風の惑星   作:とも2199

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本作は、超人ロックの二次創作小説です。


風の惑星15 ソルドレークPart2

 勢いよく猛然とダッシュしたアンは、光の剣を作ろうとしているサンドラに飛び掛かった。倒れ込んだサンドラに、アンはのしかかる。

「ちょっ! ずるいぞ、まだ剣が出来てないってのに!」

「だからこうしたの!」

 二人は、その直後にテレポートして艦内から消えた。

 ラズリが床に落とした銃を取り戻して、急いでサンドラに向けようとしたマキムラは、既に二人が消えた事に気付いた。

「あ、あれ?」

 その時、艦橋に武装した兵士たちが雪崩込んで来た。

 既に、元凶となったサムとラズリは床に倒れて気を失っており、暴れ出したサンドラは艦から姿を消していた。辺りをキョロキョロとする兵士たちは、途方に暮れている。

「緊急事態と聞いて駆けつけましたが」

 マキムラは、頭をかいて彼らを眺めた。

「あー、皆すまん。少しだけ遅かった。取り敢えず、怪我人を医務室に運んでくれ」

 

 絡まった状態で海賊船の船内の中空に現れたアンとサンドラは、ちょうどマーク少佐の立っている場所に現れた。

「な、何だ!?」

 マーク少佐は、突然アンとサンドラが落ちて来て、持っていたESPジャマーを取り落した。

 ジャマーの効果から解放されたロックは、肩で息をしながら、膝を付いた。そして、彼は現れたアンに気が付いた。

「アン!? いったいどうしたんだ?」

「ロックさん! この女と私の両親が急に暴れだして」

 アンは、暴れるサンドラを懸命に押さえ込んでいる。

「くそう! 離せよ!」

 ロックは、立ち上がって揉み合う二人に近づき、サンドラの顔に手をかざした。ロックの手の中には、光の球が生まれていた。

「やっ、やめ……!」

 手の光が一瞬眩しく光ると、途端にサンドラは気を失って大人しくなった。

「あ、あれ? 何をしたの?」

 アンは、気を失ったサンドラの体を揺すって、まだ息があるのを確認した。

「大丈夫。気を失わせただけだ」

 ロックは、マーク少佐の様子も確認してみると、彼もまた、先程二人と衝突した際に意識を失ったようである。

 その後、アンとロックは、マーク少佐、サンドラ、そしてソルドレークと名乗った少年の体を、川の字に並べて部屋に寝かせた。 

「ロックさん。いったい何が起こってるんですか?」

「……」

 ロックは、暫し思案した。

 連邦の宇宙艦で起きたアンの両親やサンドラのこと、そしてこの船で起きたことを考えた。

「……ロックさん?」

 ロックは、そこでやっと何かに気が付いた。

「あの風……」

「風?」

「向こうに戻ってから、皆に話そう」

 

 連邦の宇宙艦では、リーダーを失った海賊船に投降せねば撃沈すると警告し、船を曳航する事に成功していた。

 マキムラは、ロックらと艦内の作戦会議室へと場所を移して話し合っていた。

「……という事で、海賊船にいたソルドレークは偽物だった。本物の彼は、何処からか、かつて自分の支配下に置いていたマーク少佐やアンの両親、そしてサンドラを操っている」

「何だって今になって?」

 ロックは、少し言い淀んだ。だが、マキムラとアンは、ロックの答えを待っている。

 やむを得ず、ロックは説明を始めた。

「……彼は、何処かに潜んでいる。恐らく、自分に協力させられる人々を操って何かしようとしている」

 マキムラとアンは口を揃えた。

「いったい何処に?」

 ロックは、確信を持って言った。

「惑星ディールに戻って欲しい。本物のソルドレークは、あの惑星に潜んでいると思う」

 

