上空に上がると、そこはひどい強風が吹き荒れていた。
ロックは、風に飛ばされないように空に留まると、サンドラが自分を追って飛んでくるのを待った。程なく、彼女が同じ高さに上がると、狂気を顕にした表情でロックを見つめていた。そして、ロックは、これまでの出来事から気がついた事を、彼女に試すことにした。
彼は、両腕で宙に四角い形を作り始めた。中空には、クリスタルのような板状の鏡が形作られている。
サンドラは、目を丸くしてそれを見ていた。
「なっ、何だそれは!?」
ロックは、彼女を睨みながら答えた。
「これは、ラフノールの鏡……」
サンドラは、興奮した様子で、見よう見まねでロックと同じ様に手を動かした。しかし、ラフノールの鏡はなかなか現れない。既に、ロックは鏡を完成させ、それを宙に静止させていた。
サンドラは、ロックが作った鏡を見て、焦った様子で手を動かしている。すると、鏡の上の方が彼女の手から生み出されていた。
「でっ、出来た!」
サンドラは、嬉しそうに自分が作りかけている物体を眺めている。
ロックは、そこで自分のラフノールの鏡を消すと、サンドラに向かって、吹き荒れる風に乗って飛び、一気に間合いを詰めた。
「えっ! ちょっ、ちょっと待って! もう少しで、出来るから……!」
ロックは、ラフノールの鏡を作ろうとするのを止めない彼女の背後に回り、思い切りその背中を蹴り上げた。
サンドラは、バランスを崩して強風に煽られて宙をくるくると回りながら、地上に落ちて行った。地面に落ちていった彼女は、地面にぶつかるとバウンドして転がった。
ふらふらになりながらも、彼女は、両手をついて起き上がった。ロックは、その目の前にふわりと降り立っていた。
「ちっ、ちくしょう! もうちょっとだったのに!」
まだ満足に動けない彼女に対して、ロックは一瞬で間合いを詰めて、手のひらで腹のあたりを打った。
「ひっ!」
腹から一気に空気を吐き出して、息が出来なくなった彼女は、前のめりで倒れそうになっていた。
「ひ、卑怯だぞ……。超能力で戦え……」
ロックは、疲れた表情で言った。
「……君は、体を使った訓練が不足している。超能力をコピーする能力に、頼り過ぎたな」
彼は、頭を垂れた彼女の首すじに、手刀を加えた。そして、サンドラは、力なくその場に崩れ落ちた。
ロックは、ほっと息を吐き出すと、あたりの様子を確認した。既に、D弾による爆風と高熱はだいぶ収まっていた。ロペスや自分の畑があった場所は、作物が高熱で焼け焦げ、炭で塗ったような黒い跡だけが残っていた。
ロックは、サンドラの身体を抱きかかえて肩に乗せると、瞬間移動でロペスの家に現れた。
「ロックさん!」
家の中では、ジョシュアが彼の無事を喜んでいた。ロペスの他の家族は、あまりの出来事に、一箇所に集まって震え上がっていた。
アンはというと、部屋の中央で、苦しそうな表情をして立っていた。皆を守ろうと、必死にバリアを張り続けていたのだ。彼女は、ロックの姿を見ると、気丈にも笑いかけようとしていた。
しかし、そのロック自身も、力を使い果たして疲れきっていた。
「ありがとう、アン。……ここは、今は高濃度の放射線で満ちていて危険だ。すぐに、全員で街まで移動しよう」
ロックは、ぽかんとしているロペスたちを眺めると、意識を集中させた。
次の瞬間、全員で、都市のある海岸線の波打ち際に現れていた。
「ここは……?」
「いつの間に……!」
当惑する一家をのすぐ脇で、アンは疲れ果てて、仰向けになって砂の上に寝転び、肩で息をしていた。
ロックは、彼ら全員の無事を確認すると、その場で力尽きて倒れた。サンドラの身体も同じ様にロックの横に倒れ込んだ。
ジョシュアは、恐る恐るサンドラに近寄った。
どうやら、先程暴れていた女は、意識を失っているらしい。
ロックはといえば、全身の衣服が燃えかすのようにわずかに貼り付いているだけで、もはや全裸と言ってもいい状態だった。ジョシュアは、自分の上着を脱いで、そっとロックの体にかけた。
惑星ディール軌道上――。
海賊船では、サンドラが降り立った地点を、スクリーンにズームして映し出して観察していた。
船長のマークは、ロックが勝利したのを確認して、スクリーンを消させた。
「もういい。ここを脱出する。発進準備!」
操舵手は、マークに確認した。
「どちらに向かいますか?」
マークは、手を振った。
「どこでもいい。我々は、D弾を使うような極悪非道なおたずね者だ。とにかくここから離れるんだ」
程なくして、海賊船は、ハイパードライブに突入し、惑星ディールから遠く離れて行った。
船長のマークは、感慨にふけっていた。
所詮は、ものまねが得意な頭の弱い女だ。本物には、勝てるはずも無い……。
彼は、次の動きをどうするか思案して、高速に流れる星の線を眺めた。
続く…
本作は、私のブログ、pixiv、ハーメルンで同一作品を投稿、またはその予定があります。