・地獄の結婚式披露宴を執り行う!」
「我々、媒酌人コマンダー4名の意向により、近親者および関係者の臨席は固く断る!」
「追って披露宴の模様は、特別編集の後、余す所無く全世界に配信しよう!」
「し…しまった! 近接チーム、アイとメイはコマンダーの逃走阻止、マッハとエイムは足止めの狙撃を!」
「さやかちゃん、解析を!」
『もうやってる! …出たよ。あれは、平行世界で使われたイデアの壁の…劣化版!』
「劣化?」
『うん、原版はエスカレイヤーを幽閉して力を奪い、フラストの思い描く空間で蹂躙するための牢獄だけど、アレは妄想空間を創る力は無い。この世界に実在する場所への転送と、せいぜい精神攻撃くらいね。』
「実在? ならば、ラボのテレメトリーで居場所は追えるのね?」
『いや…それが、防壁としてはイデアの壁より堅牢みたい。場所はすぐ出ても、壁の壊し方が…!』
「わかった。壁の解析、頼むわよ!」
『りょーかい、なる早でっ!』
『こちらアイ、敵コマンダー4名、いずれも失探しました! 申し訳ありません!』
『こちらエイム、足留めの狙撃を試みるも、奴らビル陰から出てきません、恐らくワープした模様』
『こちらマッハ、上方からターゲット探索中も、痕跡見当たらず…トキサダのアニキ、申し訳ねえ!』
「…了解、こちらでもターゲットロストした。4名は装甲輸送車にて帰投せよ…。」
…
……
「うっ…ここ…は?」
一瞬の意識消失の後、ルビーの視力が徐々に回復する。
天井には無数のシャンデリア。振り返ると頭上には天使と神の子の意匠を施したステンドグラスと十字架。横では小型のパイプオルガンとハープが賛美歌を自動で奏でる。
数百人は入ろうかと広がる室内には、幾十もの円卓が整然と並び、ソーサーとカトラリー、中心のブーケが参列者を今かと待ちかねる。
どの卓からも晴れ姿を見渡せる、生涯に一度の舞台に、ルビーは不釣り合いな戦闘服のまま着座していた。
《場内の皆様…もとい、お一人様にお知らせ致します。本日の披露宴、空席の分だけ招待状を送付しておりましたが、ご親族・近隣住民および閂市商店街の皆様・ご友人…生憎どなた様も、対ダイビート・テロリズムの犠牲となることを怖れてか、すべてご欠席の返事を賜っております。》
「えっ…!?」
嫌らしく、下卑たニュアンスをたたえた場内アナウンスが続く。
《なお、新婦同僚の皆様方は、只今アルダーク残党による総決起テロに苦戦され、到着の見込みはおろか、既に大半が殉職との情報があり…》
「そ…そんな…!?」
《只今入った情報です。新郎様、先ほど新郎控室にて、我らアルダークにより、この晴れの日が命日となったことが…、確認、されましたっ!!!》
「…!!」
ルビーは、理解が追いつかない状況を、努めて冷静に把握しようと深呼吸する。
(つまり…これは、私の結婚式で…、誰も…みんな、来れなくて…、結婚相手も…殺されて…?!)
《ふはははははっ、これは遠くない未来の、お前の現実だあ! 自業自得だぞ、エスカ・ルビーよ!! 既にお前の身元は衆目の周知、お前のような常に死の危険と隣り合わせの女に、家族も友人も、ましてや一生の伴侶など、誰が好んで寄り添うものか!》
「…ああっ…!!」
ルビーへの精神攻撃は、対オルタナスタイン戦勝の痛切な代償を、致命的に突いた。
がちゃっ。ぐぐぐっ、ぎりぎりぎり〜っ。
(くっ…開かないっ! …こっちも! …ここもっ…!!)
ルビーは会場の扉という扉、ガラス窓に至るまで、こじ開けられるドアを探し脱出を試みる。
《無駄だ、無駄ムダあ! 別次元でエスカレイヤーを散々拘束したイデアの壁より堅牢なのだぞ。人類の希望の英雄様、エスカ・ルビーとて、独りで破るなど不可能!
さあ、諦めて孤立無援の中、恒久の絶望をその身に刻むがいい! それがアルダークに歯向かった安い正義の代償だあ!》
「うっ、ううっ、ぐう〜っ!!」
(私…もう、誰とも会えない…?
カンナ、よっしー、学校のみんな、先生…
商店街のおじさん、おばさん、パパ、ママ…
ダイビートのみんな…、ユーノさん、さやかさん、神騎さんや魔女さん、閃忍さん…
イノリちゃんやライカちゃんにも…!!)
広すぎる披露宴会場は、アカリの善行と人徳の深さの賜物。
本当ならば鈴なりの参列者が、彼女と彼女を射止めた果報者の新たな門出を心から祝うことだったろう。
だが今は、その容積はアカリの残酷な孤立を浮き彫りにするばかり。
やがてルビーの強き心は、徐々に削り落とされていく。
(…長官…!)
初めましての方も、また来たぜいっ、の方も。お読みいただきありがとうございます。作者の環藍河(たまき・あいか)です。
7月の3連休、初日に「ネタ切れですー、1週間ほど待って-」と新人らしからぬ泣き言ほざいてから、舌の根も乾かぬ3日後の本日、新シリーズがスタートの運びと相成りました。
3日前に浮かんでたプロットと全く違う形が浮かび、作って練り込んだら、何だかイケそうな気がしてきて、一気にエンディングまでシナリオルートが3日で突貫開通しました。
予定では全4章。明日の第2章はあらすじ▼のラス前まで一気に、エスカ・チーム残り3人分のストーリーが進むため、環のシリーズ最大スケールでお届けします。
ただし、「溜めて引く」の「タメ」部分のため、鬱内容です。すっきりカタルシスがほしい方は、一晩明けて第3章の投稿を確かめてから第2章を読み始めるのもアリです。
皆様が、明日もその先もお楽しみいただけますように、精一杯練り込んで作って参ります。よろしくお願いします!