 ロックは、一人惑星ディールの軌道上に静止する宇宙艦から、大気圏内へと落ちて行った。

 雲を抜け、やがて惑星の強風で煽られながら、ロックは海に浮かぶ小さな島へと自由落下した。眼下に見える島の周囲の海面は、強風に煽られて荒れ狂って波打っている。

 その僅か一〇キロ四方程度の島に降り立ったロックは、あまりの強風にその足取りも重い。しかし、まっすぐに目指す座標へとゆっくりと足を進めた。島内は無人で、小さな山に無数の木々が生えている。その全てが、酷い強風に煽られて波打っていた。巻き上げられた砂や枯れ葉が、ロックの体にまとわりついている。

 島を歩き続けてしばらく経つと、山の中腹に洞窟があった。

「反応があったのは、ここか」

 ロックは、なんの躊躇いもなく、中へと足を踏み入れた。

 外の強風とは打って変わって、その洞窟内は驚くほどの静けさだった。

 ロックがしばらく歩いて行くと、かなり洞窟を進んだ更にその奥に、目的の場所をようやく発見した。

 洞窟内で少し開けたそこは、ライトで照らさずとも白い光に包まれている。

「やはり」

 ロックの眼前に、石で出来た祭壇のような物があった。その上に、繭のような物に覆われた物体が鎮座しており、無数の蜘蛛の糸らしきものが洞窟内に張り巡らされている。白い光は、その物体全体から放たれていた。

 

 ――ここを見つけるとは。

 

 ロックの脳内に、その声が聞こえて来た。

 

「ソルドレークだな」

 ロックの言葉に、その相手の感情が僅かに揺れ動いた。

 

 当たり――。

 

 光が急に強くなり、辺りは真っ白に輝いた。ロックは、手のひらをかざして目を覆った。

 やがて、光が収まると、繭の隙間から手足が覗いた。

 そして、ゆっくりと、人の姿をした物がそこに現れると、祭壇に腰掛けた。

 全裸の少年は、先程海賊船で出会った少年と瓜二つだった。彼は、緑色の長い髪の間から、大きく開いた口を覗かせると、あくびを漏らした。

「いつからここに?」

 少年、ソルドレークは、遠くを見るような顔つきで考えているようだった。

「この惑星に銀河連邦が植民する前から」

「ラインフォールド事件の時もここに?」

 ソルドレークは頷いた。

「あの時の私も、さっきの海賊船にいた私も、私のマトリックスを写した他人だよ」

 ロックは、僅かに後ろに下がると戦いに備えて身構えた。

 ソルドレークは、手でそれを制した。

「ずっと眠っていたんだ。これが力を使う時の私のやり方なんだけどね。生身の私が、君と争う気は無いよ」

「惑星ディールの季節風の正体は、君の力のせいだ。そのおかげで、この位置が特定出来た」

「私のバイオリズムが、この惑星の気候に影響を与えていたのは知ってるよ」

 のんびりと話す彼には、敵意は無いように見える。それでも、ロックは戦う姿勢を止めずにいた。先程のような騙し討ちに合うことを警戒しての事だ。

「今度こそ、本当の事を話すんだ」

 ロックは、鋭い眼光で瞬きもせず、彼から一瞬たりとも視界から外さないようにしていた。

「やれやれ。君は相当、心配性らしいね」

「当然だ」

 ソルドレークは、肩をすくめた。

 彼は、笑みを浮かべるとふふっと笑った。

「私はね……」

 

 その瞬間、ロックの体は宇宙を飛んでいた。

 

「な、何を……!」

 

 物凄い勢いで、星々が流れて行く。

 あっという間の出来事で、気がつけば、遠く銀河系を俯瞰できる彼方へと到達していた。

 ロックの直ぐ側に、ソルドレークも浮かんでいる。

「君を監視する為に私は派遣されたんだ」

 ロックは青ざめた表情で、ソルドレークの方を見た。

「君は……」

 ロックには、この情景がソルドレーク自身が過去に実際に見た光景だと悟った。その光景を、ロックは強制的に見せられていた。

「私のいた世界では、エスパーという言葉は存在しない。その言葉は、超能力を使えない人々と、使える人々を区別する為のものでしょう? 誰もが超能力を扱える世界では、そんな区別は必要ないから」

