風の惑星   作:とも2199

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本作は、超人ロックの二次創作小説です。


風の惑星13 再会

「ロックさん! 待ってくれ」

 すたすたと宇宙艦の通路を行くロックに、マキムラは焦った様子で謝罪を続けていた。

「すまない、本当に俺は知らなかったんだ」

 ロックは、急に立ち止まると、マキムラの顔を無表情にじっと見つめた。何を言われるのかと戸惑うマキムラは、戦々恐々とした状態で、ロックに怒鳴られるのを待った。

 ロックは、そんなマキムラの様子を見て、ため息をついた。

「あなたの考えている事は、先程すべて確認させてもらった。あなたも、バーンズ長官の被害者なのは分かっている」

 マキムラは、怒られるんじゃなかったのかと、ほっと胸を撫で下ろした。

「だが、連邦軍の勝手な都合で、僕や、僕の関わった人たちを巻き込んだ事は、はっきり言ってかなり不愉快に感じている」

 マキムラは、やっぱり怒ってる……と、青くなった。

「しかし……」

 ロックは少し考え込んで言葉を切った。

「ラインフォールド事件の顛末を知る者として、ソルドレークが生きているという情報は、どうしても無視する事が出来なかった。しかし、この情報自体が、連邦軍の更なる罠かも知れないという可能性は否定出来ないがね」

 マキムラは、真剣な表情でロックに約束した。

「そんな事になったら、今度こそ長官に怒鳴り込みに行き、俺は連邦軍を辞めます!」

 あまりの真面目な顔にロックはくすりと笑った。

「ロックさん……?」

 ロックは、この気のいい男に好感を持った。恐らくは、彼だけは信用出来るだろう。

「なら、その時は、僕も一緒に怒鳴り込みに行かせてもらおうかな」

 辛そうにしていたマキムラの顔は、急にぱっと明るくなった。

「その時は、是非! あのジジイをとっちめてやりましょう!」

 ロックは、微笑を浮かべて止まっていた足を進めた。

「早くアンとジョシュアに、説明してやらないと。それに、サンドラにも」

「ええ、もちろん!」

 二人は、艦内の通路を進み、エレベーターに乗った。

 

 その後、艦はハイパードライブでマーク少佐の指定した座標に急行していた。その座標は、惑星ディールにほど近い、同じ星系内を指している。

 ロックやマキムラを始め、アンとその両親とジョシュア、そしてサンドラは艦橋に集まり、窓の外で高速に流れる星を眺めていた。

「ごめんなさい、アン。あなたに昔の事を秘密にしていて」

「お前には、普通の人生を送ってもらいたかっただけなんだ」

「私、嫌われちゃったのかと思って凄く不安だったんだよ」

 アンは、両親に囲まれ、二人に抱きしめられていた。

 二人がかつてエスパーだったことや、忌まわしい事件の被害者だったことを初めて知らされたアンは、ようやく安堵することが出来ていた。その様子を見守っていたジョシュアも、ほっと胸を撫で下ろしていた。