 ロックは、戸惑いながらも、彼が話すのを黙って聞くことにした。

「遠い昔、私たちは、超能力を使えない人々がいる世界もあると知った。そして、同じ民族同士で大きな争いが起きている世界があることも。ここは、正にそういう場所だった。だから、そういう世界がどのような運命を辿るのか、他の世界に悪影響を与えることはないのか、私たちは途方も無い長い年月をかけて監視を行ってきた」

 そこで、ソルドレークは言葉を切って、ロックの顔色を伺った。

「そこに、君が現れた」

 ソルドレークは、背後の銀河系を消すと、遠い昔、ロックが表舞台に初めて現れた時の様子を映し出した。

「不老不死の超人。強大な力を持った超能力者。世界の運命を左右する程の存在。この銀河に、そんな種族は後にも先にも存在していなかったからね。君は、とても注目されていたんだ」

 ソルドレークは、手をかざして、背後の映像を消した。

「君を包含する銀河連邦がどの程度の存在か。私たちの銀河への脅威となりうるのか。それを調べるのが、私がここにいる目的の一つだよ」

 ロックは、目を細めて彼の姿を見つめた。

「それで? 君の結論は?」

 ソルドレークは、大きな声で笑った。洞窟内に、乾いた笑い声が反響した。一頻り笑った後で、彼は急に真面目な顔をした。

「このまま放っておけば、君たちはやがて他の銀河へも進出を果たす事になる。好戦的な君たちの事。他の銀河が戦乱に巻き込まれる未来が見える。今のうちに殲滅した方がいいと報告すべきと思っている」

 ロックは、黙って両の手のひらを合わせて、手の中に光球を作り出した。次第にそれは大きくなって行った。

「私を殺すのかい?」

「たったそれだけの情報で、そんな重大な結論を下すのはおかしい。むざむざと君にその報告をさせ、銀河連邦に脅威が迫るのを黙って見過ごす訳にはいかない」

「君のせいなんだよ?」

「は?」

「君が現れた事により、脅威度は大幅に引き上げられた。だから、君の存在を消すか、無力化するのが私の役目なんだ。それも不可能と判断したら、私の立場では、そう報告するしかない」

「買い被り過ぎだ。僕一人の力はちっぽけなものだ」

 ソルドレークは、恐れるでも無く、命乞いをすることもなく、ただ冷静だった。

「やれやれ……。私を殺せば、君は後悔することになるよ?」

 ロックは光球を更に大きくさせた。そこでようやく、ソルドレークは、少し焦ったような様子を見せた。

「待て! 私が死ぬと、自動的に報告が上がるようになっている。それでも、私を殺すのかい?」

 ロックは、そこで初めて動きを止めた。

 自身と似たような力を持つ彼を拘束し続けるのは困難だろう。暫くすれば、再び同じ様な騒ぎを起こされるのは目に見えている。しかし、今の話しが本当であれば、殺す事も出来ない。

 ロックは、ソルドレークを睨んだまま、暫くして光球を消した。

「それなら」

 ロックは、あっという間にラフノールの鏡を作り出し、ソルドレークを中に閉じ込めた。

「こっ、これは何だ!? こんな物で私を閉じ込めたつもりかい?」

「何重にも鏡を被せておいた。その中から出る事は、そう簡単じゃない筈だ」

 ロックは、テレポートして、鏡と共に島の上空へと一瞬で移動した。

「どうするつもりだ!?」

「その中で、暫く大人しくしていてもらう」

「こんなことをしても意味が無い。私なら、時間をかければこの中から脱出することは不可能じゃない」

 ロックは、手を鏡にかざして、内部に力を加えた。

「分かってる」

 ソルドレークは、意識を混濁させ鏡の中で意識を失った。それを確認したロックは、ラフノールの鏡に閉じ込めたソルドレークを、そのまま上空へと放り出した。

「だが、時間稼ぎは出来る」

 鏡は、そのまま惑星ディールの大気圏を突破し、宇宙へと飛び出した。

 やがて、それは宇宙の彼方へと消えて行った。

 

続く…




本作は、私のブログ、pixiv、ハーメルンで同一作品を投稿、またはその予定があります。
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