 それを近くで聞いていたサンドラは、ESPジャマーが組み込まれた手錠を着けられていた。

「なんだよ、さっきは、あたしを殺そうとしてたくせによ……」

 ロックは、悪態をつこうとしたサンドラの背後に回ると口を手で塞いだ。

 振り返ったサンドラは、矛先をロックに変えた。

「師匠! 何すん……!」

 ロックは、超能力で無理矢理口を開かないようにした。

「むぐぐ……!」

 手を離したロックは、口元に人差し指を立てた。

「少し黙っていてくれないか」

「むぐぅ!」

 サンドラは、口を開けられないまま、文句を言っているらしく、顔を真っ赤にして憤慨している。

「それにしても。まさか、あのソルドレークが生きていたなんて」

「どうしても、私たちも一緒に行かなければいけませんか?」

 マキムラは、不安がるアンの両親、サムとラズリに説明した。

「ロックさんと一緒の方が、寧ろ安全だと判断しました。ここにいるサンドラと関わったことで、アンさんも強力な能力を持っている事を敵に見られましたから」

 ロックの代わりに、D弾の爆発による熱線や放射線を遮断した能力は、サンドラにも引けを取らないものだった。

 アンは、当惑して怯えた顔をして震えている。

「アン」

 ジョシュアは、アンの手をそっと握った。そして、彼女ににこりと笑いかけた。

「大丈夫。ここには君の両親も、ロックさんも居る。それに僕だって……」

「ジョシュア……」

 アンとジョシュアは、いつしか見つめ合っていた。

「おい……」

 アンの父親のサムは、二人の間に割って入って、二人を引き離そうとした。

「馴れ馴れしくうちの娘に触るんじゃない」

 目を丸くしたアンとジョシュアは、サムの方を凝視した。

「あら、良いじゃない。ジョシュアくんなら、お似合いじゃないかしら」

 アンの母親のラズリは、自らの夫の肩を掴んで離れさせた。

「野暮は止めて。あの子には、彼みたいな普通の子がそばにいた方がいいのよ」

「しかしだな、アンはまだ子供だ」

「あら。私が、あなたとお付き合いを始めたのは、今のアンと同じぐらいの歳の時だったと思いますけど」

 ロックとマキムラは、その様子を苦笑いで見つめていた。

「俺にも、離婚した前の妻との間に同じぐらいの娘がいるんだ。サムの気持ちはわからんでもない」

 ロックは、マキムラの小さな秘密を知り、くすりと笑った。

 

 ハイパードライブを抜けた連邦軍の宇宙艦は、滑るように宇宙を漂っていた。

「マーク少佐の指定した座標に到着しました」

 艦長が、マキムラに説明している。

「近傍の空間には、この星系の第四惑星がありますが、人が住むには適していません。……あ、ハイパードライブの反応あり! 付近に、間もなく船が現れます」

 艦長の説明した通り、正面にハイパードライブから抜けた宇宙船が現れた。

「む……!」

 サンドラが、真っ先に反応したが、むぐむぐと声を出せずにいた。

「ごめん、忘れてた」

 ロックは、サンドラが口を閉じるようにしむけていた力を緩めた。

「ぷっ、ぷはっ! 師匠、忘れてたなんて酷いぞ!」

「ごめん、ごめん」

 サンドラは、艦橋の窓に走り寄ると、手錠をはめられた腕を前に伸ばし、宇宙船に指を指した。

「あたしの乗っていた海賊船じゃないか!」

 確かに、そこに現れた一隻の船は、海賊船と言われていた船と同じもののようだった。

「ぐぐぐ……!」

 サンドラは手錠を壊そうと腕に力を込めている。

「ちくしょう! 能力が使えない……! この手錠を外せ! あたしにあの船の船長をぶっ飛ばしに行かせろ!」

「落ち着け、サンドラ。それが出来ないのなら、その手錠は外せない」

 マキムラは、ため息混じりに言った。

「むぐぅ……!」

 その時、艦長がマキムラに伝えた。

「海賊船から通信が入っています。繋ぎますか?」

「構わん。繋いでくれ」

 艦橋のスクリーンに、先方の海賊船の船内の映像が映し出された。そこには、一人の男の姿が映っている。

「マーク少佐だな?」

 マキムラとロックは並んでスクリーンの前に立った。

 スクリーンに映る男は、無表情だった。

「そうだ。……ロック、あなたも来てくれたんだな? ならば、一人でこちらの船に来てくれないか? 直ぐにソルドレークに会わせよう」

 ロックとマキムラは、顔を見合わせた。

「分かった。なら僕が一人で行こう」

「いや、危険だ。俺も一緒に……」

「駄目だ。あなたは、ここにいる皆を守ってくれ」

 ロックは、サンドラに声を掛けた。

「サンドラ、僕の居ない間に、敵が攻めてくるような事があれば、君が皆を守って欲しい」

 サンドラは、不貞腐れている。

 ロックは、サンドラの肩に触れた。

「僕に協力してくれるなら、すべて終わったら君の訓練に協力すると約束する」

 サンドラは、現金にも、にぱぁと表情を明るくした。

「ほ、本当だな? 約束だぞ?」

 ロックは頷いた。

 そしてロックは、マキムラの方を向いた。

「行ってくる。危険を感じたら、僕に構わず船をこの宙域から離脱させてくれ」

「分かった……くれぐれも気を付けてくれよ」

 アンとジョシュアは、不安そうにロックの方を見ていた。

「ロックさん……」

「大丈夫。すぐ戻る」

 その瞬間、ロックの姿は消えた。

 

 ロックは、一瞬で海賊船のマーク少佐の目の前にテレポートした。そこは、海賊船の艦橋だった。

「やっと、本人に会えた」

 ロックは油断なく相手を睨みつけた。

「マーク少佐。どういう事なのか説明してもらおう」

 マークは、踵を返すと艦橋の後部ドアに向かった。

「私に着いて来こい」

 ロックとマークは、エレベーターで階下に降り、更に通路を進んだ。

「……説明しよう。私も、途中までは軍の上の指示通りに任務を果たしていただけだ。最初は、孤児院で燻っていたサンドラを拾い、彼女の訓練に協力した。そして、君を誘き出す作戦を命じられ、海賊船の人員を確保し、運用を始めていろいろな星系へと君を探し回った。そんな時、私は惑星ディールでソルドレークに再会したのだ」

 ロックは、目を丸くした。

 本当の事を言っているのか、マークの心の内を知ろうと試みたが、それは果たしてロックにも出来なかった。

「ああ、私には超能力への耐性がある。だから、私にテレパシーは通じない」

 ロックは、諦めて口頭で確かめる事にした。

「惑星ディールと言ったな。いつ、どこで?」

「半年程前。ちょうど、君があの星に到着して直ぐ、農家をやろうとし始めた頃だ。君を発見して、連邦軍へその報告しようとした時、私に接触して来た者が居た。驚いたことにその人物は、自らをソルドレークと名乗った」

 ロックは、そんなに早いうちから見つかっていた事に驚き、黙って続きを聞いた。

「そこで、彼から精神融合でいろいろな事実を知らされた。話を聞いた私は、君の所在の報告を止めて、彼の言うとおりにする事にした」

「なるほど。連邦軍を裏切ってでも、言う事を聞くべき内容だったのか?」

 マークは立ち止まって、両腕を広げた。

「思い出したんだよ。連邦軍は、ラインフォールド事件の時に私が洗脳されていたとしているが、実際はそうではない。彼の話を聞いて賛同していたんだよ。それに、事件の後で洗脳が解けたのでは無く、連邦軍に新たな記憶で上書きされて忘れていただけだ」

「しかし……どちらの記憶が本当か、確かめる術は無いんじゃないのか?」

 マークは、なるほどと思ったのか何度も頷いていた。

「直接、ソルドレークと話してくれ。そうすれば、君にも分かる」

 マークは、立っている目の前のドアの横のパネルを操作した。

「ソルドレーク様、ロックを連れて来ました」

「通してくれ」

 ドアが横開きで自動的に開くと、部屋の内部が見えた。その奥のデスクの椅子に座っている人物がいる。

 ロックは、足を部屋に踏み入れると、その人物が前に見たソルドレークとはかなり印象が異なっていることに気付いた。

「久しぶりだね。ロック」

 その人物は、一五歳前後の少年だった。その緑色の長い髪の毛が肩まで伸びていた。

 

続く…




本作は、私のブログ、pixiv、ハーメルンで同一作品を投稿、またはその予定があります。
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